「ゲームシナリオ制作会社」ってそもそもどんな仕事をしているの? ゲームシナリオ制作専門会社の社長たちが語る、業界のリアルな実情

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「3年かけようが5年かけようが、育たない人は全然育たない」という難しさ

真弓氏:
 新人育成の話でみなさんに聞いてみたかったんですが、シナリオ制作のノウハウを社内に共有する方法って何かあったりします?

重馬氏:
 しゃべるしかないよね。

むらさき氏:
 話して直す(苦笑)。

日暮氏:
 (笑)。まあ、すごくアナログな方法しかないかな。

むらさき氏:
 分かってる人の下で書いてもらって、分かってる人が直して。で、その差分から学んでもらって。それを何度やってもあんまり精度上がらなかったら、「ごめんなさい」ですね……。

日暮氏:
 うんうん。

真弓氏:
 シナリオはどうししても、「8時間働いたらこれだけのものができます」というような世界ではないですもんね。

重馬氏:
 ですね。僕たちもそれでしか育たなかったので。

日暮氏:
 時間になったら帰ります、ではやっぱり難しいですよね。

むらさき氏:
 そのへんがやっぱり、他の業種と違うところなのかなと。「3年かけようが5年かけようが、育たない人は全然育たない」というところが、ライター業界の難しさかなという気がします。
 誰でもライターになれるなら、新人をいっぱい雇ってるシナリオ制作会社がもうとっくに我々を駆逐するぐらいの最大手になってても、おかしくないじゃないですか。

真弓氏:
 難しいなあ。そうなんですよね。できる人はできるんですけど。

日暮氏:
 それはねえ、ほんとそう。

真弓氏:
 うちの取締役の北岡が優秀なシナリオライターで、ノウハウを言語化するのがすごくうまいんですよ。でもひとりひとりにそれを教えていくというのは、すごくコストがかかることなので。

日暮氏:
 コストはデカいですよねえ。ひとりひとりに教えたとして、やっぱりできない人はどうしてもできないというところに返ってきますし。

真弓氏:
 余談ですが、その北岡が9月にレプトンのゲームシナリオのノウハウをまとめた『ゲームシナリオ入門―基礎知識から設定・キャラクター・プロット・テキストの技法まで』という本を出すんですよ。ゲームシナリオの技術に興味がある人には本当に役立つと思います。よければ是非(笑)。

重馬氏:
 おお。

むらさき氏:
 買わせていただきます(笑)。

──宣伝入れさせていただきます(笑)。

2021年9月15日に発売予定の『ゲームシナリオ入門―基礎知識から設定・キャラクター・プロット・テキストの技法まで』

業界団体「日本ゲームシナリオライター協会」の設立により、文美保険に入れるように

日暮氏:
 新人教育の話でいうと、以前はゲームシナリオライターの交流会もあったんですが、もう1年以上途絶えちゃってますね。

──その交流会とはどういうものだったのでしょうか?

日暮氏:
 ああ、そうですね。シナリオライターって普段から家にこもる人たちが多いこともあって、わりと定期的に交流会みたいなものを開いていた経緯があるんですよね。誰が始めたかというと、ちょっと分からないんですが。

重馬氏:
 いつの間にか、あっちこっちでやってた印象はありますね。

日暮氏:
 うちも150人とか200人ぐらいのライターさんたちを集めて、忘年会という体ではあるけど一応業界交流会みたいな形にしてやってたんです。
 うちはハブ的な役割ができれば、いろんなとこに繋がりができて、今後の仕事に繋がればいいなぐらいな感じで。月光さんのところでもやってましたよね?

重馬氏:
 ええ、Qualia Writersの下村(健)君とかも開いてましたね。あと、女性ゲームシナリオライターの間でも交流会の歴史がけっこうあったはずです。

真弓氏:
 うちも2019年に関西シナリオライター交流会を企画しました。関西の交流会はあまりないので、リアルで集まれる状況になったらまた開催したいですね。

日暮氏:
 やっぱりみんな「フリーのライターさんの知り合いを増やしたい」というのはあるんですよね。いつどんな仕事があるか分かりませんし、悪い言い方をすると「手駒を増やしたい」みたいな(笑)。

重馬氏:
 ありますね(笑)。

むらさき氏:
 まあでも、直接お話ができる機会ってすごく大事ですから。

重馬氏:
 日本ゲームシナリオライター協会も、そもそもはゲームシナリオ会社の交流会から始まりましたからね。10年くらい前でしたっけ。

──日本ゲームシナリオライター協会の設立は、日本のゲームシナリオ業界でも重要な出来事だったんですよね?

重馬氏:
 そうですね。交流会で「いやー、業界団体ほしいよね」という話があったんですよ。
 でも、ぶっちゃけめんどくさかったし、そんなことよりも目の前の仕事が忙しくて……(笑)。

真弓氏:
 (笑)。誰もがそう思いますよね。

日暮氏:
 ただやっぱり、「業界団体は必要だよね」というのはみんな薄々は気付いていたんですよね。

重馬氏:
 2017年ごろにシナリオ需要がものすごく増えて、ゲームシナリオライターもとても増えていった時期があったじゃないですか。なおかつ、昔からやってる人たちはもう高齢化が進みつつあったのもありますけど、特に健康保険の問題が大きくて。

真弓氏:
 昔はシナリオライターと言えば、国民健康保険しか入れなかったんですよね。

重馬氏:
 ええ。だから「文美保険【※】に入りたいよね」という話もあったんですよ。だけど、ゲームシナリオライターとして既存の協会に入るのはハードルが高かった……。
 「今ウチの業界はこれだけ広がってるんです」みたいな話をしても、業界団体がないと政府は把握してくれない。団体がないってことは、その職業は「ない」も同じなんですよ(苦笑)。

※文美保険
文芸・美術といった業種の従事者を組合員とする健康保険組合『文芸美術健康保険組合』のこと。所得にかかわらず保険料が一定と言う特徴があり、国民健康保険より大きく保険料を下げられる場合がある。

日暮氏:
 だから、クールジャパン構想なんかで海外案件が増えてきたこともあって、日本側の窓口があったほうがいいんじゃないかというのも話してましたね。

重馬氏:
 そしたら僕が知らないうちになんか、根回しが済んでたらしくて(笑)。

日暮氏:
 ええ。なんとか重馬さんに気持ち良く引き受けていただけるように、いろんな人が裏からいろいろ手を回して、逃げられないようにして「よろしくお願いします」という(笑)。

むらさき氏:
 すごい(笑)。でもこわい、こわい。

日暮氏:
 まあやっぱりキャリア的にも、ポジション的にも適任かと思いますよ。

真弓氏:
 いやほんと、シナリオライターってトップに立ちたくない人ばっかりですからね(笑)。
 だいたい人の面倒見が良くて、損をするタイプの人が会社の代表になってるパターンが多い気がします。

重馬氏:
 いや本当に、団体のトップとかいいことないですよ。
 ある日、某社さんに「ちょっと相談がある」と言われて呼ばれて行ってみたら「あなたは日本ゲームシナリオライター協会の責任者でしょ」と言われて。
 そうしたら「とあるシナリオ会社に依頼したらクオリティが酷いものが上がってくるんだが、ゲームシナリオライターとはそういうものかね」と真面目な顔で詰め寄られました(笑)。

真弓:
 (笑)。いや笑い事じゃないですね。

重馬氏:
 そもそもその会社って日本ゲームシナリオライター協会に加盟してないんですよ。そりゃもう知らんがなと(笑)。

むらさき氏:
 次は「ぜひ加盟会社から選んでください」と言いましょう(笑)。

真弓氏:
 逆に営業ができるかもしれませんね。

「大きな企業の社員ライターになること」がゲームシナリオライターの理想!?

──最後に、ゲームシナリオ業界今後の展望や、これからゲームシナリオ業界を目指す方への助言といった観点からお話をうかがえないでしょうか。

重馬氏:
 この間、日暮さんに聞いた話だけど。今のゲームシナリオライターを目指す人たちの「アガリ」って、会社に就職することじゃないかなというのがあって。
 ぶっちゃけますが、「大きな企業の社員ライターになること」が、ゲームシナリオライターの理想じゃないかって(笑)。

日暮氏:
 だから、新人さんからも「何を書きたい」とか「こういうものが作りたい」じゃなくて、「サイゲームスさんに入りたい」というのを聞くようになりまして(笑)。

重馬氏:
 実際、何年か前から若いライターさんと話してて「何が書きたいの?」と聞いた時に「何でも書けますよ」とか「何でも好きです」という返答が増えたように感じますね。
 「何が書きたい」「何が好き」というのをあんまり表に出さなくなったなぁとは思ってますね。とはいえ、それが悪いと言いたいわけではないんですが。
 シナリオライターってやっぱりオーダーに合わせることが第一に求められるので、そうなっちゃうところはありますから。

日暮氏:
 それで最初に何かポンと評価されたりするものがあると、ずっとその仕事ばかり来るパターンも多いですよね。
 僕自身も正直、ギャルゲーとか趣味としては全然やってなかったんですが、最初に書いたものの評価が良かったせいでそういう人になっちゃったので。

むらさき氏:
 「なんでも書きますよ」と言ってる人は高確率で、自分が何が得意だったり好きだったりが分かってないだけじゃないかなって気もしますけどね。たぶん、書いたことないから判断がつかないだけで。自分なんか、今でも相当仕事は選んでますから。

真弓氏:
 日暮さんみたいに「やってみたら評価された」ことは多々あるんですよね。まあそういう意味では、まずたくさんライティングの仕事があって、しかも内部で交流できる会社に入るというのは正しいと思います。

 サイゲームスさんのように、最近は内部にシナリオチームを抱えてるゲーム会社もありますし。だから我々シナリオ制作会社としてもちゃんとノウハウ共有して、交流もしてというのをやっていかないと、内部にシナリオチーム持ってる会社に勝てなくなっちゃうんじゃないかなという怖さを最近感じてますね(苦笑)。

むらさき氏:
 今後どんどん淘汰が進んで、ソーシャルゲーム1本作るのに「20億円必要です」みたいな時代になったら、本当にサイゲームスさんみたいなクラスの会社じゃないと生き残れませんよね。

 逆に大きな会社であれば外注する必要がないというか、「必要なら採ればいいじゃん」ってなりますし。そうなってくるといよいよ、小さいシナリオ会社の需要よりも、中に入って働いてくれる正社員なり、契約社員なりの需要が上がるというのは、ありうる未来だなとは思います。

真弓氏:
 その中で我々がやっていくにはもう、「自分たちに頼むことに価値がある」というブランディングをしていくしかないんだろうなと。

むらさき氏:
 そうですね。もう「他のグループでは作れない」というものを「作れる」というところをひとつアイデンティティにして生きていくというのはひとつの戦略なのかなぁと。
 あとはもうひとつは、チームごとどこかの傘下に入るというのも、選択肢になってくる気もしますね。

真弓氏:
 もしくは、低単価で試しにいろんな「モノ」が作れる場所が出てくれば需要が出ますよね。スマホゲームはもうすごく大型化しちゃいましたけど、たぶんそのうち、かつてのDSやフィーチャーフォンみたいな場所がまた出てくるんじゃないかなと思うんですよね。

重馬氏:
 そういう場所でいうと、『天穂のサクナヒメ』みたいなインディーゲームは、わりとプログラマーひとりでやってるようなところもいっぱいあって、シナリオを必要としてる場合もあるんですよね。

(画像は『天穂のサクナヒメ』公式サイトより)

真弓氏:
 そうですね。実際、インディーゲーム開発者の方から相談が来ることもありますよ。

日暮氏:
 あとは、最近でいえばASMR【※】音源とかの音声台本の脚本を書いてくれっていうご依頼はすごく来ます。

※ASMR
Autonomous Sesory Meridian Responseの略(直訳すると自律感覚絶頂反応)。一般的には脳に心地よい反応・感覚と認識されることが多い。

むらさき氏:
 ああー。

重馬氏:
 来ますねえ。すごく来ます。

日暮氏:
 あれは本当に低コストでできて、かつそれなりの小銭が稼げるので今いろんなところが入ってきてますね。

ゲームシナリオ業界では、「若いことが武器になる」

──たとえば今後ゲームシナリオライターになりたい方にアドバイスがあるとすれば、どういったものになるでしょうか。

重馬氏:
 これからたとえば新卒でゲームシナリオライターになりたいという場合、「どこの門を叩けばいいか」というとなかなか難しいですよね。

真弓氏:
 そうですね。教育コストの話にもなるんですが、うちみたいな小さい会社は経験者しか取り辛いというところは正直あります。先ほどもお話に出たように、3年やっても芽が出ない人は出ないという職種なので。

──となると、その最初の経験を積むのがネックになりそうですね。

真弓氏:
 そこはもう、ライターを社員として雇ってる会社に就職するのが、たぶん今は一番良いんじゃないかなと。ライターの職種があるところだったら、別にゲーム会社じゃなくてもいいんです。社会人経験は積んどいたほうが良いですから、そういう意味でも「まず会社に入る」という。

重馬氏:
 あとは社会的に「ゲームシナリオライター」という認知度は非常に低いというのは覚悟しといた方がいいかもしれません。

むらさき氏:
 それはそうですねえ。

日暮氏:
 まあ相変わらず、一般の方からしたら僕らは「何してるかよく分からん仕事」ですよ。うちの親父なんか、未だに僕に「公務員になれ」と言いますから(笑)。

一同:
 (笑)。

真弓氏:
 月光さんが昔から頑張ってレールを敷いてくれたおかげで、今の状況があるので。まあそういう意味では、昔よりかは市民権を得たというか、立派になったとは思うんですけど。

むらさき氏:
 ユーザーさんにもよるのかな。昔からゲームやってらっしゃる方だったら、「シナリオは大事」って思ってくれるし。
 特に今の若い世代なんかは、オタク偏見がないって聞くじゃないですか。そういった世代がさらに親になったら、またゲームシナリオに対する価値観も変わると思うので。

 そういう意味では、業界内における地位とお客さんから見た時の地位というのは、ちょっと若干ズレがあるかなと思います。業界に関して言えば、『FGO』の影響はまだまだ大きいですよね。

日暮氏:
 うん。『FGO』の存在感はまだすごく大きいですね。

むらさき氏:
 業界の中でも数字を見せて納得してもらわないとゲームシナリオの地位は上がらないわけですが、それで一番数字を出したのが『FGO』なので。『FGO』というか奈須先生の影響といったほうが正しいかもしれないですが。

真弓氏:
 「『FGO』みたいなの書いてよ」は、この業界にいたら誰しもが一度は経験しますよね(笑)。

むらさき氏:
 あと若い人に思うのは、絵が描けないからとか、他に選択肢がないからライターを目指すというのがあって。じつは自分もそのクチだったので、偉そうなことは言えないんですけど……。

日暮氏:
 消去法で物書きになる、ですね。

むらさき氏:
 昔はともかく、今はもうそこそこ競争率も高い業界なので、若い方はちゃんと自分のやりたいものを目指したほうがいいんじゃないかなと。
 「絵もプログラムもダメなのでライターやりたい」という人は「ゲームシナリオやりたい」という人に全然勝てないんですよ。好きで文章を書いてたり、「普段からめっちゃ本読んでます」みたいな人はゴロゴロいますし、結局その人たちに勝たないと仕事は取れないですから。

 それにくわえて、今は小説投稿サイトでランキング上位を取ったり書籍化してたりする人が、普通に「ライター仕事もやってみたいんだよね」って感じで参入してますからね。そういう文章のプロやハイアマチュアを押しのけて仕事を取らなきゃいけない。

真弓氏:
 おっしゃるとおり、消去法で来るのは本当におすすめできないですね。
 ただ「文章で食っていきたい」のであれば、今は出版業界よりゲーム業界のほうが元気だというのは考え方としてアリだと思います。
 出版では企画通らないんだけど、ゲームの現場では重宝されるという方もいるので。

むらさき氏:
 ラノベはとくにそうですけど、すごく流行に左右されるんですよね。それと比べると、ゲーム業界のほうがわりと流行が長かったり、多様性があったりしますね。

真弓氏:
 今なんて、その時代に生きていて、流行り廃りの中に乗っているという「若さ」があるだけで武器になると思うんですよ。それでもうあとは身ひとつで、真面目にやれば大体のことはものになると思います。

日暮氏:
 俺らなんか、意識して若い子の話聞いて「えっ、最近学校の給食ってそんなことなってるの」みたいな情報を一生懸命仕入れないといけない(笑)。

真弓氏:
 エンタメは歳を取れば取るほど、そこのギャップを埋めるのが大変になるわけじゃないですか。だから「若い」というだけで武器なんです。

──「若いことが武器になる」というのは、ゲームシナリオ業界に特有の部分もあるかもしれませんね。

日暮氏:
 今の若い人ってSNSやカクヨムや『小説家になろう』とかで、「文章を書いて人に見せる」ことに、もう本当に幼いころから慣れてる世代じゃないですか。
 だから、今のおっさんたちよりも全然文章上手い人がいても全然不思議じゃないし。そこは「ずるいな」とも思いますね(笑)。

真弓氏:
 今のコンテンツってすごく高度だし、クオリティも高いですよね。ハズレが少ない。だから必然的にハードルも高くなったでしょうし。
 実際、今の若い人は優秀な方が多いですよ。作るモノのクオリティのアベレージも高くなってるんじゃないかなと思います。

むらさき氏:
 良質なコンテンツをいっぱい見てますからね。ただ、最近だと逆に選択肢が多すぎて、自分の好み以外のものをあんまり見ていない人もいて。それはちょっともったいないかなと思いますね。

真弓氏:
 ああー。SNSで流行ったものとか、みんなと同じものを見てるってのもけっこう多いですね。たくさんコンテンツがあるのに、流行ったらみんなそっちに行っちゃうから、逆に自分の好きなものが見えなくなっていくという。

日暮氏:
 もちろん、共通の体験として「みんなと話すためにこれを見る」いう人たちも増えてるとは思うんですけどね。まあ物書き志望なら、それを見たうえで他のものもいっぱい見とこうねというのはありますね。

むらさき氏:
 そういう意味では、「これからライターとして本気で身を立てたいぞ」というんだったら、まずは「いっぱい見る」ことですかね。

日暮氏:
 上の人たちが「見てる、読んでる」というのはもうむしろ当たり前でしかないので。そこはもう武器になるとかじゃなくて、武器を持ってない状態になってしまうので、危ないですね。

むらさき氏:
 コンテンツを楽しめないんだとしたら、死ぬほど大変になると思いますね。今はどの仕事を受けても、何かしらの大規模コンテンツに絡んできますから。
 高確率でその作品を短期間で摂取しろみたいな、下手すると参考資料を10冊20冊出されて当たり前に「じゃあ3日で読んどいて」という話もありますし。

真弓氏:
 楽しんでやってる人には勝てないですね。

日暮氏:
 重馬さんのところとか「『テイルズ』シリーズ全部やってる人募集」って毎年言われてますよね(笑)。

真弓氏:
 でも、考え方によっては有利ですよね。『テイルズ』シリーズを全部遊んでるだけで、チャンスがひとつもらえるわけですから。

むらさき氏:
 僕らの世代は、流行ってるものってみんな当たり前に見てるんですよね。でも今って、コンテンツの量が多すぎるから、みんなが知ってるようなタイトルでも「やってるやつは周りにいないんだよね」みたいなことはいくらでもある。

 そういう意味でも、「コンテンツを摂取していること」がプロフェッショナルの条件になりつつあるというのは感じますね。(了)


 ゲームシナリオの需要は時代によって変化してきた。ゲーム媒体がカセットからCDへ移行し、RPGで求められるシナリオが増大した結果、月光のようなゲームシナリオ制作会社が生まれた。フィーチャーフォン、ニンテンドーDS、スマートフォンの大ヒットによる新たな物語需要が生まれ、レプトンやエレファンテ、そしてテイルポットといった新鋭のシナリオ制作会社が生まれた。

 シナリオライターが増えていった結果として横の連帯が生じ、業界団体が生まれ、ゲームシナリオライターが文美保険に加入できるようにもなった。

 もっとも業界が大きくなった結果として、別の問題も生じ始めている。

 たとえば新人育成。ライター業に限った話ではないが、クリエイティブな仕事において新人育成は難しい。長年シナリオライターを続け、あるいは後身を育成してきた彼らが度々口にした「3年やっても芽が出ない人は出ない」という言葉は非常に重いものとして受け取るべきだろう。
 また、「シナリオ会社に制作を委託したがクオリティが低い」と評される事例も散見される。これは業界を揺るがしかねない由々しき事態だろう。

 だが、だからこそ逆に今後生き残ることができるのは、新人育成の手法を確立させ、クオリティが高いシナリオを安定的に供給できる組織となるのかもしれない。

 それは出席者の言葉にあったように、ゲームシナリオ制作会社ではなくゲーム開発会社内にあるシナリオチームとなるのかもしれない。いずれにせよこの淘汰は、恐らくゲーム業界にとってはプラスに働くはずだ。いちゲーマーとして、今後も良質なゲームシナリオが提供され続けることを祈りたい。

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著者
師走トオル
作家、ゲームシナリオライター。
プログラマー、プランナーとしてゲーム業界に勤務した後、2003年に法廷ミステリー『タクティカル・ジャッジメント』にて富士見ヤングミステリー小説大賞準入選。同作にて作家デビュー。
主な著作に「火の国、風の国物語(富士見ファンタジア文庫)」「僕と彼女のゲーム戦争(電撃文庫)」「バイオハザード7 レジデントイービルドキュメントファイル」「フリーランスが知らないと損する お金と法律のはなし」など。
編集
ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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