リマスター版『Call of Duty: Modern Warfare 2』では原作の日本語翻訳が修正済み、「殺せ、ロシア人だ」「ここは荒野のウエスタン」などのセリフは変更に

 ミリタリーFPS『Call of Duty: Modern Warfare 2』のリマスター版『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア 2 キャンペーン リマスタード』が、現地時間3月31日に発売された。

 同作はキャンペーンモードのみを収録した作品となっているが、オリジナルの日本語版が発売された際に当時問題となった「殺せ、ロシア人だ」「荒野のウェスタン」といった翻訳が修正されていることが明らかになった。

 2009年に発売したオリジナル『Call of Duty: Modern Warfare 2』は、FPSの潮流を大きく変えた『Call of Duty4: Modern Warfare』の続編で、大きな期待が寄せられていた。センセーショナルな内容が含まれていたため、海外で物議をかもしたタイトルとしても知られている。

 だが日本では、日本語版に多数の誤訳や意訳、適切でない翻訳が含まれていたため問題となった作品としても知られている。当時、この翻訳によってローカライズを担当したスクウェア・エニックスは大きな批判に晒された。

 特に語り草となっているのが「じゅうびょおおお」「ここは荒野のウエスタン」「殺せ、ロシア人だ」という訳だ。このリマスター版にはオリジナルの日本語版であった、これらの誤訳が修正されており、さらに一部の日本語吹き替えは再収録されていることが確認できる。

 まず「じゅうびょおおう」だが、これはミッション「チームプレイヤー」で味方兵士から発せられる台詞だ。シチュエーションとしては、味方の爆撃機がビルにミサイルを撃ち込む前に発せられるときの「10 seconds!」という台詞が、日本語版では「10秒だ!」と翻訳されており、その際、兵士から「10秒!」、「10秒!」と復唱する台詞が出てくる。その復唱の発声の演技がネタ扱いされ、「じゅうびょおおう」として定着したものである。

 当時、「10 seconds!」は文脈を踏まえて「10秒前!」と翻訳するべきだと意見が出ていたが、今回のリマスター版では「着弾まで10秒!!」となっており、より意味がわかるようになっている。

 では復唱部分ではどうなっているかというと、実はリマスター版では存在しなくなっている。英語版を確認したところ、こちらでもなくなっており、日本語版はこれに依拠したものだ。今回のリマスター版はオリジナルに準拠しつつも、グラフィックだけではなく、台詞などの細かい演出も変化しているようだ。

 次に「用心しろ。ここは荒野のウエスタンだぞ」だが、こちらもミッション「チームプレイヤー」で登場する台詞で、「じゅうびょおおう」のすぐ後の展開、敵の強襲を警戒している場面に聞くことができる。

 原文は「Alright, stay frosty you guys, this is the Wild West.」であり、原文通りに訳すと、たしかに「用心しろ。ここは荒野のウエスタンだぞ」にはなる。「Wild West」は開拓する前の辺境地帯を指すが、ここでは比喩的に「危険地帯」などと使っており、アメリカ人ならではの表現といえるだろう。

 とはいえ「荒野のウエスタン」だと、日本では少しわかりにくいのも事実。リマスター版では「用心しろ。この辺りは無法地帯だ」に変更となっている。

 最後に、もっとも有名な誤訳といえる「殺せ、ロシア人だ」の台詞だ。原文は「Remember – no Russian.」となり、リマスター版では「いいか…ロシア語は使うな」と変更されている。

 テロリストのマカロフが、プレイヤーが操作する新参テロリストのアレクセイ・ボロディンに対して言う台詞だ。これは、リアルなテロ行為を思わせる内容で物議をかもしたミッション「幕間」で登場するものだが、リマスター版ではミッション名自体もオリジナルに準拠して「No Russian」(選択画面では「”NO RUSSIAN”」)に変更されている。

 この「No Russian」は、ゲーム自体を象徴する台詞として有名だ。まずミッションの目的だが、テロリストのマカロフと共に、ロシアにあるザカエフ国際空港で民間人を虐殺して、プレイヤーがテロに加担するという、非常にセンセーションなものとなっている。2009年に翻訳された「殺せ、ロシア人だ」は、この設定を理解して、翻訳したのだと推測ができる。

 だが、実際はこのミッションはとても背景の文脈が複雑なのである。そもそも、なぜロシア人のマカロフが同胞のロシア人に対して、このような無差別テロに及ぶのかというと、犯行をアメリカ人になすりつける意図があることだ。

 このミッションで、プレイヤーが操作するアレクセイ・ボロディンという新参テロリストだが、実はチュートリアルや、前述のミッション「チームプレイヤー」などでプレイヤーが操作していたアメリカのタスクフォース141に所属している隊員ジョセフ・アレンと同一人物である。マカロフは、この潜入捜査を見破っており、最後にアレンを殺して、現場に死体を残すことによって、タスクフォース141の隊員がロシアで無差別テロを起こしたというシナリオを作ろうとしているわけだ。

 自分たちがロシア人テロリストであることを隠して、アメリカ人の振りをするマカロフの意図を踏まえれば、「Remember – no Russian.」とは、「殺せ、ロシア人だ」ではなく、リマスター版に使われている「いいか…ロシア語は使うな」が正しい翻訳になるわけだ

 なお、この「No Russian」はダブルミーニングだったのではないかと解釈することもできる。海外掲示板redditでは、アレンに「お前はロシア人じゃない」という意味が掛けられているのではないかと指摘する人もおり、この「No Russian」はなかなか一筋縄ではいかない台詞といえそうだ。

 オリジナル版『Call of Duty: Modern Warfare 2』の時点では、ゲーム翻訳の仕事があまり尊重されず、実際のゲームを確認させてもらえないまま、テキストだけ渡されて翻訳するという状況が数多くあったと伝えられている(参考記事:Game Watch 「スクエニ、「CoD モダン・ウォーフェア3」プレミアムパーティを開催 日本語字幕監修に小説家の福井晴敏氏、吹き替え版の声優陣も発表」)。

 現在ではゲーム翻訳は重要な仕事と尊重されており、優れた翻訳がフォーカスされて、翻訳者やローカライズチームがインタビューを受けることもあり、状況は改善されてきている。今回の『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア 2 キャンペーン リマスタード』も意図がしっかりと理解できて、遊ぶことができる。

 『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア 2 キャンペーン リマスタード』はPS4時限独占となり、PS4版は発売中、Xbox Oneは4月30日発売予定だ。

ライター/福山幸司

ライター
福山幸司
85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter:@fukuyaman
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