N高一期生はクリエイティブに強い?
そもそも、第一期にN高に来てしまうような人間は、クリエイティブに強い気がする。結局、クリエイティブというのは、「お客さんがどう見てるのか」を考えざるを得ないんだよね。君たちの人狼に、既にその感覚があったのはすごいよ。
情報収集能力も相当だと思いますもん。間違いなく、ここにいる子たちはセンスが抜群だと思う。
ゲーム業界でも、ヒューマンアカデミーのゲームカレッジ【※】一期生はスゲー奴らが集まってたからね。そもそもTVゲーム自体に、誰もが「なんだこれ?」となってる時期に、思い切って飛びついた連中がゲーム業界を作っていったわけで。
※ヒューマンアカデミーのゲームカレッジ
全日制専門校「総合学園ヒューマンアカデミー」のゲームクリエイター専攻コース。
新しいシステムに真っ先に飛びつく人間って、常に才能のある人間たちなんです。実際、君たちの才能が普通じゃないことはよくわかった。
すごい褒められ方(笑)。
あ、でも過信しないでね。
ははは(苦笑)。
「ネットで叩かれて」基礎ができた
でも、私たちの場合は、ネットでコテンパンにされるので上手くなってるのもありますよ(笑)。
ネットだと「喋んない奴は吊っちゃえよ」みたいな感じだもんね。で、喋りすぎると今度は「人狼」だって疑われちゃう。結構、アプリは殺伐としてる……。
翌日引きずりますよね。「お前、裏切ったな……!」みたいな。人数が多くて仲いい人でやると、それが……。
オッサン世代にわかる喩えで言うと、そもそも彼女たちはネット人狼という『北斗の拳』のような荒野を生き延びてきたのだ……って感じですかね。逆に、児玉さんたちの人狼は、その辺は楽しそうでいいですよね。
いや、でも俺たちも生でプレイしたものが配信されて叩かれたりしますからね。でも、誉められることもあるし、その辺ひっくるめて人狼の面白いとこじゃないですか。
良い対面人狼だと仲間意識が生まれたりするんです。なにせ昔はゲストで来た人をとりあえず吊るようなこともありましたから。あと、会社でマネジメント経験のないような若い人だと、「人間を思い通りに動かす」ことの快感にハマっちゃうんですよ。
ああ……。
そこで主導権を奪い合う人狼になると、ホントにギスギスしてくる。
でも、それは男の人狼かな……。女の子の場合は、あんまりない印象ですね。
女の子の人狼には、そういう男の人狼における「マウンティング」のような、ダークサイドはあるんですか?
そうですね……「理論」が理解できないタイプの人もいるんです。でも、別に人狼は理論なんてわからなくていいの。だけど、そんな自分を罪に感じてしまうタイプの人が、すごく辛そうにしてしまうんですね。
人狼は「イジメのゲーム」になりうるんです。だから、上手な人が導かないといけない。
俺は、師匠がそういう考えだから人狼の最中にパトロールはしてますね。ヤバくなる前に手を打てば、そうはならないんで。
そこも面白がればいいんだよ。例えば、イシイさんが女子高生にすごい剣幕で「お前これ答えられないなら人狼だぞ!」と迫ったとするでしょ。そういうときは腕が鳴るよね(笑)。あえて「まあまあモテないですよ、そんなんじゃ」と言って笑わせて止めようかな、とか考えたりね。
ただ、稀に「ドライブのときに人格変わる人」みたいなのはいますよね。
闘争本能が刺激されるんですか?
突然、「あなた人狼でしょ!」みたいに迫りだすの(笑)。
プレイ中は本性が見えた気になるんだけど、でも普段は明らかに根が良い人なのも間違いなかったりして、「なぜだ……」となる。
初心者への配慮の重要性
ちなみに、三人は人狼のときに気を付けてることってありますか?
声の大きい人たちの間だけで「ワー」ってなりがちじゃないですか。だから、一応全体に振るようにしてます。
ウチの連中に聞かせてあげてええええ、マジで。
これで16歳か……。
ゲームクリエイター人狼会【※】の老害たちに聞かせてあげたい……。
※ゲームクリエイター人狼会
森本茂樹、安西崇、大野聡など個性豊かなゲームクリエイターたちによる、人狼を楽しむ同好会。堀井雄二などもたまに参加するとか。……が、どうやら血で血を洗う激しい死闘が繰り広げられている……っぽい(!?)
こらこら……(編集部の方を見て)「老害」とか言ってたとか、書かないでね(苦笑)。まあ、彼らにJKのピュアな言葉を届けても、聞いてくれるとは思わないけどさ!
みぃやんさんはどうです?
慣れてる人だけがゲームを操作していると初心者が来なくなっちゃうんで、わざと敵対するようにしています。新しい人が来たときは、やっぱりそういう機会を与えてあげたい。
天才。
なんなの、もう「人狼ルーム」のスタッフになってほしい。
うーむ、お客さんの中にここまで考えてくれてる人っているんですか?
もちろん、ウチに来てるとそういう考えになってくれる人が多いですよ。慣れてくると「私が初心者だったときはこういう思いだったから」と動いてくれる。でも、女子高生がなあ……(嘆息)。
やっぱり、ボードゲームはみんなが楽しめるものだしコミュニケーションツールの一つであってほしいです。
私は、相手をこっちの沼に引きずり込みたいタイプなので(笑)、初心者が来たら頑張ります。黙っちゃうような子が「楽しかったな、またやりたいな」って思ってもらえるように、フォローを考えて……。
あれ、「人狼ルーム」の人たちなのかな、この人たち?
やはりこの女子高生たちの言葉を、ゲームクリエイター人狼会の「老害」たちに聞かせたい……。
(笑)
今の「老害」発言は、イシイさんの口から出ましたからね!
N高人狼部設立決定!?
ってか、そもそも君たち、人狼仲間に飢えてるのでは。
それはもう……!
人狼やりたい!
でも、押し売りすると逃げちゃうし……。
さっきから思ってたんですけど、児玉さんやマドックさんとこれだけ話が合うのって、そもそもお互いに人狼を普及させたい「伝道師」の立場だからだと思うんですよね。
人狼教を布教したい!
どうすれば初心者さんにわかってもらって、動いてもらえるのかは悩ましいです。
その意味では、今日の二人の人狼はすごくなかった?
そうですね。
彼らは、初心者の人もああやって楽しめるようにして、人狼を流行らせてきたんです。で、僕は今日、ひとつ野望を持ってきていて、実はN高でも「人狼部」を作りたいんですよ。
えっ!
人狼をN高でずっとやりたかったんですけど、なかなか人を集めるのも大変だし、部活の担任になってくれる先生もいなくて……。
先生!(児玉さんの方を見る)
やりましょう。
先生になっていただければすごくありがたいです……!
いいっすね。N高の女子高生が将棋棋士に勝ったら最高じゃないですか!?
あ、それ僕も絶対に応援する!
あーそれ、やりましょう。あとでN高のスタッフたちに話してみます。
あー、もうすごい楽しみ!
最後に一言
そろそろ時間ですし、最後にオッサン軍団とJKで、お互いに感想でも言い合いましょうか……。
そりゃ、僕は50歳ですからね。たぶん君らのお父さんより上だと思うけど……。
……若い。
なんか女子高生に「若い」って言われたくて、年齢言ったように聞こえるな(苦笑)。
(イシイさんを指さして)皆さーん、この人、もうすぐ死ぬんです!
こらこら。
いや、見た目じゃなくて、イシイさんの考え方が若いなって。
いやあ、ありがとうございます(笑)。
「考え方」が若いというのは、褒められてるのだろうか……(苦笑)。
でも、今日は人狼歴が倍以上の人たちと話せて、「N高に来て本当に良かった……」と思いました。私は高専を中退してN高に来たんですけど、今のところは嫌な記憶が一つもないです(笑)。しかも今、人狼をモチーフにした「新しい人狼」のアナログゲームが思い浮かんでしまったんで、家に帰ったら書き起こしてみようかと思ってます。
私も、今まで人狼って「なんとなく楽しいな」って遊んできたんですけど、何が楽しいのかを改めて言葉として理解できた気がします。「見せるゲーム」みたいな考え方とか、本当に色んな視点からゲームを真剣に考えている人たちと話したんだと思いました。
私は今日、皆さんがうらやましかったです。だって、私には行動力も人脈もなくて、一緒にやってくれる人を探す術もない。だから年齢があって、色んなことの基礎ができていて、好きなことの仲間を探せるイシイさんやマドックさんたちが本当にうらやましいです。
そんなの、今日から俺たちを利用しちゃいなよ。
ですね。
でもね、実は自分も人狼をやり始めてから、こういう今日みたいな会話が出来る仲間が集まってくるようになった気がしますね。
そうそう。俺も若い頃はそれがストレスだったから、こうして10代の子たちと会話が通じるのは感動がある。
そういう意味だと、ここにいるような若い皆さんは、すごく生きにくさを感じてると思うの。俺も地獄みたいな気分で、公立の学校に通ってたもんね(笑)。それが30歳でゲーム業界に入ったときに、やっと自分の居場所を見つけた気がしたんだよ。で、そこからは、もう生きやすさは右肩上がり。50歳になっても、まだまだ楽になる。
ちょっと、希望が見えました(笑)
あとね、50歳になって、逆に「年齢なんて関係ないな」とも思ったんだよ。世の中には年齢に関係なく面白いことだけで繋がってる集団があって、自分はまさに人狼だとかで、そういう場所を見つけられたんです。でも今日皆さんと話しながら、「もしかして10代とさえも、そういう面白い仲間になれるんじゃないかな」って思いました。N高人狼部、ぜひやりましょうよ。
いぇーい!
ぜひやりましょう!
今日はありがとうございました!
というわけで、最大年齢差34歳の「人狼」座談会、読者の皆さんはいかがだったろうか。
はからずも、ゲーム実況で「見せるゲーム」という存在が”自明”だった世代の子供たちと、その可能性を”発見”したゲーマー世代のオジサンたちのファーストコンタクトという趣の座談会になったが、なかなか実りのある議論だったのではないだろうか。
特にイシイジロウさんの、「観客の存在がゲームデザインを向上させる」ことがあるという視点は、あまり既存のゲーム実況の議論では見かけたことがない。ベテランのゲームデザイナーらしい、ハッとする指摘だったように思う。
さて、明日から始まる「闘会議2017」では、そんなイシイさんたちの登壇する「アルティメット人狼」のステージが幕張メッセに登場する。
登壇者を見ると、『ポケモン』バトルデザイナーの森本茂樹氏や、一日目に吊られることでお馴染み(?)というゲーム実況者のコジマ店員など、聞くだに楽しそうな名前が勢揃い。もちろん、エンタメ性抜群のゲーム回しで取材当日N高生を驚かせた児玉氏やマドック氏も登壇する。果たして、ステージで彼らはどんなふうに人狼を「魅せ」てくれるのだろうか?
地方在住の読者も、当日ニコニコ生放送でその模様が配信されるとのことなので、ぜひ今日の記事で興味をもった方は楽しんでいただければ幸いだ。
“闘会議2017”にて「アルティメット人狼」開催決定!
2月11日(DAY1)15:30~17:30
ニコニコスペシャルステージにて!