──だんことして、
ゆるさない。
かたきをうとう。
禁忌などやぶって、
もう、それしかない。
フレイグみたいに、
てつみたいにつめたくて
かたいこころざしで、
やるしかない、
なのに、
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「無駄ですよ、ゴニヤ。
怒りや恐れを
どれだけ膨らませようと、
不信と冒(ぼう)とくを
どれだけ募らせようと、
我らは信仰から
逃れることはできない。
ヴァルメイヤの許しなく、
我らは同胞を傷つけられない!」
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「て、が、
てが、ふるえて、
鎌をにぎれないわ──!」
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「まだ、分からないのですか?
あなたはもう、何もできない。
……仕方ありませんね。
日没はまだですが、
結果だけ見せてあげましょう。
『ヴァルメイヤ、
我らを導く
死体の乙女よ……』」
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「やめて、」
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「『信心と結束を……
いま示します!……』」
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「やめて!」
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「『ご照覧あれ!』
血と肉と骨にかけて!
みっつ!
ふたつ!
ひとつ!」
──あたりまえのこと。
ゴニヤは、ビョルカを。
ビョルカはゴニヤをゆびさす。
1たい1で、それっきり。
なんにもおこらない。
2人になったら、
『儀』はなにもしてくれない。
ただ、こころが、つながりが、
かんぜんにわれてしまったと
示すだけだ。
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「……こういうわけです。
では、いきましょうか、
ゴニヤ」
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「……
えっ。
な、なぜ、
そうなったのかしら……?」
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「なぜもなにも。
ヴァルメイヤが誰も
選ばなかったなら、
誰も死ぬべきではない。
それだけです。
あなたが『狼』だろうが。
私が『狼』だろうが。
そんなことは別に、
我々の旅に関係ないでしょう?」
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「……いや、
かんけいは、あるわ……?
だって、ゴニヤとビョルカは、
てきどうしで……」
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「敵同士だったとして、
それが何なのです。
私は悪手(あくしゅ)を重ねたかも
しれません。
しかし……
最善を尽くしたとも言えます。
あなたが私を許さないなら、
それもあなたの意志。
ヴァルメイヤはお認めになる
でしょう」
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「あとはもうぜんぶ、
ヴァルメイヤにお任せです。
ああ、疲れました!
でも、あと少し!
行けるところまで行きますよ、
ゴニヤ!」
そう言って、
ビョルカはすがすがしく
伸びをして、
あるきだしたのでした。
……ああ、なんてことかしら!
このひとはけっきょく、
さいごは、ぶれないのだわ。
すすむべき道をすすみ、
まよいなく、死をえらぶ。
だからウルじいみたいに
こわがることもない。
それが、『理』じゃなく、
『信仰』をえらんだものの
つよさなのね。
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「早くなさいな、ゴニヤ!」
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「──はあい!」
思わず、明るくへんじして、
ゴニヤもかけだす。
むかしみたいに、
巫女のせなかを追って。
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──だって、
にがすわけにいかないから。
![]() |
【誰も犠とされなかった】
【3日目の日没を迎えた】
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シークレットを見る(Tap)
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(ちっ、ま、こうなるか。
ゴニヤという亡霊は、
非合理から『故郷』を失った
無念を核とする。
過去の監視者は悪質だ。
『巡礼』を確実に壊すため、
ゴニヤと相容れない思想を
信仰に組み込んだ。
結果ゴニヤは多くのケースで
最悪の殺戮者となる。
……早く終われ……)
はいよる
はいよる
這イ 夜
まよなかになったら
わたしのじかん
のしかかって
ふりおろす
また ふりおろす
なんどめかわからないけど
ふりおろす
![]() |
巫女はもう
巫女のかたちをしていない
そのぶざまが
ランタンのきえた
夜のやみのなかでも
ありありとみえる
![]() |
夜になると、
ゴニヤは『死体の乙女』の
いましめから外れるみたい。
りゆうは、あきらか。
『狼』をこらしめろと、
『死体の乙女』がおぼしめして
いるのでしょう。
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「よくも、
レイズルを、ヨーズを、
ウルじいを、
てにかけたわね。
むのうな、おろかな、
『狼』め!」
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「だから、きのうのばんは、
あなたにしっぽをふる
イヌころを──
フレイグを、
さきにしとめてやった!
ゆめかと思ったけれど、
ほんのすこし、
ゆめならよかったと
思ったけれど、
でも、もういい。
ゴニヤはやるべきことを
やるときめたから!」
![]() |
また『狼』にふりおろす。
また『狼』にふりおろす。
また『狼』にふりおろす。
──だって、ゴニヤは
『狼』じゃないから。
ぜったいに、ちがうから。
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「はあ はあ はあ
うっ、げ、」
こみあげるものがあって、
三歩くらいよろめいたあと、
ゴニヤは、はいた。
むし、くさ、きのこ、いし。
そのままのかたち。
ゴニヤのからだになるのは
いやなのかしら。
それとも、さむさのせいで、
たべるちからさえ、
もうなくなったのかしら
ああ、さむいわ。
くちをぬぐっても、
鎌もにぎってられない。
ここから先には
すすめそうにないけれど。
『死体の乙女』は、
まんぞくでしょうね。
ここまで身と魂をけずった
ゴニヤたちなら、
召し上げてくれるでしょう。
……なのに、なぜかしら。
ふるえがとまらない。
なみだも、とまらない。
なにか、とんでもない
まちがいをしてしまった
気しか……しないの。
ねえ、ウルじい。
なにが、
いけなかったのかしら──
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【ビョルカ死亡】
【ゴニヤ死亡】
【巡礼者が全滅しました】
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