これまでに生み出したクイズの総数は24万以上──『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』はなぜグランドフィナーレという区切りをつけて新生する必要があったのか? ゲームの中で「マンガや小説を連載する」という異例の試みを実現した背景を運営チームに聞く

 『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』(以下、『黒猫のウィズ』)が、2021年7月にストーリー本編の完結、グランドフィナーレを迎えた。 

 同作は、コロプラが運営するモバイル向けゲームとして2013年にサービスを開始。およそ8年にわたり続いた主人公の「君」と魔導士「ウィズ」をめぐる物語が幕を閉じ、現在は新たな冒険の再スタートに向けて構想が練られている。

 グランドフィナーレを祝い、YouTubeで配信された生放送特番は、記事執筆時点で10万回以上の再生数を誇っており、幅広い世代に親しまれる同作の根強い人気を伺わせるものとなった。完結を記念して公開された特設ページでは数多くの思い出コメントがユーザーたちから寄せられ、これまで歩んできた歴史の重みとプレイヤー層の厚さを物語っている。

(画像は「君とウィズの旅を語ろうキャンペーン 旅語りツイート」特設ページより)

 そこで弊誌では、コロプラの運営チーム2名にメールでのインタビューを敢行。『黒猫のウィズ』開発からリリース初期に作品の演出やビジュアル面を手がけた角田亮二氏にはサービス開始当時の背景を、運営ディレクターとプロジェクトマネージャーを兼務するN氏には“クイズRPG”というジャンルを掘り下げ牽引してきた運営の舞台裏や、新たに取り組んでいるマンガや小説へのメディアミックスについて具体的な狙いや経緯を尋ねた。

 驚くことに、この8年間で『黒猫のウィズ』が生み出したクイズの総数は「24万問」にも達するそうだ。ざっくり数えても、日に82問の新作クイズを考案してきた計算である。そうした熱量を支えてきた運営チームの想いとはいかなるものだろうか。未踏の分野に勝機を見出し、拡大し続ける同作の軌跡と現在の挑戦に迫る。

文・編集/dashimaru


未知のジャンル“クイズRPG”を開拓。幾度もの修正を重ね作り上げたヒット作の黎明期

──まずはおふたりの経歴と、『黒猫のウィズ』にどのように関わってこられたのかを具体的に教えてください。

角田:
 私は現在36歳なのですが、入社前は映像業界で3DCGのクリエイターとして働いていました。『黒猫のウィズ』には開発時にクリエイティブディレクターとして参加し、バトルやキャラクターデザインを含む演出と総合的な画作りを担当しています。サービス開始後は運用にも1年ほど携わっていました。コロプラではほかにも『白猫プロジェクト』『Rumble City(ランブル・シティ)』『PaniPani-パラレルニクスパンドラナイト-』といったゲームを手がけています。

角田氏

N:
 2018年から『黒猫のウィズ』に参加し、PM兼ディレクターとして全イベントのディレクションを行っています。前職もゲーム業界出身で、コロプラでは『ドラゴンプロジェクト』に関わっていました。

N氏(画像はイメージ)

──2013年に配信が始まった当時、モバイル向けゲームにはさまざまなジャンルや内容のタイトルがありました。そんな中で『黒猫のウィズ』はいかにヒットしていったのでしょうか? また、“クイズRPG”という分野にどのような勝ち筋を見出していたのか、お聞かせください。

角田:
 ありがたいことに、サービスを開始してから月を追うごとにユーザーの方々が増えていきました。大きなきっかけとなったのは、テレビCMの放映ではないでしょうか。

 “クイズRPG”というジャンルを発案したのは弊社の社長の馬場です。テレビに占めるクイズ番組の割合の高さに着想を得て、「人はクイズが好き」という客観的事実をもとに、当時流行していた「カードバトル」をかけ合わせたオンラインゲームを作ろう! と社長みずから開発チームにプレゼンしてくれました。その話を聞いた時からヒットの予感はありましたね。

──運営を開始した直後の手応えや、当時のユーザーの反応はどのようなものだったのですか。

角田:
 クイズ形式によるバトル体験をはじめ、本格的な物語要素がユーザーの方々には好評でした。エリアの攻略に関しては浅井Pによるチューニングで難易度が高く(笑)、なかなかクリアできないという声が多かったです。そのためサービス開始後は敵の強さなどを何度か見直したのを覚えています。

(画像は「『黒猫のウィズ』グランドフィナーレ」特設ページより)

 ネイティブ3Dのオンラインゲーム開発は初めてだったこともあり、当初の品質は「完璧だった」とは言い切れないですね。サービス開始から1ヵ月の間に十数回以上もバグ修正のアップデートを行い、どこかのゲームメディアにも取り上げられた記憶があります……その際はご迷惑をおかけしました。

考えたクイズの数は「24万問」──8年の歴史が生んだ『黒猫のウィズ』らしさとは

──『黒猫のウィズ』はどういったユーザー層で構成されているのでしょうか? また、運営を続けていく中で起きた変化や、 ほかのゲームと比べてどのような点がユーザーに受け入れられたポイントだったのかをお聞かせください。

N:
 おもなユーザー層は30代の男女ですが、40代以上の割合もほかのゲームに比べると多く、幅広い年齢の方々に遊んでいただいております。運営面での変化としては、初期にはライトなクイズゲームとして誕生したものの、本格的なシナリオが展開されていく中で「よりRPGらしい体験を楽しみたい」という方が増えていったようです。

 サービス開始時期には、誰しも興味のあるクイズが「スマホで楽しめる」という点が多くのユーザーの皆さまに受け入れられたきっかけだったと思います。またその後、さまざまな異界を舞台とする読み応えに富んだ物語を展開していった点が、他のモバイル向けゲームとは大きく異なる特徴でしょうか。

──「クイズRPGを8年にわたり運営する」とは、具体的にどういうことだったのですか。ちなみに、これまでに作ったクイズの総数は何問なのでしょうか。

N:
 “クイズRPG”と言う以上、「クイズ」と「RPG」の融合体験を作り続けないといけません。つねに新しいクイズの問題を考え続け、RPGとしても新たな世界感やシナリオ、キャラクターを生み出し続けることになります。私もいろいろなモバイル向けゲームの運営に携わってきましたが、各イベントにここまで大きな力を注いでいるタイトルは非常に珍しいと思います。

 8年間作り続けたクイズの数は、累計で24万問ほどです。

(画像は『黒猫のウィズ』 公式サイトより)
クイズの形式も幅広く、さまざまなジャンルから出題される(画像は『黒猫のウィズ』 公式サイトより)

──運営型のクイズゲームを継続するうえで、どういった独自の工夫を施されてきたのでしょうか。運営にあたっては多くの課題もあったかと思いますが、それらをいかに克服してきたのですか?

N:
一般的なゲームでは類似タイトルの流行要素を取り入れるといった形が目立ちますが、“クイズRPG”というジャンルは希少だったため、自分たちで模索していかざるを得ないという状況でした。

 「クイズ」の特性としてテキストベースでコンテンツの追加が可能なため、たとえば「令和」の年号が発表された当日に関連する問題を登場させたりといった、『黒猫のウィズ』ならではの話題を呼ぶような運営方針を意識してきました。

 課題については数え切れない量を経験しています。イベントリリースが遅延するほどにギリギリの運営だった時代や、人気イベントの「黄昏メアレス」が完結し新作づくりに頭を悩ませた時代、そして今回のフィナーレに向けて長い年月をかけて準備に取り組んだ時代など、振り返ると多くの困難がありました。お話しできない裏事情も多く、決して素晴らしい運営だったとは言えない部分もありますが、これまで遊び続け支えてくださったことに感謝しています。

※8年におよぶ歴史の数々は、特設サイトにて年表の形で振り返ることができる。

本編完結の節目を迎え、新たにマンガと小説のメディアミックスに取り組む理由

──完結後の新たな運営方針についてもお尋ねできればと思います。なぜグランドフィナーレを設けて区切りをつけようと考えたのでしょうか。また、9月中旬から始まった新体制の『黒猫のウィズ』について、どのように生まれ変わったのか、なぜ変える必要があったのかを教えていただけますか。

(画像は『黒猫のウィズ』公式サイトより)

N:
変わった理由としてはさまざまな事情があるのですが、ひとつにはメインストーリーが完結を迎えたためです。「ウィズを人に戻す」ことを目指して冒険してきた主人公の「君」が、目的を達成した後も以前と同様の日々を過ごすのは違うのではないかと思っています。

 新たな形で次の冒険へと向かう。その区切りをつけるため、再びスタートを切るという意味でも、グランドフィナーレという形式でこれまでの成功を祝福し、次に始まる旅路へのつながりとさせていただきました。

(画像は『黒猫のウィズ』公式サイトより)

 そしてその新たな冒険は、「君」と「ウィズ」がいない中で繰り広げられる、異界が交わる物語です。もともと交わることのなかった108の異界の精霊たちが交差し紡いでいくストーリーは、新たな魅力を提供すると考えています。

 また「黒ウィズクイズ」という、多くのユーザーの皆さまに遊んでいただいているコンテンツにも新たな問題を順次追加し、毎日でも楽しめるようアップデートを重ねていく予定です。

──マンガと小説の連載を始めたきっかけについて、マンガと小説という媒体を選んだ理由とは何だったのでしょう。また、マンガや小説には編集者が必須だと考えます。編集ができる人材をチームに加えるなど、スタッフ編成を変更されたのでしょうか。

(画像は『黒猫のウィズ』公式Twitterより)

N:
 まず前提として、諸事情もありこれまでとまったく同じ運用を続けるのは難しくなっていました。そんな中で、マンガと小説を選んだ理由ですが、ひとつには「8年間作ってきた『黒猫のウィズ』の異界の物語を形に残していきたい」と考えたためです。8年間作ってきた108の異界の物語は、そのまま消えてしまうには惜しいクオリティの作品も多いです。運営のスタイル上やむを得ないのですが、完結を迎えた作品はその時点からさらに広がるといったことはありません。

 別のメディアに展開をして、そうした作品が世に残っていく。そのような形を目指して行きたかったからです。

 もうひとつの理由としては、現在の運営スタッフの能力を活かせそうだったというのもあります。チームには小説の執筆経験を持つライターが多く在籍し、元マンガ家という出自のメンバーも複数おりました。編集のセンスに長けた者もいましたので、この体制なら実現の可能性があると判断しチャレンジに踏み切った次第です。

──マンガと小説、ミニイベントを並行して制作する現状は、単純に見ても労力が3倍になっているのではと推察します。またメディアミックス展開は『ポケットモンスター』などの稀なケースを除けば、かかる労力に比べて成功例が少ないという印象です。どういったところに勝ち筋を見出したのでしょうか。

N:
 イベントに関しては全体的な工数を減らしつつ、マンガや小説の発表に力を割けるよう工程を最適化しています。

 メディアミックス展開については、以前「アレス・ザ・ヴァンガード」というイベントで簡単なコミカライズに挑戦したことがあるのですが、その際のユーザーの皆さまからの反応や制作物の品質を見て可能性があると判断しました。

──マンガの制作過程について、現在公開されている「アレス・ザ・ヴァンガード」第1話のラフを見ながらお話をお聞かせください。

N:
 まずは既存のイベントストーリーを、編集者がページ数に対応した字コンテの形に落とし込んでいきます。そしてライターと話し合いながら仕上げた案をもとに作画担当が絵コンテを制作し、再び編集者とライターで確認。問題がなければ実際に描き進めるという方法を採用しています。先に原作のシナリオが存在する『黒猫のウィズ』ならではの制作過程だと言えますね。

──ユーザーの反応と今後予定している調整についてお聞かせください。

N:
 すでに「アレス・ザ・ヴァンガード」と「ぽっ!かみさま」の2作は2話目まで公開(インタビュー実施時点)となりましたが、どちらも好評の声をいただいています。調整したクイズパートに関しては復活を希望する意見も寄せられているので、そこをどう補うかをチーム全体で検討しているところです。まだまだ課題も多いため、ユーザーの皆さまの期待に応えられるよう改善に励んで参りたいと思います。

(画像は『黒猫のウィズ』公式Twitterより)

──最後に、ユーザーに期待してほしいことや今後の意気込みをお伝え願います。

N:
 つぎの9周年に向けて、また新たな企画をいろいろと練っております。これまでとは一味違うコンテンツの発表も考えておりますので、どうぞご期待ください!

──ありがとうございました。(了)


 インタビューを終えて感じたのは、『黒猫のウィズ』はとても真っ当に運営されているモバイル向けゲームだということだ。「クイズ」と「RPG」の融合という試みは、ともすれば奇抜さを狙った変化球のようにも見えるが、ユーザーのストライクゾーンに向けて何度となく球を投げ続けてきたからこそ、ここまで広く愛される作品として強固なメジャー性を獲得したのだと思う。

 冒頭でも引き合いに出したが、やはり「24万問」という設問数は並みではない。最新の時事にも気を配りつつ、古今東西のあらゆるテーマからクイズを生み出す運営チームの手腕は、まさに魔法使いの如しと言えるだろう。

 そうしたコロプラはいま、ゲームというジャンルの垣根を越え、マンガや小説といったこれまでと異なる媒体で同作の豊かな物語世界を伝えようとしている。彼らが放つ新たな挑戦が私たちを再び魅了すると信じ、その冒険の行く末を見守りたい。

ライター
フリーランスの翻訳者を経て、2021年より編集アシスタントとして加入。京都の町屋で猫と暮らす。
Twitter:@dashimaruJP
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