世界最大のゲームアワード「The Game Awards 2023」にて、ついに発表された協力型の強盗シューター『Den of Wolves(デン・オブ・ウルブズ)』。
本作はハードコア・ホラーシューター『GTFO』で知られるスウェーデンのゲーム開発スタジオである10 Chambersが手掛ける新作タイトルですが、発表された内容だけではまだ全容は明らかになっていません。
どうやら本作は、『PAYDAY』シリーズを手掛けたウルフ・アンダーソン氏が「ずっと作りたかった」と語る新作の強盗FPSとのこと。『PAYDAY』好きの筆者としてはそれだけで期待してしまいます。
幸いなことに電ファミ編集部は、発表に先駆けて開催されたグローバルプレスツアーに参加することができました。
そこで本記事では『Den of Wolves』に関する新情報や魅力、そして本作のシナリオ・ディレクターであるサイモン・ヴィクルンド氏とコミュニケーション・マネージャーであるロビン・ビヨーケル氏へのインタビューの様子をお届けします。
正直なところ……新情報が出れば出る程、ワクワクが止まりません。
文/Squ
彼らが「強盗ゲーム」の舞台に舞い戻ってきた
まず、本作『Den of Wolves』において欠かすことのできない人物であるウルフ・アンダーソン氏と、彼が設立した開発スタジオ10 Chambersについて少し説明させてください。
ウルフ・アンダーソン氏といえば『PAYDAY』シリーズの開発者として知られています。2015年に10 Chambersを設立すると、ハードコア・ホラーシューター『GTFO』の開発を開始。
10 Chambersはウルフ・アンダーソン氏をはじめ、『PAYDAY』開発チームの出身者が多く在籍しているスタジオ。同社のファーストタイトルである『GTFO』は数多くの賞にノミネートされるなどの人気を誇り、Steam上では3万6000件にもおよぶレビューと「非常に好評」の評価を得ています。
そんな10 Chambersから完全新作となる『Den of Wolves』が発表されました。2013年に発売された『PAYDAY2』から10年。彼らが「強盗ゲーム」の舞台に舞い戻ってきたのです。
近未来が舞台となる『Den of Wolves』のジャンルはテクノスリラー
本作『Den of Wolves』は、2097年の近未来の地球が舞台。北太平洋に浮かぶ自然保護区「ミッドウェイ」が物語の中心となります。
ミッドウェイはアメリカの管理下と噂されているものの、事実上の無政府状態に置かれた島。製薬会社や石油会社など世界中の企業による開発競争が繰り広げられています。人権や倫理観、法律という概念は存在せず、「企業が法」となっている世界のようです。
『Den of Wolves』に組み込まれるSFの要素は、人々が思い描くような「現実味のない未来」ではなく、映画『インセプション』や『ヒート』などに登場する「我々が想像できる、ちょっと先の未来」を意識しているとのこと。
また、本作『Den of Wolves』は『GTFO』のダークで陰鬱なイメージよりも色鮮やかな作風になるようで、10 Chambersのスタジオ拡大も相まって野心的な作品となっているそうです。
「作らなければならなかったゲーム」から「作りたかったゲーム」へ
まだまだ謎が多い『Den of Wolves』について、ここからはシナリオ・ディレクターであるサイモン・ヴィクルンド氏とコミュニケーション・マネージャーであるロビン・ビヨーケル氏に詳しく話をうかがいました。
ヴィクルンド氏によると『GTFO』のゲームシステムは『PAYDAY2』のシステムを発展させたものであることに対し、『Den of Wolves』はその“両方の”発展形であるとのこと。ということは、『GTFO』と『PAYDAY2』のいいところ取りなのかもしれません。
「作らなければならなかったゲーム」から「作りたかったゲーム」にシフトした彼らのインタビューをお届けします。
──今回発表された『Den of Wolves』や、以前おふたりが携わっていた『PAYDAY』シリーズはどちらも「強盗モノ」ですが、強盗というジャンルを狙っている理由があれば教えてください。
ヴィクルンド氏:
「協力型の強盗モノ」というジャンル自体が、まだまだ開拓の余地のある領域だという点が非常に大きいです。『Den of Wolves』はSF要素を取り込むことで、さらに世界を広げていけると考えています。
また、『PAYDAY』のころから映画『ヒート』の影響を強く受けているため、今回もそれらの要素もたくさん入っています。
──タイトルの「Den of Wolves」は直訳すると「オオカミの巣窟」となりますが、どういう意味が込められているのでしょうか?
ヴィクルンド氏:
タイトルについては、ゲーム自体で取り扱っている企業間競争を、オオカミ同士の縄張り争いに例えています。ミッドウェイという狭いジャングルの中で繰り広げられる弱肉強食の世界を表現したいと思いました。
──“プレイヤー自身がボスになる”という表現がされていましたが、実際のゲームプレイでは他のプレイヤーと協力することになると思います。そうなった場合、自分自身はどのような立ち位置でミッションに参加するのでしょうか?
ヴィクルンド氏:
ゲームプレイにおいて、プレイヤー同士は「同じチームのメンバー」となります。なので、“ボス”といっても人材管理をするような内容にはなりません。ゲームはすべてアクションにフォーカスしていて、なにかを盗んだり、ハッキングで企業を妨害したりして、映画のように強盗の世界に入ります。
ロールプレイという視点で言えば、プレイヤー同士が繋がっているというよりも、ゲーム内のキャラクター同士が犯罪を通じて形成している「ネットワーク上での繋がり」といったイメージになると思います。
──『Den of Wolves』は「アクション」と「ステルス」を行ったり来たりするそうですが、『PAYDAY』シリーズとはどのような違いがあるのでしょうか?
ヴィクルンド氏:
それでいうと、『PAYDAY』はランダム性に欠けるところがあるかと思うんです。たとえば一度でも見つかってしまうと、あとは銃撃戦が繰り広げられるだけなので展開が容易に予想できてしまうんですね。
一方で本作は、仮にステルス状態から見つかってしまって戦闘に移行したとしても、再びステルスに戻ることができるようなゲームデザインに変更しました。
──『PAYDAY』のようなゲームで今後、「サイモン氏が手がける楽曲を聞けないのではないか?」と寂しがっていたファンも多いと思います。本作でご自身の楽曲について、心がけていることやファンに対してのメッセージはありますか?
ヴィクルンド氏:
『GTFO』で作っていたホラー調の楽曲も挑戦的な内容ではあったのですが、よりパワフルでアツいビートを刻むような楽曲をまた作りたいと思っています。
じつは『メタルギア ライジング リベンジェンス』のジェイミー・クリストファーソン【※】にも楽曲制作を手伝ってもらっていますし、これからロサンゼルスでレコーディングがあるので、よりSFらしい電子音楽に仕上げようとしているところです。
※ジェイミー・クリストファーソン
アメリカを中心に活動する作曲家。ゲーム音楽のほか、ハリウッド映画向けの劇伴などを作曲することもある。ゲーム音楽では『メタルギア ライジング リベンジェンス』をはじめとして、『ロストプラネット2』や『バイオニックコマンドー』などにも参加している。
──「地区ごとにDLCを用意したい」とおっしゃっていましたが、楽曲についてもなにか考えていることはありますか?
ヴィクルンド氏:
今後、DLCで新しい地区を追加することがあれば、それぞれの地区の文化を踏襲した要素を取り入れてみたいと思っています。文化を取り入れるという点では、その文化圏で有名なアーティストや声優と協力したり。
たとえば日本人街だったら、アメリカ人が無理に日本語を話すよりも、日本人の素晴らしい声優に頼んだほうがいいと思いますしね。
──『GTFO』はコアなファンには受け入れられているものの、少し敷居が高い印象があります。本作『Den of Wolves』は、より広く受け入れられることを想定して制作していますか?
ヴィクルンド氏:
シューター好きな男性層は多いと思います。ただ、本作ではアクションの比重も大きいので、アクションゲーム好きの女性層がプレイしてくれることも期待しています。社内にも女性ゲーマーが多いので、いろいろな意見を取り入れながら作っていきたいです。
とはいえそれ以前に、とにかく自分たちが「作っていて楽しいゲーム」を制作することに集中したいと思っています。
ビヨーケル氏:
敷居の話でいうと、『Den of Wolves』は『GTFO』より間違いなくカジュアルになっていると思います。
ヴィクルンド氏:
『GTFO』と『PAYDAY2』を比べると、『PAYDAY2』のほうが近いのではないかと思います。
──世界観のお話をうかがっていると、早く実際に『Den of Wolves』の世界を見て回りたいと思いました。本作は「オープンワールドにはならない」とおっしゃっていましたが、プレイヤーが世界を深く歩き回れるような要素を追加する予定はありますか?
ヴィクルンド氏:
ストーリーの進行に従ってさまざまな場所を訪れたり、ミッション次第では屋根をピョンピョンと飛び回るようなシチュエーションなどはあるかもしれません。しかし、残念ながら3D空間を自由に移動できるといったゲームプレイを追加する予定は今のところはありません。
──『PAYDAY』シリーズでは、お金、武器、ドラッグといった“ザ・強盗”という印象を受けるものばかり盗んでいた気がします。『Den of Wolves』はITが発展したSF世界が舞台とのことですが、たとえば「なにかのデータ」といった無形のものを盗んだりする機会が増えるのでしょうか?
ヴィクルンド氏:
そうですね。SFの世界なので、「なんでもできる」という回答にしておきましょう。ここについてはまだ秘密とさせてください(笑)。
しかしながら、今までお話ししたようにさまざまなSF映画からインスピレーションを受けているので「宝石」、「お金」、「設計図」といったものに囚われる必要がありません。
これはゲームデザインを個々のエリアに制限している理由にも繋がってくるのですが、「南アフリカにもアラスカにも、どこにでも行けます」としてしまうと、逆に自由度は下がってしまうと思っています。なぜなら細かい部分を描けなくなる可能性が高いからです。
継続してアップデートを行うために、どんどんアイディアを出し続けなければいけないので、その制限はとても重要なことだと思います。
──なるほど。我々の考える常識の範囲外からなにかを盗んでもおかしくないわけですね。
ヴィクルンド氏:
はい。楽しみにしていてください。(了)
まとめ
今回のグローバルプレスツアーでは『Den of Wolves』に込められた意味や舞台などが明らかになりました。
節々から、開発陣が本気で「強盗ゲーム」というジャンルの限界を押し上げようとしているという強い意志が感じられ、彼らがなぜ“SF”と“強盗ゲーム”を融合させたかったかがうかがえます。
今回公開されたトレイラーも一見すると難しい内容かもしれませんが、インタビューで語られた内容を踏まえるとまた見方が変わってくるはず……!
次の情報解禁がいつになるのか、現段階ではリリース時期も定かではありませんが、ここまで期待してしまう作品にはそうそう出会えるものではありません。今後の展開に期待しつつ胸を踊らせて待ちたいところです。
家庭用ゲーム機版に関しても構想があるようなので、PC以外の方も一緒に続報を待ちましょう!