「小説の大部分はAIに書かせてます」――AI時代のストーリー創作術を、『428』イシイジロウ×『刀剣乱舞-ONLINE-』芝村裕吏が語り合った!

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いまAIで何がどこまで実現できるのか

――せっかくなので、冒頭の会話につなげる形で、今の「物語の自動生成」とAIを結びつけてみたいと思うんです。実際、デジタルゲームで物語を自動生成するためには、AIの問題は欠かせないと思いますし。ちなみに、そもそも芝村さんはどんな風にAIで小説を書かれているんですか?

芝村氏:
 簡単に言えば、キャラクターを並べてもらい、時系列順にこういう行動をするというタイムスケジュールを書いてもらい、伏線の張り方も決めてもらう――という感じです。

 まず、物語というのは事象のつながりなんです。

 だから、仮に誰々がこの時間に起きて、こういうトリックを用いて、殺人を起こす、ということを文章にするとしますよね。そのときに、まず事象を最初に作って、事件を並べてしまうんです。これで大まかな事象のつながりができますね。でも、物語は伏線をしっかり張らないと、キャラクターの行動に整合性がないように見えてしまうんです。

――そうでしょうね。上手な作家の人ほど、しっかりとあらゆる行動に伏線を張り巡らしますね。

芝村氏:
 そこで、次にAIには、「50ページ前には第1伏線、25ページ前には第2伏線を、それぞれこういう内容で張ってください」ということを提示してもらう。まあ、ここまでは現状のAIで可能です。

――……AIが伏線なんて張れるんですか?

イシイ氏:
 むしろ伏線は周回しながら作ると完成度が上がりますからね。AI向きなのかもしれません。

芝村氏:
 そうですね。
 でも、この方法でできるのは一本道の物語だけですよ。ここから先の部分、ゲームだったらイシイさんのアドベンチャーゲームのように、分岐するものだと話は変わってきます。というのも、ああいうゲームでは、どちらとも受け取れるような事象や、伏線のように見えて伏線ではないといった「高度なフェイク」が事件のきっかけになるんです。ここは、人間の職人芸が光るエリアになりますね。

――それもちょっと不思議ですね。伏線を張る作業が得意なら、それらが複数に分岐したり、見せかけたりするような作業も同じように出来るように思えますが……。

芝村氏:
 分岐が起きるときって、事象に対する複数の解釈が必要になるんです。

 でも、AI――というかコンピューター――は、定義されているもの以外のことはできないんですよ。もちろん、伏線に対する理解や研究が進めば、この分岐の領域もプログラミングできるようになるでしょう。そのときには、物語の自動化ももう一段階、進むと思います。ただ、いかんせん我々人類は、まだしっかり伏線の研究をしてないので(笑)。

イシイ氏:
 既存の研究では、まずは一本道の物語の伏線をどうするかという、基本のところが優先されてますね。分岐まで含めたプログラムとなると、まだ研究に至る段階ではないと思います。

 これも構造さえ理解すれば、プログラムに落とし込めるんですけどね。そもそも研究者がいない状況なんです。

芝村氏:
 ゲームを作ってる人たちは、現場レベルでノウハウとして持っているんですけどね。ただ、それが成文化されて、学校で教えられるようになっているわけではないです。

イシイ氏:
 ちなみに、この問題を歴史的な目で見ると、「音声文化」と「文字文化」の問題になってくるんです。かつて文字が発明されるまで、人類は口承で物語を伝えてきたんです。そういう時代では、例えば落語もそうですけど、基本的にはお客さんありきなんです。相手とのインタラクション(相互作用)において物語は変化するので、仮に一本道の伏線を張ったとしても……。

芝村氏:
 役に立たない(笑)。

イシイ氏:
 そうなんです。

 実は人類は、オチの数だけ伏線を張るという、もともと分岐型のノベルゲームみたいなことをしていたわけです。ところが、文字の発明以降、いきなり物語が一本線になってしまった。そうなると、観客とのインタラクションの部分は、文字として紙に印刷するときには無駄になってしまう。すると、無駄を削り落としていって、一本の線として物語のクオリティアップに注力していくことになるんですね。

――紙というメディアの物質的な条件が、インタラクティブを許さなかった、と。でも、まさにコンピューターは、読者とのインタラクティビティが……。

イシイ氏:
 あるんです!
 そういう意味では、コンピューターの発明で、我々は過去に戻ることができたんです。でも、文字が印刷されるまで物語はもっと自由に語られていたはずなのに、そのノウハウが蓄積される前に印刷技術が普及して、リニア(一方通行)な物語ばかりを追究してきてしまったんです。まだまだ、インタラクティブに物語を語るノウハウを蓄積するには、歴史が短すぎるんです。

 文字文化が発展した一方で、物語として不自由になった影響は今も続いているんです。

『声の文化と文字の文化』ウォルター・J・オング(1991・藤原書店)。音声で語られた物語が、いかに文字によって変化したかを論じた有名な本。本書ではポオの探偵小説のようなプロットは「紙」の存在あってこそのものとして論じられている。
(画像はAmazonより)

芝村氏:
 完成度の高いゲームブックは伏線が張れないので、一本道になっていくという話があるんです。

 自分でも、どうすればこのクオリティで複数の分岐を作れるかと考えたとき、手直しする部分があまりにも大きくて、最終的に長い別ルートが複数あるだけでイマイチだなぁと思うことは多いです。

イシイ氏:
 本当にコストパフォーマンスが悪いですよね。だって『428 〜封鎖された渋谷で〜』の頃は、分岐専任の人がいたんですよ!

 3つのシナリオを並べて、その筋を全部見ながら、どうリンクさせるかを考えて、分岐や伏線を組み直していく。それを1年間ひたすら続けるという……。

――当時のチュンソフトのエピソードって、本当に凄まじいですよね(笑)。

芝村氏:
 失われた技術だなぁ(笑)。

ミサトさんを連れてくる“庵野AI”

――ただ、そこでもう一つ踏み込んでみたいんですよ。分岐するシナリオのリンクを考える上で、「プレイヤーがどう思うか」という視点も盛り込む必要があるはずなんです。そこも本来はAIが扱っていいんじゃないかと思うんです。

イシイ氏:
 それに関しては僕自身、芝村さんに聞いてみたいことがあって、GM(ゲームマスター)のAI化と、プレイヤーのAI化って別物じゃないですか?

芝村氏:
 全然違いますね。

イシイ氏:
 今までの芝村さんの話は、いわばGMAIみたいな話です。でも、そういう単純なルールの裁定や世界の設定を作って、GMによって物語が生成していくことは、もうAIによってほぼできるんです。

 ただ、その中で「Fate」のように7人のプレイヤーが殺し合うときに、7人それぞれをAI化するような部分は、まだきちんと動くには至ってないですね。

N高JKにイシイジロウが訊くイマドキ「人狼」事情。ネットの荒野で生き延びたJKたちにTOPプレイヤーの“おじさん”勢もたじたじ!?【N高生に訊く】

イシイジロウ氏が、観客のいる「魅せる人狼」について語っている電ファミの記事。

 僕は将来的に、この後者のプレイヤーレベルのAIを実装できたとき、初めてコミュニケーションまで織り込んだ、インタラクティブな物語が生成されるような気がしています。例えば人狼ゲームのように「人間を騙す」ことだとかで、もう想いが匂い立ってしまうような「本当のドラマ」を作るAI化のために、これこそが必要だと思うんですよ。

 でも僕は、芝村さんが実は、プレイヤーやNPC(ノンプレイヤーキャラクター)の「芝村AI」化の方もどんどん進めていると聞いているんですけども。

芝村氏:
 そうですね。
 まずGMAI化に関する話からすると、『エヴァ2』の開発時に、どうしても物語にまとまりができないので、「庵野AIというものを作ったんですよね。

一同:
 (笑)

芝村氏:
 でも監督がいないと、やっぱり「エヴァンゲリオン」っぽくないんですよ!

 例えば、ミサトさんというキャラクターに、違和感のないマトモな行動の背骨を与えようとすると、原作のようにならないんですね。というのは、物語の作り手から見ると、少年のための物語の中核を装飾するために必要な存在という感じなんです。つまり、説明役だったり、場面の穴埋め役だったり、大人の汚さを見せたり、というような。

――ああ見えて、実はストーリー内で都合よく使われているキャラクターなんですね。

芝村氏:
 そうなんです!
 だから実は、彼女は人のかたちをしてないんです。もうね、厳密に言えば、ミサトさんは登場「人物」ではなかった(笑)。

 で、『エヴァ2』に話を戻すと、このタイミングでミサトさんが来ないといけないけど、どうすればいいだろう……という場面は、やっぱり出てくるんですよ。そのときに思いついたのが、「別個に庵野AIを作ろう!」ということでした。

 それは何かというと、物語の筋というものをコントロールするAIですね。例えば「この場所にこの人を連れてくる」みたいなものを指示するAIを作ったんです。ただ、それでも実際にゲームとしてやると、気持ち悪かったんですよ。行動を上手く予測できないから「バグってるんじゃないか」「なんでここに出てくるんだよ」と言われてしまいました。

――まあ、現実の人間の出会い方なんて唐突なモノばかりだと思うんですが、それがストーリーとして楽しむつもりのプレイヤーには違和感になってしまうんですね。

芝村氏:
 そうです。ゲームになるとバグを疑うんですよね。一本道をAI化することと、プレイヤー視点も交えたGMをAI化することは、技術的にまったく別のものです。GMのAI化の場合は、「ここでGMは働いている」ことを明示しないと、ただ変な動きをしているように見えてしまう。このあたりが現状の技術的な限界かなと思っています。

イシイ氏:
 ただ、普通はそこまで行かないですよ(笑)。
 基本的にGMは、ゲームルールを統括していけば物語が進むんですけど、芝村さんの場合は一歩先に進んで、「演出としてのGM」に手を出しているのが恐ろしいですね。

芝村氏が作り上げた「庵野AI」も話題となった『新世紀エヴァンゲリオン2』。
(画像はBANDAIの公式サイトより)

普通ではない人間を許容するメタ視点

イシイ氏:
 でも、こうなってしまうと相当なチューニングが必要でしょうし、物語上のGMという発想よりも、まさにプレイヤーのドラマを生成するAIを強化したほうがいいかもしれませんよ。

芝村氏:
 あぁ、なるほど。そこでプレイヤーのAIの話ですね。三宅陽一郎さん【※】がご自身の本で、AI“らしさ”をどうやって作るかということについて書かれていましたね。

 ただ、ここは演出部分も含めて考えると、結構複雑になるんですよ。動作の矛盾というか、考えて動いているという点が重要なんですけど、実際の人間は考えてないシーンがいっぱいあるじゃないですか。

※三宅陽一郎
1975年生まれのゲームAI開発者。株式会社スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 リードAIリサーチャー。京都大学で数学を専攻、大阪大学大学院物理学修士課程、東京大学大学院工学系研究科博士課程を経た後、人工知能研究の道へ。2004年、株式会社フロム・ソフトウェア入社。2011年4月より、株式会社スクウェア・エニックスに移籍。ゲームAI開発者としてデジタルゲームにおける人工知能技術の発展に従事している。

――先日、三宅さんにインタビューさせていただいたときも、まさにそのことをおっしゃっていました。「反射」の領域に近いような、身体の運動にまつわる感覚器官のレベルでの動きが、AIに取り込めていない、と。

芝村氏:
 それらを取り込もうとすると、バグって言われちゃうんですよね。三宅さんと私が話すとだいたいその愚痴になってしまう(笑)。

 例えば「視線」がそうなんです。とりあえず、胸とかお尻とかスカートとか、女の子の揺れている部分を必ず見るプログラムを作ったとしましょう。それぞれに優先順位をつければ、なんとなく「常に胸しか見ない奴」みたいなキャラクターが生まれますよね。ただ、生まれるんですけど、そこに思考があるのかと言われると……。

一同:
 (笑)

芝村氏:
 せいぜい、「そういう動きを見ている人が、物語性を感じる」というメタ的な話になってしまうんです。

 じゃあ、なぜそういう行動に違和感があるのか。それは例えば、自分に向かって銃弾が飛んできているときに弾を見ずに胸を見てしまったら……と思うと、わかると思います。人間らしさを追求しようとすると、ルール情報がものすごく増えていくんです。

 もちろん、5個とか6個くらいのルール情報だったら、簡単にワールド内のキャラクターに“らしさ“を適用できると思います。でも、もっと突き詰めていくとなると、どんどん複雑になって処理が重くなってしまうんですよ。

――でも、その話が示しているのは、実際の人間は複雑に情報処理していないという可能性であって、モデルの問題のような気もしますけれども……。

芝村氏:
 いや、そこについては人間がそれぞれ独立した処理を行う器官を持っているからできるのであって、それを1つのコンピューターでやろうとするから大変になるという話ですね。

――そういう意味では最近、三宅さんは「人工知能のための哲学塾」の「東洋哲学編」を始められましたよね。ああいうディープな東洋哲学は、まさに「阿頼耶識」のように人間 の身体と心の関係みたいなものまで降りていく世界じゃないですか。

芝村氏:
 実際、AIに一番足りないのは仏教のようなものですよね。
 特に伝統宗教の場合だと、我々が言う「人間らしさ」「人間とはなんぞや」みたいなものは、何千年も前に通ってきた問いであって、そこに役立つものを見出そうとするのは自然なことなのかもしれません。

イシイ氏
 そうですよね。僕は人間って、世界が与えてくる情報に対して、思考の計算が間に合わないから「宗教化」していくんだと思っています。

 だって、「これはうまくいく!」と思って動くときが山ほどあるけど、そのときにすべての思考を論理的に処理できているのかは怪しいですよ。将棋や囲碁の世界でも、その一手を選んだ背景って、当日のコンディションやその人の人格が関係してきますよね。それらすべてを論理的に処理できる時間はないじゃないですか。

 とすれば実際になぜうまくいくのかを考えると、その説明は難しいですよ。そういうときに、モノの考え方が、どんどん宗教化していくんです。

――有名な大企業の経営者が意外と占い師に相談してたりするという話がありますけど、ああいう不確実性の中で決断する人たちは、そういう方向に行きがちなんでしょうか。

イシイ氏:
 そもそも、人間は客観で動いていないですからね。これは人狼ゲームをやるとわかるんですよ。与えられた情報に対して、みんな客観だと思って処理するんですけど、実は主観が大量にあるだけで、そこに気づかないとイライラするという(笑)。

 ちなみに、もう一つ言うと、僕はプレイヤーやNPCがその世界において「観客」を意識すると、リアリティにまつわるそういう面倒な話はなくなると思うんです。これ、なかなか難しいんですかね。

――要は、「これって演技ですよ」というお約束をみんなで共有して、リアリティの部分での違和感を受け流す感じですよね。

芝村氏:
 ただ、舞台劇のゲームだったら作れるかもしれないですけど、一般的な人々が生活しているような世界でそれをやろうとすると、メタ視点をいかにして取り込むという話になってしまうんです。

イシイ氏:
 でも芝村さんの実験は、もともとすごくメタ視点を生み出してますよね。

芝村氏:
 そうです。実はリアリティを求めるほど、キャラクターにメタ視点を入れないと、どうしても人間の中で整合性が取れなくなるんです。ここは『ガンパレ』の時代から、かなり早い段階で意識していました。キャラがメタ視点を持つことを許容しないと、ゲームとして成立しないです。

 だって、コンピューターゲームのキャラクターは、人間が動かしているのに全然人間らしくないじゃないですか。例えば同じコマンドを延々と繰り返したり、あらゆるタンスを開けたり、とかするでしょう。もし普通の人間がこんなことしたら、ただの逮捕案件ですよね(笑)。

――「ゲームのお約束」だけど、リアルに大まじめに置き換えると単なる「変質者」である、と(笑)。要は“メタ視点を取り入れる”というのは、そういう“普通の人間ではない”行為の違和感がなくなるようにしてあげるということですね。

芝村氏:
 そうなんです。だって、コンピューターに「普通の人間らしく動いてください」と言われたら嫌じゃないですか。冒険がしたいのに、「お前の冒険はタンスを開けることだ」と言われたときは、プレイヤーは本気で怒りますよ。

 この時点で、コンピューターから見た人間は、全然人間っぽくない。言葉のあやみたいな話ですが、これは大事です。実際、そういうリアリティは、「自分(プレイヤー)は外から来たんです」と明示することで成立するんです。

イシイ氏:
 そういう意味で『ガンパレ』はすごく演劇的だなと感じました。やっぱり行動がメタ視点、記号なんですよ。舞台も演劇も記号でなければ成立しない。セリフの壁をすごく意識した作りにならざるを得ないんです。

――先日「ウイニングイレブン」好きの人に話を聞いていたら、「最近AIがメチャクチャ人間らしい動きをする。でも、その裏をかくためにあえて変なプレイをするので、むしろ自分の方がAIより人間っぽくないプレイになっている」と言ってて、面白かったんです。ちょっと、その話を思い出しました(笑)。

芝村氏:
 それが技術ってもんです。本当はもっとリアルにするために、年俸も考慮してもらってですね……。

一同:
 (笑)

芝村氏:
 いやいや、実際のプロにとっては重要な問題だと思いますよ! 試合中の動きに凄く影響を与えているはずですよ。
 そういうメタ視点を入れると、スポーツゲームはもっと面白くなりそうですよね。「昇格がかかった試合のロッカールーム」の雰囲気をゲージとしてきちんと再現できたら、めちゃくちゃ売れますよ! そういう面白さは技術的にもできるんじゃないかと思います。

 ただ一方で、「完全」という意味でのリアルなシミュレーションをして、現実世界と変わらないものを作ったとして、それが果たしてエンタメとして面白いのかどうかというのはあります。世の理不尽がたくさん出てきてしまって、逆に嫌になっちゃうかもしれませんね(笑)。
 だから、「世界観」に話を戻すと、その部分を魅力的に圧縮するという行為が世界観を作るというか、世界の切り取り方という話になってくるんだと思います。

リアルにイタかった文豪たち

――というところで、上手く「世界観」にお話が戻ってきたので……最後にお二人の現在進行中のプロジェクトの「世界観」について、PRしていただければと思います!

イシイ氏:
 僕は、まずは『文豪とアルケミスト』ですかね。

(画像は文豪とアルケミストの公式サイトより)

芝村氏:
 イシイさんの『文豪とアルケミスト』はすごく危ないところに着弾したな、と思ってますよ。一歩間違えると「文豪警察たちが動き出すぞ!」みたいなポイントに着弾してるのを見て、率直にすごいなと思いました。

 でもまぁ、文豪を題材として選んだ時点で勝ちというか、キャラクターとして明らかに面白いですよね。「この人たちは実在したのかな?」と思ってしまうような略歴の人たちばかりで。

イシイ氏:
 文豪の場合、戦国とか幕末に比べると、比較的時代が新しいのでリアルな情報が残っていて、関係性がやたらと複雑だったりとか、事実がすでにゲームの設定のような状態なんです。物語の構造としては基本的に4人パーティーなので、そのときの関係性は意識しました。あとは文豪同士で頻繁に文通していたようなので、ゲームでも文通が勝手に発生する仕組みが入っています。リアルな関係性を表現する仕組みは、うるさいくらい出てくるゲームだと思います。

芝村氏:
 基本的に登場人物がイタい人ばかりですからね。プレイしているとツッコミどころが多すぎて追いつかない、その面白さたるや……。

イシイ氏:
 「こんなのいるわけない! 嘘でしょ?」と思って調べたら本当だったりする(笑)。太宰治が、芥川が好き過ぎて「芥川先生の本」のようなものを作ってたりとか。

芝村氏:
 現代で例えるなら、我々が合同誌でサーバルちゃん【※】について書いているような。

※サーバルちゃん
『けものフレンズ』に登場するサーバルの愛称。

一同:
 (笑)

イシイ氏:
 まあ僕は世界観設定の担当だったんですが、それをそのままゲームデザインに落とし込むことで、物語の自動生成がどこまでできるんだろう、と思ったのはあります。もっと過去の話だったら、フィクションとして好き勝手できたのかもしれないですけど、あえて時代が近いがゆえに、がんじがらめの中でどこまでできるかという挑戦ですね。

芝村氏:
 それこそ『ゲームデザイナーとアルケミスト』みたいなものを作ろうとしたら、あと70年はかかるでしょうね。「本人はそんなやつじゃなかったよ」と、後輩や身内からどんどん裏切られてディスられるという光景をあの世から見ることになるんだろうなぁ(笑)。

イシイ氏:
 僕たちがイケメン化させられて転生するなら面白そうですね。同人でもいいので、生きてるウチに誰か作ってください!

 それ以外にも、芝村さんにも協力していただいた新撰組の舞台『龍よ、狼と踊れ Dragon,Dance with Wolves38日から始まっています。僕が原作を書いて、芝村さんが設定考証、キャラクターデザインが西村キヌさんです。

(画像は『龍よ、狼と踊れ Dragon,Dance with Wolves』の公式サイトより)

芝村氏:
 世界観という意味で、舞台に爪痕を残せるのは面白いですよね。

――芝村さんも『幻想交流』がスタートしていますが、これは高速道路やサービスエリア(SA)などを題材にしたプロジェクトなのでしょうか?

芝村氏:
 『幻想交流』はNEXCO中日本(中日本高速道路)とのお仕事です。彼らが管理・運営するSAPAを擬人化する……のではなく(笑)、ゼロから世界観を作っていった仕事で、そういう意味では楽しくできているので、もっといろいろな人に見てもらえるといいなと思っています。

キャラクターデザインには岸田メル氏、いとうのいぢ氏、渡辺明夫氏などサービスエリアごとに著名クリエイターが参画してることにも注目。

芝村氏:
 ありがたいことに、最近はファンから「書籍とかグッズはないんですか」と言われているんです。でも、そもそもNEOPASA【※】をはじめとした各地のSAPAに行ったときに、場所に紐づいたキャラクターや物語があると面白いねという話からIP製作委員会がスタートしているので、商品化は是非ドワンゴさんとNEXCOさんにがんばって欲しいと思います(笑)。

※NEOPASA
中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)が新東名高速道路のサービスエリア・パーキングエリアに展開する商業施設の名称。

芝村氏の作り出す世界観が美しいイラストで表現されている。画像はなんと岡崎サービスエリア?
新東名エリア。「幻想交流」の世界では一体何があったのだろうか。

イシイ氏:
 いわゆるサービスエリアや高速道路の擬人化ではないんですよね?

芝村氏:
 最初は擬人化という話もあったんですけど、ただ擬人化するだけでは、物語として難しいと思いました。擬人化したときに、SAや高速道路の素晴らしさをまったく語ることができないんですよね。

――まあ確かに、ちょっと人類には早すぎる気がしますね(笑)。

芝村氏:
 ただ最近、道路の重要性が物語としても描かれることがないのは気になってるんです。道路ができることで与える影響とか、みんな認識してないと思うんですよ。大きな事故や災害が発生したとき、最初に復旧させなきゃいけないのは道路じゃないですか。

 なので、打ち合わせではつい興奮して、「中日本で大きな地震があったら大動脈になるのは新東名!」「高速道路ってすごく重要なインフラです!」「もっと宣伝したほうがいいですよ!」と、私がアツく語ってしまって。あれは完全にオタクだったなと思いつつも(笑)。

 だからこそ道路の存在意義がわかるような物語、言い換えると、「道路がないとこんなに不便だよ」ということを伝えられたらいいなと思っています。


プロフィール
キャラクタービジネスのマーケティング・コンサルティング会社で、主に企業向け業界誌や資料集、クライアントへの提案資料など制作。退職後フリーに。
Twitter: @ondarion

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