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『ギ・クロニクルif』End 05

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 「『我らを導く死体の乙女よ!
 信心と結束をいま示します!
 ご照覧あれ!!』

 これで2人が僕を指さしたら
 すげえ面白いな。

 「血と肉と骨にかけて──
 
  みっつ!
 
    ふたつ!
 
       ひとつ!」

 ……ふうん。

 思ったのと、少し違ったな。

「僕が指さしたのは、ゴニヤ。
 
 ジジイも、ゴニヤ。
 
 ゴニヤは、僕か。
 結局、僕の仕掛けには動かず、
 ジジイを信じ切ったわけだ。
 裏切られたわけだけど。
 
 ゴニヤを指さしたのが2人。
 決まりだ」

「……一応、聞くけど。
 
 異存はあるか、ウルヴルさん」

「……ない……
 どれほど嫌でも、逆らえん……」

 そうだろうな。

 『死体の乙女』に逆らえない。
 当然『儀』の結果にも。
 そのかわり、全ての決断を、
 『死体の乙女』は祝福する。
 現世の苦しみを、和らげる。

 それが僕ら『村』の人間の、
 強みであり弱みなんだろう。

 タネが割れれば、
 味気ないもんだ。

 さあ、すべきことをしよう。
 このひどい旅のオチは
 一応、見ておきたいから。

 老い先短いじいさんがそれでも
 生き延びるのか、それとも、

 狡猾(こうかつ)な『狼』のジジイが
 最後に僕を引き裂いて
 終わるのか。

 じゃあ、やるよ。

「ゴニヤ、目隠しを──」

「みとめないわ」

 ……なんだって?

「たしかに、
 
 ビョルカをころしたのは
 わたしよ。
 
 でもレイズルはころしてない。
 
 わたしは『狼』じゃない!!」

「……
 
 いま、なんて言った」

「ゴニヤ……そいつは本当か!?
 
 そうじゃとて……!
 なぜ殺したというんじゃ、
 ワシらのビョルカを……!」

「どうしてウルじいが
 それをきくの?
 
 ビョルカがウルじいのことを、
 わるくいったからに
 きまってるじゃない……!」

「ウルじいは
 いっしょけんめい、
 かんがえてかんがえて、
 フレイグをうたがったわ!
 
 信仰にそむいてでも、
 みんなをまもろうと
 したのでしょう!?
 
 なのに、なのにビョルカは──」

『ギ・クロニクルif』End 05_001

 「“よって『理』
 『死体の館』
 秘めるべきもの、
 ヴァルメイヤに
 委ねるもの!
 軽々しくもてあそぶもの
 ではなかったのです!“
 
 ……なんて言って!」

「──ばかなおんな。
 
 『村』がほろびたときに、
 わかっておくべきだったわ。
 信仰は、負けたのだって。
 
 かわりに、『理』をたのんで
 いきるべきだったって。
 
 ゆるせなかったわ。
 だから、ころしたわ……!」

「……ゴニヤ、それは……
 
 違うんじゃ……
 ワシが『理』など
 持ち出したのは……」

「待て、ゴニヤ。
 
 じゃあ、レイズルさんを殺した
 『狼』が他にいるって
 言いたいんだな?」

「とぼけないで!
 あなたなのでしょう、
 フレイグ!」

「ああ僕も自分がそうだったら
 話は簡単だなと思ってるよ。
 ビョルカさん殺してないなら
 もう何でもいいやってな。
 
 でも少なくとも
 僕がやった記憶はない。
 
 となると可能性があるのは、
 ヨーズ、ビョルカさんと……」

「ワシでもない!
 何を考えとるんじゃ!!」

「……とまあ、何も進まない。
 
 結局、僕らは『儀』を
 終わらせるしかないんだ。
 
 ゴニヤはそれで、
 結局何がしたかったんだ?
 罪を告白して
 楽になりたかったの?」

「フレイグ!
 きさま、もうすこし言葉を──」

「フフ。
 
 それなら、
 ヴァルメイヤをしんじていれば
 よかっただけのはなし。
 
 わたしはただ、
 しょうめい、したかった。
 
 ヴァルメイヤなんていないし、
 『理』だけがひとをすくうと。
 
 それを、みせて、あげ、」

『ギ・クロニクルif』End 05_002

──途切れた言葉の代わりに、

 ゴニヤの口元から、
 おびただしい血がこぼれた。

 それで、気付いた。

 ゴニヤは

 自分の腹を

 刺したんだ


 ……な、んで、
 
 そんなことが、できる……!
 
 いや、そもそも!
 同胞を傷つけることも
 できないはずなんだ!
 夜の嵐を越えることも!」

「『理』にすがっても
 できなかっただろジジイには!
 
 僕らには信仰以外に
 道はなかったはずだ!!
 
 なのに、お前は……!
 
 許せるか、そんなの!
 お前は! 僕らは!
 『死体の乙女』の腕の中で
 死ななきゃならないんだよ!」

「かわい、そうね、フレイグ……
 
 そんなになっても……
 まだ、とらわれて……
 
 フフ……
 
 わたし……
 きになるわ……
 
 もっと……
 たんじゅんな……
 ことが……」

「わたし
 た
 ちは
 
 な
 に
 も
 
 の
 
 な
 
 の」

「……死んだ……」

『ギ・クロニクルif』End 05_003

【ゴニヤ死亡】

【3日目の日没を迎えた】

【生存】
フレイグ、ウルヴル

【死亡】
ヨーズ、ゴニヤ、ビョルカ、
レイズル

 こうして僕らは
 残り2人になった。

 一応、全ての埋葬はした。
 一応、そのあとで出発もした。

 意味はない。
 いや、強いて言えば、

 ゴニヤが遺した得体の知れない
 違和感と不穏さに、
 各々勝手に向き合う機会として
 意味はあったかもしれない。

 明らかに、
 最後のほうのゴニヤは、
 ゴニヤらしくなかった。

 ジジイも当初は
 ジジイらしくなかった。

 僕だって人から見れば
 僕らしくないかもしれない。

『ギ・クロニクルif』End 05_004

 『わたしたちは
 なにものなの』

 ゴニヤの最期の言葉は、
 僕らが抱く疑問を
 率直に表していた。

 僕らは一体何者で、
 この旅は一体何だったんだ?

 疑問はやがて
 いら立ちに変わり、
 僕は黙ってられなくなった。

「なあ、ウルヴルさん」

 返事がない。
 振り向くと、姿もない。

 へばったのか?

 雪をかき分け、少し戻ると、
 奇妙なものを見つけた。

 足跡が、途中で途切れてる。

 は?
 本人はどこに消えた?

 ……

 その後、僕はジジイを探した。
 割と、必死だったと思う。

 自分たちは何なのか。
 その疑問が、より大きく、
 より不安の色味を増していく。

 話ができる相手が欲しかった。

 望みは叶わないまま。
 僕はついに、倒れる。

『ギ・クロニクルif』End 05_005

【ウルヴル死亡】

【生存】
フレイグ

【死亡】
ヨーズ、ウルヴル、ゴニヤ、
ビョルカ、レイズル

『ギ・クロニクルif』End 05_006
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(ゴニヤのオスコレイア態は、
 自傷と自殺が可能だ。
 その行動は、
 フレイグとウルヴルに内省を
 うながしたが、
 何かを悟らせるには
 時間が足りなかったな。
 
 ウルヴルに続き、フレイグも
 ここで『寿命』に達した。
 ここまでだ。
 様子を見て、
 『護符』を回収する。)

 僕は、何者なのか?

 実は本当に、『狼』なのか?

 ジジイが消えたのは、
 実は無意識に僕が殺したから
 じゃないのか?

 ああ、
 そう考えたら、
 霞んだ目に映る僕の手は、
 最初から血に塗れていたような
 気さえする。

 『わたしたちは
 なにものなの』か。

 もっと早く、
 その疑問に至っていれば。

 知らないままに終わるよりは、
 マシな最期だった、

 かもしれない、な。

『ギ・クロニクルif』End 05_007

【フレイグ死亡】

【巡礼者が全滅しました】

『ギ・クロニクルif』End 05_008

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