何もない土地に線路と駅を作り、列車を走らせることで周囲の発展を促すことができる、鉄道による都市開発を描いた経営シミュレーションゲーム『A列車で行こう』。
直接都市を作っていく『シムシティ』とは違う、自然に発展していく町並みを眺めるのが楽しいこのシリーズに、スマホ用の新作が登場しました。
『はじめてのA列車で行こう』です。
ベースとなっているのは1985年に発売された、初代の『A列車で行こう』。
よって“『A列車』のスマホ版”というよりは、“旧作の現代風リメイク”といった方が良いかもしれません。
かわいい案内役のキャラクター、ポップで楽しげなビジュアルは、従来の『A列車』のイメージをくつがえすもので、かなり大胆なリメイクです。
「はじめての」と付いていることからもわかるように、『A列車』シリーズの基本を学べる内容ですが、決して簡単なわけではありません。
原作である初代の『A列車』と同じく、無計画に路線を作っているとすぐに経営破綻してしまうシビアなバランスで、ちゃんと地域の発展と経費を考えた、計画的な開発が必要です。
そのぶん経営シミュレーションゲームとして、しっかり楽しめるものになっています。
しかしこのゲームの現時点(1月3日時点)の評価は、芳しくありません……。
特にiOS版の評価は絶望的に低く(★2)、その理由の多くは「プレイ方法がわからない」、「チュートリアルが説明になっていない」。
「はじめての」と謳うわりには説明が大ざっぱすぎて、何をどうすれば良いのか最初はサッパリわからない作り。
私もかなりヘビーな『A列車で行こうIV』のプレイヤーでしたが、はじめてやったときはわけがわかりませんでした。
しかし、基本の操作とルールさえ理解できれば、決して悪いゲームではありません。
グラフィックや演出が良く、列車の運行で町を発展させていくA列車らしいゲーム性がしっかり備わっていて、町並みを3Dで眺められる「運転席視点」もあります。
ちょっと慣れれば、確かにこれは『A列車で行こう』の最新リニューアル版だというのがわかります。
私的には、そこまで酷評されるほどの内容ではないと思います(実際 Android での評価は悪くない)。
価格は480円。買い切りゲームなので課金・広告・スタミナ等はありません。
前述したようにチュートリアルが頼りにならず、ゲームの進め方がわかりづらいので、最初のステージのクリア手順を元に、プレイガイドのような形でレビューを進めていきたいと思います。
まず、ゲームを始めると簡単な説明の後に、「資材を確保するため、貨物車のところまで線路を敷いて、資材駅を建てましょう」と言われます。
ところが、「まずこれを押してください」的な説明がないので、いきなりどうすれば良いのかわからない。
「鉄道工事」のボタンを押し、「敷設/移動」のボタンを選んで、貨物車の先の線路をタップしても何も反応しません。
このゲームは工事車両である「A列車」を動かして、すべての作業を行います。いわばこれが主人公。
工事をするにはA列車を現場まで移動させないといけないのですが、工事をする場合、いきなり遠くをタップしても反応しないことが多いです。
まずは近くまでA列車を移動させる必要があります。
しかし、駅の先の線路をタップしても、以下の左の画像ように青いラインが引かれてしまうでしょう。
青いラインは線路を作りながらの移動で、これでは余計な線路ができてしまいます。
近くをタップした場合、このような線路敷設移動になってしまうことが多く、そのまま進めているとゴチャゴチャな状態になってしまいます。
移動時に線路を作りたくない場合は、既存の線路の上を順番にタップして、移動ルートを細かく指定する必要があります。
もし移動中に青いラインが出てしまったら、すぐに右下の「取消」のボタンを押すようにしてください。
駅の先の線路上に移動できたら、そこから貨物車のある線路に移動しましょう。
青いラインが引かれますが、これは必要な線路なので構いません。
そして「駅工事」のボタンをタップし、「資材駅」を選んで設置します。
「駅工事」のボタンは暗くなっていますが、タップすれば明るくなります。
使えないから暗くなっているのではありません。
資材駅ができたら設置モードから出て、下部にある「資材の注文」のボタンを押してみましょう。
貨物車が走ってきて、資材駅に資材を降ろします。
列車がぶつかったらミスになるので、A列車は事前に退避しておくように。
資材が運ばれた後、A列車が資材駅に移動すれば、それを積み込むことができます。
資材は線路の敷設に必要で、もし資材駅がないまま最初の資材が尽きてしまうと、もうアウトです。
資材の確保を行えるようになったら、「旅客駅」を作って客車を走らせましょう。
とりあえず今回は、スタート駅の先の線路に新たな駅を作ります。
A列車を駅の設置場所に移動させて「駅工事」のボタンをタップ。
設置はひとつで構いません。ふたつ作ってもホームが増えたりはしません。
駅ができたら、「1」と書かれている旅客車の前の線路を、本線と繋げましょう。
ゲーム内では「青い車止めを外す」と言われますが、外すというより、切れている線路を繋げます。
前述したように移動の際には余計な線路が作られないよう、細かく移動ルートを設定するように。
客車の前の線路を繋げると、24時間後に出発します。
ただし、そのままではスタート駅の方に向かってくれません。
スタート駅の先のポイント(線路の分岐点)をタップして、旅客車がそこで曲がるように設定してください。
これで旅客車は、新しい駅とスタート駅の間を往復し、乗客を運んでくれます。
それによって駅の周囲に発展効果が発生し、さらに運賃も得られます。
しかし、すぐに挙動がおかしいことに気付くはずです……。
スタート駅に着いた列車は、そこで折り返さずにそのまま直進、行き止まりにぶつかって反転し、またスタート駅に戻ってくる、というムダな動きをします。
もちろん同じ駅に戻っても、発展も運賃も得られません。
今作『はじめてのA列車で行こう』には、なんと駅での「折り返し設定」がありません。
そこで線路が途切れていれば反転してくれますが、そうでないなら停車後、そのまま真っ直ぐ進んでいきます。
スタート駅の周囲の線路は削除できないため、スタート駅を使う場合、このムダな動きは防げません。
折り返しがないことは、App StoreでもGoogle Playでも非難の的になっていますが…… ともあれ、ないものは仕方がない。
そのため今作は、「環状線」を作るのが基本になります。
環状線とは山手線のように、円状にグルグル回る路線。
これだと折り返す必要がなく、ずっと直進のままで各駅を巡れます。
たとえば、以下のような感じ。
これで線路の周囲に駅を作れば、客車がずっとグルグル回り続けて沿線を発展させられ、利益も得られます。
複数の列車を投入して効率を上げることも可能です。
ただし乗客が少ないうちに複数の列車を投入したり、車両の多い列車を運行しても赤字が増えるだけです。
今作の乗客は、時間とともに駅に溜まっていく形式になっています。
周囲が発展していないと十分な乗客が溜まらないので、頻繁に列車が到着したり、大人数が乗れる列車が到着しても、意味がありません。
最初のうちは1両編成の列車を1本回しておけば十分。
なお、駅に溜まった乗客は列車が着くと乗れるだけ乗り込み、次の駅で全員降ります。
そして降りた分だけ運賃と発展効果が発生します。
よって当面は、すでに発展している駅の次の駅が、よく発展することになります。
駅の間隔はある程度離してください。
複数の駅の範囲に入っている建物は、どちらかの駅にしか効果を及ぼしません。
さて、環状線が完成したら、得られる運賃によって利益が上がって…… いかないでしょう。
赤字ローカル線ができて、むしろ資金は減る一方。
こればかりは沿線の発展を待つしかありません。
ここで十分な利益がないまま、次の工事に着手すると破産一直線です。
画面左上のスピードアップボタンを押して、しばらく高速化しましょう。
4倍速、8倍速、16倍速、32倍速でのプレイが可能です。
駅周辺が発展していけば、少しずつ乗客が増え、赤字は減っていくはずです。
そのうち「駅の混雑」が表示されるかもしれません。
これは小型の駅に500人の乗客が溜まると発生するもので、そのままほっといて赤い表示になるとクリア評価にペナルティが付きます。
これが出てきたら列車をタップ、3両編成にして乗り込める乗客を増やしましょう。
それでも解消できなくなってきたら、A列車を該当の駅に移動させて「拡張工事」を行います。
それでも混雑するようなら2本目の列車の投入です。
運行中の列車の「先」を長押しすると、赤信号が出て列車が止まってくれます。
新しい列車を入れるときは、これでぶつからないよう調整しましょう。
列車を直接長押しするのではないので注意。
ここまでくれば、収支は黒字になっているはず。
もう破産の心配はないはずなので、いよいよゴールを目指しましょう。
今作はステージクリア制のゲームで、スタート駅にある「特別列車」を、はるか北方にあるゴール駅まで運べばクリアとなります。
稼いだ資金を使って資材を購入し、どんどん北へと線路を延ばしていきます。
資材がなくなるたびに資材駅に戻らないといけないので、旅客路線とは別に貨物用の線路を作り、最初の資材駅を撤去して新たな資材駅を設置、北の方まで資材が運ばれるようにすると移動の手間が省けるのですが…… 最初のステージはそこまで長くないので、無理に行う必要はないでしょう。
無事にゴールまで線路を繋げると…… 24時間後、特別列車が発車します。
繋げたら問答無用で発車準備が始まるので、注意してください!
特別列車が他の列車の路線に入るときは、停車信号(線路長押し)を使ってぶつからないよう、慎重に誘導しましょう。
ゴールまで辿り着くことができれば…… ステージクリア!
総合評価が表示されます。
評価は日数だけでなく、収支や発展度にも影響されます。
準備ができたらすぐに特別列車を走らせるより、少し開発を続けて町を発展させ、収益も十分に上げてからクリアした方が高評価になります。
後半のステージは低評価だとアンロックされないので、ゴールに線路を繋げる前にセーブしておき、クリア評価が低いならやり直して、もう少し町を発展させましょう。
ただし期限は1年なので、それをオーバーしないように。
最初のステージは旅客車を3つしか使えないし、マップも広くないので、そこまで大規模な開発はできません。
しかしステージ2は7つ、ステージ3以降は9つの客車が登場し、マップもどんどん広くなっていきます。
邪魔な場所に赤字路線があって、その対処が必要なステージも登場します。
冒頭でも述べたように、わかりにくさはありますが、基本さえわかれば楽しめる作品。
あくまで初代『A列車で行こう』のリメイクなので、のちの『A列車』シリーズと比べると不便なことが多く、不満もあるのですが、輸送による間接的な都市開発の面白さは健在です。
私的には、『A列車』がこんなにポップな雰囲気で作られたことが意外でした。
なんだかプラレールみたいな雰囲気ですが、これはこれで良いですね。
不要な線路が作られやすい操作は難点ですが、シンプルにまとめられたボタン配置や反応などは良いです。
最初のわかりにくさが問題なだけで、全体のクオリティは高いです。
後半ステージを高評価でクリアしようと思ったら、相応のやり込みも必要。
今後は「はじめての」じゃない『A列車』の登場も期待したいですね。
はじめてのA列車で行こう
初代『A列車で行こう』の現代リメイクバージョン
・鉄道会社経営シミュレーションゲーム
・アートディンク(日本)
・480円
文/カムライターオ
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