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リメイク版『ファイナルファンタジーVII』体験版で見えてきた原作で表現されたストーリーとの違い。バレットとアバランチの変化、より狡猾になった神羅

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 2020年3月2日、突如として配信された『FINAL FANTASY VII REMAKE』の体験版。本編はブルーレイディスク2枚組みという超大作ながら、エピソード形式であり、原作ゲームでは序盤から中盤にあたる、「ミッドガル脱出」まで描かれることが判明している。

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 今回の配信された体験版は、物語の導入部「壱番魔晄炉爆破作戦」までがプレイ可能だ。花売りの少女エアリスからカメラが引いていき、魔晄都市ミッドガルの全景と共にタイトルロゴが現れるオープニングは、植松伸夫氏の壮大な音楽と合わさり、息を呑む仕上がりとなっている。ビデオゲーム史上に残る金字塔的なオープニングが、最先端のグラフィックでここに蘇っているのだ。

 従来のコマンド形式のアクティムタイムバトルとアクションを組み合わせた新バトルのチュートリアルを組み合わせつつ、細部まで作りこまれた壱番魔晄炉をカメラをぐりぐりと回しながら、じっくりと観察しつつ、物語を進めていく。読者の方もそこで気づいた方がいるかもしれないが、細部のストーリーが原作で表現されたものと違っているのだ。以下、本記事ではそのストーリーの差異から『FINAL FANTASY VII REMAKE』の方向性を推察してみよう。

※この記事には体験版や原作のネタバレ、本編の予想が含まれている。


バレットが率いる「分派したアバランチ」

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 まずはストーリー的な差異として驚かされるのが、巨漢の大男バレット率いるアバランチが、もとのアバランチから分派した存在であることだ。ジェシーによると、活動方針として揉めて分派したのがこのバレット率いるアバランチなのだという。これはとても示唆的な台詞だが、このことは本編ではバレットがリーダーではない「もうひとつのアバランチ」が登場する可能性を示している。この「もうひとつのアバランチ」は、バレットたちよりも穏健派なのか、それとも過激派なのだろうか。

 「もうひとつのアバランチ」の存在は、神羅・反神羅という従来の二項対立軸を崩して、反神羅側が一枚岩ではないということになる。事態はより複雑になっていくのだ。

 ここで思い当たるのは、バレットの性格が、より向こう見ずな印象が強化されている印象を受けることだ。敵対勢力の施設に爆弾を仕掛けている任務中にも関わらず、クラウドに対して「未練タラ~リ」といった砕けた言葉を使ったり、戦闘後におなじみのファンファーレを口ずさんだり、しばしばお調子者な印象すら受ける。クールな印象だった原作から、バレットはより過激な環境テロリストになったのだろうか。

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自作自演でテロを起こす神羅

 だが、続けて判明する原作の差異が、さらなる疑念を生む。この「壱番魔晄炉爆破作戦」が神羅カンパニーに監視されていることだ。原作では、この段階で神羅カンパニーが破壊工作を関知しているシーンは挿入されない。さらには、ハイデッカーがプレジデント神羅に報告する会話で、「かつてプレジデントの命をつけ狙ったあのアバランチとの関係は不明」と、さらなる気になることを言っている。

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 プレジデント神羅の命をつけ狙う方針をとったアバランチは、バレットたちなのか、それとも違うグループなのか。現状ではこの考察を先に進める手がかりが足りない。だが、「壱番魔晄炉爆破作戦」を神羅カンパニーが監視しているという新たな状況は、思わぬ結末を迎える。目的地である壱番魔晄炉の中心に爆弾を仕掛けたクラウドとバレットたちだったが、神羅カンパニーがその爆発を意図的に誘発させ、壱番魔晄炉を大破壊に導く。いわば自作自演でテロを起こすことになる。

【編集部注釈 2020/3/7 14:15】  2004年に発売された『ビフォア クライシス ファイナルファンタジーVII』では、バレットが率いるものとは異なるアバランチの存在も描写されている。

 もしかすると、バレットたちが考えていたのは、せいぜいが魔晄炉の中心を破壊する程度のサボタージュであり、壱番魔晄炉全体を爆破するほどの大規模テロ行為は想定していなかったかもしれない。神羅カンパニーは原作ゲームと比較しても、より巨悪で狡猾な存在として、クラウドたちの前に立ち塞がるのだろう。だが、同時にこのような描写は、原作の既プレイヤーからすると、バレット個人が苦悩していたテーマが薄らいでしまう懸念すら同時に感じてしまう。

アバランチの描写が増えた先に見えるもの

 4Gamerでは、本作のディレクターである野村哲也氏のインタビューが掲載されている。それによると本作には、アバランチの個々のメンバーに厚みが持たされており、「ジェシーの実家」も登場するのだという。しかもアバランチを含むキャラクターたちのストーリーは、サブストーリーの一部ではなくメインストーリーに含まれているものだという。またボイス量がとてつもなく多く、これは体験版でもキャラクターたちがカットシーン以外でも活き活きしゃべることが確認できる。

 このようにアバランチのメンバーがより活き活きと描かれることは歓迎したいが、同時に我々は、原作ゲームでの七番プレート支柱での展開を知っている。「もうひとつのアバランチ」、「神羅の策略」、そして今後描かれる少女「マリン」の存在は、バレットの苦悩をより重たいものにしているはずだ。

 今回、バレットがサングラスをかけていることも見逃せない。その奥に隠された瞳には、これからバレットが経験することを暗示しているのかもしれない。そのとき、体験版ではお調子者のような印象を受けたバレットは違った存在としてプレイヤーの前に立ち現れてくることだろう。

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 原作『ファイナルファンタジーVII』は、センセーションだった。グラフィックはもちろんのことだが、忘らるる都でのシーンは当時、誰もが衝撃を受けた。

 原作では、プロデューサー、シナリオ原案として携わっていた『ファイナルファンタジー』シリーズの生みの親・坂口博信氏はこの『FINAL FANTASY VII REMAKE』の制作に直接携わっていないと思われる。だが、坂口氏が『ファイナルファンタジー』シリーズで描いた「キャラクターの死と真摯に向かい合う」という思想は、本作でも確かに息づき、より深くなっているだろう。

【更新 2020/3/7 18:00】 記事初版にて『ファイナルファンタジーVII』における坂口氏の担当は「ディレクター、プロデューサー、シナリオ原案」と記載しておりましたが、正しい担当は「プロデューサー、シナリオ原案」でした。訂正してお詫び申し上げます。なお、同作のディレクターについては北瀬佳範氏が担当されています。

 そして、それは中盤の「忘らるる都」までに到達せずとも、「ミッドガル脱出」までに遺憾なく発揮されていくはずだ。

ライター/福山幸司

ライター
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福山幸司
85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter:@fukuyaman

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