さて、いきなりではありますが、今回取り上げますゲームは『ハテナの塔 -The Tower of Children-』(以下、ハテナの塔)。
4月20日、PC (Steam)とNintendo Switch で発売の本作は、サバイバルローグライクアドベンチャーであり、ローグライクゲームにデッキ構築型カードゲームの要素が加わった、スピーディーなゲーム展開が特徴的な作品です。
ローグライクゲームとデッキ構築型カードゲーム。これらのゲームジャンルに聞き馴染みのない方もいらっしゃるかもしれませんので、簡単に触れておきますと。ローグライクは、最初期のコンピューターゲームのひとつ『ローグ』に似たゲームのことで、ゲームをプレイするたびにマップやダンジョンの構造が変わることが大きな特徴です。『不思議のダンジョン』シリーズなどが有名でしょうか。リアルタイムで進行するローグライクとしては『FTL Faster Than Light』などの名作が知られています。
そして、デッキ構築型カードゲームは、アナログゲームの名作『ドミニオン』で生み出されたゲームジャンルで、それまでの対戦型カードゲームが各々作ったデッキを持ち寄って戦うものであったのに対し、ゲーム内でカードを購入して、ゲームごとにその場でデッキを作り上げて戦うというのが最大の特徴です。
そして、ローグライクゲームとデッキ構築カードゲームの2つのジャンルを融合させた名作が『Slay the Spire』。毎回変わるプレイ感と、運要素も絡むアドリブを求められる戦略性の高さで、多くのプレイヤーをその沼へと引きずり込んでいきました。
……少々話が逸れてしまいましたが、『ハテナの塔』は、『Slay the Spire』のようなデッキ構築型ローグライクの楽しさの中に、リアルタイム戦闘という要素が加わり、その場のアドリブで瞬時に適切な判断が求められる新鮮なプレイ感が特徴です。
その他にも意欲的な要素が盛り込まれている本作、その魅力を少しでもお伝えしていければと思います。
文/DuckHead
※この記事は『ハテナの塔 -The Tower of Children-』の魅力をもっと知ってもらいたい集英社ゲームズさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
ハテナの塔を下へ下へ
さて、本作の目的は、子供たちを使って “ハテナの塔” と呼ばれる巨大な塔の攻略に挑み、塔の果て、すなわちゴールにまで辿り着くことです。
このように書きますと、地上からハテナの塔へ入り込み、その頂上を目指すゲームかのような感じがしてしまうかもしれませんが、本作はその逆。物語の始まり且つ中心となるのは、ハテナ塔の頂上なのです。
塔の頂という辺鄙な場所に子供たちだけで集落を作り、そこで日々を過ごしている彼らは、いずれ戦士となる定め。時が来れば、洗礼……ではなく “戦礼” を受けることで戦士となり、たくさんの “ハテナ” が待つとされるハテナの塔をを下へ下へと突き進み、地上にまで辿り着くことを目指します。
さて、先ほども軽く触れましたが、本作はローグライクゲーム。このハテナの塔は、挑むたびに中の構造がランダムに変化していきます。
出現する敵はもちろんのこと、内部で発生するイベントも全く異なるものとなるため、常に次に何が起きるか分からないドキドキ感を楽しめます。これこそが、ローグライクの醍醐味ですね。
正位置と逆位置の概念を取り入れた、リアルタイムバトル
さて、『ハテナの塔』の独創的で面白いポイントは、何と言ってもその戦闘システムでしょう。
本作の戦闘では、武器・防具・呪文・アイテムなどが描かれたカードを使い、プレイヤーは子供たちに対して次に取るべき行動を指示していきます。
先ほども触れましたように、本作はデッキ構築カードゲームの要素を含んでおり、戦闘でプレイヤーに手札として配られるカードは、戦闘で使用する敵を倒したり、イベントをこなしたりすることで得られる報酬で増やすことができます。
こういったデッキ構築系のゲームの場合、その戦闘システムとして、プレイヤーが行動を終えた後に敵キャラクターが行動をしてくるという、いわゆるターン制を採用していることが多いのですが、本作にはターンの概念が無く、戦闘はリアルタイムで進行していきます。
そのため、じっくりと戦略を練っているような時間的余裕は無く、必然的に敵と味方の攻撃が入り乱れる乱戦となります。この点も、本作の戦闘システムの大きな特徴のひとつですね。
そして、これらの手札は、戦闘中いつでも好きなタイミングで配りなおす事ができます。無理をして全ての手札を使い切る必要はなく、もしも配られたカードの中に使いたいものが1枚も無ければ、全く手札を使わずに配りなおしてもOKです。
そんなリアルタイムで進行する戦闘の中で、敵の行動予定は、テキストとサークルで示されます。サークルが一周して円が完成すると、敵は基本的にテキストに従った行動を取ってくるため、何かしらの対策をしておきたいところ。
例えば、このサークルが満たされる直前、サークルが赤くなったタイミングを見計らって防御行動を取ることができれば……
ジャストガードが成功し、敵を動揺させることができます。この状態になった敵は、しばらくの間は何の行動も取ることができないため、絶好の攻撃チャンスが訪れます。
こういったような形で、敵の動きも見つつ子供たちが取るべき適切な行動を瞬時に判断して手札のカードを切っていくことが、ハテナの塔を制するための必須テクニック。
それに加えて、本作では同じ手札の状態で一定時間が経過すると、強制的にカードが配り直しとなる仕様もあるため、戦闘はかなり忙しめ。もちろん、そこがリアルタイム戦闘の旨味、楽しいところなんですけどね。
更に、本作の戦闘を忙しくさせているのが、“正位置” と “逆位置” の存在。タロットから発想を得たというそのシステムは非常に独特で、これこそが、本作最大の特徴と言ってもいいでしょう。
正位置と逆位置の概念があるとは一体全体どういうことなのか。それは、雑に言ってしまうと、プレイした時のカードの向きによって、その効果が変わるということ。
具体的な例を挙げてみますと、例えばこちらの剣。正位置であれば、刃が上を向いているため、敵に攻撃が通りますが……
逆位置でプレイしてしまうと、刀の柄が上を向いているため、敵に攻撃を加えることができないと言った具合。
剣はまだ簡単で分かりやすい部類で、逆位置でプレイしてしまったとしても攻撃が出ないくらいしかデメリットは無いのですが、中には正位置と逆位置で効果が真逆になってしまうカードも存在します。こちらのやく草は、正位置でプレイすれば、葉っぱの部分を食べて体力を回復することができますが、逆位置でプレイすると、毒のある根っこの部分を食べてしまうため、子供たちが毒状態になってしまうのです。
このシステムは非常に面白い発想だと思います。プレイ中は常に頭が回転している感じがする上に、今までにゲームでは使ったことのないような頭の使い方をする必要があるので、凄く良いですね。好きです。
……あと、全然関係ないんですが、このシステムを聞いて、『半熟英雄』シリーズのグランドパパという、頭の向きによって攻撃パターンが大きく変わるエッグモンスターを思い出しました。
それはさておき、この正位置と逆位置の概念があるため、本作では使いたいカードが全て逆位置で使えないという手札事故が起きることもしばしば。
まぁ、手札が悪かったとしても、すぐにカードを配りなおせばいいですし、中には正位置と逆位置に関係なく同じ効果が出せるタイプのカードもあるんですが、効率的なプレイをするためには、瞬時にカードの向きと敵の動きを見極めつつ短時間でより良い戦略を立てなければなりません。
そんな手札事故の強い味方が、逆さ男。タロットにおいてはハングドマンなどと呼ばれるこちらのカード、手札のカードの向きを全て逆さにする効果があります。
更に、ハテナの塔に現れる敵の中には、プレイした時のカードの効果を、実際に画面に表示されている向きとは逆にしてしまうスキルを持つものも存在。要するに、このスキルが効果を発揮している間は、正位置のカードをプレイすると逆位置の効果が、逆位置のカードをプレイすると正位置の効果が発動してしまうのです。
文章で見るだけでも非常にややこしいことになっていますが、実際の戦闘ではこれ以外にも処理しなければならない情報が大量にあるため、かなり頭が混乱してきます。
しかも、このスキルの効果は、2度かけられると見た目通りの効果に戻り、3度かけられると再び見た目とは逆の効果に……と言った形で、何回でも重ねがけされていきます。もはや脳トレの域。
そして、このゲームをプレイしていてちょーっとだけ困るのが、子供の暴走。戦闘中に大きなダメージを受けるなどして感情が高ぶると、子供は暴走状態に入ることがあります。この時は行動速度が速くなり力が強くなりますが、こちらの指示を受け付けてくれないことがあります。子供によっては回復を拒否してくることもあり、回復を拒否された時にはかなり焦れますね。
回復ができないので、子供はすぐにやられてしまう……ということはなく、『MOTHER2』よろしく、ガッツを発動してくれれば、体力が0になっても倒れないことがあります。……もちろん、倒れるときは倒れてしまうんですが。
で、このゲームをプレイしていてとんでもなーく困るのが、病気。これは選択次第で運が悪いと罹患してしまうもので、短時間で手札が強制的に配りなおされてしまうなどの強烈なデメリットがあります。これはシンプルに思考の邪魔になるだけでなく、手札の選択ミスが非常に起こりやすくなるため、なるべくかからないようにすることが大切です。
また、塔の中では、様々なイベントが発生。その状況に対処するのにふさわしいカードを求められることもあります。当然、カードを持っていない場合は対処することはできません。諦めて引き返すか、大人しくダメージを受けましょう。
このようなイベントの存在もあるため、塔の探索において、自分が持っているカードを把握しておくことは重要です。手札候補となるカードはどんどん増えていくため、適宜確認することも必要です。
今どんなカードを持っていて、次はどんなカードが欲しいのか。それを考えることも、デッキ構築ゲームの面白さの1つ。
パンは命
そして、本作の中でハテナの塔と並ぶくらい重要な立ち位置にあるのが、“パン” です。
これは子供たちが生きていくために欠かせない食料であり、1日が経過するごとに、集落に住む子供の人数分だけ消費されていきます。
パンは、主にハテナの塔で敵を倒したりイベントをこなしたりすることで貰える報酬で獲得することができます。
ハテナの塔の攻略は難しく、一度の探索で踏破することは不可能。長い日数をかけた戦いとなることは必至であるため、パンを切らさないように、しっかりと計画的に運用していくことも大切。これが、サバイバルローグライクアドベンチャーである本作の、サバイバル要素となっています。
ちなみに、塔の踏破を断念して集落へと帰還する場合、その時の探索の成果によって、子供たちは “ハテナ” を獲得します。
このハテナが一定数に達すると、新たなアイテムやイベントが解放され、ハテナの塔が成長していきます。
そのため、探索が難しいと感じた時には、パンを集めるためだけにハテナの塔へ潜るというのも、大事な戦略のひとつ。これは、ゲーム側からも推奨されている攻略法です。
子供たちを生きながらえさせるために必要不可欠なパンですが、その使い道は食料だけではありません。
ゲームスタート時、子供たちの住む集落は荒れ放題の悲惨な状態。この状況を改善し、集落をより使いやすい拠点にしていくためには、集落の真ん中に堂々たる姿で鎮座している神木に対して祈りを捧げる必要があります。
この祈りを捧げる際に神木から求められる供物が、パンなのです。
神木に祈りを捧げることで復活させられる集落の施設は、探索をより快適にしてくれるものばかり。中には、毎日パンを数個焼いてくれる “パン窯” もあったりします。
その他にも、神木に祈りを捧げれば、泉を湧きださせることも可能。水が復活した泉には魚が住みつき、その魚を捕獲することができるようになります。
このようにして手に入る魚は、子供たちにとって貴重な食料。貴重な食料ということは、魚はパンと等価。ですから、当然魚たちは捕獲されるとともに速やかにその姿をパンに変えます。そう、ハテナの塔においては、全ての道がパンに通ずると言っても過言ではないのです。
そして、集落を完全に復旧させたとしても、神木への祈りは終わりません。以降は、神木にパンを捧げることで、子供たちのステータスをアップさせることができます。パンはいくつあっても困らないというわけです。カブゲーならぬ、パンゲーといった趣。
更に、塔の探索中、敵の攻撃によって体力が減ってきた時には、手札として配られるパンを食べることで、体力回復を行うことができます。ただ、この方法で体力を回復させた場合、持ち帰ることのできるパンの総数が減ってしまうため、無闇に食べることは禁物。ほぼ体力満タンなのに、焦って操作ミスをしてパンで回復してしまった日にはもう最悪です。
塔に挑むパーティを考える面白さ
さて、ハテナの塔の攻略の拠点となる集落には、子供たちが暮らしています。それぞれの性格は個性的で、とにかくパンを欲しがっている子や、周囲に愛を振りまく子、信心深く、何かにつけて「…………合掌」と言う子など様々です。
ゲームスタート時点で集落にいる子供は全部で5人ですが、ハテナの塔の中で倒れている子供を救出することで、仲間として集落に迎え入れることができます。
子供を救出するには、倒れている子供の体力が0になる前に、その隣にいる敵を倒さなくてはいけません。ただ、この時、倒れている子供は敵モンスターと同じ扱いになっているため、全体攻撃を仕掛けると、敵だけでなく倒れている子供にもダメージが入ってしまうため、注意が必要です。何かと考えることが多いゲームなんですよね、本当に。
時には、ミスが重なったり、もたもたしたりしていると、子供を助けられない……ということも起きてしまいます。
しかし、改めて塔を探索しなおせば、救出のチャンスはいつか再び巡ってきます。塔の攻略同様、諦めずに立ち向かい続けることが大切なのです。
仲間が増えるというのは嬉しいことですが、このようにして集落に子供が子供が増えていくと、当然、パンの消費量も激しくなるわけでして……。1個のパンを笑うものは1個のパンに泣かされる。これこそがハテナの塔。
次の日も、そのまた次の日も、パンと地上への扉を求めて、子供たちはハテナの塔に挑み続けます。
さて、ハテナの塔の探索において重要なのが、どのような編成で塔に挑むのかということ。プレイヤーは集落に集まっている子供たちの中から、任意に2人を選んでパーティーを組み、塔の攻略へ臨みます。
子供たちにはそれぞれ、能力のステータスや4枚の初期手札などが決められています。中には塔での経験を積まなければ使えない初期手札を持っている子供もいるのですが、これらの情報をもとにプレイヤーはパーティを選択していくことになります。
この初期手札は主に子供たちの戦闘スタイルによって決まっているため、その種類について簡単に紹介しておきたいと思います。
まずは剣士。これはオーソドックスな分かりやすい戦闘スタイルで、剣による攻撃や盾による防御が得意です。
続いては魔法使い。その名の通り魔法を唱えることのできるスタイルで、チャージ時間の間に魔法を重ねがけすることで、より一層強力な攻撃を繰り出すことができます。回復魔法やガードを使うとキャンセルされてしまうため、その辺の塩梅が重要。初期手札によって、攻撃魔法が多い子と、回復魔法が多い子に分けられているのも特徴です。
そして、神技使い。他ではあまり聞かないようなこのスタイルは、武器でも魔法でも攻撃することができる器用なスタイルで、“印” という神の技を使って戦うのが特徴です。印は指の本数が重要で、数の並び通りに上手くコンボをつなげることで、相手を麻痺させることができます。
このように、攻撃が得意な子と防御が得意な子がいるため、どの子供を選ぶのかによって塔攻略の際の戦略の立て方も大きく変わってきます。
どういうパーティを組めば相性がいいのかを考える時間も非常に楽しいですね。
また、子供には “愛着度(LOVE)” というステータスがあり、集落内で話に耳を傾けたり、塔に挑むことで上げていくことができます。
この値が一定に達することで、プロフィールがより詳細なものとなり、子供たちの抱える悩みや人間性などが明らかになっていきます。
そして、愛着度が最大値に達すると、イベントが発生。子供たちは覚醒し、未熟さゆえに持っていた、冒険の妨げになってしまう初期スキルが、冒険に有用なスキルへと変貌を遂げ、一気にたくましく頼れる存在へと成長します。
どのキャラクターの愛着度を上げておくか。この点も、パーティメンバーセレクトのひとつの指標となってきます。
……さて、塔の攻略を中断したり、塔の攻略に失敗した子供たちは集落へと戻ってくるわけですが、塔の攻略に成功し、地上に辿り着いた場合はどうなるのでしょうか。集落の仲間たちを連れて行こうにも、彼らは塔の頂上。仲間を連れていくことは叶いません。
となると、他の仲間たちは、必然的に塔の頂上に取り残されたメンバーの中でパーティを組み、地上を目指して塔に挑まなければならなくなります。
要するに、塔の踏破に成功した場合に、塔に残される子供たちのことも考えてパーティを組まなければならないのです。最悪の組み合わせを残さないように注意しましょう。一時的な相性の良さ、強さだけで考えていると後で痛い目をみてしまう……かもしれません。
……そして、また新たな子供が集落に加わっていき、新たな2人組が地上に辿り着く……。最後に集落の中に残される子供はたったの1人。この子供の冒険こそが、ハテナの塔の本当の試練であると言います。その試練の先には、一体何が待ち受けているのでしょうか。
終わりに
さて、ここまで本作の魅力について簡単にお話してきましたが、今回紹介したのは、氷山の一角、ハテナの塔の全容の極々一部に過ぎません。
ハテナの塔には、沢山のハテナが潜んでおり、塔に出現する敵キャラクターにもそれぞれストーリーがあります。それらをひとつひとつ解決し、ハテナを明らかにしていくことも、本作の楽しみのひとつとなっています。
実は先ほど紹介しました、逆位置では毒になってしまうやく草も、とある敵キャラクターのハテナと密接に関係しています。そのハテナを解決することができれば、なんとその探索の間、やく草を正位置でも逆位置でも普通の回復アイテムとして使うことができるようになります。
命の重さをテーマに制作され、“生とは何か?” を問いかける本作。ハテナの塔は、果てがない塔……もしかすると、ハテナは、“?” だけでなく、“果て無” という意味も含んでいるのかもしれません。
皆さんも是非、子供たちの成長を見守りつつ、果て無きハテナの塔に一度挑戦してみてはいかがでしょうか…………合掌。