普段から車を運転するドライバーの中には、駐車違反の切符を切られて複雑な思いをしたことがある人も少なくないのでは?
そんなモヤモヤを吹き飛ばすため、自分が駐禁切符を切る立場になってみませんか?
ストリートのパトロール警察官となり、路上の車にバシバシと駐車違反の紙を貼りまくる、Steamで人気の不良警官アドベンチャーゲームがiOS/Androidに移植されています。
『Beat Cop』です。
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一応、ゲームは1980年代のアメリカン・ポリスドラマをテーマにしていて、濡れ衣により降格させられた元刑事がパトロールの任務を遂行しつつ、発端となった事件の闇を暴いていく物語が展開されます。
ただ、普段やることは上司に課せられるノルマ達成のため、路上の車に駐車違反やらメンテナンス違反やらの紙をペタペタ貼り、ときにレッカー移動させていく小役人的な業務。
内容は違えど、そのプレイ感は『Papers, Please』にとてもよく似ています。
また、町にはイタリアンマフィアと黒人ギャングがのさばっていて、強盗、ドラッグ、売春などの違法行為が日常的に繰り返されており、それを取り締まる警官もチンピラのようなやつばかり。
そんなアメリカのアウトローな部分を描いている点は『Punch Club』を思い出させます。
細かい動きを見せる、ユーモアにあふれたドットグラフィックもこの作品の大きな魅力で、ドット絵好きなら一目で虜になってしまうことでしょう。
価格はiOS版600円、Steam版は1480円。
Android版は本体無料ですが、そのままでは序盤しかプレイできず、フルバージョンにするには430円の課金が必要になります。
メッセージはすべて日本語化されており、下品なジョークも含め、翻訳はほぼ完璧。
開発はポーランドの新興メーカーで、これが処女作。
販売は『This War of Mine』で知られるポーランドのパブリッシャー”11 bit studios”です。
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「ニューヨーク市警のジャック・ケリー刑事は、上院議員の邸宅で不法侵入者を射殺したが、その夜、邸宅より貴重なダイヤモンドが盗まれた。 関与を疑われたケリーは刑事職を解かれ、下っ端の警察官に降格させられた……」
そんなオープニングではじまる今作は、ニューヨーク市警69分署と、その管轄である一本のストリートが舞台。
朝のブリーフィングでその日の方針が述べられた後、通りのパトロールを行います。
そしてこのブリーフィングでさっそく、このゲームらしい下品極まりない会話が繰り広げられます。
同僚は下ネタを含んだ悪態を連発する、およそ警官に相応しくない連中ばかり。
ただ、ウィットに富んだジョークは、アメリカのドラマっぽい雰囲気を感じさせてくれます。
ブリーフィングでは巡査長から「今日は駐車違反の切符を5枚切ってこい!」といったノルマが与えられます。
こうした警察のノルマについて、日本でもあるとかないとか色々な噂が飛び交っていますが、このゲームでは「罰金収入が少ないと市長がご立腹だ! しっかり取って来い!」といった感じで、あからさまに金のためのノルマが課されます。
ノルマは日によって異なり、特別な指令が出されることもあります。
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巡査長からの命令はメモに書き込まれ、パトロール中に確認できますが、細かい点は未記入だったりするのでブリーフィングはよく聞いておくように。
同僚をタップすると会話を行えますが、ロクでもない話ばかり。
ただ、たまにガサ入れ情報などを聞ける場合があり、さらにそれをタレ込むことも……。
ブリーフィングが終わったらパトロールスタート。
タップした場所にダッシュで移動し、長押しでその方向に歩いて行きます。
ダッシュ中はスタミナが減っていき、尽きるとへばるので、長距離を移動するときはダッシュと徒歩を併用しましょう。
スティックはないので、タッチパネルでも操作し辛さはありません。
建物の入口をタップすると中に入り、フキダシのある人をタップすると会話。
最初は土地勘がないため、どこにどんな店があるのか迷うと思いますが、ゲームの舞台は一本のストリートだけなので、すぐに覚えられるでしょう。
番地は表札や看板に書かれています。
画面下部には車道があり、その脇にはたくさんの車が路上駐車されています。
車をタップして「駐車メーターを調べる」を選択すると、メーターの残り時間を確認できます。
時間がまだあるなら良いですが、もし「EXPIRED」(期限切れ)なら、はいアウト。
「切符を切る」のボタンを押し、「駐車違反」にチェックを入れてタップで署名、駐禁切符をペタッと貼り付けます。
そうやって日がな一日、迷惑駐車の一掃のために正義執行を続けます。
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斜線のある「NO PARKING」のエリアにある車も、当然駐車違反です。
また、パーキングメーターがない場所に停まっている車も違反です。
たまに車の持ち主がやってきて「あっ、ちょっと待って! コレで許して……」と山吹色のお菓子を差し出すかもしれません。
もちろん正義に燃えるヒーローコップなら、そんなものは受け取らないでしょう。
しかしこの物語の主人公には、離婚した妻がいて、容赦なく養育費の取り立てを行ってきます。
もし払えなかったら署にクレームを入れられて、今度こそクビ。
ところが元鬼嫁に要求される高額な養育費は、下っ端警官の安月給では用意するのは大変で……。
あぁ、魚心あれば水心。どうするかはあなた次第です。
ゲームが進むと、タイヤの摩耗やライトが割れていることを理由に、整備不良の切符を切ることもできるようになります。
もちろんそのためには、タイヤと灯火のチェックが必要。
切符を切った車はレッカー移動させることができ、これらがノルマになっている日もあります。
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ただ、実はアップでチェックしなくても、違反車両は判別可能です。
駐車メーターは赤くなっていたら時間切れ、灯火はサイドランプに火花が散っていたら壊れていて、タイヤは路面にタイヤ跡が付いていたら摩耗しています。
ただしタイヤは、路面の跡が前の車のものである場合があるため、時間があるならチェックした方が無難。
レッカー移動は必ずしも必要ではありませんが、駐禁エリアの車を移動させることで、新たな駐禁を呼べることも……。
火災発生時、消火栓の近くの車をどかせるよう、指令が来ることもあります。
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他にも協力してくれる元同僚の刑事など、この手のドラマの「お約束」な皆さんが登場し、王道的ポリスストーリーを展開してくれます。
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養育費の支払いがあるので、お金の無駄遣いは厳禁!
市民の印象が高まると、人々のセリフも好意的になっていきます。
イタリアンマフィアがみかじめ料を請求し、黒人ギャング(クルー)が窃盗や薬物売買を繰り返す、犯罪まみれのこの町では、頻繁に事件も発生します。
パトロール中に「614番地の宝石店前で強盗事件発生! すぐに急行してください!」といった通信が入ったら、急いで現場に向かい、逃走する犯人を取り押さえなければなりません。
他にも恐喝の防止、喧嘩の仲裁、誘拐事件の交渉、火災の現場整理など、毎日さまざまな事件の対応を迫られます。
ただ、どんなに忙しくても「ノルマ」は免除されません。
移動中は勤務時間が常に減っていき、突発で起きた事件の対処に手間取って、時間切れで駐禁切符のノルマを達成できなかったりすると、巡査長に怒られて減給&評価減少を食らいます。
時間が足りない場合、対応する事件の取捨選択が必要になることも。
また、警察の評価とは別に「マフィア」と「クルー」の評価も存在します。
彼らは互いに対立している反社会的集団ですが、警官である主人公に依頼をしてくることもあります。
たとえば、マフィアからクルーのドラッグ売人を捕まえるよう依頼された場合、その売人をマフィアに引き渡すか、逃がすか、逮捕するかを選べ、それによって各勢力の評価が変動します。
警察官といえど、あまり彼らを怒らせるのは利口ではないでしょう。
また、市民の評価もあって、あまり厳格かつ横暴にやっていると嫌われるかもしれません。
1日で一区切りとなり、時間にしておよそ20分ほど。
それぞれの日がテレビドラマの1話のような作りになっています。
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対応が悪いと市民の印象が悪化したり、事件解決に失敗したりすることが。
ただ、みかじめ料の徴収などは、マフィアとの関係を悪くしたくないなら目をつぶる手も……。
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必要なときに銃のアイコンをタップすると、ターゲットの近くに照準が現れて左右に動きます。
照準が敵に合っているときにタップすることで銃撃成功。連打しても当たらないので注意!
敵を倒すのが遅いと……。
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タイヤや鞄の下にある白い包みを探すのですが、この包みは見た目は横2マス分なのに、実際にはその下の2マス、合計4マスを表に出さないとクリアになりません。非常にわかりづらいので注意。
物を指定の回数だけ動かすと終了で、時間制ではないので、あわてずに動かしましょう。
このレビューはiOS版を元にしていますが、いかにもSteamのゲームっぽい作品です。
こうした小メーカーの尖ったゲームが出てくるのも、Steamやスマホの良いところ。
『Papers, Please』ほど難しくなく、短い時間で区切りが付くので、以外と遊びやすいゲームでもあります。
下品な会話や表現が多々見られるため、子供にはやらせられませんが、大人向けの一風変わったおすすめ作品です。
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Beat Cop
ストリートで駐禁切符を切りまくるアウトローポリスストーリー
(画像はBeat Cop – AppStoreより) ・横スクロール警察官シミュレーション
・開発:Pixel Crow(ポーランド)
・販売:11 bit studios(ポーランド)
・iOS600円、Android本体無料+フル版430円、Steam1480円
文/カムライターオ
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いまポーランドのゲーム開発が熱い。『ウィッチャー』など注目作を輩出し続ける国が独立回復100周年、記念セールがSteamで開始オープンワールドRPGの『ウィッチャー』シリーズを筆頭に、実はポーランドは東欧有数のゲーム産業国へと成長しており、ゲームや関連するイベントも多く開催されている。購入前に、この記事に挙げた主要なゲーム開発会社のプロフィールに目を通しておいてはいかがだろうか。きっと、作品への接し方に深みが増すはずだ。