SFでもっとも権威ある「ネビュラ賞」にゲームライティング部門が追加。ビデオゲームも選考対象に

 11月9日、SFとファンタジー作品を対象とする文学賞である「ネビュラ賞」に、ビデオゲームを含む「ゲームライティング賞」が追加された。

 ゲームライティング部門の設立は以前から方針として決まっていたが、今回はネビュラ賞の規約が協議を経て改訂され、正式なものとして追加された。ネビュラ賞は2016年8月に、ビデオゲームとテーブルトークRPGの作家を会員として入会する資格があると規約を変更している。そして今回は作品そのものが独立したカテゴリーとして追加された形だ。

候補目安には『オクトパストラベラー』や『Return of the Obra Dinn』

 1966年からはじまった長い歴史を持つネビュラ賞は作家、編集者、評論家などで構成されるアメリカSFファンタジー作家協会の会員の投票で、受賞作品が決定される。SFとファンタジー作品が対象だが、とりわけSFの分野ではもっとも権威のある賞といわれている。
 なおネビュラ賞とともに権威を二分するのが、世界SF大会で登録しているファン投票で決まるヒューゴー賞だが、ネビュラ賞とヒューゴー賞の同時受賞は「ダブル・クラウン」とも呼ばれて、非常に名誉あることとされる。

 今回のゲームライティング賞の選考対象には、ビデオゲーム、テーブルトークRPG、インタラクティブな小説が含まれており、「ストーリー、キャラクター、世界観を伝えるインタラクティブ、またはプレイアブルなストーリードリブンの作品」と定義されている。
 まずは2018年に発売されたタイトルからが対象となる。ただし、前提としてネビュラ賞は、アメリカで英語言語にてリリースされた作品に限られる。

 アメリカSFファンタジー作家協会の会員によって作成された、ネビュラ賞の候補の目安リストではファンタジー作品も含め、『ゴッド・オブ・ウォー』『The Banner Saga 3』『Return of the Obra Dinn』『オクトパストラベラー』など、ゲーマーに馴染み深いタイトルが挙がっている。その一方で『Rent-A-Vice』『The Martian Job』『The Road to Canterbury』など、インタラクティブな小説も多く挙がっており、読み物としての作品が重視されていることも伺える。

 とはいえ、このリストはあくまで候補となるべき作品が目安として出されているものであり、ノミネートや受賞結果にはなんら影響を及ぼさないので注意が必要だ。

(画像はNebula Awardsより)

SF業界とビデオゲーム

 SFが題材になったゲームだけではなく、SF業界とビデオゲームは実は関係が深い。日本ではあまり馴染みはないかもしれないが、欧米ではSF小説原作のゲーム、SF作家が手掛けたビデオゲームというのは決して珍しいものではない。

 たとえばネビュラ賞を受賞したことのあるSF小説のゲーム化としては、アーサー・C・クラークの『宇宙のランデヴー』、フランク・ハーバートの『デューン』、ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』などがある。

 何度もゲームになっている『宇宙のランデヴー』だが、1996年にゲーム化された『宇宙のランデヴー RAMA』では、作品内に原作者アーサー・C・クラークが実写で登場して、プレイヤーに語りかける趣向が存在する。

(画像はPlayStation | 宇宙のランデヴー〜RAMA〜より)

 1988年にコモドール64などから発売したゲーム版『ニューロマンサー』は、非常に野心的なポイント&クリックアドベンチャーだ。初代『Fallout』『バルダーズ・ゲート』を手掛けたInterplay Entertainmentが開発を手掛けている。

 もともとこのゲームは、作家のウィリアム・バロウズがテキストが担当したり、既存の画家や写真家など、アーティストを巻き込んだ企画として構想されていた。結局、それは叶わなかったが、発売されたゲームはテクノバンドDevoがオープニング楽曲として使用されていたり、ゲーム業界の垣根を越えたアプローチは部分的に引き継がれており、作品そのものも評価は高い。

(画像はAmazon | ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF)より)

 著名なSF作家が携わったゲームとして、もっとも有名なのはInfocomから発売した『銀河ヒッチハイク・ガイド』だろう。インタラクティブ・フィクションとも呼ばれるコマンド入力型アドベンチャーだが、原作者のダグラス・アダムズがゲーム版にもメインライターとして携わっている。

 海外のゲームクリエイターのなかには本作をお気に入りの一本として挙げる人も多い。たとえば軍事小説作家トム・クランシーも、本作に熱中したひとりだ。

(画像はBBC Raddio 4 | The Hitchhiker’s Guide to the Galaxyより)

 ほかにも、スティーブン・スピルバーグ原案のルーカスアーツのアドベンチャー『The Dig』は、『エンダーのゲーム』で知られるオルソン・スコット・カードがシナリオを手掛けている。

 今年6月27日に死去したと訃報が流れたことも記憶に新しいハーラン・エリスンの短編小説『おれには口がない、それでもおれは叫ぶ』には、原題と同じ『I Have No Mouth, and I Must Scream』としてのゲーム版が存在している。ハーラン・エリスンは、ゲームデザインだけではなく、人類を滅亡させたAIである「AM」を声優として演じており、人類を拷問してあざ笑う怪演とも呼べる演技は必見だ。

 いわゆる著名なSF作家が携わったものだけではなく、既存のゲームクリエイターの作品や、有名タイトルからもネビュラ賞が選出されるようになったのは、非常に快挙といえるだろう。一方で、SFとゲームの両方のファンからすると、SF作家が携わったり、SF作品げ原作のゲームが受賞するのも捨てがたい。

 テーブルトークRPGや、インタラクティブな小説もまた作品の層もまた厚い。テーブルトークRPGが原作のCD PROJEKT RED『Cyberpunk 2077』という例もある。今後、ネビュラ賞のノミネートや受賞結果は、要注目となりそうだ。

文/福山幸司

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