選ばれし異世界の亡霊が、
人として生まれ変わる。その際に一瞬、
垣間見えたものは──
「鍵の言葉」が書き換わります。
『あなたの想いは醜い』
→ 『想いを刃に切り拓く』
ヘルドラ大陸、北方の雪原。
寒風吹きすさぶ黎明(れいめい)の魔境(まきょう)を、
ひとり横切っていく、
旅人の姿があった。
「馬鹿。
馬鹿。
馬鹿だろ。
不本意……
肉体くれるなら。
あったかいところにしろ。
糞。糞青鳥」
「あー。糞。
レイズルはともかく、
ゴニヤも、
ウルヴルも、
ビョルカも、
フレイグも、
もういないとか。
……いなくは、ないか」
「……隣にはいないけど、
胸の中には、いる。
いつでも想えるし、
それで迷うことは、もうない。
『想いを刃に切り拓く』
そうやって、生きられる。
生きてみたい。
めんどくさい……
けど、やってみるか」
「感覚を、とりもどす。
道具を、銃を、手に入れる。
痕跡を見つけて、獲物を追う。
できることを、やる。
少しだけ、想いをのせて。
それで一丁、
『奈落』で狩りでも
してみようか。
柄にもないけど。
血が騒ぐね」
少女は口をつぐみ、視線を上げて、より力強い、一歩を踏み出す。
長い旅路の果てに得た、自分だけの力と、希望を胸に。
やがて吹雪は止み、夜は明ける。
かくて、偽典もまた、祝福されたのでした。
めでたし、めでたし、ってね。
【ギ・クロニクル 完】