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ターン制RPGが世界中で愛される理由とは─アトラス橋野桂氏と『崩壊:スターレイル』プロデューサーが語る、「人生すら変えるRPGの力」

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プレイヤーの人生すら変えてしまう『ペルソナ』シリーズと『崩壊』シリーズの物語

──続いてはおふたりに「ゲームにおける物語の描き方」についてお聞きできればと思います。単刀直入な聞き方になってしまいますが、おふたりはゲームの物語をどう考えながら作り上げていくのでしょうか?

橋野氏:
 『ペルソナ』シリーズの場合は、まず「少年少女が大人になっていく話」という前提があるので、その登場人物たちが大人になれない理由を用意することが重要ですね。大人になる前にぶち当たっている壁が必要なのです。

 『ペルソナ5』の場合は、主人公が最初から前科を持っていたり、クラスメイト達に最初から陰口を叩かれていたり……「ぶち当たっている壁」を演出として割と露骨にやりました。そしてその壁をぶち破っていく物語にしています。その“大人になれない少年少女”にシンパシーを感じてもらえるような物語を目指していますね。

──橋野さんが携わられた『ペルソナ』シリーズにおける「主人公が抱えている問題」というものは具体的にどこから引っ張ってくるのでしょう?
 『ペルソナ5』もそうですが、やはりその抱えている問題に対して共感できるからこそゲーム全体にスッと入っていけるような感覚があります。

橋野氏:
 やっぱりそこは時代性によるものが大きいんじゃないですかね……。

 なんか、その時代における「冷笑的なムード」ってやっぱりどこかにあると思うんです。直面した状況に対して努力することに冷笑的というか、「頑張ったって意味ないんだよ」……みたいな。

 ただ、私たちが作っているゲームはやはりエンタメなので、どうしてもその時代のどこかにある諦めムードのようなものに対して「なんか他にもやりようがあるじゃん!」と言いたくなってしまうんです。

 たとえ主人公が直面している状況が無理難題に見えたとしても、やはりゲームなので仲間同士で知恵を結集したり、主人公の周りに同じような意識を持つ仲間がいたりします。どんなに困難な状況でも、どうにかなるかもしれない可能性自体を否定したくないんです。

 主人公の抱えている問題や物語を通して、その時の社会問題、著名人の愚痴、その時代を賑わせている冷笑的なムードに対するカウンター的なものを作りたい……という思いはありますね。

──その流れで言うと、主に橋野さんが携わられた『ペルソナ3』から『ペルソナ5』ではそれぞれ作品の問題提起が結構違うんじゃないかと思います。
 それぞれの作品で、具体的にその時代からどんな問題を汲み取り、どんな物語を組み立てていったのか……という点についてもう少し詳しくお聞かせください。

橋野氏:
 『ペルソナ3』も『ペルソナ4』も『ペルソナ5』もそれぞれ問題提起自体は違うんですけど、実は最終的な結論としては大体同じ話をしています。

 やや乱暴な言い方になってしまいますが、端的に言うなら『ペルソナ3』は「今しかできないことがあるなら、思いっきりやれよ」という話です。『ペルソナ4』は「みんなが思うように情報を得ているだけでは、気をつけないと騙されちゃうよ」という話。そして『ペルソナ5』は上から押し付けられているルールや、貼られているレッテルを跳ねのけるような話を描きたかった。

 若い人たちが自由に進めない時、子供から大人になって自立するにあたって自分はどうやって生きていけばいいのか決められない時、進路で迷っていたりする時など……そんな時に背中を押してくれるようなゲームになってほしくて、『ペルソナ』シリーズを作ってきました。

 ですので、『ペルソナ3』も『ペルソナ4』も『ペルソナ5』も問題提起の形は違えど3作ともそういうお話を展開していますし、結果的に私の中ではあまり違いがないんです(笑)。

アトラス橋野桂氏×『崩壊:スターレイル』プロデューサー対談_011
『ペルソナ5』公式サイトより ©ATLUS ©SEGA

David氏:
 私も『ペルソナ』シリーズで描かれる少年少女の物語が大好きです。やはり人は誰しも心の中で、自分自身の正義を貫きたかったり、理不尽な社会に対して公平を求めるものです。そしてその成功体験をゲームで得られるのが『ペルソナ』シリーズの素晴らしいところですよね。

 主人公たちは少年少女ですが、やはり大人である私自身も『ペルソナ』シリーズで描かれる問題提起や苦悩に対して共感してしまうところがあります。
 ……つまり、『ペルソナ』シリーズを遊んでいてその思いに共感できる人は、身体が大人であったとしても、心はまだまだ少年少女なのかもしれません。

一同:
 (笑)。

David氏:
 私たちが物語を作る時も、ゲームの根底にある価値観をプレイヤーに伝えることは重要だと考えています。まぁ……なんというか直球な言い方かもしれないのですが……私が携わっている作品の根底にあるテーマは「愛」と「正義」のふたつだったりします。

 やはりゲームを何十時間も遊んでくれるプレイヤーの方がネガティブな感情しか抱けない物語になってしまうのであれば、何よりも申し訳なさを感じてしまいます。基本的に私の作品はポジティブです!

 そして『崩壊:スターレイル』は主人公とその仲間たちがさまざまな惑星を旅していくロードムービー的な側面もあったりします。主人公と同い年くらいの仲間が集まって、社会の成り立ちや世界観が全く違う惑星を巡っていく……その中でキャラクターの価値観の変化や成長が描かれたりもします。

 私たちはゲームシステムとストーリーに、キャラを結び付けることを意識しています。たとえば、今作は「運命」というシステムを取り入れています。ゲームシステム上では、「運命」はキャラクターのロール・ジョブのようなものです。
つまりアタック、ヒール、サポートなど……そのキャラの役割を意味しています。一方、キャラ自身に付随するテキストとしての「運命」は、彼らの「自分発見」のプロセスも意味しています。

 それ以外に、今作は「同行クエスト」というシステムがあります、ユーザーにはメインストーリー以外でも、それぞれのキャラクターの過去や、メインストーリーだけでは掴み切れないそのキャラの面白い性格を理解する機会を用意していますので、よりそのキャラの特徴を深掘りすることができます。彼らとの絆や過去の話は、旅の中で少しずつ見せてくれます。

 今作も『ペルソナ』シリーズのように、ストーリーとそれぞれのキャラクターによってユーザーに違う体験をしていただいたり、迷った時の背中を押してくれるようなタイトルになれたら嬉しいですね。

アトラス橋野桂氏×『崩壊:スターレイル』プロデューサー対談_012

橋野氏:
 人生って「旅」に例えられることが多いですけど……長い人生と過ぎ去っていく時間の中で、出会った人々やその途中で得た経験を通して自分の生き方を決めていくじゃないですか。そして人生なので最後には死んでしまう。その一連の流れをすごく短くまとめるのが「ロードムービーの作り方」だと思っています。

 Davidさんが今おっしゃったように、いろいろな世界を旅することによってキャラクターたちの価値観が揺さぶられていき、その中で新しい正義や愛に気付いていく……という物語になっているのであれば、ロードムービーとしてはとても素敵な作品になっているんじゃないかと思います。楽しい宇宙の旅が体験できるんだろうなぁ……(笑)。

David氏:
 ありがとうございます……!

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橋野氏:
 キャラクターの価値観の話で言うと、『ペルソナ5』の場合は「大人たちの言っていることは間違っている。だから自分たちの正義を貫きたい」というストーリーの縦軸の中で、同時に「自分たちが今正しいと信じている正義は、そもそも正義と言えるのか?」と問題提起をするターンを必ず入れると決めていました。

 かと言って、一度きりの人生では、何かを「自分にとっては正しい」と信じ込まなければ生きていけない時は必ずあります。常にひとりきりで自分の正義や居場所を疑ったままでは、いつか倒れてしまう。

 自分が今信じている正義が本当に正義と言えるのかはわからないけれど、それでも「それって正しいよ」と言ってくれる仲間を集めて、背中を押してもらいながら、最終的にひとつの結論に辿り着く。それが私が作ってきたゲームの流儀です。プレイヤーの方にはそういう体験をしてほしいんです。

 でも、「主人公たちが取った行動は本当に正しかったのか?」という疑問についての確信が完全には持てない……というのがジュブナイルの特徴でもあると思っているので、そこは毎回ちょっと意識していますね。完全に正しかったとは言い切れません。

 『崩壊:スターレイル』が具体的にどんなシナリオになるのか現時点では把握できていないのですが、主人公たちがいろいろな価値観に触れながら大いに悩むような物語だと楽しそうだなぁ……と思いました(笑)。

David氏:
 ありがとうございます。ご期待に応えられるよう頑張ります……!

 少し話の流れから逸れてしまうのですが、私がプロデューサーを担当している『崩壊3rd』はちょうど今、6年くらい描き続けてきたストーリーが第一部のエンディングを迎える時期になってきています。
 
 やはり6年間もストーリーを描き続けてきたタイトルではあるので、その間にキャラクターも成長したりしているのですが、そのキャラたちを描き続けてきたシナリオライターたちも6年の歳月で成長を重ねてきました。実際の時間の経過の中で、キャラクターとシナリオライターの成長がリンクしているような感覚があります。

 それだけでなく、リリース当初に高校生だった方が6年間『崩壊3rd』を変わらずプレイしてくださっているとしたら、今は社会人になっている可能性もあるんですよね。その方は6年前と今ではストーリーの受け取り方も全く違ってくるでしょうし、現実の年月の積み重ねがゲームに反映されているのはすごく面白い現象だと思っています。

アトラス橋野桂氏×『崩壊:スターレイル』プロデューサー対談_014
崩壊3rd 公式ストーリームービー「超越」より

David氏:
 たとえば、『崩壊3rd』の主人公でもある「キアナ」は、最初は物知らずな子でしたが、ストーリーの進行とともに、段々大人になって、他人のことを考えられるようになったり、大局的な視点で物事を考えられるように成長していきます。

 そうやってリアルタイムの時間経過に合わせた価値観や人間性の成長をプレイヤーの方に提供できているのは、長期運営型ゲームの面白いところなのではないかなと思います。

橋野氏:
 面白い話ですね。
 コンシューマー畑の私たちには作れないタイプのストーリーです……(笑)。

一同:
 (笑)。

「『ペルソナ5』で東京を汚く描く必要があった」理由

──橋野さんが携わられたタイトルはすごく文学的な要素が強いといいますか……『ペルソナ』シリーズにおいて田舎の学生や都会の学生を主人公にしてストーリーを作られていたりするのもそうですし、そのゲームが出る時の「時代性」のようなものを強く盛り込んだタイトルが多いと感じています。
 その時代ならではのみんなが共感することだったり、みんなが心のどこかで思っているようなことをゲームに盛り込んでいます。橋野さんの中において「ゲームと文学」「ゲームと時代性」の関係はどうあるべきなのか……ということをお聞きしてもよいでしょうか。

橋野氏:
 ゲームをプレイしている最中でも、クリアした後でもいいんですけど、やっぱりゲームを遊んで元気になってほしいんですよね。少し大袈裟な言い方かもしれませんが、ゲームには遊んだ人のなにかの原動力になったり、現実における気付きになったりすることが必要だと思っています。

 それを伝えるにあたって、ゲーム中の世界観が自分たちの住んでいる世界と全く文化や価値観が違ったり、現代と全く舞台が違っていたりすると、プレイヤーとしては「自分にとって無関係な話だったな」というだけで終わってしまうことがあります。現実とは別の異世界を体験している最中は確かに楽しいかもしれないけど、その後には何も残らない。

 どんな舞台やどんな物語を作るにせよ、最後にはプレイヤーの中に何が残るようにしたいんです。そのためにできるだけリアリティのある舞台を用意したり、キャラクターを作る時も「あぁ、なんかこういうやついるよね」と身近に感じられるような人物を作り上げたりします。

 ですので、私たちとしては「ゲームができるだけ現実とリンクするような」作り方をしていますね。

David氏:
 私も『ペルソナ』シリーズの学生が主人公だったり、時代性を盛り込んでいる部分は大好きです!!

一同:
 (笑)。

橋野氏:
 『ペルソナ5』の場合は、「若者が大人の作った社会に対して鉄槌を下す。復讐する。鼻を明かす」ようなシナリオを作ると決めていたので、実際の大人が作った街は汚いものじゃなきゃいけなかったんです(笑)。

 伝えたい物語に対する舞台設定として、必要以上に街や社会を汚く描いたんですよね。サラリーマンなどのNPCもみんな元気なさそうにうつむいてなきゃいけなかったし、学校の教師たちも全員ひどい奴等じゃないといけなかった。そして学校のクラスメイトたちも主人公に対する侮辱や陰口をたくさん言ってくる。その辺りの舞台設定はかなり強烈にやりました。

 『崩壊:スターレイル』にもSF的な世界観に中国の古典的な文化をミックスしたような舞台が登場してると思うんですが、その辺りの「ゲームと文学」の関係をどんな感じで盛り込んでいるのかはDavidさんにもお聞きしてみたいですね。

David氏:
 ちょっと今作の企画段階からの話になってしまうんですが……そもそも『崩壊:スターレイル』の土台となる舞台設定を作る時に、「SF的な世界観にするか」「『ペルソナ』シリーズのような現代風の世界観にするか」の2択になっていたんです(笑)。

 結果的には前者のSF風世界観になったのですが……個人的には今後、『ペルソナ』シリーズのような現代を舞台にした作品を作ってみたいと考えています。

 話が逸れてしまいましたが、『崩壊:スターレイル』は前提として「これまでの『崩壊』シリーズで設定やテキストで存在だけは示唆されていた宇宙の惑星を探索する」というストーリーが展開されます。そして、それぞれの惑星に「人間が意識を共有することのできる社会があったらどうなるのか」「もし人間が不老不死になった社会があったら」といったメインテーマが決められています。

 そういった特殊な社会で生きる人間はどんな悩みを抱えていて、どんなことに苦しむのか……そんなSF的シミュレーションを考えるのが個人的にすごく楽しいんです。そこが『崩壊:スターレイル』の文学的な要素を盛り込んでいる箇所でもあり、ストーリーの面白い部分でもあると思います。

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David氏:
 さきほど橋野さんがおっしゃっていた舞台というのは、仙舟「羅浮」というシルクパンク的【※1】な要素を取り入れた大型の宇宙船ですね。ここが「もし人間が不老不死になった社会があったらどうなるのか」というテーマを盛り込んだ舞台となっています。

 もし人間が不老不死になったら他の世界との外交はどうなっているのか? 不老不死によってどんな社会問題が起きるのか? ……などの不老不死の人間が実在する社会を描くストーリーが見所となっています。

 中国の昔話には「不老不死を求めて旅に出る」というテーマの物語が多かったりするので、そこを文学的な要素として盛り込んだ形になります。徐福【※2】なんかがわかりやすい例ですね。

 仙舟「羅浮」のベースとなったコンセプトはまさに「徐福東渡」の伝説です。その伝説の中の言い伝えによりますと、始皇帝は不老不死の霊薬を求めるために、多数の舟を出航させました。

 その「徐福東渡」における漂流する冒険譚と未知を探索する決心は、まさに『崩壊:スターレイル』の主人公一行が宇宙を航行する物語と図らずも一致しています。そして、私たちは初期の段階で「徐福東渡」を参考にしつつ、シルクパンク的な世界を構築しようと決めました。この世界では、すべての人は仙島のような巨大な舟に暮らしていて、ふわふわと宇宙の中を漂っています。

 そしてもうひとつ、中国の昔話に多いのが「龍と人間の間の種族」「狐と人間の間の種族」といったような異種族の姿を描いたストーリーです。
 そちらもこの仙舟「羅浮」のテーマのひとつとして盛り込まれており、その異種族と人間が同じ社会の中で生活することでどんな世界が作り上げられていくのか……という物語も展開されます。この中国の昔話をテーマに盛り込んでいる部分が『崩壊:スターレイル』の文学的な見所なのではないでしょうか。

※1「シルクパンク」
SF作家ケン・リュウ氏の『蒲公英王朝記』という小説の世界観を表わす言葉。英国ヴィクトリア朝時代のテクノロジーが描かれたSFを「スチームパンク」と呼称するように、古代の東アジアのテクノロジーを描くSFを「シルクパンク」と呼ぶ。『崩壊:スターレイル』に登場する仙舟「羅浮」はこのシルクパンク的な世界観を盛り込んだエリアとなっている。

※2「徐福」
始皇帝に命じられ、不老長寿の霊薬を得るために日本に渡来したという記述が残されている秦の方士(現代における学者のような職業)。中国、日本、朝鮮半島に多くの逸話や伝承が残されている。

アトラス橋野桂氏×『崩壊:スターレイル』プロデューサー対談_016
仙舟「羅浮」に登場する「白露」というキャラクターは龍と人間の間のような容姿となっています。

橋野氏:
 なるほど、すごく興味が湧いてきますね……。
 仙舟「羅浮」は中国で作られたRPGだからこそ生み出せる世界だと思います。

 ちょっと『ペルソナ5』の話に戻るんですけど、ある時YouTubeで渋谷のスクランブル交差点の動画を見たんですね。その動画に外国人の方が「どうして日本人はこれだけの交通量の中で肩をぶつけずに歩けるんだ……」とコメントされているのを見つけて……要は、スクランブル交差点が日本の驚きスポットみたいな感じで紹介されてたんです(笑)。

 それを見た時に、「渋谷のスクランブル交差点を印象的な舞台として使おう」と決めました。『ペルソナ5』は主人公たちが「ただのお利口さんじゃなくて、ルールを守らずに大人たちに歯向かっていく」ような物語にしたかったので、逆に「大勢の人間がルールを守る=肩をぶつけずに大量の人間が交差する」渋谷のスクランブル交差点を冒頭に用意したんです。

David氏:
 そんな意味合いが込められていたんですか!

 私は『ペルソナ5』で描かれる東京の姿が好きすぎて、日本を観光した時には『ペルソナ5』の聖地巡礼をしました(笑)。

一同:
 (爆笑)。

そもそもHoYoverseのタイトルがここまで多くの方に遊ばれているのはなぜ?

──ちょっと話が戻るんですが、Davidさんは今回『崩壊:スターレイル』を作るにあたって、ターン制RPGが成功する可能性についてのリサーチを事前に重ねた上で制作に臨んだ、とお聞きしました。
 そのターン制RPGを研究していく中で得た知見や発見の中で、Davidさんから橋野さんに共有したいことなどはありますでしょうか?

David氏:
 先ほども言った通り、「ターン制RPGはシステムとして古いのではないか」という声は一部で上がっていました。ですが、何度か実施した『崩壊:スターレイル』のクローズドβテストのアンケートの結果として、そういった声は実は少数派であることが分かりました。

 ちょうど先日ファイナルβテストを行いましたが、そこでも今作のバトルに好意的な意見をたくさんいただけましたので、ユーザーの方のアンケートは確実に私たちの自信に繋がっています。

 さらに『崩壊:スターレイル』はマルチプラットフォームに対応しておりますので、スマートフォンやPCに各種ゲーム機など、多くのプラットフォームで遊べる作品になっています。

 とにかくプレイを始めるにあたっての敷居が低いタイトルですので、あまりゲームに触れてこなかった方にも手に取っていただけるタイトルなのではないでしょうか。これまでのベータテストやPRの結果としても、熱心なゲームユーザーではない方にも関心を持っていただけている印象はあります。

 結論を言いますと、私からすれば、ターン制バトルというゲームシステムは全く古くないと思います。ゲーム独特のスタイル、没入感の重視、そしてユーザーの拡大の試みとしても、『崩壊:スターレイル』が目指すべき目標と矛盾していません。正式リリースしたら、ぜひ皆さんにも体験していただきたいです。

橋野氏:
 ゲームに興味がなかった人も関心を持っているのは素晴らしいことですね。
 どうやったら関心を持っていただけるのか……のコツとかってあったりしますか?

David氏:
 もちろんアクションではなくターン制RPGにしたことによる「多くの人が楽しめる遊びやすさ」への工夫はあるのですが、やはり時代の流れが大きいのではないかと思います。まず第一に、ここ10年くらいゲームで遊ぶ方はどんどん増えていますし、「ゲーム」というエンターテインメント自体がかなり多くの方に受け入れられています。

 そしてもう一つの大きな理由として、やはり「スマートフォンの普及」があります。要は、ひとつのゲームを始めるために必要なコストがすごく低くなっているんですね。そしてHoYoverseの運営型タイトルは基本プレイ無料ですので、さらに気楽に遊び始めることができるようになっています。とにかくこの辺りの時代背景が大きいと思います。

 もちろんスマートフォンで基本プレイ無料のタイトルはたくさんありますが、その中でもHoYoverseのタイトルは高いクオリティの作品を提供するように努力しています。 たとえば、これまでスマホでもカジュアルなパズルゲームくらいしか遊んでこなかった方にも初めてのRPGタイトルとして手に取っていただけるように『崩壊:スターレイル』はさまざまな工夫を重ねていますね。

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──ちょっとその話の流れでお聞きしてみたいんですが、Davidさんが今ゲーム以外で注目しているエンタメなどはあったりしますか?

David氏:
 そうですね……強いて言うならVRでしょうか。
 
 そしてすいません、やっぱりゲームに関する話になってしまいそうです(笑)。
 VRで何かを作ると考えてもやはりゲームになると思いますし、私としてはゲームこそが最先端のエンターテイメントだと考えています。

 ちょっと私個人の考えになってしまうんですが、そもそもエンターテイメントとは現実の世界で私たちが体験できないことを求めるものだと捉えています。その世界の中にすごくディティールが詰め込まれていたり、圧倒的にリアルな世界を提供できるのはやはりゲームだと思います。

 優秀なエンターテイメント作品というのは、なにか特別な条件をすべて満たせれば優秀ということではないと思います。ユーザーを現実の悩みから一時的に解放させたり、もう一度立ち上がる勇気を与えたり、新しい世界を探索する好奇心を満足させたり……そんな「プレイした後のユーザーに何かを与えられる」作品もあります。プレイした後に、時間の無駄ではなかった、良い旅だったと思ってもらえるような作品であれば、それはきっと優秀な作品だと言えます。

 たとえば『ペルソナ5』は日本の現代と文化要素を完璧に表現したことによって、私のような外国人でも東京の学生生活や賑やかな渋谷を身近に感じることができました。そして『崩壊:スターレイル』は無限の宇宙で、プレイヤーのみなさんと一緒に人間と世界の統一、そして対立を模索していきます。

 ……つまり、ゲームを通して「なんでも提供できる」バーチャルの世界こそが今後のエンターテイメントの目指す方向なのではないかと考えています。ですので、「エンターテイメント」という大きな枠組みの話であれば、いつかゲームは映画、アニメや小説に登場するような巨大な仮想現実を本当に実現してしまうと思います。

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編集長
電ファミニコゲーマー編集長、およびニコニコニュース編集長。 元々は、ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長として、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、同サイトの設計、企画立案などサイトの運営全般に携わる。4Gamer時代は、対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」などの人気コーナーを担当。本サイトの方でも、主に「ゲームの企画書」など、いわゆる読み物系やインタビューものを担当している。
Twitter:@TAITAI999
ライター
転生したらスポンジだった件
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