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かつて弾幕STGは “邪道”だった。ケイブ・IKD氏と『東方Project』ZUN氏が、STGに弾幕を張った歴史を(ビートまりおに脇からツッコまれつつ)語り合う

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敵の膨大な弾が画面を覆いつくす。一目しただけで生き残れると思えない。だが、よく見るとぎりぎりで弾をすり抜られそうだ。ウソだろ? まさか生き残る道があるっていうのか?

弾幕シューティング(以下、弾幕STG)とは、そんな風に即死しか予感させない弾の嵐の中を生き延びることを魅力としたジャンルである。そんなジャンルを多くの人に広めた、ふたりの巨人がいる。

ひとりはIKDこと、池田恒基氏である。ケイブのクリエイターとして『怒首領蜂』『ケツイ ~絆地獄たち~』など、数々の弾幕STGのクラシックを生み出し、このジャンルを定義したひとりだ。

もうひとりはZUN氏である。ご存じ『東方Project』(以下、東方)博麗神主であり「東方」の世界観を生み出したイメージは強い。だが彼の根底にあるのはハードなSTGゲーマーであり、『東方紅魔郷』などのSTGで同人シーンに強大な弾幕を張ってきた。

IKD氏とZUN氏──同じ時代を生きながらも、ファンが二分されていた時期もあったゆえか、これまで公式な対談は実現してこなかった。そんなふたりが今年、ついに相まみえる。そこで語られる弾幕STGとは──ってあれ? なんかおふたりの間を割り込んで誰か来たんだけど!?

「ちょっと待ってくださいよ!」あれ? あなたはビートまりおさん? なぜここに? 弾幕STG史的に猪木vs馬場(『グラップラー刃牙』ファン向けなら猪狩vs斗場)ばりの対談をこれからやるんですけども?

「僕もこのふたりに言いたいことがあるんですよ!」なんと弾幕STGファンでもあるビートまりお氏が飛び入りし、対談は混沌としていくのであった。

ケイブ・IKD氏, 『東方Project』ZUN氏インタビュー:かつて弾幕STGは “邪道”だった_001
▲左から池田恒基、ビートまりお氏、ZUN氏

聞き手/斉藤大地
文/葛西祝
編集/西河紅葉
写真/まろん


「えっ? 弾が多くて何が面白いの?」昔、弾幕STGというアイデアは疎まれていた

ケイブ・IKD氏, 『東方Project』ZUN氏インタビュー:かつて弾幕STGは “邪道”だった_002

まりお:
歴史的な対談の実現に乾杯!

IKD:
(ジョッキを掲げて)よろしくお願いします!

まりお:
よろしくお願いしまーす!

ZUN:
僕はちょっと一口つけました(笑)。

──ちょっとZUNさん! ……まずは、すごく素朴な話を聞くんですけど弾幕STGって何なんですか?

IKD:
(ビールを飲みながら)何なんですかって?(笑)。

ZUN:
(笑ってビールを飲む)

──「弾が多い!」ってことなんですか? 初期の弾幕STGって、どこから始まったんだろう? というのをおふたりからお聞きしたいんですよね。

IKD:
私の印象としては、やっぱり1996年の『バトルガレッガ』が発端ですね。

私は東亜プランに在籍していた時代から、『バトルガレッガ』みたいに弾の多いゲームが作りたかったんです。

でも先輩方から…「こんな弾ばっかり多いゲームが何が楽しいの?」みたいなことを遠回しにも言われてました。(笑)。

ケイブ・IKD氏, 『東方Project』ZUN氏インタビュー:かつて弾幕STGは “邪道”だった_003
▲『バトルガレッガ Rev.2016』
(画像はバトルガレッガ Rev.2016より)

ZUN:
あの頃は弾幕って、かなり亜流に思われていたんでしょうね。

IKD:
そうですね……。

ZUN:
当時のSTGからしたら、邪道だったっていう。

──思い出してみれば、『バトルガレッガ』以前のシューティングの弾は落ち着いた量でしたね。

IKD:
はい。たとえば昔の東亜プランSTGって、画面内に出る球数が16発とか32発とかそれくらいなんですよ。

ZUN:
おそらく昔はハードの制約があって、そもそも弾はそんなに出せなかったのもありますね。

IKD:
でも「私が作りたいゲームはそうじゃない!」っていうのがあったんです。

──それが弾幕だったと。

ケイブ・IKD氏, 『東方Project』ZUN氏インタビュー:かつて弾幕STGは “邪道”だった_004

IKD:
そんなSTGに、そもそも「需要があるのは私だけかもしれない」ってこともありました。

先輩方に「それは楽しいの?」と言われていました。当時、弾幕STGはやっていいのか、やるべきかどうなのか、ずっと悶々としてた頃があったんです。

当時聞いた意見では「そんな誰が楽しいの? たくさんの弾を出して避けられるわけないだろ!」って、みんなが怒るっていう。

仮にそういうゲームを作ろうとしたとき、「誰向けなの? 超マニア向けのゲームを作りたいわけ?」って言われるのも想像できちゃうわけですよ。

けれど、それを切り開いたのが『バトルガレッガ』です。「やっていいんじゃん!」と思いましたね。

──ZUNさんは当時『バトルガレッガ』をプレイしてどうでした?

ケイブ・IKD氏, 『東方Project』ZUN氏インタビュー:かつて弾幕STGは “邪道”だった_005

ZUN:
目が覚めましたよ。「やっていいんだ」って(爆笑)。

まりお:
ダハハハハハハハ!

ZUN:
「本当にこんなの出していいんだ!」って(笑)。今考えると、ちょっとゲームバランス的にはすごく難しいゲームですけど。

──『バトルガレッガ』はプレイヤーのゲームプレイによって難易度が変動する「ランク制」というシステムが実装されてましたしね。

ZUN:
そう。あんまりショット打っちゃいけないとか、わざと死んだりしてランクを下げなきゃいけないんです。

けっこう面倒くさいゲームなんですけど、弾がたくさん出てること自体が衝撃的でしたよね。その前にも弾がけっこう出てるSTGはあったんですけど、『バトルガレッガ』ではもう、それが売りみたいな。

──当時、弾幕を出すことのためらいっていうのは、技術上の制約以外に何があったんですかね?

ZUN:
これは僕が当時まだゲームを作ってないので、プレイヤーとしての意見ですよ。

STGの世界観って、SFだったり戦争ものだったりすると、弾幕STGみたいに弾がたくさん出ることって……リアリティ、ないじゃないですか(笑)。たぶん、そういう美的感覚なんじゃないかなと思ってますけど。

──あの頃の弾幕って、STGの世界そのものを破壊しかねないようなものだったんですね。

IKD:
ただ、私は超マニア向けのゲームを作りたいわけではないんですよ。なんですけど、みんなドン引きですよ。「誰がゲームセンターに100円を払ってくれるの?」って。開発力をかけて作った挙句、ロケテで誰もお金を払わないという事態を恐れるわけですよね。

そこで『バトルガレッガ』が出て、空気が変わったっていうことだと思うんです。

ZUN:
プレイヤーの感覚では、戦闘機や戦車が砲台が弾を円形に撃ったらおかしいわけですよ。それがね、『バトルガレッガ』は平気でやっている。「いいんだ」と。そこが衝撃的でしたね。

──お話を聞くと、歴史の転換点なんだなと感じますね。

ZUN:
弾幕STGって、どちらかというと「自機が敵を撃つこと」がメインだったことから、「弾を避けること」がメインのSTGに変わっていったということだと思います。

だからSTGと弾幕STGは別のゲームなんです。新しいジャンルが生まれたなっていう瞬間です。

──その新しいジャンルを池田さんは作りたかったと。

IKD:
『バトルガレッガ』は人を選ぶゲームでしたが、支持する人は熱狂的に支持してたんですね。なので、「弾幕、いけるんじゃないか?」っていう。

それで本格的にやろうと思ったのが『怒首領蜂』ですね。

──『怒首領蜂』の稼働が『バトルガレッガ』の翌年、1997年ですよね。あの頃のゲーム制作は早いですね。

IKD:
そうですね。『怒首領蜂』を作り始めてる頃は、あそこまでの弾幕にするかどうかっていうのは決めてはいなかったんです。でも、「やってもいいんじゃないか」と思い始めて。

まりお:
俺、その前作の『首領蜂』もやってたんですけど、けっこう弾を乱雑にばらまいてるイメージがあって。

『怒首領蜂』から明確に幾何学模様的な美しさを感じたんです。この辺でなんかバリッと変わったなっていう印象があるんですよ。

IKD:
『首領蜂』はなんて言うんですかね……「東亜プランっぽいゲームを作れ」ってオーダーだったので、私なりの解釈で作ってたんですね。

私の色を入れると、「これ東亜プランのゲームじゃないよ」って怒られるわけで(笑)。

まりお:
ダハハハハハハハ!

IKD:
「東亜プランならボス戦ではヘリ出てくるでしょ!」とか言われるわけですよ(苦笑)。で、私はボス戦でザコが出てくるゲームがあまり好きじゃなくて。邪魔されてるみたいだから。

当時は「東亜プランっぽくやんなきゃいけない。自分としてこうゲーム作んなきゃいけない」って謎の狭間でどっちつかずっていう感じですね。

──『怒首領蜂』を稼働してからの反応ってどうでした?

IKD:
思っていた以上に支持していただいた印象がありましたね。当時。

ZUN:
僕もしばらくSTGから離れて、格ゲーばっかり遊んでいた時期もありましたけど、格ゲーがマンネリ化してきたときに、またSTGが面白くなってきたのでやってました。

ちょうど『怒首領蜂』が出てきたのもその頃ですね。そこからずっとSTGをやってます(笑)。

──90年代末には『エスプレイド』『ギガウイング』『サイヴァリア』が稼働し、弾幕STGがブームになったと認識しています。が、実際のところ、シューターにとってそれらの反応はどうだったんですか?

ZUN:
う~ん……(苦笑)。STGを遊んでる人の中では好きだったりするし、本当のシューターは嫌ってたりもしていたんですね。

IKD:
ですね~……(しみじみと)。

──賛否が分かれていたと。

ZUN:
すごい難しいタイミングですね。古くからのSTGが好きな人は「あれはSTGじゃない!」って、ずっと怒ってる。たぶん、今でも(笑)。

──「弾幕STGがSTGというジャンルを廃らせた」みたいなことって……。

ZUN:
「ダメにした」ってよく言われる。

IKD:
相当言われましたね。本当に。

ケイブ・IKD氏, 『東方Project』ZUN氏インタビュー:かつて弾幕STGは “邪道”だった_006

ZUN:
でも弾幕STGがなかったら、STGはどうなっているんだろうなとは思いますね。

IKD:
『怒首領蜂』が出たときはそこまで言われていないですけど、他社さんもこう含めて弾幕STGのラインナップが増えてくると「なんだこれ」って意見が出始めるんです。

ZUN:
そういう時に、古き良きっぽいSTGを出すメーカーもいるんですけども……。

──もう、弾幕の時代の流れは変えられないという。IKDさんは他社が弾幕STGを出し始めた時、ライバル心などありましたか。

IKD:
ありましたね。他社さんのロケテストには「どういうのを作ってんだろう」と行ってました。STG業界はそんなに広くはなく、全員ライバルなのでよくチェックしには行ってましたね。

まりお:
「これやられた!」みたいなSTGはありました?

IKD:
いちばん最初に思ったのはやっぱり『サイヴァリア』ですかね。

ZUN:
あれは弾がたくさん出てるとわかりやすく楽になるからね【※】

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※『サイヴァリア』では「BUZZ」という、自機が一定回数、敵弾をかすると無敵時間を得られるシステムがある
(画像はSteam:Psyvariar Deltaより)

まりお:
いまでこそ「バズる」ってインターネットの言葉になっちゃったけど、『サイヴァリア』で無敵になることを「BUZZる」って言葉だったんで。懐かしいな~。

──弾幕に対していろんな解釈のゲームデザインが出てきたころなんですね。

ZUN:
「弾をどう見せるのか?」ですよね。システムに組み込んだり、得点にしたり。

──2001年に稼働した『斑鳩』はどうでした?

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▲『斑鳩』
(画像はSteam:Ikarugaより)

IKD:
ちょうど『怒首領蜂 大往生』(以下、大往生)を作っていたところでした。「もうこんなの出たら、ゲーム出せないじゃん!」と思ってました。

『斑鳩』は今でも相当尖ってると思います。敵弾に対して無敵になれる要素を任意に切り替え、乗り越えていくゲームって、過去にもいっぱい提案されたけど、棄却されてるはずなんですよ。私も何度も社内で何度も見ました。

──敵弾に対して無敵化や吸収のアイディアって、現場でたくさん出ていたんですね。

IKD:
『斑鳩』は要素をめちゃくちゃ絞って作っているので、ゲームになってるじゃないですか。そこがすごいなって思いました。グラフィックもすごいなと思いましたし。

ZUN:
『斑鳩』はあのアートワーク自体がその白黒と一体化してて、すごく出来がいいんです。白と黒だけにして、その世界観がちゃんと合うようなイメージしてるから。でもあのゲームはね、弾幕STGではないですね。

まりお:
ひとつのSTGの完成形だと思ってますね。弾幕を吸収する気持ちよさとか、ちゃんとショットを狙って撃つ気持ちよさとか、そういう要素を突き詰めた完成形。

IKDとZUNはSTGにどう弾幕を張ってきたか?

──ここで歴史的な対談ということもあり、IKDさんに『東方Project 』シリーズをプレイしてもらいましょう!

ZUN:
『東方妖々夢』だ。ちょうど21年前のゲームだ。ちょうど『ケツイ』が出た時のゲーム(笑)。

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IKD:
しかもこれ、キーボードでプレイするという。(といいつつも巧みにプレイしてゆく)普段は調整はパッドですか?

ZUN:
パッドです。キーボードではやらないです。(画面を見ながら)懐かしいな~。

──さて、ZUNさんが「大往生」と同じ時期に出したのが『東方紅魔郷』ですよね。

ZUN:
Windowsで初めてのシリーズですね。特に勉強しなかったけど、作れるもんだね。

──弾幕STGが拡大している時期でのリリースでしたよね。

ZUN:
TAITOにいた頃にSTGを作るって話があったんです。で、企画を出したんです、ところが「STGは作りません」って返ってきて(笑)。もうフラストレーションだけが溜まる。

まりお:
TAITO的になんでダメだったの?

ケイブ・IKD氏, 『東方Project』ZUN氏インタビュー:かつて弾幕STGは “邪道”だった_010

ZUN:
上に「企画書出してくれ」って言われて、出したら「売れないからダメ」って(苦笑)。ただただ否定されるだけって。

まりお:
「腹立つ」と。

ZUN:
その時に出した企画が『東方紅魔郷』のように弾幕に名前を付けることでした。絶対いいと思ってました。コストもかからないし、盛り上がるから。

まりお:
当時ZUNさんは「スペルカードシステムは僕の発明だ!」って言ってましたもんね。

IKD:
(弾幕を避けながら)やっぱり商業で出したいって思っていたんですか?

ZUN:
今でこそ、そんなにないですけど、当時は個人で作ったところで、その先もないと思ってましたしね。

だから自分の作ったSTGをゲーセンでやりたかったですね。なんなら今でもやりたい(笑)。

──そしてIKDさんは2002年に「大往生」をリリースしていますよね。

IKD:
「大往生」は本音を言うと「ちょっとやっちまった」タイトルで……。

──えっ!?

IKD:
バランス失敗したなっていう。自分が思ってた以上に難しいゲームで、

──本当に大往生しちゃうゲームになってしまったと(笑)。

IKD:
狙ってたわけじゃないですけど(笑)。当時も「思っていたより難しすぎた」っていう。

ZUN:
「難しい」が売りにあの当時もなってましたし。

IKD:
あまり言いたくないんですけど、「時間がない」、「ハードのスペックが弱い」ってふたつがとにかくきつくて。

でも私なりにできることはやったつもりだったんです。それでもリリースしてから自分で遊んでみたら「これちょっとな……」と思いましたしね。

「弾幕」の美とは何か?

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──こうした代表作を持つおふたりに質問なんですが……弾幕の美しさってなんですかね? 人を引き付けるような美を、おふたりはどう作っているのかと。

IKD:
難しいこと聞きますね(苦笑)。

ZUN:
やっぱ弾幕に魅力を持たせたいと思ったら、戦闘機より生き物の方が演出しやすいと思ってて。シンプルに思うのは、たとえば弾幕の幾何学的な形を色や音楽で表現するのは確かに美しいです。

でも、美しいだけなら絵を見るのと一緒なんですよ。なんで弾幕が美しいかって言ったら、恐怖であったり、余裕であったり、ボスから出る感情と繋がるからプレイヤーに伝わるわけです。もしかしたら優しい弾幕だとか出せるわけです。

そういうのがただの見た目ではない。音楽と感情を合わせて表現できるものとして、他のゲームにはない表現方法なのかなと。

──「東方」では様々なキャラがボスとして出ますけど、そうしたキャラの感情表現としての弾幕なんですね。

ZUN:
そうですね。それと音楽を合わせています。突然、音楽を変える時にこういう弾を出すとか。弾幕とセットで表現させるための作品だから美しいと思ってます。

IKD:
全部が連携してるっていうことですね。

ZUN:
それが表面に一番出るのが弾幕なんです。

──対照的にIKDさんの弾幕っていうのは、STGの競技性を追求する機能性が高い印象があります。

IKD:
私は「避けていて楽しい」って作りから始まるので、弾幕の美しさは後からですね。

ZUN:
それでも美しいですよ(笑)。

──避ける楽しさを増幅させるために、弾幕のパターンを洗練させているというか。

IKD:
最初に「これくらい弾を撃ったらいいんじゃない?」と作っていって、そこから形を整え、「もっと豊富にした方が、その見た目も美しいだろう」って流れですね。

弾幕の美しさだけを取ると、「なんか弾避けつまんねえな」って時があるんですよね。その場合、その美しさを捨てるんです。私は楽しい方向に舵を切るっていう。

──爽快感っていうのがIKDさんの一番強い持ち味と感じますね。

まりお:
ケイブシューは俺、全部気持ちいいと思ってて。道中から何から全部が爽快感で満ち溢れてる。

ZUN:
だから好きなんですよ。あれは「東方」とは違うんですよ。

まりお:
「東方」は道中はそんなでもないじゃん?

ZUN:
あれはボスを表現するためだけにある(笑)。

──ZUNさんはそう弾幕を作りますが、IKDさんがボスの弾幕作るとき、何を考えているのかが気になっています。

IKD:
いや、何も考えてないんですよ。できあがってきたデザイン見て、「この一面のボスはボスとしてどうあるべきか」だけでしか作ってないんですよ。

ケイブ・IKD氏, 『東方Project』ZUN氏インタビュー:かつて弾幕STGは “邪道”だった_012

──それは「弾幕STGとしてどうあるべきか?」ってことですか。

IKD:
弾幕STGとしての難易度や、どれぐらいのボリュームがちょうどいいのかっていう。ゲームごとにノリがあるので、それを踏まえて作っているだけなんです。それは経験です。

──ネタ切れはありましたか?

IKD:
当然ありますよ。「作ってみたら前の奴に近いな」とか。何回作っても過去にやったものになったら、もう絶対こうしない選択肢を作り始めるんです。それを突破口にすることが多いです。

──道中の設計はどう作っていますか。2003年の『ケツイ』から、ある種の流れがあるというか。

IKD:
実はその背景のデザイナーが最初にバーってラフで描くんですよ。それを私が見て、脳内でSTGの完成形をイメージした後、お任せで敵をぜんぶ配置していく感じですね。

──ケイブのSTGは自機の武装や技もあっさりしてましたね。「レーザーとボム」くらいしか言わないのは、こだわりがあるんですか。

IKD:
「こだわりがなくて気にしてない」ですね。私は全部「TYPE A・B」になっちゃうので(笑)。

まりお:
ケイブシューには弾に名前とかないじゃないですか。「5面ボスの第三形態の~!」みたいな。

IKD:
ないですねえ。そもそも名前をつけるという発想がないので。

ZUN:
ファンの中ではちょこちょこ名前がついてたんですよ。「洗濯機」とか。

まりお:
「ふぐ刺し」とか! 勝手につけててね。あれ、IKDさんはどういう気持ちで見てたんですか?

IKD:
「言われてみればそうだな」と。(あっさりと)

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