いま読まれている記事

日本の戦国時代をテーマにしている気がする、ポーランド発のSENGOKUシミュレーション【レビュー:Shogun’s Empire: Hex Commander】

article-thumbnail-190627a

 ショーグンが治めるサムライとゲイシャとフジヤーマの国「ジャパン・エンパイア」。
 そんなジャパンのセンゴクエイジをテーマにした、風情のあるグラフィックとサウンドが良い、ポーランド製の戦略シミュレーションゲームが無料で公開されています。
 『Shogun’s Empire: Hex Commander』です。

日本の戦国時代をテーマにしている気がする、ポーランド発のSENGOKUシミュレーション【レビュー:Shogun’s Empire: Hex Commander】_001

 先に言っておきますが、このゲームは戦国時代を忠実に再現しているわけではありません。
 織田家、豊臣家、徳川家など、おなじみの戦国大名が群雄割拠する日本を舞台としていますが、トクガワ・クランは美濃や尾張を支配していて、そこにいたはずのオダ・クランは大阪が拠点。
 さらにトヨトミ・クランはなぜか宇喜多の領地に。

 武将なども適当で、あくまで戦国時代「風」のゲームだと思ってください。
 兵士の中にもロケット砲アシガルやポルトガル傭兵、さらにニンジャやゲイシャがいて、外国人から見たニッポンポンワールドです。

 しかし「和」を感じる3Dグラフィックの合戦シーンはとても美しく、ゲームも馴染みのあるターン制の戦略シミュレーションで、わかりやすくて面白い。
 戦略シーンもボードゲームのようにうまく簡略化されていて、日本語には未対応ですが、すぐ理解できるルールになっています。

 しかも本体無料で、たまに強制広告が出てきますが、それも120円という安価な課金で除去できます。
 クオリティとビジュアルを考えると、かなりコストパフォーマンスに優れた作品。
 ニンジャやゲイシャは有料ユニットで、アンロックするには840円の課金が要りますが、無理に必要なものではありません。
 iOS版とAndroid版に加え、6月中にSteam版も公開される予定です。

日本の戦国時代をテーマにしている気がする、ポーランド発のSENGOKUシミュレーション【レビュー:Shogun’s Empire: Hex Commander】_002
日本の戦国時代をテーマにしている気がする、ポーランド発のSENGOKUシミュレーション【レビュー:Shogun’s Empire: Hex Commander】_003

 ゲームは「戦略シーン」「合戦シーン」に分かれています。
 戦略マップ上にはArmy(軍団)が配置されており、これを動かして攻撃や周辺の防衛を行います。
 軍団はジェネラルと複数の兵士で構成されていて、システムとしては『信長の野望』より『ROME: Total War』に近いですね。

 それぞれのProvince(領土)にはひとつずつ施設が置かれていて、Village(村)ならライスを、Mine(鉱山)ならゴールドを、Town(町)なら双方を得ることができます。
 ゴールドを使ってアップグレードすれば、月々の税収を増やせます。

 また、Castle(城)やStables(厩舎)、Port(港)があるプロヴィンスもあり、これらを強化すると城ならサムライ、厩舎なら騎馬、港ならユミやテッポウの上位兵種を雇用できるようになります。

 しかし、このゲームは資金繰りが厳しく、なかなかアップグレードに手が回りません。
 ビレッジやマインを強化しても、必要なゴールドが多い割には大して収入は増えず、兵士の維持に必要なライスも多いため、米の収支はたいてい赤字で、ライスの買い付けにも資金が必要。
 おまけに兵士がレベルアップすると、強くなる代わりに維持費が増え、上位の兵士もライスを多く消費します。

 「ライスがなければ他国を食べればいいじゃない」と思うかもしれませんが、軍団が守備できる範囲は2プロヴィンス分の距離まで。
 領土が広がると守るのに複数の軍団が必要になり、しかし軍団を増やせば必要なライスはさらに増加。
 なかなか余裕ができません。

 ただ、そのやり繰りがこのゲームのポイントであり、楽しさにもなっています。
 一方で、システムはとてもシンプルなので、ルールで悩むことはないでしょう。
 太鼓と笛によるBGMもジパングしていて良いです。

日本の戦国時代をテーマにしている気がする、ポーランド発のSENGOKUシミュレーション【レビュー:Shogun’s Empire: Hex Commander】_004
戦略マップ。軍団は2エリア先までしか防衛できないので、それを加味して攻める領土を決めましょう。
攻め込む前にはRelations(外交)を選び、Declare War(宣戦布告)をする必要がありますが、Honor(名声)が下がってしまいます。
相手に宣戦布告されるまで内政しておくのも手。ただし、時間が経つと敵も強くなっていきます。
宣戦布告されても、敵が攻め込んでくるのは次のターンから(自分はすぐに進攻可能)。
その相手と戦いたくないときは、RelationsのRequest Peace(和平)を選び、ゴールドを支払えば、確実に停戦できます。
戦争中でないなら、Request Alliance(縁組)とRequest Trade(通商)を行うことで、相手が敵対しにくくなるのに加え、ゴールド収入もアップします。
日本の戦国時代をテーマにしている気がする、ポーランド発のSENGOKUシミュレーション【レビュー:Shogun’s Empire: Hex Commander】_005
ユニット雇用画面。このニッポンでは片手持ちの盾が常用されている模様。また、ニッポンなのでどこの家からでもフジヤマが見えます。
騎馬や大砲の場合、ちゃんと庭に立つのが芸が細かい。
軍団の新設は、軍団がいない村・鉱山・町で「Create Army」を選択。
城や厩舎にはCreate Armyのボタンがなく、Demolish(撤去)になっているので注意してください。
同じ施設はふたつ以上あっても意味がなく、撤去するとゴールドを得られるので、勝利条件に無関係なら壊して村にするのも良いです。
日本の戦国時代をテーマにしている気がする、ポーランド発のSENGOKUシミュレーション【レビュー:Shogun’s Empire: Hex Commander】_006
カレンダーのボタンを押すとターン終了画面に。浮世絵っぽいイラストが良いです。
もしライスが足りない場合は、ターン終了前に一番左のボタンで「ライスマーケット」の画面を開き、必要な分だけ購入しておくこと。
米の相場は毎月変わるので、安いうちに買いだめしておくのも良いです。
「Send a gift」は朝廷に献金して名声を増やすもので、名声が増えれば米取引が有利になります。
もしカレンダーの画面に「Warning! Rebellion chance …」と赤字で書かれていたら要注意。Taxes(税率)を下げないと一揆が起きるかもしれません。
税率の変更はTaxesの画面で「Auto」を押すだけでOKです。

 合戦シーンは『ファイアーエムブレム』や『大戦略』のようなターン制の戦術級シミュレーションゲーム。
 ヘックス(六角形のマス)で区切られたマップ上に、参戦する軍団のユニット(コマ)が自動で配置され、移動力の分だけ動かして敵のユニットを攻撃していきます。

 ユニットには「三すくみ」の関係があり、刀は槍に強く、槍は騎馬に強く、騎馬は刀に強いです。
 また、遠距離攻撃ユニットの射程が長く、弓は移動後に3マス先への攻撃が可能です。
 鉄砲は移動後の攻撃はできませんが、4マス先まで届き、大砲だともっと長射程。
 ただし盾持ち兵に対しては、遠距離攻撃は有効ではありません。

 どの兵種にもアシガルとサムライがいて、アシガルは最初から雇用可能、費用も維持費も安いのですが、ピンチになると勝手に逃げ出してしまいます。一度こうなるとコントロール不可能。
 こうした部隊の「敗走」や「恐慌」は、海外のシミュレーションゲームにはよくある仕様。
 サムライはそうした状態になりませんが、雇用に施設のアップグレードが必要です。

 AIはあまり利口ではなく、無闇に突っ込んでくるので、守りを固めて待ち構え、接近してきたら弓や鉄砲で撃ちまくり、有利な部隊で攻撃すれば無難に敗走させられます。
 もう少し強くても…… とも思いますが、このくらいのほうが寡兵で大軍を撃破できる面白さがありますね。
 また、高難度のクランだと不利な状態から始まるので、これでも簡単ではなくなってきます。

 合戦シーンは演出に優れ、季節に合わせて桜やいちょう、雪が舞い、雷雨の戦いになることも。
 寂れた村にはとても雰囲気があり、合戦で倒れた兵士がバタバタと地面に転がっていきます。

 ユニットを選択すると音声が出ますが、サムライが英語やロシア語で喋るのが乙。
 日本語の音声にすることもできますが、「連中は皆殺しだ」、「殿のために戦って死ね」と、やたらヒドいセリフを抑揚なく喋るため、むしろ英語よりシュール。
 まあ、これはこれで外国人的サムライ感があって良いです。

日本の戦国時代をテーマにしている気がする、ポーランド発のSENGOKUシミュレーション【レビュー:Shogun’s Empire: Hex Commander】_007
農村での戦い。激戦の場所には兵士の死体が積み重なっていきます。
近接攻撃ユニットはZOC(隣接した敵の移動を妨害する効果)を持つため、それで壁を作り、その後ろから弓や鉄砲を撃ちまくるのが基本。
ジェネラルは高い耐久力を持ちますが、倒す必要はありません。すべての敵兵を敗走させると、その時点で撤退します。
ただ、ジェネラルが倒れると、通常HP1/3で逃げ出すアシガルが、2/3で逃げるようになります。
日本の戦国時代をテーマにしている気がする、ポーランド発のSENGOKUシミュレーション【レビュー:Shogun’s Empire: Hex Commander】_008
マップによっては櫓、陣地、城門が存在し、櫓や城壁の上には登ることができます。
戦場は自由にズームでき、ズームアウトすると部隊マークと、残りHPを示すバーグラフ&数値が現れます。
経験値は敵を攻撃すると増え(防戦では上がらない)、ジェネラルのレベルが上がると率いられる兵士が増えるので、積極的に攻撃に参加させましょう。
ただしジェネラルは騎馬なので、槍には近付かないように。

 最初からすべてのクラン(大名家)を選ぶことはできません。
 まずはチュートリアルのタケダでプレイし、次はトクガワかアシカガ、モウリを選ぶことになります。
 各クランで勝利することで、新しいクランや次の時代がアンロックされていきます。
 キャンペーンモードのようになっているのは、やり甲斐があって良いですね。

 各クランには3つのゴールが設定されていて、これを満たすことで勝利となります。天下統一までプレイする必要はありません(望めば最後までプレイすることも可能)。

 たとえば、トクガワだと10のプロヴィンスを支配し、12のユニットを所持、さらにオウミの城レベルを5まで上げれば勝利。
 アシカガならふたつの港を占領し、レベル5の騎馬ユニットを3つ所持、さらにライスを1500溜めるのが条件です。
 もしユニットのレベルが勝利条件に含まれている場合は、その部隊の全滅はなんとしても避けなければなりません。

 初期ユニットもクランごとに異なり、3つの固有スキルも用意されています。
 大名に能力値などはありませんが、これらで各クランの特徴が表現されています。

日本の戦国時代をテーマにしている気がする、ポーランド発のSENGOKUシミュレーション【レビュー:Shogun’s Empire: Hex Commander】_009
まずは勝利条件の確認を。「?」マークのボタンを押せば「Clan goals」のところに書いてあります。
英文ですが、短い文章なので読めないほどではないでしょう。
3つ目の時代には勝利条件はなく、どの大名家も天下統一が目標になります。
「Emperors Task」は朝廷からの依頼で、達成するとボーナスをもらえますが、ある程度の名声がないと提示されません。
クラン専用スキルは税率画面の下のほうにあります。修得に必要な費用が高すぎて、なかなか手が出ませんが……。
なお、そのクランでのゲームをやり直したいときは、メニューの「Settings」の下のほうにある「Restart clan’s campaign」を押してください。
日本の戦国時代をテーマにしている気がする、ポーランド発のSENGOKUシミュレーション【レビュー:Shogun’s Empire: Hex Commander】_010
豪雨の中での戦い。雷によって戦場が黒い閃光に包まれる。
このゲームのビジュアルには黒澤映画のような雰囲気があり、村の様子も時代劇のセットを思わせます。

 海外製の戦国モノなのに加え、基本無料の作品であるため、最初は期待していなかったのですが、予想以上に遊べるゲーム。
 むしろ、この割り切ったアレンジは海外だからこそかもしれません。

 しっかり戦略シミュレーションとしての面白さがある、微妙な異国情緒と和風美術の同居する作品。
 タダで試せるゲームですし、SLGファンなら体験してみるのをおすすめします。

Shogun’s Empire: Hex Commander

古い日本映画を元にしたような外国人的戦国SLG

日本の戦国時代をテーマにしている気がする、ポーランド発のSENGOKUシミュレーション【レビュー:Shogun’s Empire: Hex Commander】_011
(画像はShogun’s Empire: Hex Commander – AppStoreより)

・戦略シミュレーション
・Home Net Games(ポーランド)
・アプリ無料、広告除去などの課金あり

文/カムライターオ

【あわせて読みたい】

 

ハイセンスな和テイストが世界的人気の“侍ボードゲーム”がiOSに登場。歯ごたえあり!【レビュー:MIYAMOTO】

センスの良いフィギュア風のサムライたちが、4×4のマスの上で死闘を繰り広げる、頭脳派のボードゲームアプリ『MIYAMOTO』をレビュー。

関連記事:

4月4日まで無料!中田ヤスタカのBGMで、ポップな戦国の世でDJバトルを繰り広げる音楽アクションパズルが買い切りで復活【レビュー:DJノブナガ】

戦国好きの開発者が情熱を持って作り上げたスマホの歴史シミュレーションに、「本能寺の変」を含む大型アップデートが導入【レビュー:ポケット戦国】

著者
日本の戦国時代をテーマにしている気がする、ポーランド発のSENGOKUシミュレーション【レビュー:Shogun’s Empire: Hex Commander】_012
『Ultima Online』や『信長の野望 Online』、『シムシティ4』など、数々のゲームのファンサイトを作成してきた。
iPhone 解説サイト『iPhone AC』を経て電ファミニコゲーマーのお世話に。
シューティングとシミュレーションが特に好き。

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

新着記事

新着記事

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

カテゴリーピックアップ