編集部ひとことレビュー
このゲームは、2015年に「電ファミニコゲームマガジン」(当時は「ニコニコゲームマガジン」)で発表された、”連載型”のフリーゲーム。作者は真田まこと氏。『霧雨が降る森』というホラー系のフリーゲームを過去に手がけて、人気を博していた。最新作となるこの『殺戮の天使』のジャンルはサイコホラーADV。謎の地下ビルで目覚めた少女・レイが、そこで出会った殺人鬼・ザックと奇妙な約束を結び、脱出に向けて様々な困難を乗り越えていく……というのが大まかなあらすじで、この二人の関係性を軸に物語が進んでいき、昨年から今年の頭にかけての連載期間で日本の中高生のユーザーを中心にブームを巻き起こし、現在もその熱気は続いている。
本作の特徴は、連載形式で行われたことにある。ストーリーも、各話に山場がありながら引きのある終わり方をする、”連載型”ならではの強みを活かした構成になった。そのため、ファンが次の話を待つ中で盛り上がる現象が起き、後半のストーリーでは公開時にはTwitterが文字通りの“祭り”になったという。こうしたフリーゲームの多くが「実況で十分」と言われがちな中で、中高生から実際に数多くのDLとプレイ報告が来たというのは、非常に異例ではないかと思える(電ファミ内のゲームマガジン編集部に聞くと、通常のフリーゲームのヒット作とは桁数レベルで違うDL数だという)。
その人気を受けて、現在はメディアミックスが進行中。漫画や小説の驚異的なスピードでの売上が目立ってか、ついに中高生のみならず大人たちの間でも話題になりだしているという。
では、ゲームの評価はどうか。実際にプレイしてみると、ホラーを基調にしつつも、ガンシューティングや脱出ゲーム、推理ゲームなど、要所要所にミニゲームのイベントが発生していくスタイルで、実は中央に独自のゲームシステムなどは存在しないADVなのだ。
だが実は、骨太なストーリー展開の間にナラティブを意識した小さなゲームが挟まっていくスタイルは、『グランド・セフト・オート』などの最先端の洋ゲーAAAタイトルで主流のもの。ゲームマガジンの編集部に聞くと、これは作者が自分なりの表現を模索する中で選択したものであったそうだが、やはり「結果的に洋ゲーの最先端と呼応するスタイルになっている点は、今後に予定されているSteamの海外展開で注目している」とのことだ。
一方で、『メタルギア』シリーズの小島監督が言うように、連載型のゲームも世界的に今後増えていく流れは十分に想定される。世界のインディーゲームの潮流とは全く離れたところでガラパゴスに進化して、日本の中高生の、それも女性たちから高い支持を受けてきたという、極めて独自性の強い『RPGツクール』製ホラーゲームの文化。そこから生まれてきた本作のポテンシャルを我々は、どう捉えるべきなのだろうか。
(本記事は、電ファミニコゲーマー編集部が同編集部内にあるゲームマガジン編集部への取材をもとに書いています)
殺戮の天使
発売年月日 | 開発元/発売元 | プラットフォーム |
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2015年8月14日 | 星屑KRNKRN(真田まこと) | Windows |
特記事項 | ||
全4話。 |