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『ギ・クロニクルif』End 01

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──だんことして、
 ゆるさない。

 かたきをうとう。
 禁忌などやぶって、
 もう、それしかない。
 フレイグみたいに、
 てつみたいにつめたくて
 かたいこころざしで、

 やるしかない、

 なのに、

「無駄ですよ、ゴニヤ。
 
 怒りや恐れを
 どれだけ膨らませようと、
 
 不信と冒(ぼう)とくを
 どれだけ募らせようと、
 
 我らは信仰から
 逃れることはできない。
 
 ヴァルメイヤの許しなく、
 我らは同胞を傷つけられない!」

「て、が、
 
 てが、ふるえて、
 鎌をにぎれないわ──!」

「まだ、分からないのですか?
 
 あなたはもう、何もできない。
 
 ……仕方ありませんね。
 日没はまだですが、
 結果だけ見せてあげましょう。
 
 『ヴァルメイヤ、
  我らを導く
  死体の乙女よ……』

「やめて、」

『信心と結束を……
  いま示します!……』

「やめて!」

『ご照覧あれ!』
 
 血と肉と骨にかけて!
 
   みっつ!
 
     ふたつ!
 
       ひとつ!」

──あたりまえのこと。

 ゴニヤは、ビョルカを。
 ビョルカはゴニヤをゆびさす。

 1たい1で、それっきり。
 なんにもおこらない。
 2人になったら、
 『儀』はなにもしてくれない。

 ただ、こころが、つながりが、
 かんぜんにわれてしまったと
 示すだけだ。

「……こういうわけです。
 
 では、いきましょうか、
 ゴニヤ」

「……
 
 えっ。
 
 な、なぜ、
 そうなったのかしら……?」

「なぜもなにも。
 ヴァルメイヤが誰も
 選ばなかったなら、
 誰も死ぬべきではない。
 それだけです。
 
 あなたが『狼』だろうが。
 私が『狼』だろうが。
 そんなことは別に、
 我々の旅に関係ないでしょう?」

「……いや、
 かんけいは、あるわ……?
 
 だって、ゴニヤとビョルカは、
 てきどうしで……」

「敵同士だったとして、
 それが何なのです。
 
 私は悪手(あくしゅ)を重ねたかも
 しれません。
 しかし……
 最善を尽くしたとも言えます。
 
 あなたが私を許さないなら、
 それもあなたの意志。
 ヴァルメイヤはお認めになる
 でしょう」

「あとはもうぜんぶ、
 ヴァルメイヤにお任せです。
 
 ああ、疲れました!
 でも、あと少し!
 行けるところまで行きますよ、
 ゴニヤ!」

 そう言って、
 ビョルカはすがすがしく
 伸びをして、
 あるきだしたのでした。

 ……ああ、なんてことかしら!

 このひとはけっきょく、
 さいごは、ぶれないのだわ。

 すすむべき道をすすみ、
 まよいなく、死をえらぶ。
 だからウルじいみたいに
 こわがることもない。

 それが、『理』じゃなく、
 『信仰』をえらんだものの
 つよさなのね。

「早くなさいな、ゴニヤ!」

「──はあい!」

 思わず、明るくへんじして、
 ゴニヤもかけだす。

 むかしみたいに、
 巫女のせなかを追って。

『ギ・クロニクルif』End 01_001

──だって、

 にがすわけにいかないから。

『ギ・クロニクルif』End 01_002

【誰も犠とされなかった】
【3日目の日没を迎えた】

『ギ・クロニクルif』End 01_003
シークレットを見る(Tap)

(ちっ、ま、こうなるか。
 
 ゴニヤという亡霊は、
 非合理から『故郷』を失った
 無念を核とする。
 過去の監視者は悪質だ。
 『巡礼』を確実に壊すため、
 ゴニヤと相容れない思想を
 信仰に組み込んだ。
 結果ゴニヤは多くのケースで
 最悪の殺戮者となる。
 
 ……早く終われ……)

 はいよる
 はいよる

 這イ 夜

 まよなかになったら
 わたしのじかん

 のしかかって

 ふりおろす
 また ふりおろす

 なんどめかわからないけど
 ふりおろす

『ギ・クロニクルif』End 01_004

 巫女はもう
 巫女のかたちをしていない

 そのぶざまが
 ランタンのきえた
 夜のやみのなかでも
 ありありとみえる

『ギ・クロニクルif』End 01_005

 夜になると、
 ゴニヤは『死体の乙女』
 いましめから外れるみたい。

 りゆうは、あきらか。

 『狼』をこらしめろと、
 『死体の乙女』がおぼしめして
 いるのでしょう。

「よくも、
 レイズルを、ヨーズを、
 ウルじいを、
 てにかけたわね。
 
 むのうな、おろかな、
 『狼』め!」

「だから、きのうのばんは、
 
 あなたにしっぽをふる
 イヌころを──
 フレイグを、
 さきにしとめてやった!
 
 ゆめかと思ったけれど、
 ほんのすこし、
 ゆめならよかったと
 思ったけれど、
 
 でも、もういい。
 ゴニヤはやるべきことを
 やるときめたから!」

『ギ・クロニクルif』End 01_006

 また『狼』にふりおろす。

 また『狼』にふりおろす。

 また『狼』にふりおろす。

──だって、ゴニヤは
 『狼』じゃないから。

 ぜったいに、ちがうから。

「はあ はあ はあ
 
 うっ、げ、」

 こみあげるものがあって、
 三歩くらいよろめいたあと、
 ゴニヤは、はいた。

 むし、くさ、きのこ、いし。

 そのままのかたち。
 ゴニヤのからだになるのは
 いやなのかしら。

 それとも、さむさのせいで、
 たべるちからさえ、
 もうなくなったのかしら

 ああ、さむいわ。
 くちをぬぐっても、
 鎌もにぎってられない。

 ここから先には
 すすめそうにないけれど。

 『死体の乙女』は、
 まんぞくでしょうね。
 ここまで身と魂をけずった
 ゴニヤたちなら、
 召し上げてくれるでしょう。

 ……なのに、なぜかしら。

 ふるえがとまらない。

 なみだも、とまらない。

 なにか、とんでもない
 まちがいをしてしまった
 気しか……しないの。

 ねえ、ウルじい。

 なにが、
 いけなかったのかしら──

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【ビョルカ死亡】
【ゴニヤ死亡】
【巡礼者が全滅しました】

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