なぜ『リーグ・オブ・レジェンド』は1日に2700万もの人が遊ぶのか。その魅力を日本代表のプロゲーマーが語る──圧倒的な多様さからの「選択」と鮮明な「成長」の連続が鍵【DFM Evi選手インタビュー】

 『リーグ・オブ・レジェンド』【※】(以下、『LoL』)は、MOBA【※】というジャンルのオンライン対戦ゲームで、世界ではいま1日に2700万人がプレイするなど、世界でも最多クラスのプレイヤーを集めるタイトルです。
 筆者もこの作品にはどっぷりとのめり込み、4年間で1500時間は費やしました。

 世界中のゲーマーが熱狂し、eスポーツの代表的なタイトルとしても挙げられる『LoL』。しかし、日本のプレイヤーが少なく、1シーズン(1年)ごとのアクティブユーザーも、ランクモードのみで8~10万人ほどと考えられています。
 なぜ世界的にこれほど人気のゲームが、日本ではあまり知られていないのか?
 恐らく、この作品のルールが極めて複雑で、かつその魅力を伝えるのがとても難しいためでしょう。
筆者も1500時間プレイしておきながら、まだまだ『LoL』という作品の真価を理解できるほど極めていません。

 ではどうすれば『LoL』の魅力を伝えられるのか。
 「この『LoL』というゲームでいちばん強い人なら、同時に『LoL』を誰よりも理解し、伝えることができるのではないか?」。

 身もふたもない話ですが、この『LoL』という作品の魅力を伝えられるのは、このゲームを遊ぶことで生計を立てる人々、いわゆるプロゲーマーこそ適任ではないでしょうか。

 そこで今回、2018年には日本代表として世界大会に出場し、悲願の一回戦突破を成し遂げたプロチーム「DetonatioN Forcus Me」所属のEvi選手にお話をうかがいました!!

 この記事では、なるべく『LoL』内で用いられる専門用語を使わずにEvi選手に話していただいています。すでにプレイされている方にとってはもどかしさもあると思いますが、ご了承ください!

※MOBA
Multi Online Battle Arenaの略。DotA系とも。複数のプレイヤーが2チームに分かれ、バトルやアイテムの取得などによってフィールド上でキャラクターを成長させつつ、相手の陣の制圧や破壊など、一定の勝利条件を満たすために戦うアクションゲーム。十数分から数十分のプレイの中でキャラクターが成長し、戦況がリアルタイムで推移するのが特徴。

※『リーグ・オブ・レジェンド』
 米Riot Gamesの開発する、最大5人対5人の対戦ゲーム。MOBAを代表する作品。
 RTS(リアルタイムストラテジー。刻々とリアルタイムで変化する戦況に応じてユニットに指示を出し、敵を撃破するゲーム)にRPGとアクションが加わったやや複雑なルールだが、極めて高い中毒性と無料で誰でも遊べることにより、2016年には世界でアクティブユーザーが1億人を突破したモンスタータイトルとなっている。ただし、日本のプレイヤーは推定10万人前後(ランクモードのみ)と考えられており、世界と比べるとやや少ない。
 数ある対戦ゲームの中でもとくに連携を求められるゲームで、1チームの5人はTOP、JUNGLE、MID、BOT、SUPPORTといった、それぞれ異なる役割を担当して戦うため、個々のスキルはもとより、チームを重んじる協調性も極めて重要となる。

取材・文/J1N1

1日10時間『LoL』を遊ぶプロが語る

──日本の『LoL』プレイヤーの中で最強格とさえ言えるEvi選手ですが、やっぱり『LoL』に対する愛も格別なんでしょうか。

Evi氏:
 もう大好きです!(即答)。というか、好き嫌いよりも……なんだろう、これだけ遊んでいると、好き嫌いだけで語れない気持ちがありますね。

──好き嫌いを超えたもの……。「これだけ」というと、1日どれぐらい遊んでいるんですか?

Evi氏:
 合計10時間ぐらいですかね。1日のスケジュールで言うと、だいたい13時に起きて、15時から18時までスクリム(他チームとの練習試合)、20時から23時またスクリムがあって、24時から朝の4時まで個人練習をしています。
 ただ、『LoL』について考えている時間を含めると、もっと長いと思います。

──10時間『LoL』を遊び続けて、その上まだ『LoL』のことを考えるんですか?

Evi氏:
 「ただ単純にゲームをやっていれば上手くなれる」というわけじゃありませんからね。予習や復習を交えた練習が効果的なんです。
 たとえば、まず朝は、その日に練習するチャンピオン(※プレイヤーの操作キャラクターのこと)を決め、動画を観てどんな動きをすればいいかを予習します。
 その後、実際にプレイしてみて、何が良くて何が悪かったのかを反省しつつ、徐々に動きを改善していきますね。寝る前も、翌日に練習する内容を考えたり、その日の反省点を洗い出したりを忘れないようにしています。
 こうした時間も含めると、1日のうち12時間以上は『LoL』に費やしているんじゃないでしょうか。

Evi選手らが共同生活を送るゲーミングハウス(新居)

──失礼ですが、それだけ遊ぶと飽きてしまうときはありませんか?

Evi氏:
 全っ然、これが飽きないんですよ!
 ゲームの楽しさの根幹は、対戦ゲームなので、やっぱり勝ち負けにあるわけですが、『LoL』ってその勝負を決める要因に無限の可能性が眠っているゲームなんです。

 遊んでいると、つぎつぎにいろいろな技術や戦略が浮かんだり見えたりしてきて、それを極めようすると本当にキリがないんですね。

 たとえば、『LoL』でプレイヤーが操作できるチャンピオンは、いま143体(2019年2月25日現在)も存在しています。そこから使うキャラクターを選んだうえで、さらに持たせるアイテム、使うスキル、ルーン(能力のカスタマイズ要素)を選ぶ。これらにも無数のパターンがあります。
 それだけの組み合わせのうえに、プレイヤーの数だけ戦術があり、さらにそのうえで、みんなが日に日に新しい戦術を開発しています。
 ある日、突然「このチャンピオンとこのアイテムをこの動きで使ったら強い!」といった情報が流れ、それまでの定石が一変することだってあります。
 そうした戦術への対策を考えたり、逆に真似してみたり、勝ちを求める自分としては適応し続けなければいけません。このサイクルがずっと続くから、飽きるということはありませんね。
 言うならば、毎回毎回対戦する相手そのものが毎回目新しいコンテンツなんですよ。

──対戦相手がそのつど新しいコンテンツですか。飽きない理由としての説得力がすごいですね。

無数に存在するチャンピオンから自分だけのフェイバリットを選ぶことができる。

無数の選択や無限の成長が『LoL』の魅力

Evi氏:
 もうひとつ『LoL』の優れた魅力に、プレイヤーがしっかりと成長を実感できることが挙げられると思います。

 『LoL』に限らず、FPSでも格闘ゲームでも、たとえば「この状況でこの動きができれば、絶対に勝てる」という理想のプレイがそれぞれのプレイヤーにあるわけです。
 だけど、普通はどれだけ練習しても100%理想の動きはできません。どんなに強いプロゲーマーでも90%とか95%とか、仮に世界でいちばん強いプレイヤーでも98%かもしれない。
 つねに成長の余地があるので、どんなプロでも毎日練習し続けているわけです。
 そんななか『LoL』は、「自分が理想に対して何%のパフォーマンスを出しているのか」がすぐにわかるところが優れていると自分は思います。
 『LoL』にはあらゆるデータがわかりやすく表示されていて、つまり「ごまかし」のような部分が少ないんですよね。チャンピオンのダメージや体力など、すべてが目に見える数字として表示されます。

 だから、遊びながらも「ここがダメだった」、「ああすればよかった」と反省できるし、反省さえできれば次のゲームでそれらを改善することで、すぐに自分の成長を実感できるんです。
 世の中には面白い対戦ゲームはたくさんありますが、『LoL』のように、1試合遊ぶだけで自分のプレイヤーとしての成長を感じられるゲームは、ほかになかなかありません。

──なるほど。まとめるなら、無限の組み合わせでいつも真新しく、成長の実感がリアルタイムで得られる、だから『LoL』は魅力に溢れていると。

試合後にはゲーム中に起きた戦闘や発生したダメージなどを極めて詳細に確認できる。

圧倒的な選択肢の中から、何を選ぶのか

──『LoL』の大まかな魅力は伝わりましたが、さらに踏み込んで、具体的にどんなタイミングで「面白い」と感じるかを教えてください。

Evi氏:
 僕は普段から結構いろいろなゲームを遊んでいて、『LoL』以外にも好きなゲームはたくさんあります。それらの中でとくに重視してるポイントが「選択」ですね。プレイヤーに何度も選択を迫るゲームが好きなんです。

──「選択」……。たとえば一手一手に選択を迫られる『風来のシレン』のようなローグライクなどですか?

Evi氏:
 そうそう、ローグライクもアイテムやスキルを選びながら成長していくゲームですよね。
 先ほども説明したように、『LoL』はチャンピオン、アイテム、スキル、ルーン、こうした膨大な選択肢から何を、いつ、どの順番で駆使するかという、選択の連続するゲームです。
 そうした選択肢を選び続けることでキャラクターが育つわけです。いわば自分の選択の集大成。これを操作するのは本当に飽きませんね。
 とくに『LoL』は、プレイ中に自分のチャンピオンがどんどん強くなっているという実感が得られやすいゲームだと思います。
 このゲームは、すべてのチャンピオンがレベル1から始まり、試合が進む中で最終的にレベル18まで成長する仕組みです。
 レベル1の状態だとそこらのザコ敵にも倒されるぐらい弱いので、すごく慎重に動く必要があります。それが試合が進んでレベル10ぐらいまで成長すると、ザコ敵を一掃できるような強さを手に入れている。そんなときに「自分の選択の結果、ここまで育ったんだな」という達成感を得られます。
 そうした、自分のキャラクターを育てて強くする過程を楽しめる人、つまりローグライクが好きな人などは、めちゃくちゃハマると思いますね。

──なるほど。結果的なチャンピオンの強さそのものが、自己の選択の正しさの証、つまり自己肯定などに繋がるわけですね。ですが『LoL』は対戦ゲームですから、相手側も「選択」を通じて強くなりますよね?

Evi氏:
 そう、もちろん相手も成長します。
 ローグライクと違い、自分だけが強くなるわけじゃないんです。

 ただ、相手も「選択」しているので、めったに同じ条件での対決にはならないところが面白いんです。
 たとえばチャンピオンひとつとっても、ゲーム開始時にそれぞれ渡される武器が違います。
 仮に、自分の手には弓があって、相手の手には棍棒があるとしたら、「自分はどう戦うべきか」、「逆に相手はどう戦おうとするのか」考えることになります。

 実際に考えてみましょう。自分なら、弓という遠距離武器の利点を活かすために、何とかして相手と距離を取ろうとします。そのためには、「靴」系のアイテムを購入して移動速度を上げるのが良いですね。
 逆に棍棒を持つ立場なら、射程距離で劣るぶん、体力や攻撃力で勝っているはずです。
 だったら「アーマー」を購入して相手の攻撃の威力を減少させつつ、チャンスを窺い、一気に相手を倒しにいく、などという戦術が考えられます。

 この「お互いの武器や戦術が違う」という条件下での、人間対人間の読み合いが本当に面白い。とくに読み勝ったときは格別に嬉しいんですよね。

──確かに、選択を介した読み合いは楽しそうです。でもこれだけ選択肢があれば、多少は「弱くて使い物にならない」チャンピオンなどもあるのでは?

Evi氏:
 それがほぼないのが『LoL』の魅力なんですよ!
 この『LoL』というゲームは、だいたい2週間に一度アップデートがあり、つねにゲームバランスが変化するので、定石というものがありません。
 それゆえに、ほぼすべての選択肢に一定の価値があるんです。
 アイテムの買いかた、スキルの育てかたなど、変化し続ける状況に応じていろいろな選択肢が取り得るんです。まあ、まれにアイテム「オームレッカー」【※】のような本当に使い道のないアイテムもありますけど(笑)。

 それから、このゲームには勝率や使用率が高い「OP」(※Over Power=壊れた性能の意)と呼ばれるチャンピオンたちがいます。やっぱりわかりやすい利点があるから使われるわけですが、では「使用率が低いチャンピオンは「OP」に勝てないか」というと、そうでもないんです。
 どんなチャンピオンにも長所と短所があり、むしろ「OP」に対抗するために、これまで「弱い」と考えられてきたチャンピオンが注目を浴びることもあります。

──プレイヤーコミュニティの頑張りひとつで、日々戦術が更新されていくわけですね。

※オームレッカー……「相手のタワーの砲撃を一時的に止める」という、一見強そうで、いざ使ってみるとまったく使い物にならない効果を持つ、『LoL』で有名な珍アイテム。全ゲームでの使用率は0.01%未満。

キャラクターの魅力から入ってもいい

──ここからもう少しゲームの詳細に踏み込んでお尋ねします。
 まず、『LoL』はチーム5人のロール(役割)がそれぞれ異なりますよね。
 読者の皆さんにざっくりと解説するなら、『LoL』には自陣と敵陣のあいだを繋ぐレーンと呼ばれる3本の経路があって、表示されている順にそれぞれ上から、TOPレーン、MIDDLEレーン、BOTTOMレーンと呼ばれます。それぞれのレーンで敵と応酬するプレイヤーが順にTOP、MID、BOTと呼ばれ、それ以外にJUNGLE、SUPPORT(BOTの補助)というものがあります。
 Evi選手が担当されているポジション、「TOP」は何が面白いんですか?

(画像はリーグ・オブ・レジェンド基礎知識講座6|マップ – YouTubeより)

Evi氏:
 ひとりでゲームをどんどん動かせるところです。
 このゲームはマップを見てもらえばわかるんですが、JUNGLEとMIDが影響力のいちばん高いロールと言われています。彼らはマップの中央に陣取り、このふたりが勝てばマップ全域に圧力をかけられますからね。
 それだと「TOPは影響力がないから楽しくないのか?」と思うかもしれませんが、むしろマップの辺境担当だからこそ、MIDやJUNGLEの影響をあまり受けずに戦えるという魅力があるんです。
 たとえば、もし自分がMIDで勝っていても、ほかのレーンからすれば「勝っている=危険」と判断され、集中攻撃を受けることもあります。
 一方で、TOPは比較的辺境なので介入することが難しく、一度相手に勝ち始めると一方的に有利に戦いを広げることができます。
 そうなると楽しくて楽しくて。敵が「ヤバいな」と思ったころには、自分は手の付けられない化物に育っているんですよ。最高じゃないですか?

──さすが日本最強のTOPレーナー……。
 ただ、それほど面白いのに、どうして日本では8万人(ランクプレイヤーのみ)しか遊んでいないのだと思いますか?

Evi氏:
 うーん、僕も自発的ではなく、友だちに誘われて始めてからドハマリしたので、その理由は何となくわかりますね。

 まずルールが本当に複雑です。大きな目的などはわかりやすいのですが、先ほど挙げたチャンピオンやアイテムの多様性は、初心者の方にとっては「覚えるべきことが多い」という壁になってしまいます。
 それは否定しません。このゲームの戦略性と最初のハードルの高さは、トレードオフになるものなので。

 ただ、どんなゲームでも言えることですが、とにかく一度でも触ってもらうのが大事だと思うんですよ。実際に遊ばないとゲームの魅力は伝わりません。
 ですので、とにかく自分が伝えたいことは「いいから、ちょっとだけも遊んでみて!」ということに尽きます。
 確かに『LoL』は難しいし、人も選ぶゲームです。それでも、何割かの人にとっては人生を変えるほど面白いゲームになれるものだと思います。
 幸い無料ですし、登録も簡単ですから、「自分が『LoL』に向いているのかどうか」を試すだけ試してほしいです。ハマる人は本当にハマるゲームなので。
 「その取っ掛かりをどう作るか」なんですが、まず『LoL』は世界の作り込みへのこだわりも、チャンピオンの造形もすばらしいので、「このチャンピオンがかっこいい! 使ってみたい!」というような動機で始めてもらいたいですね。
 自分も、トレーラーに登場するノーチラスがかっこよくて始めたようなものでした。あとはヘカリムやスレッシュのような、ちょっと怖い感じのチャンピオンがかっこいいと思って……。

ノーチラス
スレッシュ

ノーチラスを含めたチャンピオンたちが戦う世界観を描いたトレーラー

──確かに一度プレイすれば魅力はすぐ伝わりますよね。ただ、そうしたルールの複雑さとチームプレイの重要さから、ゲーム中にプレイヤーどうしで口論になりがちなゲームでもあると思います。

Evi氏:
 チャットにおける暴言やゲーム中における利敵行為は、運営側が取り締まっているものの、いまだに残る問題です。
 ただ、暴言や利敵行為で周囲のプレイヤーに迷惑をかける人は、共通して余裕がない傾向が強いように思えます。
 ゲーム内で連敗中だったり、実生活で上手く行っていない人ほど、どうしても周囲に当たってしまうんですよね。なので、心に余裕が持てない時は、『LoL』から離れることも大切ですね。

プロの試合の魅力

──『LoL』は自分で遊ぶのも楽しいですが、プロの試合を観戦するのも楽しいですよね。実際に日本のプロリーグで戦うEvi選手にとって、プロの試合の観戦する魅力ってどこにあるのでしょう?

Evi氏:
 プロの試合の魅力って、普通に試合を見ているだけでも面白いんですけど、それに加えてキャスター、つまり「実況と解説」にあると思うんですよ。
 盛り上がるところで実況がさらに盛り上げ、面白いところの面白さを解説がわかりやすく説明し、試合観戦をより楽しめるようにしてくれる環境があるんですよね。
 映画を映画館の大きなスクリーンや迫力の音響などで楽しんでいるような感じかもしれません。

 LJL(※日本の『LoL』リーグ)のキャスターの中でも、僕はeyesさんの実況とrevolさんの解説が凄く好きです。ふたりはコンビとして完成されていて、めちゃくちゃ聞きやすいんですよね。
 実況と解説のバランスがいいということもあるし、ゲームへの理解度もすごく高い。
 とくに「ゲームがここで決まる!」というときに盛り上げてくれるので、観戦している方も一体となって盛り上がれるんです。些細な違いでも、すぐに把握して説明してくれる。
 「そうなんだよ!」って解説される側でも思いますよ。それはあのコンビだからできることだろうと思っています。

 じつは、僕は一度会場の裏で、そのeyesさんとrevolさんが反省会をしている様子を見たことがあるんですよ。「あの場面のこの発言は、あと2秒早く言ったほうがよかった」など、一戦ごとに振り返っているんです。
 やっぱり、彼らの実況と解説はしっかりとした努力の上に成り立っているんだ、としみじみ思いましたね。

左側が実況のeyes氏、右側が解説のrevol氏(画像はSG vs AXZ|LJL 2019 Spring Split Week 1 Game 1 – YouTubeより)

プロとしてゲームをプレイする喜び、「誰よりも勝ちたい」という気持ち

──「解説される側でも思います」という言葉がありましたが、Evi選手がプロゲーマーとして遊ぶときの『LoL』は、やはり普通に遊ぶ『LoL』とは違うものなんでしょうか?

Evi氏:
 はい。プレイヤーの皆さんが日常的に遊ばれてる『LoL』と、自分たちがプロリーグ、プロのシーンで遊ぶ『LoL』は、ハッキリ言うとまったくの別物です。

 異なる部分はいろいろありますが、最大の違いは、普通の『LoL』ならひとりで挑むゲームであるのに対し、プロリーグは完全にチームでプレイするゲームになっているという点ですね。

 たとえば、ひとりでプレイするランクマッチでは、自分さえ強ければ確実に勝率が上がります。ですがプロリーグでは、チームとして集団として強くないと勝てません。
 ひとりひとりが自分に定められた役割をまっとうして、チーム全体の戦略を達成することでようやく勝てるようになります。
 具体的には、まず試合の前に何時間も打ち合わせをするのがプロシーンならではの光景ですね。
 「今回は“キンドレッド“中心の戦略【※】でいくよ。だからTOPのEviはなるべく耐えて。代わりにJUNGLEのStealにお金と経験値を集め、MIDのCerosはStealを助ける感じで動こう」などというように、プロの試合では、事前にかなり細かく戦略を作っています。

※“キンドレッド”……獲物を狩るほど矢の射程が伸びる狩人のチャンピオン。強力だが味方のサポートが不可欠。ちなみに、DFMは世界大会で同様の戦術を用いて勝利した。

──なるほど。プロどうしの試合は、ゲームが始まる前から始まっているんですね。

Evi氏:
 はい。ただ自分たちの立てた戦略が、実践になるとなかなかうまく機能しないところも、プロシーンの面白さです。
 まず、このゲームにはゲーム開始前に「ドラフト」と呼ばれる行程があります。そのとき、相手チームに使ってほしくないチャンピオンを5体禁止する、ゲーム内用語で言う「BAN」することができるんです(※厳密な順序は異なります)。

 このドラフトがすごく面白い。
 まず「BAN」ですが、当然戦略の中心にしていたチャンピオンを禁止されると、その戦略は使えませんよね。
 仮に戦略の中心である「キンドレッド」が相手にBANされたら、どうするか? 「”キンドレッド”の代わりに”グレイブス”【※】を使おう!」というように、チームみんなで頭を捻りながら戦略を柔軟に変更するんです。
 ドラフトの時間は10分もないほど短いので、もちろん事前にプランをいくつも準備しておきます。これを試合ごと考えるのは本当に大変なんですが、その反動もあり、自分たちのプランがうまく成功したときは、めちゃくちゃ嬉しいんですよ!

※“グレイブス”……キンドレッドと同じく射程に利があるJUNGLE向けチャンピオン。キンドレッドほど後半になって強くなるわけではないが、そのぶん自己完結しており、安定した性能を誇る。

──逆にプロの試合で負けると、普通のゲームとは比べ物にならないストレスを感じられますよね。

Evi氏:
 わりと最悪な気分になります。2018年の夏の大会の決勝3戦目で1本落としてしまったんですが、あのときは、めちゃくちゃなストレスを感じましたね。
 やっぱり、全部勝つつもりで挑んでいるんですよ。
 そのために練習し、戦略を考え、「これなら絶対いけるぞ!」という状態で挑んでいます。だから試合をひとつ落としただけで、すごく自信を失いますね。
 まして、自分たちが目指している舞台は世界なので、「こんなところで負けていられないのに」という気持ちが湧いてくるんです。
 もちろん、その苦しさに堪えて冷静に次の試合に挑むのも、プロとしては絶対に必要なスキルです。その試合も何とか立て直して、4戦目で優勝できました。

 こう言うと誤解されるかもしれませんが、少なくとも僕がプロゲーマーをやっているのは、お金や人気などより、純粋に「勝ちたい」という気持ちからなんですよ。勝ちたいし、勝たなきゃいけないんです。

──万全を尽くしているからこそ勝たなきゃならない。それはプロならではの苦しみですね。逆に、Evi選手が「プロでやっていてよかった」と思う瞬間ってどんなときでしょう?

Evi氏:
 やっぱり2018年のように世界で勝てたときですよね。そのために1年、いやキャリアを通して練習してきたようなものなので、それが報われたように感じられて嬉しかったです。

 日常的な話なら、チームメイトと過ごす他愛もない時間がじつはすごく好きです。
 練習が終わって、メンバーとラーメンを食べたり、食べながら『LoL』についてダラダラと雑談したり、一緒にボードゲームしたりなど、そういう何でもない時間が日々の練習のモチベーションになっています。

 チームメンバーって同じ家で毎日過ごすので、感覚としてはもう家族や兄弟のようなものなんですよ。
 いま自分がプロゲーマーを続けているのは、「自分の実力を証明したい」という願望がいちばん大きなモチベーションですが、その次に、同じ『LoL』というゲームで「頂点を目指そう」という志を持った人たちと、一緒に過ごしてゲームが出来る日々が何より楽しいからです。


──膨大な選択肢によって触れるたびに目新しく映るゲームを、自分の成長や正しさを感じながら、家族や兄弟のような密に理解し合った人たちと同じ目的を持ってプレイする。目的が達成されたときの充実感は計り知れないものだと思います。本日はありがとうございました!(了)


 底知れない多様性と連続する選択。それにより刻一刻と変化する戦略。
 こうした『LoL』の魅力は「プロとして純粋にゲームの技術で稼いでいる人こそ詳しく語れるに違いない」。
 そう考え、今回Evi選手にインタビューしたが、その口から溢れる『LoL』への愛情や理解、そして知識に筆者は圧倒された。そして『LoL』というゲームが抱えている問題に言及するような質問にさえ、彼は言い澱むことなく答えてくれた。

 一方、そんなEvi選手が立つプロという舞台の裏側では、プレイヤーたちはチームの看板と自己のプライドを背負って戦略を練り、その努力を最大限に盛り上げるために、キャスターたちが徹底的な打ち合わせを行っている。
 こうした話を伺え、筆者は今後のプレイとともにプロシーンの観戦がますます楽しみになった。

 インタビュー中に終始一貫していたのは、Evi選手が楽しそうに話してくれたことだ。彼はとにかくゲームが好きで、オフのときにはチームメイトと一緒にほかのオンラインゲームを楽しんだり、自作でゲームを作ったりすることさえあるという。

 そんな筋金入りのゲーマーであるEvi選手が、「これなら人生を懸けてもいい」と考えるほど「ハマった」ゲームが『LoL』だった。ただ強いだけでなく、これほどひとつのゲームを愛している人に出会ったのは、筆者にとっては初めてのことだった。

 彼が話すとおり、『LoL』は取りかかりにクセのあるぶん、ハマる人は本当にハマるタイトルだ。無料でプレイ可能なので、このインタビューで気になったのなら、ぜひ一度試して欲しい。
 ……ただし一度ハマるとズブズブ沼にハマってしまうので、受験や就活といった差し迫った課題がない方のみ挑戦してほしい。

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個人ゲームメディア「ゲーマー日日新聞」でゲームの批評とか書いてます。何でも遊びますが、深いコクのあるゲームが大好物です。でも古い銃がたくさん出てくるゲームにはすぐ惚れます。
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