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N高JKにイシイジロウが訊くイマドキ「人狼」事情。ネットの荒野で生き延びたJKたちにTOPプレイヤーの“おじさん”勢もたじたじ!?【N高生に訊く】

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 昨年11月の『ポケットモンスター サン・ムーン』発売時にリリースした、カドカワが今年度から運営を始めた「N高等学校」生徒によるポケモン座談会は、思わぬ反響を呼んだ。

「“厳選”しようかな」だと…!? JK1年生に新作『ポケモン サン・ムーン』をプレイさせてみたよ

 確かに、いまどき雑誌を見てもネットを見ても、ゲームを大声で語るのはパソコンやファミコンの時代からゲームを遊んできた、年季の入った歴戦のゲーマーが多い。10代がゲームについて語る生の声は、なかなか貴重だったようだ。電ファミとしても、現役ゲームユーザーである中高生たちに光を当ててゲーム事情の最先端を聞くことには、意外にも大義があるのではないかと思った次第だ。

 というわけで、さっそく今回取り上げたいのが、「人狼」だ。

 人狼が、アナログゲームオタクたちの知る人ぞ知る遊びだったのは、遠い昔のこと――
 昨今では、すっかり「人狼」という遊びは市民権を得た感がある。実際、この記事を読んでいる人でも、飲み会なんかで「人狼」をプレイした経験のある人は少なくないだろう。最近は、テレビ番組でジャニーズタレントが遊んだり、「アルティメット人狼」【※】のようなゲームイベントも大盛況だったりと、エンタメ産業の定番コンテンツの一角に滑り込み始めた感さえある。

 だが、この数年で起きたなによりも大きな変化の一つは、実は中高生に人狼が普及したことだ。仕事柄、筆者は中高生に話を聞く機会が多いが、Skypeで人狼をプレイする話や、ニコニコ生放送やツイキャスで公開で人狼を遊ぶ話が、ポンポン出てくるのである。

 そこで今回は、『428 〜封鎖された渋谷で〜』などの名作ゲームを手がけたゲームデザイナーにして、「ゲームクリエイター人狼会」の主宰で昨今の人狼ブームの火付け役の一人にもなったイシイジロウさん、さらに日本でもトップ級のプレイヤーである「人狼ルーム」代表の児玉健さん、舞台『人狼 ザ・ライブプレイングシアター』の看板役者のマドックさんをお招きして、N高のJKたちと人狼プレイ後に座談会をしていただいた。
 日々人狼をプレイしていながらも、「さすがにJKと人狼することはまずねーよ」という最高年齢50歳のオッサン勢たち。果たしてN高のJKたちと、どんな人狼&トークをしたのだろうか!

※アルティメット人狼
2014年に初回が開催された、ニコニコ生放送で配信している人狼イベントシリーズ。将棋棋士、評論家、雀士、俳優など多様な人々を集めて人狼をプレイする様子を配信している。

聞き手/斉藤大地稲葉ほたて
文/稲葉ほたて
カメラマン/佐々木秀二

前列左からぼうかさん、まりあんぬさん、みぃやんさん。後列左から児玉さん、イシイさん、マドックさん。

<今回プレイした人狼ルール>
1.参加者:9人
(N高JK3人、イシイ、児玉、マドック、電ファミ編集部3人)
2.役職:人狼2人(狂人はなし)
村人側はボディーガード1人(指名した人を人狼から守る)、ハンター1人(自分が死んだときに1人指名して道連れにできる)のみ
3.特殊ルール:
死んだ人はすべてその時点で役職をオープンにする

<登場人物>

ぼうか:N高2年生の19歳。ルールブックを大量に持っているTRPG好き。N高の授業の課題で、人狼をモチーフにしたゲームを提出したらしい。今回は久しぶりの対面プレイらしく、本人としては「牙が抜けてないか心配」。が、結果的には最も存在感を放つ。1回目村人、2回目ハンター。

まりあんぬ:N高1年生の16歳。去年N高の友達に誘われたのをきっかけに人狼にハマり、主にネット人狼でプレイしているとのこと。いつも人狼をやろうとするので、友達からは「人狼馬鹿」と言われているらしい。1回目ボディーガード、2回目人狼。

みぃやん:N高2年生の17歳。人狼歴4年だが、普段は見ず知らずの人とアプリで対戦することが多く、対面人狼はなんと今回が初めて。たびたびの勘の鋭さで場を沸かせた。 1回目村人、2回目村人。

イシイジロウ:50歳。『428 〜封鎖された渋谷で〜』などの名作ゲームを手がけ、近年はアニメ『モンスターストライク』のストーリー・プロジェクト構成も務める。「魅せる人狼」に関心を持ち、「ゲームクリエイター人狼会」「アルティメット人狼」の主宰など人狼関連イベントに多数関わっている。1回目人狼、2回目村人。
Twitter:@jiro_ishii

児玉健:36歳。人狼ゲーム専用スペース「人狼ルーム」代表。ニコ生イベントや舞台、テレビなど、人狼の監修を多数手がける。日々、人狼ゲームをしており、今年の1月には一ヶ月で62回プレイしたとのこと。実はプロけん玉パフォーマーでもあるという謎の人物。1回目ハンター、2回目人狼。
Twitter:@kdmn88

マドック(本名・松崎史也):36歳。人狼を用いた即興劇『人狼 ザ・ライブプレイングシアター』(人狼TLPT)の看板役者として知られる。また、舞台「龍よ、狼と踊れ」(原作:イシイジロウ)の脚本、演出も務める。人狼TLPT出演を機に人狼ゲームの存在を知り、それから500回近くプレイしているとのこと。児玉氏を師匠と呼ぶ。 1回目人狼、2回目村人。
Twitter:@fumiya326

N高JKとの人狼を終えて

N高のJKたちと人狼をしてもらいましたが、イシイさんどうでしたか?

正直なところ、僕はこんなにデキる人たちとは思ってませんでした

おおー!

実は、ちょっとナメてかかってたんです。子供と接するつもりで来たけど、それは完全に間違いだったと思いました。

どの辺がすごかったんですか。

まず驚いたのは、N高の皆さんは地頭がいいことね。論理の基礎がしっかりしてる。もうこの子たちなら、僕らとステージで殴りあえる。僕から殴ったとしても、ちゃんと避けてくれる!

(笑)

その信頼関係を築けるのが、まずはビックリ。次に人狼って、その論理を言葉でやりとりするんだけど、その表現力もバッチリ。で、その次に個性が大事になるんですけど、それも十分。特にぼうかさん!

ぼうかちゃん、めちゃめちゃキャラが立ってますよね【※】

※編集部注:
初対面と思えない堂々とした振る舞いで、完全に議論の主導権を握ってました……。

久々の人狼で牙が抜けてないか心配だったけど、大丈夫でした。

コメントの切れ味もすごいな! まあ俺は、みぃやんさんが怖かったですね。第六感で鋭く当ててくるでしょ。人間観察力がすごい。

いやいや、もう霊感で生きてるだけなんで(笑)。

読者の方々は実際のプレイを見てないのでわからないと思いますが、本当にみぃやんさん、「ニュータイプかよ!」って感じで見抜いてくるんですよ。

初対面の女子高生に、日本で一番「人狼で儲けてる人」と二十年選手の俳優がダメ出しされてたもんね。「最初から児玉さん怪しかったですよ」なんて言われて、「ちょっとー、何年やってんすか」みたいな(笑)。

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物怖じしないのもすごい。いやもう、この子たちはボクシングで言えば、四回戦かそれ以上ですよ。

ええと、女子高生に伝わる喩えを使いましょう(笑)。

人狼を知った経緯

それにしても皆さん、どうやって人狼を知ったんですか?

中学二年生のとき、私は学校に行けなくなってしまったんです。でも、親から携帯を買ってもらえて、アプリを探していたら、オンラインでやれる人狼アプリを見つけて。ただ、最初は「狼とか書いてあって、怖いな」と。

確かにパッと見、ホラー系のアプリみたいですよね。しかし、さすがN高生というか……オンラインから始めたんですね。

でも、すっごく面白かったんですよ。 だって、「嘘をつくのは良くないことだ」って教えられてきたのに、あえてそれをするんです。不思議な気持ちだったし、この面白さって「ゲームならでは」ですよね。「あっ、こういう騙し方もあるんだ」って気づく“攻略ゲー”の面白さもあって、どんどんハマっていきました。

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私の場合は、中三くらいで『Numer0n(ヌメロン)』【※】という対面の推理ゲーにハマって、その流れで人狼を知りました。高専に入ったらそういう推理系が大好きな子がいっぱいいて、色々と遊びました。

※Numer0n
2011年よりフジテレビで不定期放送中のゲームバラエティ番組、及び番組内で行われているゲームのタイトル。2人のプレイヤーが1対1で、互いに相手の選んだ数字を当てる推理ゲーム。

ちなみに、ぼうかさん、さっきランチのあとでルールブックを読んでましたよね。TRPG【※】勢ですか?

※TRPG
ゲーム機などを使わず、紙や鉛筆、サイコロなどの道具を用いて、人間同士の会話とルールブックを元に遊ぶ対話型のロールプレイングゲーム。

TRPGは好きです。TRPGに比べると、人狼はシンプルなのがいいですよね。アバウトな部分も多いですし。

ホリエモンの人狼の腕前は……?

堀江貴文さんって方がいらっしゃるじゃないですか。私の場合は、彼がTwitterでよく「人狼が! 人狼が!」と呟いているのを見て、興味を持ちました。

キッカケは堀江さんのTwitterなんだ。俺、昨日も一昨日も一緒にいたよ(笑)。

えっ! ただ、私の場合はどうすればいいかわからなかったので、N高の子と通話してるときに、オンラインに誘ってもらいました。ハマってからは、ずっと一人でプレイです。

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ちなみに、ここの皆さんはよく堀江さんとプレイ【※】されていますけど、どんな感じなんですか?

※編集部注:
堀江貴文氏は『人狼 ザ・ライブプレイングシアター』への出演をはじめ、自身でも人狼イベントを定期的に開催するなど、人狼好きとして知られている。

いやあ、やっぱり強いですよ。

でもね、堀江さんは確かに「我は強い」けど、いつもすごく気を使ってくれますね。

しかも堀江さん、「村人」に立つと強くて「狼」に立つと弱いんだよ(笑)。パブリックイメージと逆。

ちょっと意外ですね。みんなのホリエモンのイメージは「自己チューの極み」みたいな人で、「狼になったら、活き活きするタイプ」みたいな感じでしょうから。

人狼って、インタビューなんかよりずっと素が出るんです。堀江さんと遊ぶと「ああ、この人は嘘がつけないんだろうな」ってよくわかりますよ。メディア上では嘘ばかりついてるイメージなのにね(笑)。

N高のSlackには「人狼チャンネル」がある

皆さん、普段はどんな風に人狼をやってるんですか?

プロフィールを知っている人同士で、オンラインでワンナイト人狼【※】をやってます。

※ワンナイト人狼
人狼ゲームの簡易版。人数を集めないと遊べない人狼ゲームに対して、プレイヤーが3人から遊べるのが特徴。ゲーム自体も1ターン(ワンナイト)で終わり非常に手軽。

やっぱり、基本はネットなんだ。N高の友達とやるの?

N高生のSlack【※】に「人狼チャンネル」があるんですよ。8人くらい集まるとワンナイトではないのもやります。ただ、ワンナイトでは今回みたいに盛り上がらないです。「今回で最後だ、どうしよう」みたいなドキドキが普段ないのは惜しいです。

※Slack
2013年にリリースされたアメリカ発のチャットツール。エンジニアを中心に広く使われており、N高でも校内チャットツールとして採用されている。

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私は「人狼村」というアプリを使ってます。そこで知り合った人とLINEで繋がって、アプリやチャットで遊ぶ感じです。だんだん顔見知りもできて、最近はグループで遊んでます。

ちなみに、人狼のどういうところが好きですか?

もともと論理パズルの本を買って読むタイプなのはあるかも。あと、役職によって立ち振る舞いが違ってて、その役職としての仕事を全うできると嬉しいです。

オオカミで「人を騙す」と思うと、すごく辛いじゃないですか。でも、それを「論理パズルを提示する」と思うと、僕は気が楽になるんですよ。

「騙す」というより「誘導する」という感じですよね。たとえば、私が人狼なのに村人のほうに注目が行っていたら、ここで自分の信憑性をさらに上げる方法を考え出したりすると、すごく楽しいです。

苦手な人も、僕らみたいに「パズルを提示する」と思うと、少し気が楽になる気がしますね。

私の場合は、自分の”勘”が当たるのが楽しいです。

みぃやんさんの場合、本当に当たるからなあ。

N高の授業で人狼を使った

では、ラスボスっぽい感じのぼうかさん、どうでしょう(笑)。

(笑)。でも、N高生とはほとんどやったことないんです。ただ、N高の授業で人狼をモチーフにしたゲームを考える課題があって、そこで「自分の役職がわからないままやる人狼」のアナログゲームを提出しました。

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実にラスボス感のある解答ですね……って、N高ってゲームの授業があるんだ、いいな。

でも、人狼を一番やってたのは二年前くらいです。当時は高専の子たちと20人くらいでやってて、「狂人」【※】の役が好きでしたね。

※狂人
人狼の役職の一つ。「人間の扱いだが人狼陣営に属する」という特殊な立ち位置の役職であるため、能力者を騙って人狼を補助するなどのトリッキーな動きが求められる。

あ、「狂人」楽しいのわかる! 最後の方で「村人」が「”狂人”です」って騙って読みあいが始まったりするじゃないですか。ああいう局面がすごい面白いです。

私も「狂人」で騙って、「ざまぁwww」みたいにやるのが好き。

互いにパズルを出し合う楽しさですよね。僕も好きですね。昨日やってた人狼でも、4日目にいきなり3人目の「占い師」【※】が登場して、矛盾だらけの無茶苦茶なことを言い出して、その場が大混乱したの。

※占い師
人狼の役職の一つ。毎ターン1人ずつ、「村人」なのか「人狼」なのかを調査することができる能力を持っている。勝敗を左右する最重要ポジション。

それで、どうなったんですか?

実は「狂人」が隠れてパワープレイをしてて、最後は「狼」にバレちゃった(笑)。僕は本当の「占い師」だったので、いやあ辛かった!

でも、そういうのが面白いですよね!

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