e-Sportsの“走り”的存在として長い歴史を持ち、もはや常人には手出しできない“孤高すぎる存在”にまで達してしまった“『ドンキーコング』スコア争い”。その競技界に、激震が走っている。
え、まだやってたの!? 今なお海外で現役の『ドンキーコング』スコア争い。最近現れた新星26歳の世界記録保持者と飲み屋で話し込んでみた【聞き手:バカタール加藤】
米テックメディア「VentureBeat」によれば、なんと初代の世界記録保持者Billy Mitchell氏に、不正疑惑がかけられているのだ。
Billy氏といえば、1999年に『パックマン』でパーフェクトゲーム(333万3360点)をはじめて達成したことで知られる、アメリカの有名ゲームプレイヤー。
1999年に東京で行われたナムコ主催のゲーム大会で「Video Game Player of the Century」に認定され、またパーフェクトゲームを最初に達成したとして、ナムコ創設者の故・中村雅哉氏から賞を授与されるという栄光を手にした人物だ。
そんな彼が保持する過去の『ドンキーコング』の記録は“MAME【※1】を使用したもの”であるとして、「Donkey Kong Forum」【※2】のスコア管理人であるJeremy Young氏が告発、フォーラムでの過去の記録が取り消される事態となっている。
※1 MAME
オープンソースの汎用エミュレーター。かつてはアーケードゲームエミュレーターだった。正式名称はMultiple Arcade Machine Emulator。
※2 Donkey Kong Forum
『ドンキーコング』のスコアを管理するWebサイト。この競技の権威である。なお、スコア管理人のJeremy Young氏は、2017年まで日本に住んでおり、千葉県茂原市で開催された『ドンキーコング』交流会イベントにも参加した方だ。
Young氏の分析によると、Billy氏が過去に証拠として提出した録画テープ(世界で初めて100万点を超えたとされる『ドンキーコング』のプレイ映像)は、画面の切り替え時にエミュレーターの場合にのみ起こりうる描画のプロセスを確認できたとし、その証拠をコマ送りのGIF画像で証明している。
なお、フォーラムではMAMEでの申請も認めているが、以下の点などから記録を取り消したようだ。
・オリジナルのアーケード基板で行ったと申請していたこと
・録画テープは画面を撮影したものではなく直接ビデオ信号に変換したものであること
・Billy氏が100万点を超えるプレイを直接見た人がいないこと
さらには、証明は難しいとしながらも「録画テープは、一発撮りではなく、エミュレーターのリプレイデータ追記機能を悪用しながらプレイしたものではないのか?」というところにまで疑惑が掛けられている。
このニュースを受けて、日本の「ドンキー」プレイヤー人口の拡大を目指す団体「ドンキーコング研究会」(DKK)のメンバー・DKK-ASN-Esperle氏は、“リアルタイムのプレイによる証明”が今後より一層重視されていくと指摘する。
「先日、『Donkey Kong Forum』のランキングに、初の日本人プレイヤーのスコアが記録されましたが、その際はオリジナルの基板を使用しTwitchでプレイ状況をリアルタイムで配信していました。
この方法での記録が、登録の決め手となったといえます。現在は、録画・配信環境を手軽に揃えることができる時代になったこともありますし、挑戦するなら“リアルタイムでのプレイ”はマストでしょう」。
“初代チャンプに不正疑惑”──もしこれが真実だとすれば、2007年の米ドキュメンタリー映画『The King of Kong』(Billy氏が持つアーケード版『ドンキーコング』の世界記録に、Steve Wiebe氏が挑むという内容)も、まったくの虚構だったのだろうか……。
この競技界を揺るがす大スキャンダルを引き金に、“若者のドンキー離れ”に拍車がかからないことを祈るばかり。Billy氏側が今後どのような回答をするのか、その動向に注目したい。
ちなみに現在の世界記録保持者は、2018年2月2日に1,247,700点を叩き出したRobbie Lakeman氏。
昨年、現役チャンプとして電ファミがインタビューしたWes Copeland氏の記録(1,218,000点。2016年5月5日達成)を超えている……本当にまだ頑張っていたLakeman氏には脱帽である。
取材・文/浅野 稔、なかJ
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