小〜中学生に好きだったものを、今も反芻して楽しんでいる(藤岡氏)
──ちなみに藤岡さんは、子どもの頃は『ウルトラマン』作品をご覧になってました?
藤岡氏:
僕たち世代って、子どもの頃はみんな『ウルトラマン』作品をリアルタイムで観ていましたよ。関連グッズもみんな持っていたし、ゴジラごっこやウルトラマンごっこをして遊んでいました。
田口氏:
その頃に観ていた『ウルトラマン』って、作品でいうと?
藤岡氏:
確か『帰ってきたウルトラマン』。あのあたりからしっかり観ているかな。『ウルトラマンA』くらいまでは好きで観ていましたね。
でも覚えている怪獣を挙げていくと、やっぱり初代の『ウルトラマン』とか『帰ってきた』になるのかな
田口氏:
再放送も含めたら、世代はあまり関係ないかもしれないですね。
藤岡氏:
ふと気づいたら再放送をやっていましたからね。学校から帰った頃によく観た記憶があります。
基本的に怪獣が好きだから、ウルトラマンがピンチになる回なんかは応援しちゃいますよ(笑)。
田口氏:
怪獣派だったんですね(笑)。この辺はわかれるんですよね。怪獣を応援するタイプと、ヒーローを応援するタイプに。
藤岡氏:
僕は怪獣派ですね。僕自身が恐竜好きだったからかもしれないですけど、その延長で怪獣が好きだったんですよ。
前後編の2話構成でウルトラマンがピンチになっていくお話とかは、やっぱりすごく好きでしたね。怪獣がフィーチャーされるのがすごくいい。
──ゴモラの回とか?
藤岡氏:
張り付いて観ていましたよ(笑)。
僕はゼットンとかゴモラとかも好きなんですけど、雄と雌が一対になった怪獣のシーモンスとシーゴラス【※】をすごく良く覚えています。
田口氏:
怪獣派だったり、シーモンスとシーゴラスを挙げたりする辺りが、『モンスターハンター』のモンスターへのこだわりの片鱗を感じる(笑)。
藤岡氏:
オスとメスがある生物的なリアリティに惹かれましたね。『ウルトラマン』作品って、そういうリアリティがありますよね。
“急に生まれた”というよりは、“理由があってそこにいる”という設定が。
田口氏:
初期の頃は、怪獣中心の話ですからね。基本的には「街に怪獣が現れて人類がどうにかしようとしたけれど、失敗してウルトラマンが出てくる」という。まずは“怪獣ありき”なのが好きなんですよ。
藤岡氏:
すごく覚えています。でも、子どもの頃は夢中で観ていたのに、いつの間にか卒業していたんです。
田口氏:
その次にハマったのは何だったんですか?
藤岡氏:
映像関係ではアクションが好きでしたから、ジャッキー・チェンのカンフー映画ばかり観るようになって、その延長で格闘技やプロレスを観るのも好きになりました。
あとは『少年ジャンプ』ばかり読んでいたり。載っていた漫画をよく模写したりしていました。
──あの頃だと『ドラゴンボール』とか『キン肉マン』とか『北斗の拳』とか『聖闘士星矢』とか? 黄金期ですね。
藤岡氏:
そのほかで言うと「仏像」ですね。特に東大寺の「仁王像」が昔から好きなんです。あの仁王像を見ているだけで半日は過ごせる(笑)。
田口氏:
なかなかの筋金入りですね(笑)。
藤岡氏:
仁王像の中でも東大寺のものが本当に大好きなんですよ。初めて見たときからすごく感動して、いまだに好きなんです。年1回ぐらいはふらっと「東大寺」に行っているぐらい。
──“東大寺”の仁王像の、どんなところに惹かれるんですか?
藤岡氏:
とにかく巨大なところ、ですね。足だけでもすごく大きくて……そして、大きいだけじゃなく、肉感がスゴイんです。
だいたい仏像って、どこかディテールが簡略化されていたりとか、シンプルになっていたりするものなんですけれど、あの仁王像は違う。
田口氏:
基本はシュッとしている印象ですね。
藤岡氏:
だいたいの仏像は、どちらかというとディテールよりもシルエットのほうが重視されているんです。
でも東大寺の仁王像は、デカくてディテールもスゴイ。筋肉が隆起してムキッとなった感じは、足先を見ているだけでもわかるんです。
それを見ているだけで、ウットリするんですよね。そんな像が門の左右にあって、その門を過ぎて中に入っていくと超巨大な大仏が正面にいて、「こっちのほうが強そうだ」と思ってしまう(笑)。
田口氏:
ラスボス感がすごい(笑)。
藤岡氏:
仁王像は中に入ろうとする仏敵から寺院を守ろうとしているわけですが、そんなストーリー設定がスゴイ(笑)。
田口氏:
リオレウスとリオレイアっぽい(笑)。
藤岡氏:
そんなところも含めて、東大寺は大好き。
こうして振り返ると、小〜中学生ぐらいに好きだったものを反芻しながら、今も楽しんでいる感じがしますね。
田口氏:
その頃に作られた心の引き出しって、やっぱりこの手の仕事をやるぶんには財産になっていますよね。
藤岡氏:
そうそう。
新しく何かを好きになっても、そのときの思い出に近いものを好きになっている気はします。
映画とかで気持ちのいいアクションシーンを観たとしても、どこか「カンフーっぽいな」とか「ジャッキー・チェンのアクションに繋がっているな」と感じることがありますから。
田口氏:
仁王像の話はある種、巨大なものへの憧れや信仰ができるきっかけになっているとか?
藤岡氏:
それはあるかもしれないですね。関西圏に住んでいたからなおさらですけれど、仏像に興味を持ったのは、東大寺に行きやすかったことも大きいと思います。
多感な子どもの頃に“生”で見ていたせいか、あの大きさとディテールは衝撃的でした。
田口監督は生まれついての特撮怪獣マニア
──対して田口さんは、どんな子どもだったんでしょうか。
田口氏:
『ゴジラ』が好きな子どもでしたね。東宝特撮モノ【※1】がすごく好きで、『ウルトラマン』も東宝特撮の延長というか、円谷英二【※2】作品の延長という意味で好きでした。
でも、それがいつから好きだったのかがわからない。物心ついたときには、もう「ウルトラ大図鑑」を握っていたので。
僕は1980年生まれですが、一番古い記憶は1984年に『ゴジラ』を観たことですね。祖父に映画に連れて行ってもらった記憶があります。
それ以前の記憶はほぼないので、何のきっかけで怪獣が好きになったのかは親も知らないと思います。いわば「ナチュラルボーン怪獣好き」なんですよ(笑)。
※1 東宝特撮モノ
東宝株式会社が製作している特撮映画のこと。世界で初めて採用した、着ぐるみを使った撮影が特徴。ゴジラ、モスラ、キングギドラなどが特に有名。
※2 円谷英二
1901年生まれの特撮監督・映画監督。円谷プロダクションの創業者。映画勃興期の日本において、さまざまな撮影技術と撮影機械を研究し、日本の映画界・特撮界に多大な影響を与えたことから、特撮の神様と呼ばれる。
藤岡氏:
僕も『ゴジラ』はずっと観ていたなあ。
田口氏:
『ゴジラ』を観て以来、ずっと特撮を卒業しなかったんですね。できなかったというか。
なにしろ1984年の『ゴジラ』を皮切りに『VSゴジラ』シリーズが1995年まで続いていましたし、途中で『ウルトラマン』や『ガメラ』がはじまったために、特撮から卒業する隙を与えてくれなかったんですよ。次から次へと特撮映画を与えられましたから。
※VSゴジラシリーズ
1984年にリブート作品として製作された『ゴジラ』から始まる、一連の『ゴジラ』シリーズ7作品は、1作目以外はタイトルに“VS”と入ることから『VSゴジラシリーズ』または『平成ゴジラシリーズ』と呼ばれる(7作目は1995年公開の『ゴジラVSデストロイア』)。この7作品は、すべて同じ登場人物や世界観が使われているのが特徴。また、相手を掴まないで戦うなど、生物らしさを重視した怪獣の格闘シーンや、同じ世界を舞台にしたことで描くことができた奥行きのある人間ドラマが高い評価を得ている。
──そんなに隙がありませんでした?
田口氏:
隙があった。周りの人間もそうだったかというと、そうではなく(笑)。僕が勝手に特撮映画の留年を続けただけ。
で、中学生のときから自主制作で『ウルトラマン』とか『ゴジラ』のパロディ映画を撮りはじめて……そのまま一直線に専門学校に行き、この業界に入って今も撮り続けているんです。
藤岡氏:
本当に一直線ですね。
田口氏:
中学生のときに一緒に自主映画を撮っていた友だちは、今もときどきキャストやエキストラとして来てくれるんですよ。
以前、撮影現場で一緒に昼飯を食べていたら「規模が大きくなってるけど、やっていることはずっと変わらないよね」と言って笑ってました(笑)。
藤岡氏:
そういう意味では、僕は趣味が雑多かもしれないですね。田口さんには自分と同じようなこだわりを感じるけれど、僕は興味の対象が絞り込まれていない、というか。あれを好きになったり、これを好きになったり。
田口氏:
そのほうが大事だと思いますよ(笑)。僕もなるべくいろいろ観るようにはしているんですが、それは「勉強」だと思っているんです。誰からも何も言われなかったら、もう本当に怪獣モノしか観なくなるでしょう(笑)。
いや、怪獣に限らずSF映画……スピルバーグ監督作品はスゴく好きです。あと「戦争映画」がやっぱり好きなんです。
藤岡氏:
ミリタリーも好きなんですね。
田口氏:
僕の戦争映画・ミリタリー好きは、結局、怪獣映画好きの延長なんです。「怪獣に対抗する組織=軍」ですから。
ちなみに、僕は自衛隊なら陸上自衛隊が好きなんですね。
藤岡氏:
海上自衛隊ではダメなんです?
田口氏:
怪獣が海から来れば、海上自衛隊で対抗しないとですが、僕は身近なもの──「今いる“この場所”が、何かに攻められたときに戦える人」が好きなんです。
そうなると陸自一択。なもので、怪獣だったら陸上を攻めてくるヤツが好きで。
藤岡氏:
『ウルトラマン』の怪獣も、とんでもない場所にはあまり出てこないですからね。だいたい街とか住宅街とか山とか。
田口氏:
基本は地球じゃないですか。中には「M78星雲」が舞台の話もあるんですけど。
僕は他の星にはそんなに興味がないんです。なんなら「そこは秘密のベールで覆っていてくれてもいいのに」と正直、思っていますから。
藤岡氏:
とにかく近所に出てきて欲しいのね。
田口氏:
突然、大都会をぶっ壊す怪獣が現れて、それとウルトラマンなり陸自がどう戦うかのほうが見たい。
藤岡氏:
なんとなくわかります。自分の手の届きそうなところで展開する話は好きかも。
田口氏:
怪獣に限らず、日常がどうにかなってしまう状態を映画で観たいんです。知らない世界じゃなくて、現代で。
藤岡氏:
そういえば、大人になってから「エフェクトがカッコいいから観にいこう」なんて理由をつけて(笑)、『ガメラ』のリメイクを観に行ったんです。
リメイクは、昔はモヤっとしたイメージだったガメラが、ある程度形になって表現されていたのがよかったですね。
ギャオスが現代風に表現されていたのが印象的だったし、ガメラが火球を吐くとどんな感じになるかもビジュアルで説明されていたし、自衛隊の描き方にもすごくリアリティを感じたし。
そのときに「怪獣映画っていいな」と改めて思って、それがきっかけで「怪獣映画」熱が再燃しました。
田口氏:
「平成ガメラ三部作」【※】が上映していた頃は、僕の高校時代とだいたい重なるんですけれど、今からしても革命的な内容だと思います。
藤岡氏:
あのシリーズは、最終的にはファンタジー寄りになっていくじゃないですか。でも、しっかりした内容の1作目があって、ちゃんと世界観ができているからこそ、『ガメラ3』で多少ぶっ飛んだ内容にしても大丈夫だったんでしょうね。
田口氏:
『3』はファンタジーでしたね。戦争映画にしているという意味では、僕は『2』が一番好きなんですけど。特に自衛隊が(笑)。
藤岡氏:
『1』、『2』で繋がってきているものがあるから、『3』も許せて観ていられたような気がします。
田口氏:
いまだに達成できないですが、あのシリーズは僕の目標なんです。
そもそも関わっていたスタッフが、助手に至るまでスゴイ人たちばかりなんですよ。あんなスタッフがあの予算を与えられて、思いっきりやれる状況なんて、今はもうないですから。
藤岡氏:
そうなんだ。
田口氏:
「ミニチュア特撮」の、ある種の到達点が『平成ガメラ』でしょう。
「CGを使えばいいじゃないか」という見方もあるんですけれど、特撮はそれだけじゃないんですよね。
特に『ガメラ3』は、過渡期のCGと熟成されたミニチュアの制作技術のバランスがよくて、一番いい時期に撮れたことに惚れ惚れとするんです(笑)。しかも『1』、『2』はまだオプティカル合成【※】を使っていた時代だという。
オプティカル合成・SFXの時代、CGやデジタル合成を使いはじめた時代、そしてVFXが主流になった時代──この変遷が『1』、『2』、『3』を通して見るとよくわかるんです。
※オプティカル合成
映画の編集の際に用いられる合成技術のひとつ。複数のフィルムに映った映像を光学的な方法を使って合成する。オプティカル合成と同じ処理が、コンピュータを使ったデジタル合成でできるようになってからは、ほとんど使われなくなった。
藤岡氏:
見比べると、技術の進歩がわかる。
田口氏:
明確にわかりますね。たとえば『1』と『2』では、ミサイルに使われているCGの質が全然違うんだけど、それは、たった数年のできごとなんです。
藤岡氏:
それは僕も感じました。最近、急に『ガメラ』が観たくなってBlu-ray版を買い直して、3作品を一気に観たんですけれど、映像のクオリティがどんどん上がっているのがよくわかった。
田口さんがおっしゃるように、やっぱり『2』はすごくいい仕上がりでしたね。
田口氏:
僕は、全怪獣映画の中でも『ガメラ2』が一番好き!
藤岡氏:
「ガメラが着地して、横に滑りながら火球を連続で吐くシーン」は、めっちゃカッコいいですよね(笑)。
田口氏:
スライディング三点バーストですよ(笑)。あれはスゴイ。
藤岡氏:
『パシフィック・リム』に、ちょっと通じるものがありますよね。
田口氏:
あの頃から樋口(真嗣)さん【※】は、ハリウッドの映画よりもかっこいい絵コンテをバンバン描いていましたからね。
※樋口真嗣
1965年9月生まれ。東京都新宿区出身。映画・特撮監督。高校卒業後、株式会社ガイナックスに参加。『王立宇宙軍 オネアミスの翼」で助監督を務めるなどしたあとに独立。『ガメラ 大怪獣空中決戦」、『ガメラ2 レギオン襲来」、『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒」で特技監督、『シン・ゴジラ」では監督・特技監督などを務める。現在放送中のアニメ『ひそねとまそたん』では総監督を務める。
藤岡氏:
「怪獣が来て欲しいなあ」というタイミングで来る、あの期待に応える感じはすごく熱いですよね。観ていて、「ああいう気持ちよさもあるんだな」とわかります。
ふたりにとっての「特撮」とは?「ゲーム」とは?
──現在、「特撮」と「ゲーム」それぞれの業界で活躍されているおふたりですが、その「特撮」と「ゲーム」がお互いに何かしらの影響を与えていることがわかりました。改めて、お相手のジャンルをどう捉えているか、お聞かせください。
藤岡氏:
作っている方を前にして言うと、照れくさく感じられるかもしれないですけれど──「特撮」には、“人を惹きつけるための記号”がすごく詰まっているなと思っています。
そういう記号はゲームも大事で、「その記号をどう料理するか」になるのですが、「特撮」には“外してはいけない記号”も濃縮されているから参考になります。怪獣のシルエットの作り方だったり、キャラクターの見せ方だったり。
僕が最近「大事にしたいな」と思っているのは、「子どものときに好きだったものを、なるべく忘れずに好きでいつづけること」なんです。
たとえば、子どもの頃はトゲトゲしたフォルムが大好きでした。怪獣でいうとガイガンなんですけれど、この怪獣はたぶん、成人してから初めて見たとしても、今ほど好きにはなっていないと思うんですよね。
ほかにも『機動戦士ガンダム』だったら、ザクよりはグフが好き。ザクと比べるとグフのモノアイはシルエットが切れ込んでいて視界が悪そうなのに、強そうじゃないですか(笑)。
でも、あれは「わざとシルエットを鋭利にすることが大事な記号」だと思っているんです。ザクよりも強そうなモビルスーツをデザインするときに、一見性能が落ちていそうなデザインでも、あえて入れている。
そこに、何か大事なものがあるんじゃないかなと思うんです。理屈で考えただけだと、「性能が落ちるからやめよう」と判断するかもしれないですから。
そういう“強そうに見せるための記号”や“人の心を揺さぶる記号”って、「特撮」に圧倒的に詰まっていますから、学ぶことが本当に多いです。
田口氏:
ハリウッド映画も含めて、“最新技術で一番いい塩梅の怪獣を描いている”作品が、『モンスターハンター』だと思っています。
さっき言った関節の形だったり、巨大なスケール感だったり……プレイ中、「特撮」ではなかなかできないことを目の当たりにして、爪をかじりながら歯ぎしりしつつ、「いいなー、『モンスターハンター』はCGで好きに動かせていていいなー」とか思いながら、たぶん自分はこれからも「特撮」をやって行くんだろうな(笑)。
また、雨宮監督に言われた「いまどきの子どもには、怪獣よりも『モンスターハンター』のモンスターのほうが知られている」という言葉も、ずっと僕の心に刺さっています。
その言葉は『MH:W』が全世界で売れていることを知ったとき、なおさら「そうだ」と思いました。
というわけで『MH:W』は、大好きなゲームとして遊んでいる部分もありつつ、自分がやろうとしているものに対しては常にライバルですね。ひとつの「怪獣の描き方」としての目標だったりします。
田口監督が『モンスターハンター』を撮ると、どうなる!?
──ちなみにハリウッドで『モンスターハンター』の映画化が発表されていますが、もし田口監督が手がけるとしたら、どんな内容になりそうですか?
田口氏:
どんな作品にすればいいんだろう?(笑)
藤岡氏:
(笑)。でも自由にやって欲しいと思いますよ。
田口氏:
やっぱり「デカビタC」のCMみたいな感じですかね。
藤岡氏:
(笑)。
田口氏:
あれを毎週ずっとやると言ったら、予算がエライことになりますよね。
あのCMにいくらかかったか知らないけれど。あのレベルが難しいとなると、それこそ『勇者ヨシヒコ』ぐらいまで予算を下げないと(笑)。
藤岡氏:
モンスターの存在を感じられる作品だったら、モンスターが出なくても楽しそう。
田口氏:
主人公が、遠くに小さく見えるモンスターを指差して「あれレウスじゃない?」と言うとか(笑)。
藤岡氏:
たまにレウスの目のアップだけ出てくるとか。爪だけ出てくるとか。
田口氏:
あとは普通の鹿を出してケルビと言い張るとか(笑)。
ケルビの角が欲しいけど「やめとけよ、かわいそうだよ」なんてやりとりが延々と繰り返される回とか(笑)。肉を焼いているだけの回があるとか。
藤岡氏:
上手に焼けない回もある(笑)。
田口氏:
最終回だけは本気でレウスが出てくるとか、そんな感じの全12話の深夜ドラマをやってみたいですね。
藤岡氏:
楽しそう(笑)。なんか掴みと最後の回だけ頑張ればいけそうな気も。
──ぜひ観たいです(笑)。
田口氏:
レウスとかもギリギリ着ぐるみとCGを使いわけて。本当は『ジュラシックパーク』ぐらいのCGと特撮技術の比率でやれたら、一番美しいんですけどね。
藤岡氏:
こだわって見せるところだけ伝われば、「けっこう『モンスターハンター』ぽい」って思ってもらえるかなと。
田口氏:
6話あたりに急に泣かせるような、嘘みたいな真面目な回を盛り込みますか。
藤岡氏:
ぜひご提案いただけると(笑)。
田口氏:
ちょっとプロット書いてみます(笑)。(了)
『モンスターハンター』に登場するモンスターは、西洋ファンタジーからのアプローチではなく、日本人的な解釈で再構築されたもの──それにより、洋画に出てくる「クリーチャー」でも「KAIJU」でもない、日本の特撮が育てたモンスターとなっていることが理解できた対談となった。
藤岡氏はじめとした開発チームの“モンスターへのこだわり”はシリーズを通して貫かれているが、よりグラフィックや動きを追求した『MH:W』は、海外のゲームファンにも歓迎された。これは、海外での売上や評価が物語っているだろう。
2019年にシリーズ15周年を迎える『モンスターハンター』シリーズ。そのシリーズ最新作『MH:W』は、今後も多くのアップデートを予定しているとのこと。ますます世界のゲームファンを魅了していくことは間違いない。
一方、“より良い表現をゲームからも貪欲に取り入れる”姿勢を見せる、田口氏のような若きゲーム世代の映画監督の出現により、日本の特撮シーンがどう変わっていくのかも楽しみだ。
まずは、対談の最後に話題に挙がった『モンスターハンター』の特撮ドラマが実現することを切に願うばかりである。
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『地球防衛軍』だけではなく、『モンスターハンター』から『パシフィック・リム』まで、現代のエンタメにおける怪獣特撮のあり方についてまで語っていただきました。