人類初の火星有人飛行ミッションの最中、不幸にも宇宙船は小惑星嵐に遭遇、船体に深刻なダメージを受け、2人のクルーも失った。
さらに続く不測の事態により全滅の危機が迫る中、火星から謎の通信が送られてくる。
なぜ? 我々より先に到達した者がいるのか?
多くの謎をはらんだまま、船は火星へと飛び続ける……。
そんな宇宙でのSFサバイバルをテーマにした、Steamで高く評価されているダイスゲームがiOS(iPad)にも移植されました。
『Tharsis』です。
『One Deck Dungeon』や『Elder Sign: Omens』のような、サイコロを転がして結果を判定するボードゲーム風の作品ですが、アナログゲームの原作がある訳ではありません。
最初からコンピューターゲームとして作られています。
ドイツゲーム系のアプリとして見た場合、その演出のクオリティは突出しています。
3Dグラフィックで緻密に表現された宇宙船、ゲームを盛り上げるムービーシーン、豊富なボイスなど、本格的なSFアドベンチャー仕立てとなっています。
そして、人肉を食べる「カニバリズム」が、ゲームにブラックで極限のサバイバル感を与えています。
犠牲になったクルーの肉は食用として保管されており、回復のために食すことができますが、食べた者は罪悪感に苛まれ、そしてサイコロは血まみれに……。
嫌が応にも死の恐怖を感じざるを得ません。
価格はiOS版960円。買い切りゲームなので課金や広告はありません。ただし(2019年7月時点では)iPad専用です。
Steam版は1480円で、Mac版も公開されています。
英語のボードゲーム風アプリなので、ルール解説を中心にレビューしたいと思います。
4人のクルー(船員)に命令を出し、宇宙船に発生するトラブルに対応しながら、火星までの10ターンの道のりを生き延びるのが目標です。
ゲーム開始時にはクルーと難易度の選択を行いますが、最初から使えるのはドクター、スペシャリスト、メカニック、キャプテンの4人のみ。
他のクルーは条件を満たさなければ選べません。
難易度はEASY・NORMAL・HARDが用意されていますが、EASYでもぜんぜん「イージー」ではないので悪しからず。
各ターンの最初に、様々な「イベント」が発生します。
イベントと言っても、隕石の衝突や火災など、起こるのはトラブルばかり。
被害が深刻になる前に、これを修理していかなければなりません。
クルーを選択してトラブルが発生している場所を選び「DEPLOY」のボタンを押すと、そこに移動します。
この時、故障しているエリアを通過するとダメージを受けるので注意して下さい。
到着したら、「ROLL」と書かれているボタンを押して、ダイスを振ります。
この時のダイスの数は、クルーが持つ「ダイス数」と同じです。
ダイス数はスタミナのようなもので、ターンごとに減っていきます。
ダイスを振ったら、それをREPAIR(修理)、MODULE(モジュール)、CLASS(職業)、RESEARCH PROJECTS(研究)、DICE HOLD(ダイス保持)にドラッグで振り分けていきます。
REPAIR(修理)にダイスをドラッグすると、その目の数だけ数値が減っていきます。
0になれば修理完了で、そこで発生しているトラブルが解消。
とりあえず、これが目標です。
CLASS(職業)に5以上のダイスをドラッグすると、クルーの技能が使用されます。
初期メンバーのうち、メカニックは船体の耐久力(HULL)を1回復、ドクターはその場所にいるクルーのHPを1回復、キャプテンはその場所のクルーのダイス数をひとつ増やします。
スペシャリストには技能の使用はありませんが、ダイスを1回、多く振り直すことができます。
MODULE(モジュール)は、その場所にある装置を使用します。
船体の各モジュールには役割があって、医務室ならHPを、生命維持装置ならダイス数を回復でき、栽培室なら食料を得られます。
ただし、使用できる条件はモジュールによって異なります。
医務室は5以上のダイスをドラッグすれば使えますが、生命維持装置や栽培室は「同じ目のダイス」をふたつ以上セットしなければなりません。
RESEARCH PROJECTS(技術研究)には、異なる数値のダイスを溜めていくことができます。
その分だけリサーチポイントを得ていることになり、その下に3枚あるリサーチカードを、溜めたダイスを消費して使用することができます。
カードにはHPやHULLをその場で回復、トラブルを即座に修理、ダイスをひとつ増やすなどの便利な効果が。
ただし強力な効果ほど、リサーチポイントの消費は大きくなります。
DICE HOLD(ダイス保持)は、単にダイスを置いておくスペース。
ダイスは通常2回振れますが(スペシャリストは3回)、振り直したくないダイスがある時は、ここに置いておきましょう。
そして多くのトラブルには、厄介なHAZARDS(障害)が付いています。
振り直しできなくなる水色のStasis(停滞)、ダメージを受けてしまうオレンジのInjury(負傷)、ダイスが消えてしまう紫のVoid(喪失)があり、例えば水色の1と3のダイスが表示されている場合、1と3の目が出たダイスは振り直せなくなります。
オレンジの4のダイスが表示されていれば、4の目が出た数だけHPが減ります。
ダイスが多いほど、何度も振り直すほど、逆に危険が大きくなるため、慎重な対処が必要。
紫は一番厄介で、ダイスが消えてしまうため修理の達成が困難になります。
しかし、これらのハザードはASSIST(アシスト)の数だけ無効化できます。
アシストは毎ターンひとつ得られ、モジュールのLABORATORY(研究室)の利用でさらに追加できます。
ハザードだらけのトラブルは、先にアシストを得ておいた方が無難でしょう。
「FINISH DEPLOYMENT」のボタンを押すと、そのクルーの行動が終了します。
全員の行動が終わると、ダメージフェイズに移行。
解決できなかったトラブルがある場合、ペナルティを被ります。
トラブルの表示に赤い横線がある場合、船体ダメージのペナルティを受け、その数だけHULL(耐久力)が減少。
もしHULLが尽きてしまうと…… 宇宙船は崩壊、ゲームオーバーです。
HULLの減少以外に、クルー全員のHPやダイスが減るペナルティもあります。
こちらの方が厄介だったりするので、優先して修理しなければなりません。
さらに、サイドプロジェクトの選択フェイズになります。
クルーがいくつかの提案を行ってきて、採用するものを選ぶのですが、「船の耐久力が回復するがHPは減る」、「食料を得られるがストレスが増える」といった、メリットとデメリットが混在するものが大半。
このサイドプロジェクトはストレスが低いほど良い提案になりやすく、逆に高ストレスだと「ストレスが減る代わりに船がダメージを受ける」といった、ストレス軽減を優先した提案が多くなります。
そして、お食事タイム。食料を分け与え、クルーのダイス数を回復させられます。
ただし、正規の食料はなかなか得られません。
栽培室を利用すれば増やせますが、トラブルの対応で手一杯になり、なかなか手が回らないでしょう。
そこで出てくるのが…… カニバリズム。人肉食です。
プロローグ(チュートリアル)で、すでにクルーに犠牲者が出ており、その肉が保管されています。
これを食べればダイス数が回復。しかしクルーのストレスが激増し、最大HPも減少します。
でも、ダイスが少ないとトラブルを修理できないので、背に腹は替えられない……。
最初は人肉も3つしかありませんが、新たな犠牲者が出れば補充されます。
食料も人肉も食べ尽くした時は、「KILL」というコマンドが……。
ここまでのサイクルが1ターン。
そして10ターン目まで耐えることができれば、いよいよ着陸準備となります。
先頭にある操縦室は着陸ポッドも兼ねており、最終ターンでここにいるクルーが火星へと降下します。
その先で彼らは一体、何を見るのでしょうか……?
このゲームはマルチエンディングになっており、犠牲者がいなければ、異なる展開を見ることができるかもしれません。
そして火星に到達しても、宇宙の藻屑となっても、最後にスコアが表示され、ゲームは終了します。
ダイスゲームなので運に左右されますが、行動を最適化していく戦略も必要。
かなり難易度は高いですが、それが挑戦意欲を湧かせてくれる、何度も繰り返してしまう作品です。
なにより絶体絶命のサバイバル感が、この高難度にマッチしています。
犠牲者を食肉にするというのはショッキングですが、SFにおいて食料がなくなり、人を食用にするというのは、割と見られる設定。
藤子・F・不二雄さんの短編集などで見たことがある方もいるのでは?
ボードゲームやSFストーリーが好きなら、ぜひプレイして欲しい作品です。
Tharsis
事故に遭った宇宙船でのサバイバルを描くSFダイスゲーム
・ダイスゲーム(デジタルボードゲーム)
・開発:Choice Provisions(アメリカ)
・iOS版(iPad専用)960円、Steam版1480円
文/カムライターオ
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