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大人と子供が一緒に、ワイワイ遊べるゲームを作りたい。『オール・ユー・ニード・イズ・ヘルプ』が目指したのは、小さな子供のいる開発者たちが子供にも安心して渡せるゲーム

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プレイできるステージのバリエーションは120以上!待機中のロビーでは他プレイヤーの家に遊びにいけることも

──実際にプレイすることになるロビーやステージについてお聞きしていきたいんですが、ステージはどれくらいの種類があるのでしょうか。

木村氏:
ステージは、全部で120以上が用意されています。最初は森のエリアからスタートして、ランダムに選ばれるステージを皆でクリアしていくと、新しいエリアが解放されて新しいステージに行けるようになっていく形ですね。ステージが進むと、特殊なギミックも増えていきます。

『オール・ユー・ニード・イズ・ヘルプ』が目指したのは、小さな子供のいる開発者たちが子供にも安心して渡せるゲーム_012

──ステージの選択は完全にランダムですか?

木村氏:
ランダムはランダムなんですが、クリアしていないステージが優先的に選ばれる形になっていますね。ちなみに基本は協力型のパズルステージになりますが、たまに対戦型のスペシャルステージというものも出現するようになっています。

──スペシャルステージは、ビットサミットでの試遊だと二人一組で板をコントロールして球を撃ち返す『Pong』ようなゲームをするものが入っていましたね。他にはどういったものがあるのでしょうか。

木村氏:
一例としては、大量のサッカーボールが配置されているスペシャルステージがあって、とにかくボールをゴールに入れまくるといったものが入っていますね。こういったステージはパズルの合間の息抜きとして楽しんでいただければと思っています。

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──ステージの広さは試遊だと1画面くらいの大きさのものが多かった印象ですが、ゲームが進むともっと大きいステージも出てくるのでしょうか。

木村氏:
広さで言うと、大きいステージでも大体2.5画面分ぐらいですね。大きいステージを作るとどんどん移動の手間も出てしまいますし、あんまり回転することに難しさを設けたくないと思っていて。本作はキャラの移動もそんなに速くないですから、いろいろとバランスを見ながらステージの広さはそれくらいに抑えています。

──なるほど。ロビーについてですが、ステージクリアで手に入るコインでガチャを回して、アクセサリーや自分の部屋に飾る家具を手に入れられますよね。あれはどれくらい種類があるのでしょうか。

木村氏:
アイテムは全体で120種類くらい用意されてますね。ちなみにほかのプレイヤーの部屋に行って家具に触れたり、アクセサリーを借りたりといったこともできるようになっていますよ。

──人のアクセサリーを借りることもできるんですね。ドットサングラスや鼻眼鏡などユニークなものも結構あるようなので、借りられると楽しそうですね。

木村氏:
ですね。本作はローカルマルチとオンラインマルチを混合で遊べるようなつくりになっているんですけど、せっかくならロビーに皆それぞれの部屋を持ってて、知らない人に自分の部屋を見てもらったりとか、自分の部屋に来てもらってちょっと遊びができるみたいなことをやりたいなというところがあって、こういう形になっています。

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──家具だと、さきほど試遊させていただいたときにはジュークボックスが出ました。BGMを変えられるのが面白かったです。

木村氏:
家具には、ほかにも転がして遊べるサッカーボールとか、あとは楽器もありますね。ギターとかドラムとか。触るとコードが鳴るようになっていて。

──演奏会なんかもできたり…?

木村氏:
うーん、めちゃくちゃ頑張ったら、もしかしたらできるかもしれないですが…どうでしょうね(笑)。

「4人でワイワイ」するやりとりこそがゲームのコア。4人専用ゲームという尖りまくったシステムを支える、ローカルマルチとオンラインのマッチング

──本作は完全に4人プレイ専用タイトルですよね。ローカルとオンラインを交えて繋がれるとはいえ、4人集まる必要があるというのはかなり尖った作りだと思うのですが、プレイ人数を4人に限定した理由を教えてください。

木村氏:
はい。これについてはこれまでに、プレイ人数を減らそうという話も何回もあったにはあったんですが、社内で最初のプレゼンをした時から、このゲームは4人でワイワイして、「赤そっち!」「青はそっち!」「黄色そっちや!」みたいなやりとりがこのゲームのコアの部分だなと感じていたので。

この数を少なくするとゲーム本来の良さが削がれてしまうかなというところがあったので、「やっぱり4人が必要だね」という話に落ち着きました、代わりにオンラインプレイへの対応は必須として、4人集めやすい環境を作ろうという話になりました。

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▲キュー・ゲームスに置かれていた4色のコントローラ。キャラクターのステッカーが貼られている

──なるほど。ちなみに本作はクロスプラットフォームプレイにも対応しているんですか?

木村氏:
はい。Nintendo Switch、PS5、Xbox One、PCのすべての機種同士でオンラインでつながれて、ローカルマルチプレイをしたままオンラインの人ともマッチングできるようになっています。なので4人は必要ですが、集まりやすいようになっていると思いますよ。

──それは嬉しいですね。しかしそうするとこのゲームは、ローカルマルチのままオンラインにも繋げて、しかもクロスプラットフォームプレイもできるようになっていると…これって、技術的にけっこう大変だったりはしないんですか?

木村氏:
そこは…まあ大変ですね(笑)。

一同
(笑)。

木村氏:
ただ、キュー・ゲームスでは過去タイトルの『PixelJunk Scrappers』でクロスプレイに対応していて、そこのバックボーンがあるのでゼロからの実装ではなかったんです。そのおかげで対応は比較的楽に…いや、まあ楽ではなかったんですけど(笑)。

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▲『PixelJunk Scrappers』

──ほかにも4人で遊びやすくするための施策はありますか?

木村氏:
オンラインのランダムマッチングだけでなく、招待コードを使った、フレンド同士のマッチングももちろん入っています。

それから、なるべく色々な環境のひとが協力プレイを体験できるように、ひとつのコントローラを左右でシェアしてキャラを操作することも可能にしていますね。

──最近はコントローラも高いですし、家族や友人同士でプレイする時には助かりそうですね。

木村氏:
それとSteamの「Remote Play Together」にも対応していますので、フレンドとゲーム画面を共有して、オンラインでローカルマルチプレイに参加するといったこともできます。リモート環境での開発中は、週末にこれでテストプレイをしていたりしましたね。

──ところで気になったんですが、オンラインとなると時には非協力的な、いわゆる「荒らし」のようなプレイヤーと遭遇することもあるのではないかと思うのですが、そのあたりに対する対策のようなものは入っているんでしょうか?

木村氏:
ゲーム自体が協力を前提としているので、そこまで荒らしはいないんじゃないかなと願っているのですが、いくつかの施策は用意しています。

具体的にはステージの制限時間と、投票制でギブアップする仕組み、それとプレイヤーが回線落ちした時にもゲームを継続できる仕組みといったものですね。これらによっていわゆる荒らしのようなプレイヤーに遭遇した時にも、なるべく快適に遊べるようにしています。

──そういったケースの想定もされているということですね。

木村氏:
はい。やっぱり、人のコントロールってできるようでできないので、そこは常に作り手であるこちらも悩ましいと思いながら入れています。

ちなみにステージに制限時間は入れているのですが、これはタイムオーバーになってしまった場合でも、全員がコンティニューを選択したら、その場から続行できるようになっています。

これはもともと制限時間のないゲームにしたかったんですけど、オンラインのユーザーにも参加してもらうところを考慮すると、ちょっと制限時間は入れざるを得ないなというところがあって。なので制限時間自体は入っているものの、タイムオーバー後も続けたいと思う人がいたら、その場から続けられるような設計になっていますね。

『ピクミン』の『愛のうた』でも知られるわたなべともえさんの曲も本作の魅力。その裏では、『スターフォックス』制作者の尽力があった

──本作は『ピクミン』で「愛のうた」を歌っていることでも知られる、わたなべともえさんの曲がBGMになっているのも印象的ですよね。どういった経緯で曲のオファーが行われたのでしょうか。

木村氏:
曲のオファーをしたのは開発中盤以降の話になるんですが、もともとキュー・ゲームスでは『PixelJunk』というシリーズで、アーティストとコラボしてゲーム用の楽曲を提供してもらうということが過去何度かあったんです。そういった経緯から今回のBGMを社内で作るか、外部にお願いするのかどうしようか、と話していた時のことがきっかけですね。

弊社代表のディランが「べーさん(わたなべさん)の歌が合うんじゃない?」とひらめきまして。たしかに、それは良さそうだぞと。

実はわたなべさんとディランの奥さんは結構古くからの知り合いで、過去には弊社の忘年会でライブをしてもらったりといったお付き合いがあったりしたんですよね。

それで早速連絡を入れてみたら、「自分の世界観にもあっているから、是非協力させてください!」と、すごい勢いで快諾いただきました。

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ヘルパー・スケルターズ『オール・ユー・ニード・イズ・ヘルプ せーのでもふくるポン! 』サウンドトラック・アルバム

配信リンク:https://linkco.re/u96b522T

木村氏:
今回のプロジェクトのために、「ヘルパー・スケルターズ」というバンドまで作っていただいたりもしているんです。

ゲームには普通の歌もいくつか入っているんですが、キャラクターが喋る都合上、ステージでは雰囲気を壊さないように基本的にはハミングとかラララ…というフレーズの入った曲が中心となっています。

──わたなべさんの優しい歌声とアコースティックな雰囲気がゲームにしっかりマッチしていましたね。

木村氏:
ええ。そこはすごくうまくマッチしたなあと。ちなみにちょっと面白い話なんですけど、曲の収録は弊社のスタジオでやってまして、じつはその編集とかマスタリングはディランがやっているんです。

──え!?ディランさんって元々プログラマーですよね。音楽の編集もできるんですか!?

木村氏:
そうなんですよ、もともとバンドを組んだりもしていたので。なので今回、曲の編集やマスタリングはディランが担当になっています。

──、まさか『スターフォックス』の伝説的なプログラマーが音楽の編集でかかわっているとは意外過ぎました。

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▲キュー・ゲームス代表、ディラン・カスバート氏。(画像はキュー・ゲームス公式サイトより)

木村氏:
スタッフロールにもミュージックエンジニアでクレジットされているので、よかったらチェックしてみてください。

──楽しみにしておきます。ちなみに曲といえば、本作の『オール・ユー・ニード・イズ・ヘルプ』というタイトルはビートルズの曲が由来ですか?

木村氏:
そうですね。タイトルはビートルズの『オール・ユー・ニード・イズ・ラブ』から取ってきています。このタイトルは企画の最初からそのままですね。僕がビートルズ好きなのでゲームジャムのときにつけたものなんですが、ゲームの内容ともあっていたので、そこから変わらずここまで来ています。

ただ、日本人には「オール・ユー・ニード・イズ…」という言い回しはあまり馴染みがないよね、というのもあったので、あとで皆でアイデアを出しあって、日本語ではサブタイトルの「せーのでもふくるポン!」というのを追加しています。

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──なるほど。実は私もビートルズの曲についてはかなり後から知った口で、「オール・ユー・ニード・イズ…」で真っ先に浮かんだのは映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のほうでした。

木村氏:
(笑)。やっぱりそういう世代差はあるかもですね。そういう意味でも今回のサブタイトルはつけて良かったかな、と思います。

それと「もふくるポン!」というワードを皆さんに覚えてもらう意味も兼ねて、わたなべさんに『もふくるポン!のうた』という曲を作ってもらったりもしているんですよ。この間のビットサミットの最終日にライブで演奏していただいたりもしました。

──それは公式アナウンストレーラーで使われていたのとは別の曲ですか?

木村氏:
そうですね。サブタイトルを決めた次の週くらいに、わたなべさんに「作りましょうか?」ってご提案いただいて。

その時はもう、ビットサミットの出展まであまり期間のない時期だったんですけど、わたなべさんは元々アコースティックなアーティストさんで即興的な演奏も得意というのもあって、かなりスピーディに対応していただきました。「作ってきまーす」みたいな感じで(笑)。

──わたなべさんの方も、かなり積極的にかかわってらっしゃったんですね。

木村氏:
はい。わたなべさんの曲が収録されたサウンドトラックも発売中ですので、よかったらゲームと一緒にチェックしてみてください。

ゲーム開発者として、そして子を持つ親として。ちいさな子供やゲーム慣れしていない人とも、安心して遊べるゲームを目指した

──最後に、本作が気になっている方に向けて、一言お願いします。

木村氏:
『オール・ユー・ニード・イズ・ヘルプ せーのでもふくるポン!』は、元々のコンセプト自体が戦闘がない、喧嘩しないってことからスタートしておりますので、そういう意味でお父さんお母さんからもお子さんに与えやすいゲームになったのではないかなと思います。

僕たちのチームのコアメンバーは、僕自身も父親ですし、アーティストの黄さんや、リードプログラマーのジョナタンも小さな子供がいます。なのでそういうところでも、感覚的にも通ずるものがあったというか、安心してお子さんに渡せる作品として、一貫したものが作れたんじゃないかなと考えています。

もちろん小さな子供さん以外にも、大人や、ゲームが苦手な初心者の方にも楽しんでいただけるゲームになったと考えていると思いますので、気になった方はこの機会にぜひ一度、『オール・ユー・ニード・イズ・ヘルプ せーのでもふくるポン!』を遊んでみてください!(了)


平和的な雰囲気で、ゲームが苦手な人でも皆と協力してワイワイ楽しむことができそうな温かみが感じられる『オール・ユー・ニード・イズ・ヘルプ せーのでもふくるポン!』。

その制作の裏側には、子供を持つ大人たちによる、子供たちと遊べるゲームを作りたいという想いがあり、あらためてゲームの画面を見てみると、その温かみが内側からあふれ出してきているような、そんな感覚がありました。

子供や、大事な人と一緒に遊ぶ、という体験は、一生のうちでもそう長く体験できず、かけがえのない思い出になったりするもの。もし、そのためのちょうどいいゲームを探しているならば、一度、本作のことを調べてみていただきたいです。

もしかしたら本作は、そんな相手との貴重な思い出を作ってくれるきっかけになるかもしれません。


『オール・ユー・ニード・イズ・ヘルプ せーのでもふくるポン!』は現在発売中。対応プラットフォームはXbox one、 Nintendo Switch、 PlayStation 5、 PC(Steam、 Windows Store)で、Game Passにも対応する。価格は2500円。

また本作のダウンロードコンテンツとなるキャラクターパック『ワイワイフレンズパック』および、ゲーム本編と『ワイワイフレンズパック』がセットとなったお得な『オール・ユー・ニード・イズ・ヘルプ ~ワイワイフレンズバンドル~』もそれぞれ発売中だ。

価格は『ワイワイフレンズパック』が1000円で、『オール・ユー・ニード・イズ・ヘルプ ~ワイワイフレンズバンドル~』が3300円となっている。

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ライター
85年生まれ。『勇者のくせになまいきだ。』シリーズの代表的プレイヤーとして名を馳せたツルハシの化身。 10代の頃、メックシューターゲーム『ファントムクラッシュ』とその続編『S.L.A.I.』の世界にハマり、 ディスプレイ越しに見た2071年に帰るべく日々を生きる。TCGとボードゲームも好物。
Twitter:@Dump29
編集者
小説の虜だった子供がソードワールドの洗礼を受けて以来、TRPGを遊び続けて20年。途中FEZとLoLで対人要素の光と闇を学び、steamの格安タイトルからジャンルの多様性を味わいつつ、ゲームの奥深さを日々勉強中。最近はオープンワールドの面白さに目覚めつつある。
Twitter:@reUQest

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