キモいを超えればモテへと昇華。GOROmanさんが提唱するキモズム理論
ドリキン:
ボクは環境がなかったので、それより遅れてのデビューでしたけど、やっぱり我々がパソコン通信とかやってた時代は、世間からは知られてない。
GOROman:
そう。だから中学校のときは女子に言えなかったですね。パソコンやってるとか通信やってるとか。これがまた笑えるのが、その頃は「メール」とか言ったらモテないじゃないですか。根暗でオタクとか、すごい迫害されてたんですけど、気がついたらメールができないとモテなくなってるんですよね。
ドリキン:
メールが普及した頃には、「チャットしてる」とか言うとまた迫害されて。だけど、「今お前らがやってるLINEなんかそのままだぞ」みたいな。
GOROman:
Skypeとか立ち上げの頃からやってますし。その頃「Skypeでやればタダだよ」とか言っても嫌がられましたよね。
ドリキン:
このジレンマ、我々は常々ありますよね。
GOROman:
ボクはこれを「キモズム」と呼んでいて、キモズム理論を提唱しているんです。新しい技術は全部キモい。
ドリキン:
キャズムではなく(笑)。
GOROman:
キモズム。そして、キモい新しいデバイスに何かイノベーションが起きて、キモズムを超えた瞬間にモテ化するんです。カメラだって江戸時代には「魂を吸い取られる」とか言われてたじゃないですか。でも、便利になるとキモズムを越えてモテるようになる。そうなると「パソコン教えて」とか言われるんですよ。納得いかないですよね。
ドリキン:
そのモテる時期になると、次のキモズムに興味を持ってるから……。
GOROman:
もうモテる頃には飽きてるんですよ。
ドリキン:
一生モテない、と。
GOROman:
イノベーター理論で言うと、このレイトマジョリティまで浸透した頃には飽きてるので。
ドリキン:
わかるわー(笑)。
GOROman:
永遠にモテないキモ担当。キモ特攻隊長みたいなのを延々やってる。
ドリキン:
どんどん新しいキモズムを探っていってしまう。
GOROman:
そうなんですよ。キモズムを越えられたと思っても、次のキモズムに行ってしまう。先頭にいないと不安で。普通はフォローしていくわけですから逆ですよね。
ドリキン:
確かに。今もHMDにワーワー言ってる我々は。
GOROman:
キモズムですよね。
ドリキン:
今回は、PSVRなんかが出てきたおかげで、比較的……。
GOROman:
ソニーさんも、キモズムを超えるためのプロモーションをしていると思うんですよ。PlayStation VRなら家族みんなでやれるよとか、CMでも女の子が「わー気持ちいいー」って『イーグルフライト』やってるみたいな。ぶっちゃけあんな子いないと思うんですね。家族でやったりとか、全体の0.02%ですね。ほとんどが『サマーレッスン』をやるために買ったみたいな感じでしょう。
mazzo:
みんなそうでしょうね。
GOROman:
99.8%の純度で『サマーレッスン』、『初音ミク』、『デレステ』をやりたかったと。
ドリキン:
ただ、ああいうのがあったおかげで我々への迫害力が若干ゆるく……。
GOROman:
それは、やっぱりソニーさん並の大手の方が入ってきてくれると、キモくなくなる気はしますね。キモズム越えのワンチャンありかな。
ドリキン:
一昔前なら、もっと迫害されててもおかしくなかったと思います。
GOROman:
90年代はバーチャルリアリティなんて迫害されてましたよね。なので、「anan」とかで特集してほしいですね。「今年の夏はHMDで決める!」とか、「まだ彼持ってないの? やばいよ!」みたいにしましょうよ。「Hot-Dog PRESS」とか。
ドリキン:
あのグーグルの、新しい「Daydream View」とかは、そういう意味でもちょっとね。
GOROman:
ああ、そうですね。キモズム越えワンチャンあるんじゃないですか。あれファブリックだし、オシャレ感あるので。とにかくモテるようになるのが大事。Apple製品なんかもそう。ボクはスマホなんか「Palm Pilot」とか、「W-ZERO3」とか馬鹿でかいやつ使ってたんですね。まったくスマートじゃないスマートフォン。
ドリキン:
使ってましたね。
GOROman:
ジョブズが電話を再定義すると言って、iPhoneが出てきてからはキモくなくなりました。それまでBlackBerryとかキーボードとかブチブチに付いてて最高にキモかったと思うんですけど(笑)。
ドリキン:
(笑)
GOROman:
いまや持ってると“オシャレ”みたいになっちゃったじゃないですか。
ドリキン:
この話、面白すぎて全然前に進まない(笑)。
GOROman:
キモズムだけで終わっちゃう。
mazzo:
一瞬、VRにつながりかけたんですけど。
GOROman:
でも、これがすべてVRにつながる伏線なので、全部回収されます。第7回目ぐらいで(笑)。
斜に構えてる場合じゃない。装着したら価値観一転!
ドリキン:
コレ、完全に専門のチャンネルにした方がいい気がしてきましたが。そんなところにもうパルマー・ラッキー(Oculus創業者)が出てくるんですか?
GOROman:
まだ出てこないです。「Kickstarter」の話になりますかね。
ドリキン:
さっき言ってたのは2008年までの話ですね。
GOROman:
そうそうそう。ジョニー・リーがあれを出してなかったらボクやってない。あの時点からVRの時代がくると思ったんです。それで、いっぱいプロモ作って「ニコ動」とかにアップしてますよ。
ドリキン:
これ、ブログのエントリでいったら6行ぐらいしか進んでない(笑)。
GOROman:
進捗6%ぐらいですね。30分経って6行しかいってないってなんなんだ。じゃあ、もうタイムマシーンで2008年から2012年に飛ばしましょう。クラウドファンディングの「Kickstarter」で、「Pebble」という時計に出資したんです。「Pebble」はそのままちゃんと完成して、その流れで「Kickstarter」で「Oculus Rift」を発見したんです。それが、まさに俺が欲しかったやつなんです。ソニーさんの「HMZ-T1」という、有機ELディスプレイのHMDを買って改造したりはしてました。『TRACK IR』というフライトシミュレーターをやるためのトラッキングシステムを買って、ガムテープで張り付けて『スカイリム』をヘッドトラックして遊んでたんです。会社に持って行って「これすごいだろ」って自慢しても、みんな吐き気をもよおすばかりで。
ドリキン:
(笑)
GOROman:
「絶対に波がくるんだよ」とアピールしてもガン無視です。「また頭がおかしくなった」みたいな顔されました。それで、2012年8月1日に「Kickstarter」で「Oculus Rift」の募集が始まって、すぐにクレジットカード番号入力して300ドルを出資したわけですね。プロモーションビデオがすごかったんですよ。ジョン・D・カーマック(id Softwareの共同設立者。FPSの生みの親といわれる)とか、Valveの社長とかすごい人が推薦してるので、これは詐欺じゃないなと思えたんです。こんなデバイスが300ドルで作れるわけないとは思ってたんですよ。ジャイロセンサーとか数万円していた時代を見てきましたし。そこまで視野角が広いというのを信じられなかったんです。「本当かな」と思いながらも、ジョン・カーマック神が推薦してるので、これは嘘じゃないだろうし、嘘でも300ドルならと思って踏み切りました。当時は1ドル80円でしたから、2万ちょい出資して、あとは届くのを待ってたんです。予定出荷時期は遅れに遅れて、2013年の4月末ぐらいに届きました。
ドリキン:
これはmazzoさんも出資してたんですっけ?
mazzo:
これはしてないんですよ。このときは全然気づいてなくて、「ねとらぼ」には記事があがってたんだけど、この「Kickstarter」は疑惑の方も大きかったんですよね。
GOROman:
そうですよね。300ドルはちょっと“うさんくさい”と思うじゃないですか。当時800万とかしてましたからね。
mazzo:
90年代からこういうVRHMDの話はあったけど、結局モノになるブレイクスルーがどこで生まれたのか、わからない状態で出して来られても信じないぞ、という感じだったんですよ。
GOROman:
やっぱ構えますよね。こんなことあらへんやろ、300ドルで。
mazzo:
そう。俺たちはアイバン・サザランド(1968年にHMDの「The Sword of Damocles」を開発した人)とかジャロン・ラニアー(VPL Researchを設立し、1989年にVR製品の「Data Glove」や「Eye Phone」を紹介した人)とか知ってるんだぜ、という感じで見てたんですけどね。
GOROman:
「ダモクレスの剣」からね。
ドリキン:
でもmazzoさん、「Oculus Rift DK2」持ってたんですっけ(DK=Developer Kit)。
mazzo:
ボクは「DK2」を買ったんですよ。なんで買ったかいうと、『初音ミク』を実在化させるための展示会が明治大学で開かれたんです。それが2014年の1月。そこでボクは『Mikulus』の最初のバージョンを見たんです。それは「DK1」でしたね。
GOROman:
ですです。まだ「DK2」は出てなかったですね。
mazzo:
それを装着してみて、これはVRの時代が来ると思って、「DK2」をオーダーしたという感じですね。
ドリキン:
そのときはもう「Kickstarter」じゃなかったんだ?
GOROman:
とっくに終わってますね。「Kickstarter」は1回で終わったので。2012年の8月から1カ月やって、そこで募集は終わってます。そのあとは普通にオーダーですね。
ドリキン:
ボクはここの流れで行くと完全に遅れていて、「CV1」でようやくキャッチアップして(※CV=Consumer Version)。
GOROman:
それでドリキンさんが絶賛していたのは嬉しかったですけどね。拝見させていただいたけど、大好評じゃないですか。
ドリキン:
正直ここまで話しててナンですけど、手にするまで斜に構えてたので。
GOROman:
みんなそうなんですよ。昔のちょっとショボいバーチャルリアリティ時代。VRじゃなくて、バーチャルリアリティ世代が90年代であるんですよね。ブームになったので。やっぱ斜に構えますよね。
ドリキン:
電脳化すること自体に関しては、ボクも同じぐらいそっち側にいたかったんですけど、このデバイスでは、まだ至らないかなと思ってた。
GOROman:
そうですよね。『マトリックス』とか『攻殻機動隊』とか『ソードアート・オンライン』とかにいく過程ですもんね。
ドリキン:
「過程としても未熟なんじゃないかな」と、体験もせずに思っていたんです。
GOROman:
やっぱりそういう方は多いですよね。
ドリキン:
ヘッドマウントしなきゃいけないとか、ケーブルがつながってなきゃいけないのが、コンシューマーにはあり得ないよねと思ったんです。でも、「CV1」を使ったときの衝撃が大きくて……そこからは急に、手のひら返したように。
GOROman:
そういう人も多いですよね。
ドリキン:
「そういう人が多い」とは聞いていて、「そうならないぜ!」と思っていたのに。
GOROman:
どれだけ斜に構えるんだっていうね。斜め85度ぐらいに。
ドリキン:
そうそう。そんな状況でしたね。