いま読まれている記事

「崩壊」シリーズは、なぜ人間の可能性を信じるのか?「崩壊」シリーズのシナリオ制作陣に聞く、超絶規模の「人間讃歌」と、「世界の美しさ」を信じ続ける物語の描き方

article-thumbnail-241128h

1

2

3

率直に、「崩壊」シリーズって、割と謎に包まれているよなと思っていました。

『崩壊学園』『崩壊3rd』『崩壊:スターレイル』と、数々のタイトルをまたいで制作されているタイトルだけど……実のところ、なにがどう繋がっているのか、制作側はなにをどうしようと思って作っているのか、よくわからない。大人気なのは間違いないけど、結構謎に包まれてる。

そんな中で発表されたのが、待望の『崩壊3rd』と『崩壊:スターレイル』のコラボ!元々姉妹作品みたいなノリだった両作だけど、いよいよ本格的にコラボを実施する!!

それにかこつけて、私たちは上海に飛び、なんと「崩壊」シリーズのシナリオ制作陣にお話をうかがってみることにした。実のところ、「崩壊」シリーズそのものについてここまで聞いてみたインタビューって……世界初かも? ホヨバの人も「こんなこと中々ないですよ!」と言っていました。

「崩壊」シリーズ シナリオ制作陣インタビュー:超絶規模の「人間讃歌」と「世界の美しさ」を信じ続ける物語の描き方_001

今回のコラボのきっかけや経緯、シリーズが掲げている宇宙規模の「人間讃歌」のテーマ、『崩壊3rd』と『崩壊:スターレイル』が描こうとしているもの、シリーズお馴染みの「キアナ、芽衣、ブローニャ」が作られた時のこと、「古の楽園」が大変すぎて夢の中にまで十三英傑が出てきた話……。

もう、たっぷり「崩壊」シリーズについて聞いてきました!

そして、始まる前にこんなことを言ってしまうのもなんだか手前味噌ですが、私はこの原稿を作っていて、ちょっと泣きそうになりました。世界の美しさを守るための旅。星々を開拓する航路。それらは、どんな想いがあって描かれているのか……想像以上に、赤裸々に語ってくださいました。

艦長のみなさん、開拓者のみなさん、ぜひ最後まで読んでください!

聞き手・文/ジスマロック
編集/実存

※この記事は『崩壊3rd』の魅力をもっと知ってもらいたいHoYoverseさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


『崩壊3rd』と『崩壊:スターレイル』のコラボ、そもそもどういうキッカケで始まった?

──本日はよろしくお願いします。まずは、『崩壊3rd』と『崩壊:スターレイル』のコラボについてお聞きできればと思います。今回のコラボは、具体的にはどんなきっかけがあって始まったものなのでしょうか?

崩壊チーム:
『崩壊3rd』と『崩壊:スターレイル』は、お互いの世界観にかなり結びつきがあるんです。だから、かなり早い段階から「両作の世界観を結び付けることができないか」と考えていましたね。だから、私たち自身もこのコラボを始めるタイミングをずっと待っていたんです(笑)。

特に、『崩壊3rd』に登場している「ヴィタ」【※1】は、今回の「ふたつの世界を結びつける」というシチュエーションに対して、設定的な意味でかなり長けているキャラクターでもあります。そんなヴィタが登場している今こそが、今回のコラボにとって「いいチャンス」だと思っていました。

──やはり、今回のコラボはかなり早い段階から構想が練られていたものなんですね。では、約2年前の『崩壊:スターレイル』が正式にリリースされたあたりから、このコラボは考えられていたのでしょうか?

崩壊チーム:
やはり、両作は「姉妹作品」とも言える存在なので、早い段階から構想を練っていました。

ですが、具体的な構想はヴィタが登場してから作り始めましたね。

──コラボの構想自体もヴィタが起点になっているんですね。

崩壊チーム:
「崩壊」シリーズを開発する中で、ふたつ重要にしているものがあります。

ひとつ目が、「これから何をやっていこうか」という構想の部分。そして、ふたつ目が「いまから何をやるか」という実際に制作に移していく部分。この「構想の段階」と、「実際に制作する段階」は、明確に区別をしています。

たとえば、ひとつ目の「これから何をやっていこうか」という構想においては、プロジェクトの非常に早い段階から、「ヴェルト」を両作を結びつける基礎として考えていました。つまり、構想の段階から「いずれ両作がコラボをする可能性もある」ということも想定し、『崩壊:スターレイル』にヴェルトを登場させていたんです。

また、今回のコラボで登場するヴィタや花火も、プレイヤーにとっては両作の良い化学反応を見せつつ、「ふたつの世界を結びつけるきっかけ」として、楽しんでいただけるのではないかなと。

「崩壊」シリーズ シナリオ制作陣インタビュー:超絶規模の「人間讃歌」と「世界の美しさ」を信じ続ける物語の描き方_002
※1「ヴィタ」
『崩壊3rd』に登場しているキャラクター。どんなキャラなのかを紹介しているだけで膨大なテキスト量となってしまうのだが、端的に言うと「すごい能力を持った宇宙規模存在の代理人」である。つまり、『崩壊3rd』と『崩壊:スターレイル』の世界観を行ったり来たりする可能性もある、超越した存在。

「崩壊」シリーズ シナリオ制作陣インタビュー:超絶規模の「人間讃歌」と「世界の美しさ」を信じ続ける物語の描き方_003

──今回のコラボは、『崩壊3rd』のキャラクターたちが『崩壊:スターレイル』の世界観を巡っていく形のシナリオが展開されました。このストーリーはどのような考えで書かれたものなのでしょうか?

崩壊チーム:
ポイントとしては、「このコラボをプレイヤーたちにどう表現していくのか」を大切にしていました。

やはり、プレイヤーさんの中には、「ひとつの作品しか遊んだことがない」という方もいらっしゃいますよね。『崩壊3rd』を遊んでいない方もいれば、逆に『崩壊:スターレイル』を遊んでいない方もいる。

そんな方にもあまり負担をかけず、リラックスして『崩壊3rd』上でのコラボを楽しんでもらえることを原則としていました。

そのうえで、『崩壊3rd』を遊んでいる方に、『崩壊:スターレイル』の世界観の魅力を感じてもらうことも大切にしていました。『崩壊:スターレイル』をやったことがない方にも、新鮮味があって楽しい。さらに両作を同時に遊んでいるプレイヤーにも、推しコンテンツ同士のコラボに喜びを感じてもらえればと!

──両作のファンが楽しめるような作りを目指していたんですね。ちなみに、両作の設定や世界観も含め、コラボシナリオを書きあげるのは大変ではなかったのでしょうか?

崩壊チーム:
一応、『崩壊3rd』は「太陽系の人たちが未知の宇宙に対面した時、どのようにお話が展開していくのか」という考え方から、シナリオを書き上げることが多いです。だから、どんな難しいシチュエーションでも……まぁ、なんとか書いていけますね(笑)。

一同:
(笑)。

「崩壊」シリーズ シナリオ制作陣インタビュー:超絶規模の「人間讃歌」と「世界の美しさ」を信じ続ける物語の描き方_004

──今回のコラボでは、プレイアブルキャラクターとして「花火」が登場していました。なぜ、花火をチョイスされたのでしょうか? 『崩壊:スターレイル』側のキャラという意味では、三月なのかや丹恒などの列車組を登場させる選択肢もあったのではないかと思うのですが。

崩壊チーム:
やはり、花火はいたずら好きで、「トリックスター」ですよね。しかも、神出鬼没。その点から、「どこに現れてもおかしくない存在」として、今回のコラボの主役にふさわしいのではないかと考えました。なんとなく、花火なら『崩壊3rd』の世界に出てきてもおかしくはないですよね(笑)。

プレイヤーさんたちにはそんな花火の存在にサプライズを感じてもらいつつ、シナリオ上の「合理性」も持たせたいと考えていました。ある意味、『崩壊3rd』が『崩壊:スターレイル』から花火を借りる形となっていて、花火は少しの間だけ『スタレ』のメインストーリーから離れるようなイメージです。

──なるほど、花火のキャラクター性からチョイスされたんですね。

崩壊チーム:
また、花火が登場したのは「ヴィタ」の存在も大きいです。今回のコラボがヴィタを軸として作られているのと同様に、花火を登場させた理由にもヴィタが関連しています。

そもそも、ヴィタも自由なキャラクターで、黒でも白でもない「グレー」なエリアに立っていますよね。そんな束縛されていない彼女は、『スタレ』的に言うと「愉悦」にふさわしいキャラですよね(笑)。

そんなヴィタと花火は、性格の面では類似しており、同時に「相性がいい」とも言えます。だから、このふたりが出会う時は表面上は結構仲良くしているのですが……まぁ、実際には互いに損をすることもあるんじゃないかと思います。「付き合いが損になる友人同士」というか、「いちゃいちゃ悪友グループ」というか。

とにかく、そういった経緯で、ヴィタが花火から「仮面の愚者」の誘いを受けるストーリーを作り上げていきました。

「崩壊」シリーズ シナリオ制作陣インタビュー:超絶規模の「人間讃歌」と「世界の美しさ」を信じ続ける物語の描き方_005

「崩壊」シリーズ シナリオ制作陣インタビュー:超絶規模の「人間讃歌」と「世界の美しさ」を信じ続ける物語の描き方_006

──コラボキャラクターとして登場する花火が、『崩壊:スターレイル』のバトル画面を再現しているような演出となっていたことにも驚きました。この演出は、どのように考えられたのでしょう?

崩壊チーム:
まず、大前提として花火は人気がありますよね。

だからこそ、バトルやキャラクター性における花火の魅力も『崩壊3rd』のユーザーに伝えたいなと考えていました。そして、花火には「一人千役」「万能の花火様」という肩書きがあり、不可能を可能に変えることができます。「万能の花火様」がやることなら、それは全部実現可能なことです!

その結果として、『崩壊3rd』上で『崩壊:スターレイル』の画面を再現することにしました。

超絶規模の「人間讃歌」、なぜ描き続けられるのか?

──ここからは、「崩壊」シリーズのシナリオ制作に迫っていければと思います。率直な質問となってしまうのですが、『崩壊3rd』や『崩壊:スターレイル』に限らず「崩壊」シリーズのシナリオを書くうえで、どんなことを大切にされているのでしょうか?

崩壊チーム:
まず、「崩壊」シリーズのシナリオは、現代の文化(ポップカルチャー)を中心として作り上げていきます。

つまり、最初に「現実の人々がいまどんな問題に対面しているのか、どんな困難に直面しているのか」を考えます。その問題をキャラに付与し、シナリオの中で「キャラクターがその問題をどのように考えるのか、どんな試みをするのか」といった回答を、キャラクターを通して表現します。

そして、そのシナリオを通して、現実よりもう少しロマンチックかつ、ポジティブで理想的な結末を迎えられるようにしています。この物語を通して、プレイヤーさんたちには共感してもらいたい。この「感情移入できるお話」を原則として、「崩壊」シリーズのシナリオを作り上げてきました。

──なるほど、現実の問題を組み込むようにしていたんですね。

崩壊チーム:
そして、『崩壊3rd』はもう8年続いてきたゲームです。

だから、私たちの出発点も結構素朴で……この長い物語を通して、プレイヤーさんたちには「長い時間をかけて、一緒にいろいろなことを経験して、お互いに付き合ってきた」という感覚を共有したいんです。つまり、ゲーム内のキャラクターと、プレイヤーと私たち開発者は一緒に成長してきました。

この素晴らしい旅をともに経験し、いつかこの旅を思い出した時に「とても美しい思い出で、価値のある経験だった」と感じてもらえたのなら、それ以上の喜びはありません。

──ひと口に「崩壊」シリーズといっても、『崩壊学園』『崩壊3rd』『崩壊:スターレイル』と、多くのタイトルがシリーズ内にはあります。このシリーズ全体を通して、なにか「崩壊」シリーズのテーマや命題などはあったりするのでしょうか?

崩壊チーム:
これも、さきほどと同様に「成長」「(プレイヤーとの)付き合い」ですね。このふたつのテーマは、各作品でいろいろな表現がなされています。

たとえば、『崩壊3rd』では「立ち上がれ、美しい世界を守るために」という、美しくも素朴で善良な願い。『崩壊:スターレイル』では、「この旅が、いつか群星に辿り着かんことを」という、成長と旅路を予感させる宣言。両作には、ふたつのテーマをこの形で落とし込んでいます。

そして、中国には「人文关怀」(直訳: humanistic care, 人道的ケア)という言葉があります。これは、「他人のニーズや状況に注意を払う、共感と優しさの態度」を意味しています。この「人文关怀」は、人間社会の発展と進歩の基礎であり、調和の取れた社会を構築するための考え方でもあります。

そんなテーマを通して、人類の発展や試みを描くことに挑戦し続けています。

──すごく大きなスケールで、「人間讃歌」を描こうとしているということなのでしょうか。

崩壊チーム:
そうですね。
ある意味、「人間性の美しさ」とも言えます。

これらのテーマは、かなり簡単で、素朴で、単純で……だけど、ポジティブで美しいテーマだとも考えています。だからこそ長い時間をかけて、それを賛美し、描き続ける価値があると信じています。

──実際にゲームを遊んでいても感じていましたが、やはりシリーズ内でも「人間讃歌」を大切にされていたんですね。では、チーム内のみなさんも「人間の可能性」を信じていらっしゃるのでしょうか? そして、なぜ人間の可能性を信じられているのでしょう?

崩壊チーム:
そうですね……この答えは、少し長くなります。

まず、HoYoverseという会社は、「理想を追い続けること」を奨励してくれるんです。そして、私たちにとっての理想は、「人のために良いことをする人は、報われる」ということです。あるいは、「誰かのために善良なことをする」ということ。

だけど、この時代では、インターネットやグローバル化の中で、誰しも不安や混乱に直面します。人生において、なんらかのストレスや苦しみに直面することも余儀なくされる。しかし、そんな苦しみの真っ只中にいても、必ず、あなたに寄り添う小さな幸せが存在していることを知ってほしいのです。

そして、このような状況下では、そんな小さな幸せや、世界の美しさを知っていただく役割を、誰かが担わなければならないと考えています。だからこそ、ストーリーを通じて、プレイヤーのみなさまに感動してもらい、勇気や温かな気持ちを持っていただけることは、私たちにとって本当に光栄なことです。

『崩壊3rd』にせよ、これからの『崩壊:スターレイル』にせよ、私たちが物語を通して届けたいことは、常に一貫しています。この役割を今後も担い続けたいと考えており、同時に、担い続ける価値がある役割だと信じています。

「崩壊」シリーズ シナリオ制作陣インタビュー:超絶規模の「人間讃歌」と「世界の美しさ」を信じ続ける物語の描き方_011

崩壊チーム:
そして私たちが思うに、「歴史を読む」ことは、「物語を読むこと」とよく似ています。

歴史の中には、現在の私たちよりも、もっと苦しんだ人々がいます。しかし、彼らは過去の苦難や災禍を乗り越え、文明を現在まで存続させてきました。これは、素晴らしい奇跡なのです。

その歴史を読む時に感じた「人類の善良さ」があったからこそ、「人生の美しさ」を信じ続けることができる。人間を信じ続けることができる。

そして、それは創作物としての「ストーリー」にも同じことが言えて……物語に触れるうえでも、生み出すうえでも共通しているのが、「感動できること」です。私たちがストーリーを描くのは、そんな人類文明の灯火を、より多くの方に伝えていきたいからなんです。

「崩壊」シリーズ シナリオ制作陣インタビュー:超絶規模の「人間讃歌」と「世界の美しさ」を信じ続ける物語の描き方_012

「古の楽園」が大変すぎて、夢の中にまで十三英傑が出てきた

──続いては、『崩壊3rd』のシナリオを作るうえで大切にされていることをお聞きかせください。キャラクターやシナリオも膨大な『崩壊3rd』のストーリーの中で、どんなことを意識されていたのでしょうか。

崩壊チーム:
まず、「ストーリーとキャラを両立させる」ことですね。このふたつを、分けてしまってはいけません。基本的には、ストーリーを通して、キャラの魅力を伝えるようにしています。

その中でも大切にしているのは、キャラになにかを「させる」ことをしないようにしています。キャラクターに行動を強いてはいけません。

──つまり、シナリオ的な都合で「そのキャラが本来しないようなこと」をさせるのは避けているということでしょうか。

崩壊チーム:
そうですね。

どのキャラクターも、私たちにとっては本当に「血肉があり、実在している人」なんです。だからこそ、そのキャラがストーリーの中で、どんな意志を持ち、どんな選択をして、物語の流れに従ってどのようなことをするのかを、常に大切にしています。私たちがむやみにキャラの意志を変えてしまうようなことは、あってはいけません。

ですので、最も大切にしているのは「キャラの意志に従う」ことですね。キャラクターたちへの愛を基礎にして、彼ら・彼女らの意志に沿ったシナリオを作り上げています。

「崩壊」シリーズ シナリオ制作陣インタビュー:超絶規模の「人間讃歌」と「世界の美しさ」を信じ続ける物語の描き方_013

──さきほども触れていましたが、やはり『崩壊3rd』は非常に長く続いてきた作品だと思います。そんな『崩壊3rd』のシナリオを作る中で、「最も大変だったこと」はございますでしょうか?

崩壊チーム:
そうですね……やはり、制作中に困ることはいつも発生しています(笑)。

さきほども言ったように、プレイヤーと制作側が一緒に成長してきたことで、プレイヤーさんたちもゲームへの理解と審美眼が、どんどん高まってきています。だからこそ、私たち制作側としても、どのようにプレイヤーに新しい体験をしてもらえるのか、どのようにより良いゲームを表現していくのかを、昔から挑戦し続けてきました。

そんな「新しいもの」を作るのは結構難しくて……でも、それを作るのも楽しいことです! プレイヤーさんたちに、そんな新しい要素を楽しんでもらえたら、制作側としてはとても嬉しいですね。

──『崩壊3rd』内で言えば、やはり「古の楽園」【※2】がその挑戦の例なのでしょうか。

崩壊チーム:
正直、私たちも「古の楽園」に関して、制作当初は「ストーリー展開やゲーム性も全く新しいものだし、新しすぎて受け入れられないのではないか」という悩みを抱えていました……。

たとえば、エリシアを代表とする「十三英傑」という設定が、プレイヤーのみなさんに認められるのかどうかも、かなり心配していましたね。

「古の楽園」が実装される以前は、やはりキアナのような初期から登場しているキャラが人気だったこともあり、突然新たなキャラが何人も登場したところで、果たしてユーザーに受け入れられるのかと。

その中でも、最初に出てきた8人の英傑……たとえば「ケビン」や「華」は、ある程度はゲームの最初から登場していますし、あるいは漫画などのコンテンツで登場していた「スウ」などもいます。

つまり、「古の楽園」の前に十三英傑を登場させておくことで、プレイヤーには少しでも彼らを受け入れてもらえるようにシナリオを構成していたんです。

そして、みなさんが「古の楽園」をプレイする中で、楽しいと感じてもらい、私たちの仕事も認めてくれて……本当にホッとしました。そんなプレイヤーさんたちの愛があったからこそ、「古の楽園」のストーリーを続けることができました。とても、とても感謝しています!

「崩壊」シリーズ シナリオ制作陣インタビュー:超絶規模の「人間讃歌」と「世界の美しさ」を信じ続ける物語の描き方_014
※2「古の楽園」
『崩壊3rd』内に登場するコンテンツ。はるか昔の「前時代」で活躍していた、「十三英傑」という英雄たちの物語を紐解いていくローグライク型コンテンツとなっており、その設定の膨大さや魅力的なキャラクターたちの活躍も含め、『崩壊3rd』内でも特に人気のあるコンテンツ。

崩壊チーム:
だから、シナリオチームの多くの人間は、夢の中にも十三英傑が出てきたんです。しかも、毎晩夢の中で十三英傑が喧嘩していました。そこから目が覚めると、開発現場で十三英傑のストーリーを書く。帰宅して眠ると、また十三英傑の夢を見る。

そんな状態が、3ヶ月間も続きました……。

一同:
(笑)。

「崩壊」シリーズ シナリオ制作陣インタビュー:超絶規模の「人間讃歌」と「世界の美しさ」を信じ続ける物語の描き方_015

──ここまでは『崩壊3rd』を中心にお聞きしましたが、『崩壊:スターレイル』のシナリオを書くうえで大切にされていることについてもお聞きかせください。具体的に、『崩壊3rd』と『崩壊:スターレイル』のシナリオはどういった差別化を行っているのでしょうか?

崩壊チーム:
このふたつの作品における世界観は、ある程度受け継がれています。

ただ、『崩壊:スターレイル』の場合は、広大な宇宙を舞台とした旅を描いています。その中で最も重んじているのが、「旅の中にある新しいものを表現できるか」ということですね。

たとえば、高校生が初めて大学の校門に入る時、初めて社会人になる時、あるいは全く新しい都市で暮らすことになる時……そのすべての中で「全く新しいもの」に触れるはずです。そこで見たものは、実際に訪れるまでに想像していたものとは全く違う。そして、あなたの想像の境界を広げるはず。

この感覚は、今作の「星穹列車に乗って、次の駅を通過する」というフォーマットの元にもなっており、「開拓」という大きなテーマもそこから作り上げた側面があります。

その「新しさ」や「新鮮な驚き」はIPやシナリオだけではなく、美術やゲームデザインといった数々の面でも示されています。だから、ピノコニーにおける全体的な「新しさ」も、この考えに基づいている部分が大きいですね(笑)。

この考えを基礎としつつ、『崩壊:スターレイル』でどのようにプレイヤーのみなさんの想像を超え、より新しい試みを提供できるのかを常に考え続けていますね。この冒険の前途は、未知の可能性に溢れています。

「崩壊」シリーズ シナリオ制作陣インタビュー:超絶規模の「人間讃歌」と「世界の美しさ」を信じ続ける物語の描き方_016

──「崩壊」シリーズには、「律者」や「星神」のような、ものすごく壮大な設定がいくつも登場していますよね。こういった作品においてカギを握る設定を作るうえでは、どんなことを意識されているのでしょうか?

崩壊チーム:
基本的に、「その設定が簡潔でわかりやすいか」を意識しています。特に、重要な設定であればあるほど、それは世界観の中である種の「定規」の役割を果たします。だから、シナリオチームに限らず、どの部門でも設定の理解を一致させるようにしなければいけません。

その「理解のしやすさ」を開発内でも意識しつつ、プレイヤーさんにもわかりやすく伝えられるようにしていきたいですね。

加えて、その設定の「拡張性」も重要視しています。

たとえば、「律者」や「星神」といった重要な設定は、必ずのちのストーリーにも登場し、補足も行われていきます。だからこそ、もしその設定に拡張性がないと、世界観やストーリーが発展する可能性が狭まってしまうんですよね。そのために、「設定の柔軟性」は必要かなと。

1

2

3

ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ