ゲーム業界に入れる学生は5%~10%!?そんな現実に対して、学校も企業も教えてくれないことを漫画で伝えたいとゲーム会社が“お仕事漫画”を作った結果、「読むと胃が痛くなる」と好評でドラマ化される

 ゲーム業界を題材としたマンガ『チェイサーゲーム』のドラマ版がテレビ東京で現在放送中だ。

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 ゲームをモチーフとしたドラマと言えば、2013年の『東京トイボックス』『ノーコン・キッド 〜ぼくらのゲーム史〜』などがあるが、それでもここまでゲームにフィーチャーされたドラマが地上波で放送されるのは久々だ。

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画像はサイバーコネクトツー公式サイトより

 『チェイサーゲーム』は『.hack』シリーズや『NARUTO-ナルト- ナルティメット』シリーズの開発でおなじみのサイバーコネクトツーが手掛けるマンガで、同社の社長である松山洋氏が原作を務める。

 作中の舞台もサイバーコネクトツーそのもので、同社の社員をモチーフとしたキャラクターが多数登場するなど、かなり本格的なゲームのお仕事漫画で、読むと胃が痛くなると評判だ。

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渡邊圭祐さん

 ドラマはテレビ東京「木ドラ24」の枠で放送されており、主演は『仮面ライダージオウ』で俳優デビューした渡邊圭祐さん。これが初主演ドラマとなる。

 ゲーム会社が自社を舞台としたゲームのお仕事漫画を作り、しかもそれがドラマ化されるという中々の出来事が今まさに起こっているわけだが、なぜ『チェイサーゲーム』はドラマ化されることになったのだろうか。

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左が松山洋氏

 そこで、原作を担当したサイバーコネクトツーの松山氏に作品を作った理由やドラマ制作について話を訊いた。そこから見えてきたのは、「業界を目指す若者たちに、厳しい現実を伝えるため」という松山氏の熱い想いだった。

文・取材/和久井 香菜子


ゲーム業界を目指す学生が業界に入れるのは5%から10%

──『チェイサーゲーム』は松山さん原作ですが、この作品を作った理由はなんですか?

松山氏:
 ゲームクリエイターは昔から、学生や子どもたちが将来なりたい職業のうち、トップ5に入るほど人気です。でもみんな憧れるばかりで「どうすればゲーム業界に入れるか」はあまり教えてもらえないんですよ。

 一方で、企業側は待っていても応募が来るから、その中から「採用に足る人間だけを採用していけばいい」という姿勢なんです。でも私は昔からそれはフェアじゃないと思っていたんです。

 ゲーム制作を学べる専門学校や大学って、だいたい日本国内で120校以上あると言われていて、業界を目指す学生さんは数万人いるんですよ。でもその数万人の学生さんの中で実際にゲーム業界に入るのって、だいたい5%から10%でして。だから90%以上の人は業界に入れないんです。

──そこの差はなんでしょうか?

松山氏:
 90%以上の人は、あこがれだけで終わってしまっている。逆に残りの5%から10%の人たちは、結構早い段階から覚醒しているんです。

 1万時間の法則って言うじゃないですか。プロになろうと思ったら、1万時間くらいの修練が必要だって。プロ野球選手になるのに、大学を卒業してから「なってみようかな」と思う人はあまりいないじゃないですか。

 ほとんどの人は高校野球で実績を作っているし、中学や小学生の早い段階から野球に目覚めて、その道のプロを目指して積み重ねてきて、結果的にプロになる人が多いですよね。

──テニスも、今や小学校に上がるくらいから始めないとプロにはなれないと言われています。

松山氏:
 それと一緒で、ゲーム業界も、これはうちの実績ですが、毎年採用している20人〜30人のうち、めちゃくちゃすごい能力者と、だいぶ頑張らなきゃいけないギリギリ合格した人たちがいるんですよ。

 もちろん人によっては会社に入ったあとで、きっかけを作って下からはい上がってくる人間もまれにいます。でもほとんどはこのピラミッドの通りなんです。入社から年数経っても、この差はどんどん開いていくだけなんです。

──宝塚歌劇も、トップになる人材は入団前から決まっている傾向があります。それは贔屓ではなく実力の差はなかなか埋まらないということなんですね。

松山氏:
 上位の3人が『BLEACH』で言うところの「特記戦力」だとしたら、彼らは小学校高学年くらいから親のパソコンをいじっているんです。中学くらいからCG描いて、自分で作品を作って賞を取って、高校でも変わらずものを作っている。就職するまでにだいたい6年から7年くらいゲーム制作をしているんですよ。

 スタート地点から違いますよね。高校までは普通に生きてきて、専門学校や大学に入ってからゼロから始めても、かなり出遅れていると自覚しなきゃいけないんですよ。

 専門学校の2年間で7年分の努力を圧縮することは、常軌を逸した努力をしないと不可能なんですね。だけどほとんどの専門学校が、ゼロから始めても間に合いますよという言い方しかしない。

──そう言わないと学生を集められないですものね……。

松山氏:
 もちろん、常軌を逸した努力さえすれば間に合うんですよ。ただ、これはどういうレベルかというと、昭和のマンガにあるような血尿が出るほどの努力です。他の人間の7年間をなめるなよという話ですよ。

 それで他の人間と同じように出遅れている人間が普通に生きていて、追いつけるわけがないじゃないですか。可能性がゼロとは言わないですけれど、どちらのほうが近道かというと、言わずもがなじゃないですか。

 なので、スタートするのは早いほうがいいんです。そこに気付いていない時点で、それほど好きじゃないですよ。

──幼いうちから始めた方がいいのはスポーツや芸ごとだけではないのですね。

松山氏:
 好きな人は観察するから、もっと早くから気付くんです。ゲームで遊んで、面白かったらそこで終わらずに「なんで面白いんやろ」「どうやったらこんなに面白くできるんだろう」「こういったところに秘密があるのかな。よく見ると、ここのモーションとここのモーションが違うな」「ここ一瞬、色が変わった」とか。「ここで一瞬、ストップがかかったぞ。これはなんだろう」と気になりだして、だんだん作っている人間のインタビューや動画を見るようになるんですよね。

 今だったら、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズの桜井政博さんがYouTubeを始めましたよね。そこでゲームの面白さの秘密とか、技術的なテクニックなんていうのを動画解説してくれていて、業界では1人残らず誰もが見ている。その話になって「ああ、あれね」という人と、「あ、そんなの始まっていたんですね」と言っている人では、もう全然立っているアンテナが違うんですよね。好きだったらアンテナに引っかかるんです。そうじゃないのは好きじゃないからなんですよね。

 これがどういうことかというと、みんな、憧れてはいるけどどうすればいいのかわからないんです。

──確かに、社会人としてどんな技術を身につければいいのかは、学生時代に教わった記憶がありません。

松山氏:
 ええ。CGをやるならこういう能力を身につけなきゃいけない、プログラムならこういうことが必要っていうのはあるんです。だけどそれを専門学校や大学、企業もなかなか教えてくれない。

 ゲームのクリエイターになるって、覚えなきゃいけないことが多いからすごく大変なんですよ。ゲーム業界の華やかなところだけを見ていてその気になってるし、「ゲームで遊んでいればお金もらえるんでしょう」くらいの感覚かもしれません。例えばマンガ家やアニメーターなら、絵を描かなきゃいけないじゃないですか。

 でもゲームなら、何となくゲーム好きだったらなれるんじゃないの? っていう感覚で目指している人がすごく多いんですよ。

──ライターになりたいという人も多いのでよくわかります。そんな楽な仕事じゃないし、技術もいるのになあと。

松山氏:
 仕事ってなんでもそうだと思いますが、苦しくて楽しくて苦しくて楽しいの繰り返しじゃないですか。綺麗なところだけじゃなくて大変なところもしっかり知ってもらった上で「ゲーム業界ってエキサイティングでおもろいところなんだよ」って知ってもらいたい。私の好感度なんかどうでもいいから、それをなるべく早く教えてあげたほうがいいんです。

仕事できない、約束守らない、無責任で嘘もつくスタッフがクビにならない理由

──確かに、それは現場の人に話を聞くのが一番いいですね。

松山氏:
 そういう背景もあって、毎年100校以上の学校で講演をやって、そういうことを伝えているんですけど、「マンガを読んだら大体そういうのは分かるよ」という作品を作ろうと思って『チェイサーゲーム』をつくりました。

 一方で『チェイサーゲーム』はエンタメですから、誰もが楽しめるお仕事マンガにしています。そのおかげか、ゲーム業界以外の方々からの反響のほうが大きかったですね。

──どんな反響だったのですか?

松山氏:
 仕事をしていれば、例えばスケジュールや予算、約束を守るのは当たり前じゃないですか。でもそれを守らない人がどの業界にもすごく多くて、不思議とそれが許されてしまっているんですよね。

 例えば『チェイサーゲーム』でいうと上田という入社歴20年以上の、仕事できない、約束守らない、無責任で嘘もつくキャラがいるんです。そういう人でも、クビにならずに働き続けられるのがすごいよねってよく言われます。周りはもちろん迷惑なんです。

──ですよね? ハラハラしながら読んでいました。

松山氏:
 でも長くいるって実はすごいことなんですよ。普通は居場所なくなりますよ。でも新人からしたら経験豊富な先輩なんですよね。で、業界のこと、会社のこと、多くのものを見て来ているんですよ。ゲーム業界ももちろん技術は必要ですが、それだけじゃダメなんで最後はハートや人間関係が大事なんです。そうなると通訳できる人が必要で、長くいる人間ってその通訳ができるんですよ。

 例えばうちの会社でよくあるのが、私や偉い役職の人がインタビューで何か答えたり、SNSなんかで情報発信したりしますよね。でもインタビュー記事だと、答えたものが全部載る訳じゃないじゃない。校正・確認があって、最適に編集された状態で載りますよね。そうすると、書かれていることがすべてのはずなのに、若い人間ほど曲解して「けどあれって実際はこういう意味ですよね」などと自分にとって都合のいいように解釈をしがちなんです。それを上田みたいな人間は「違うよ、おまえあれはねえ、ああいう意味で言っとんぜえ」みたいなことを通訳してくれるんです。

──本業以外で優秀な人もいるということなんですね、すごく意外です。

松山氏:
 その一方で、どこの会社にも魚川のような突出した能力者・天才肌の人も、実際にゲーム業界にいるんです。ゲーム業界の中の人からよく「うちの会社にも魚川いますよ」って言われました。でもそれより反響が大きかったのは上田ですね。多くの人たちから共感を得てるのは、そっちなんだなあと感じましたね。ただの嫌なやつなんていないほうがいいと思われがちですけれど、役職や職種に関係なく一人々に役割と意味があるんだなと思うんですよ。いろんな人たちから、結構ポジティブな意味で「うちにも上田いますよ」みたいなことを言われましたね。

 ちなみに漫画『チェイサーゲーム』の単行本なんですが100%は言い過ぎかも知れないですけど、どこのゲーム会社さんに行っても置いてあります。業界もののマンガってどの業界のものもあるじゃないですか。特にゲーム業界の今を描いていることもあって、結構皆さん読まれているみたいです。役職者の人が新入社員に「ゲーム業界ってどんなところかよくわかるから、まずこれ読んどけ」というような形で、教科書とは言わないですけれども、参考書的な形で会社に置いてくれているようで、狙い通りでよかったなあと思いましたね。

主演の渡邊圭祐は「魂のきれいな人」

──ドラマの制作とゲームやマンガの制作では作り方が異なったのではないですか?

松山氏:
 私自身は過去にアニメ映画も作ってきていますが、アニメやCGだと、脚本作業のあとに絵コンテを作るんですよ。その絵コンテに乗っ取って映像を作って仕上げていくんですけれど、ドラマの場合は脚本が上がったら、いきなり撮影なんですね。その代わり、セリフを何カットも撮って素材を集めて、編集して仕上げていく。最終的にどういう仕上がりになるのかは、編集が終わるまでなかなか分からないので、アニメやゲームの映像作りとは根本的に違うとは思いましたね。

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──制作に関してなにか指示や提案はしたのですか?

松山氏:
 私は「これをやると多分某社さんが怒りますよ」とか「これ某社さんに対しても不義理ですよ」みたいなことはつっこんでいます。業界にいるからわかることは言いますが、そうじゃないドラマの本質の部分だったりとかは基本的に監督に任せていました。脚本の段階で言うべきことは言っているので、演出上「このほうがいいと思いますよ」みたいなことは一切言わないですね。脚本までは一緒にやりますし、その商品のコンセプトやドラマの立ち位置というのは何度も話をしましたけれど、実際に撮影をして編集をして仕上げていくというプロセスは監督のものです。なのでそれは監督の流儀でやってもらうしかないし、テレビのプロですから。

──相手の業界に対するリスペクトはとても大事ですよね。

松山氏:
 今回は脚本家も監督もすごく理解がある方々だったので、ドラマとしてはしっかりちゃんと面白いものになっています。マンガのお客さんとドラマのお客さんは違うので、マンガの通りにドラマにしても、正直あまり意味がないと思っています。ドラマの視聴者はマンガよりも幅が広いので、1人でも多くの方々への共感が大事だと思うんですね。だからゲーム業界に特化した話にしすぎると、なんかよく分からん世界の話が始まったなで終わってしまうので、男女、年齢、職業に関係なく幅広い人たちに見てもらえるというドラマのいいところに合わせて、そこの間口をもう一段階、私が自分でやるんだったら広げるだろうなと思ったことをちゃんとやってくれています。同時に『チェイサーゲーム』らしさ、ゲーム業界お仕事マンガとしてのエグ味はちゃんと保った状態で作られているので、そのバランス感覚はさすがだなと思いました。

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──原作とドラマで異なる部分はあるのでしょうか。

松山氏:
 3・4話で展開されるエピソードでとある提案をいただきました。原作の1巻〜7巻には載っていないんですけれど、実は将来的に描こうとしているネタで作ろうとしていたキャラクターがいたので、「じゃあ、それドラマ先行で出します?」みたいな形で入れてもらったんですよ。

 9月8日からドラマ放映開始と同じタイミングでマンガもファミ通.comにて短期集中連載をやらせてもらっていて、ドラマとマンガが、どちらも最新のエピソードが読めるようになっています。木曜日の朝はマンガの最新話が公開されて、夜にはドラマが放映されます。ドラマ化が決まった段階で、毎週ドラマのタイミングでマンガの最新エピソードが読めるように仕込んでおいたんです。

──『チェイサーゲーム』祭ですね!

松山氏:
 マンガ原作のアニメ化とか、実写映像化で共通する部分なんですけれど、マンガはお客様が自分のテンポでめくるし、読むじゃないですか。早く読める人とゆっくり読む人の個人差があります。でも好きなマンガをアニメで見ると、「あ、こういう話だったんだ」と発見したりしますよね。連続するフィルムと音声と音楽によって、誰もが全く同じ理解で見られるのが映像の強みなんですよね。マンガだと難解な文字もあるし、理解の範囲が個人の知識量に寄るところがあるんですが、動いている映像と光と音楽が流れていると、みんなが「怒っている」「悲しんでいる」とか、すごく今勢いがあるとか、同じテンションで理解できるんですよね。

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──主演の渡邊圭祐さんとはお会いになりましたか?

松山氏:
 渡邊圭祐さんは『仮面ライダージオウ』の頃からずっと拝見していた役者さんの1人です。だから決めたというわけではないんですよ。キャスティングは先方から候補が挙がってきて、意見は伝えましたが、決定は先方に任せていました。
撮影に極力立ち会わせていただいて、何度も撮影の現場では一緒でしたし、雑談もいろいろさせていただきました。例えば『仮面ライダージオウ』の役柄だったウォズはすごくキャラが濃かったですよね。当たり前ですけれど、あんな人間は世の中にいないじゃないですか。実際にお会いしてみたら、等身大の青年というか、あんなシュッとしたイケメンなのに、すごく自然体で気さくな感じのいい若者だなと感じましたね。

──具体的なエピソードを教えてください!

松山氏:
 現場では渡邊圭祐さんだけじゃなくて、「ゲーム業界は実際こういうのってどうなんですか?」「マンガの中で描かれていたこういう人って、本当にいるんですか?」「こういうことって本当にあるんですか?」みたいなことは、いろんな方から聞かれました。私が「実はゲーム業界ってこうなんですよ」というようなお話をしますよね。すると渡邊圭祐さんは、絶対に人の意見を否定しないんです。そこがすごいんですよ。ほかの現場では「実はこうなんですよ」なんて言うと「そうは言っても、××じゃないですか」なんて反論されることも結構あるんです。でも彼はなんでも吸収するし、いろんなことを好奇心を持って聞いてくれるんですよ。この人はなんでもスポンジみたいに吸収するんだなと。「モテるわ。この人」と同じ男性として思った(笑)。めちゃくちゃ感じええやんと思って。芸能の世界はそんなに詳しくないけれど、こんなに魂がきれいな人がいるんだと思いましたよ。

──魂がきれい! ファンはたまりませんね。

松山氏:
 あと、ドラマ業界の慣習みたいなのですが、「今週の日曜日はサイバーコネクトツーが持ちます」という感じで、撮影中に持ち回りでお弁当を差し入れるんですよ。サイバーコネクトツー東京スタジオでの撮影初日とクランクアップのときは、うちからお弁当を差し入れさせていただいたんです。このドラマはサイバーコネクトツーの東京スタジオで撮影することが多かったので、呼ばれたときにチェックしに行っていました。

 お弁当を出すのは大体お昼なので、1時前後が多いんですよ。役者陣は20人くらいですけれど、スタッフも合わせると40人くらい。ずっとバタバタしていて、終わった人から順番にどんどん帰って行くみたいな形だったんです。私は仕事をしながら会社に残っていたんです。そうしたら20時くらいに、渡邊圭祐さんとたまたま玄関前ですれ違ったときに、わざわざ1回振り返って「お弁当ごちそうさまでした」って。「いやいや、もう20時や、いつの話やねん」て(笑)。ご本人がそうなのか、業界的にそういうルールなのか分からないですけれども、随分丁寧な人だなと感じましたね。

自ら営業して勝ち取った「ドラマ化」

──今回のドラマ化は制作からオファーが来たんですか?

松山氏:
 漫画連載やっていた2年ぐらい前から、実は全国に営業をかけまくっていました。ドブ板営業っていう言葉あるじゃないですか。私と副社長の宮﨑ほか、手分けして、企画書とマンガのデータを持って「あ、初めまして、私、サイバーコネクトツー……あ、ご存じないと思うんですけど、ゲーム会社をやっておりまして、意味分かんないと思いますけど実はマンガも描いておりまして……」って、言いに行きました。それを100セットやっても、ほとんどが「はいはい、そこ置いといて」ですよ。百人中一人か二人は「ちょっと1回前向きに検討しますね」「1回動かしてみたけど駄目でした」っていう人がでてきます。それを繰り返すだけです。

 で、生まれては消え、生まれては消えっていうのを2年ぐらいやっていました。一度ダメだったところはアプローチ変えて話したり。そうこうしているうちに是非やりましょうという話になりました。あきらめないのは肝心ですよ。

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──なかなか自分で諦めず営業できる人っていないのではないでしょうか。

松山氏:
 『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』を担当した株式会社コルクの佐渡島庸平さんが言っていたんですが、マンガ家さんに「マンガをたくさん売りたい、ドラマ化したいと思ったときに、1番動かないといけないのって誰だと思います?」と聞くと「え、編集でしょ」「営業でしょ」と言うんだそうです。「編集部が動いてくれない」という不満もよく聞きますね。でも違うんですよ、そのマンガを一番売りたいと思っている人が動かないと話は進まないんですよ。佐渡島さんは「結局皆誰かに何とかして欲しいって思ってるから何にも決まらない」「本気で映像化したい、たくさん売りたいと思っているなら、原作者・著者自らが考えて行動して働きかけるのが1番の近道ですよ」と言っています。

 だから「編集が全然動いてくれねえって思っている、言っている暇があるなら、書店用のポップの1枚でも書き下ろして届けなさい」と。もう、おっしゃる通りだなあと思ってね。なので、『チェイサーゲーム』では、テレビドラマ、実写映画、テレビアニメ、この三つのアプローチでこの2年間動きまくったんです。うちはもともとクリエイティブ会社で、断られるのなんて慣れっこですからもともと「100回断られて101回目で通す」みたいなマインドを持っているんです。私は結構精神がタフなんで絶対に心が折れないんです。だから勝つまでやるっていうタイプです。

──タフな精神は仕事をする上でとても大事だなと思います。

松山氏:
 めちゃめちゃ売れてる雑誌に載っている作品は、売れるって分かってるから皆やりたがるんです。けど、売れるかどうか分からないものには、要は「うーん、とりあえず分かりやすく売れたらまあ考えてもいいかな? 売れた後に勝ち馬に乗らせて下さい」っていうことなんです。そうじゃなくて我々は「ゼロからこれを売りたいんです」って言って営業をかけました。当事者じゃないとその熱量を持っていないし、誰も動いてくれないんですよ。アニメ化したら実写映画化だって商品化だって、重版だって決まるんです。待っていていいことなんか何もないんです。その「いいこと」は自分で生み出すしかない。原作者が自分の本やらマンガを売って歩くのは格好悪いって言っているうちはまだ二流ですよ。「最初になにをやればいいのかが分からない」ってよく言われるんですが、「だったら全部教えるから私に一回連絡しておいで」って言っています。

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──社長自ら動いたら、社員はどれだけ心強いでしょうか。とても勉強になりました。本日はありがとうございます。


 松山社長の話を聞いて思い出したことがある。

 筆者は以前、『養殖中華屋さん』というiモードゲームを企画して、So-netで運営していた。ライチからシュウマイが生まれ、シュウマイがワンタンに育ち、具が膨れて餃子になる……という育てゲーだ。

 このアイデアを思いつき、どうしてもゲームにしたくて、コピー用紙に鉛筆でマンガを描いて、いろいろな会社を回ったのだ。企画書など書いたことがなかったし、ゲーム制作もしたことがなかった。それでも熱意(だけ)で実現させた。

 当時はネットゲーム黎明期で、タイミングもよかったのかもしれない。それでも、例え経験がなくても「諦めずに動く」ことで大きな結果が得られることがある。

 相手に対するリスペクトや不屈の精神は非常に学ぶところが大きかった。サイバーコネクトツーが創業から大きく発展してきたのは、「諦めない」姿勢があるからだろうなと感じた。ぜひ今後も見習いたい。

チェイサーゲームはテレビ東京系列で毎週木曜深夜0時30分~1時00分放送中。

BSテレ東 BSテレ東4Kでは、毎週⽕曜深夜0時〜0時30分放送中。

広告付き無料配信サービス「ネットもテレ東」(テレビ東京HP、TVer、GYAO!)にて見逃し配信。

ファミ通.comで短期集中連載中(https://www.famitsu.com/serial/chasergame/

(C)「チェイサーゲーム」製作委員会 

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