編集部ひとことレビュー
圧倒的な闇。ホンのちょっとの先さえ見通せないという不安が、『九怨』の恐怖の根幹だ。ゲームの舞台は、平安時代のある屋敷。日本建築の荘厳さと、ところどころ朽ちた感じが相まって、ただならぬ雰囲気が漂う。オドオドしながら進むと、サッと何かが蠢く。次の瞬間、音もなく忍び寄る異形のものが主人公に襲いかかる。プレイヤーは、いつ襲われるかわからないこの状況に鼓動を激しくさせる。環境音中心のBGMなど、余計な演出がなされていない作りが和風ホラー特有の不気味さを際立たせ、さらなる冷や汗を呼び寄せる。この時点で、すでに厭な汗で服が肌に貼り付いているはずだ。
ゲーム全体を支配する圧倒的な闇は流れとなり、恐怖の波としてプレイヤーの足下をジワジワと掬い取る。お化け屋敷のようにドキッとさせられる仕掛けも、ギリギリの精神状態に追い込まれることで、その恐さは何倍にも増幅する。それは本来なら安らぎを感じるはずの松明や屋内の灯りさえも、闇を引き立てるためのエッセンスと感じさせてしまうほど。
極限状態で訪れた屋敷の壁や床にベッタリと血が飛び散っていたら、その先に進む勇気なんて残されるはずもない。「進むの怖いけど、物語は気になる……」ーー折れそうな心には、そんな葛藤が終始展開する。
血塗られた不穏な屋敷を小刀と御札だけで進む主人公の心細さは、田舎の真夏の夜の静けさのなか、肌にまとわりつく生暖かい空気を感じながら、街頭のない暗い夜道を歩くような状況をイメージすればいい。そんな日本という風土に脈々と受け継がれ、棲みついたような気持ち悪さや不気味さを楽しむなら、『九怨』は間違いなく最適な一本といえる。
九怨 -kuon-
発売年月日 | 開発元/発売元 | プラットフォーム |
---|---|---|
2004年4月1日 | フロム・ソフトウェア | PlayStation 2 |
特記事項 | ||
なし |
C)2004 From Software Inc. (C)智内兄助