ショーグンが治めるサムライとゲイシャとフジヤーマの国「ジャパン・エンパイア」。
そんなジャパンのセンゴクエイジをテーマにした、風情のあるグラフィックとサウンドが良い、ポーランド製の戦略シミュレーションゲームが無料で公開されています。
『Shogun’s Empire: Hex Commander』です。
先に言っておきますが、このゲームは戦国時代を忠実に再現しているわけではありません。
織田家、豊臣家、徳川家など、おなじみの戦国大名が群雄割拠する日本を舞台としていますが、トクガワ・クランは美濃や尾張を支配していて、そこにいたはずのオダ・クランは大阪が拠点。
さらにトヨトミ・クランはなぜか宇喜多の領地に。
武将なども適当で、あくまで戦国時代「風」のゲームだと思ってください。
兵士の中にもロケット砲アシガルやポルトガル傭兵、さらにニンジャやゲイシャがいて、外国人から見たニッポンポンワールドです。
しかし「和」を感じる3Dグラフィックの合戦シーンはとても美しく、ゲームも馴染みのあるターン制の戦略シミュレーションで、わかりやすくて面白い。
戦略シーンもボードゲームのようにうまく簡略化されていて、日本語には未対応ですが、すぐ理解できるルールになっています。
しかも本体無料で、たまに強制広告が出てきますが、それも120円という安価な課金で除去できます。
クオリティとビジュアルを考えると、かなりコストパフォーマンスに優れた作品。
ニンジャやゲイシャは有料ユニットで、アンロックするには840円の課金が要りますが、無理に必要なものではありません。
iOS版とAndroid版に加え、6月中にSteam版も公開される予定です。
ゲームは「戦略シーン」と「合戦シーン」に分かれています。
戦略マップ上にはArmy(軍団)が配置されており、これを動かして攻撃や周辺の防衛を行います。
軍団はジェネラルと複数の兵士で構成されていて、システムとしては『信長の野望』より『ROME: Total War』に近いですね。
それぞれのProvince(領土)にはひとつずつ施設が置かれていて、Village(村)ならライスを、Mine(鉱山)ならゴールドを、Town(町)なら双方を得ることができます。
ゴールドを使ってアップグレードすれば、月々の税収を増やせます。
また、Castle(城)やStables(厩舎)、Port(港)があるプロヴィンスもあり、これらを強化すると城ならサムライ、厩舎なら騎馬、港ならユミやテッポウの上位兵種を雇用できるようになります。
しかし、このゲームは資金繰りが厳しく、なかなかアップグレードに手が回りません。
ビレッジやマインを強化しても、必要なゴールドが多い割には大して収入は増えず、兵士の維持に必要なライスも多いため、米の収支はたいてい赤字で、ライスの買い付けにも資金が必要。
おまけに兵士がレベルアップすると、強くなる代わりに維持費が増え、上位の兵士もライスを多く消費します。
「ライスがなければ他国を食べればいいじゃない」と思うかもしれませんが、軍団が守備できる範囲は2プロヴィンス分の距離まで。
領土が広がると守るのに複数の軍団が必要になり、しかし軍団を増やせば必要なライスはさらに増加。
なかなか余裕ができません。
ただ、そのやり繰りがこのゲームのポイントであり、楽しさにもなっています。
一方で、システムはとてもシンプルなので、ルールで悩むことはないでしょう。
太鼓と笛によるBGMもジパングしていて良いです。
合戦シーンは『ファイアーエムブレム』や『大戦略』のようなターン制の戦術級シミュレーションゲーム。
ヘックス(六角形のマス)で区切られたマップ上に、参戦する軍団のユニット(コマ)が自動で配置され、移動力の分だけ動かして敵のユニットを攻撃していきます。
ユニットには「三すくみ」の関係があり、刀は槍に強く、槍は騎馬に強く、騎馬は刀に強いです。
また、遠距離攻撃ユニットの射程が長く、弓は移動後に3マス先への攻撃が可能です。
鉄砲は移動後の攻撃はできませんが、4マス先まで届き、大砲だともっと長射程。
ただし盾持ち兵に対しては、遠距離攻撃は有効ではありません。
どの兵種にもアシガルとサムライがいて、アシガルは最初から雇用可能、費用も維持費も安いのですが、ピンチになると勝手に逃げ出してしまいます。一度こうなるとコントロール不可能。
こうした部隊の「敗走」や「恐慌」は、海外のシミュレーションゲームにはよくある仕様。
サムライはそうした状態になりませんが、雇用に施設のアップグレードが必要です。
AIはあまり利口ではなく、無闇に突っ込んでくるので、守りを固めて待ち構え、接近してきたら弓や鉄砲で撃ちまくり、有利な部隊で攻撃すれば無難に敗走させられます。
もう少し強くても…… とも思いますが、このくらいのほうが寡兵で大軍を撃破できる面白さがありますね。
また、高難度のクランだと不利な状態から始まるので、これでも簡単ではなくなってきます。
合戦シーンは演出に優れ、季節に合わせて桜やいちょう、雪が舞い、雷雨の戦いになることも。
寂れた村にはとても雰囲気があり、合戦で倒れた兵士がバタバタと地面に転がっていきます。
ユニットを選択すると音声が出ますが、サムライが英語やロシア語で喋るのが乙。
日本語の音声にすることもできますが、「連中は皆殺しだ」、「殿のために戦って死ね」と、やたらヒドいセリフを抑揚なく喋るため、むしろ英語よりシュール。
まあ、これはこれで外国人的サムライ感があって良いです。
最初からすべてのクラン(大名家)を選ぶことはできません。
まずはチュートリアルのタケダでプレイし、次はトクガワかアシカガ、モウリを選ぶことになります。
各クランで勝利することで、新しいクランや次の時代がアンロックされていきます。
キャンペーンモードのようになっているのは、やり甲斐があって良いですね。
各クランには3つのゴールが設定されていて、これを満たすことで勝利となります。天下統一までプレイする必要はありません(望めば最後までプレイすることも可能)。
たとえば、トクガワだと10のプロヴィンスを支配し、12のユニットを所持、さらにオウミの城レベルを5まで上げれば勝利。
アシカガならふたつの港を占領し、レベル5の騎馬ユニットを3つ所持、さらにライスを1500溜めるのが条件です。
もしユニットのレベルが勝利条件に含まれている場合は、その部隊の全滅はなんとしても避けなければなりません。
初期ユニットもクランごとに異なり、3つの固有スキルも用意されています。
大名に能力値などはありませんが、これらで各クランの特徴が表現されています。
海外製の戦国モノなのに加え、基本無料の作品であるため、最初は期待していなかったのですが、予想以上に遊べるゲーム。
むしろ、この割り切ったアレンジは海外だからこそかもしれません。
しっかり戦略シミュレーションとしての面白さがある、微妙な異国情緒と和風美術の同居する作品。
タダで試せるゲームですし、SLGファンなら体験してみるのをおすすめします。
Shogun’s Empire: Hex Commander
古い日本映画を元にしたような外国人的戦国SLG
・戦略シミュレーション
・Home Net Games(ポーランド)
・アプリ無料、広告除去などの課金あり
文/カムライターオ
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