Appleの発表会で大きくアピールされた、美しい空を飛び回るビジュアル・アドベンチャーゲームがようやく登場【レビュー:Sky 星を紡ぐ子どもたち】

 風の吹く草原、光り輝く空、雨のしたたる森…… 印象的な風景の中を飛び回り、隠された謎を解き明かす、美しく神秘的なアクション・アドベンチャーゲームが『Flower』『風ノ旅ビト』を手がけたスタジオ・thatgamecompanyより、iOSで公開されました。
 『Sky 星を紡ぐ子どもたち』(原題 Sky:Children of the Light)です。

 2017年の秋に行われたAppleの発表会で、スマホ期待のタイトルとして大きくアピールされていた注目作。
 しかし発表会の後、いつまで経っても続報がなく、すっかり忘れられていた作品でもあります。
 それが2019年の夏、ひょっこり公開されました。

 ゲームとしては、千の風になって大きな空を吹き渡っていた『Flower』の主人公を、空飛ぶ子どもに変えたような内容で、草原や洞窟のシーンではよく似た風景が見られます。
 一方で、常にオンライン・マルチプレイの状態であり、同じエリアにいる他のプレイヤーの姿が現れます。
 彼らとはコミュニケーションを取ったり、助け合いをすることができ、この辺りは『風ノ旅ビト』を思わせます。

 美しい風景と演出を楽しむビジュアル重視のゲームで、その最上たるもの。
 しかし相応の探索や謎解きも必要で、ただ散歩するだけの内容ではありません。
 賛否あるのは最終エリア「暴風域」の難易度ですが…… これについては後述します。

 アプリ本体は無料。課金はありますが、まったく必要性を感じません。
 「アドベンチャーパス」と呼ばれる課金が1200円で用意されており、得られるアイテムが増えますが、やり込みたい人や、寄付したい人のためのものでしょう。
 スタミナや広告はありません。

 現時点(2019/8)ではiOS版のみですが、Android版の事前登録も始まっています。
 さらにPCや専用ゲーム機への移植も予定されています。

 フィールドを走り回り、ときに空を飛びながら、アイテムやしかけ、通り道などを探します。
 当面は敵と言える存在は現れず、美しい世界を自由に探索することができます。

 フィールドのどこかに青白い人影の「精霊」がいて、近付くと光の粒を残しながら別の場所に移動します。
 これを追いかけていくと最終的に精霊の本体にたどり着き、それに持っているキャンドルの火を灯すと、精霊が解放されて次のエリアへの道を通過できるようになります。

 また、解放した精霊からは「感情表現」を得られ、泣いたり笑ったり、様々なポーズを取れるようになります。
 これは他のプレイヤーとのコミュニケーションに使用できます。

 精霊はかなり豊富に隠されていて、すべて見つける必要はないのですが、精霊探しがやり込みのひとつになっています。

 そしてフィールドの各所で、輝く子どものような人影も見つかります。
 これに触れると「翼」を得られ、飛行が可能になり、たくさん集めると羽ばたける回数が増えていきます。
 この翼には他にも重要な役割があり、できるだけ集めておかなければなりません。

青白く光る彼らが精霊。星座の描かれたバリアを通過するには、指定の数の精霊を解放しなければなりません。
精霊を見かけたら、解放されて空に飛んでいくまで追いかけ続けましょう。
雪原を滑空しているシーン。画面を長押しすると羽ばたいて飛ぶことができます。
ただ、そのまま押しっぱなしにしていると連続で羽ばたいて、羽ばたける回数がすぐ尽きてしまうのでご注意を。
草原のワンシーン。序盤のエリアなのに、一番悩みやすいところかもしれない……。
この画面の奥、小高い丘の上に穴があいていて、そこに入ると精霊が見つかります。
また、3ヶ所ある仏塔のロウソクにすべて火を灯すと、空飛ぶエイが現れ、これに乗ることで天空の宮殿に向かうことができます。

 主人公が雨に打たれたり、水の中に入ったりすると、炎のような「エナジー」が失われていきます。
 エナジーが尽きると「翼」を落とし、すぐに回収できないと消滅してしまいます。
 エナジーは火の付いた灯籠やキャンドルに近付くことで少しずつ回復していきますが、プレイヤー同士でロウソクの炎を分け合うことでも互いに大きく回復することができます。

 また、マップ内には触れると扉が開くスイッチやランプがあり、いくつかのしかけは他のプレイヤーと協力して、同時に触れるなどしないと起動しません。

 他のプレイヤーとそこまで親密になる必要はありませんが、助け合うことでゲームの進行がラクになるように作られており、プレイヤー同士のポジティブな関わりを演出することが、この作品のコンセプトになっています。

 なお、フィールドのロウソクから炎を集めると「通貨のキャンドル」を得られます。
 ホームエリアや中間地点では解放した精霊に会うことができ、このキャンドルで上位の感情表現や「ハート」を買うことができます。
 ハートはさらに衣装や髪型に交換でき、これらの収集もやり込み要素となっています。

くらげのような生物が浮かぶ幻想的な雨の森……なのですが、このゲームの雨や水たまりはダメージゾーン。
エナジーが失われるため、できるだけ避けなければなりません。
エナジーが減っても、こんな風に他のプレイヤーとキャンドルを灯し合えば、すぐに回復することができます。
しかもすっごく良い雰囲気。
一度キャンドルを灯し合った他プレイヤーは、明るい色で表示されるようになります。
ホームエリアにある星座の書かれた石に乗って星のボタンを押すと、発見済みの精霊やフレンドを呼び出すことができます。
集めたキャンドルは彼らとの取引に使いましょう。
星の付いた赤いキャンドルは最終エリアを突破しないと得られないので、当面は気にしなくて構いません。

 そんな風光明媚で和気あいあいとした『Sky』ですが、最終エリアの「暴風域」だけは話が変わります。
 ここは翼を20枚以上集めていないと挑戦できません。
 足りない人は各エリアを隅々まで探索し、翼を探してくる必要があります。

 そしてそんな苦労をして集めた翼を、このエリアは容赦なく刈り取っていきます。
 飛ぶことができない強風が吹き荒れており、大量の岩が飛来してきて、サーチライトでプレイヤーを狙う暗黒竜も飛び回っています。
 その難しさは、そこまでの観光気分を木っ端微塵に粉砕してくれます。

 このエリアは複数のプレイヤーと協力して扉を開けないと、入ることができません。
 また、入る際に「仲間と力を合わせて挑みましょう」というメッセージが表示されるため、エナジーを互いに補いながら進むことを想定しているのだと思われます。
 しかし逆に、目の前で次々と仲間が脱落していく、痛ましい光景を目にすることになるかもしれません。

 そして多くの翼を失って心が折れ、ホームに戻ってしまうと…… 翼が20枚ないと再挑戦できないため、翼の集め直しになってしまいます。
 ここで脱落した人が嘆き、文句を言うのは、とてもよくわかります。

 「暴風域」に挑戦する際は、十分な時間と覚悟を持って挑みましょう。
 そして、何があっても、どんなことになっても、決してホームに戻ったりはせず、行き着くところまで強い心で進み続けて下さい。

この暗黒竜が終盤のライバル。青いサーチライトを照らしながら周囲を旋回していて、ライトの中に入ってしまうと突進攻撃を食らい、翼を落としてしまいます。
吹き荒れる風、飛び交う瓦礫の中、身をかがめて堪えながら進んでいく暴風域のプレイヤーたち。
近くに仲間がいれば岩などを食らってピンチになっても、キャンドルの灯火を分け合って回復することができます。
しかし暗黒竜にやられると、大きく吹っ飛ばされてしまうため……。

 『Flower』がそうであったように「インタラクティブムービー」という趣があり、プレイヤーの「体験」を演出する作品という印象です。
 最後だけ「ハードなゲーム」になりますが、それも初期の『Flower』を彷彿とさせますね。

 一度クリアしないと得られない感情表現や衣装、入れない場所、見つからない精霊などが多くいるため、長くやり込めるゲームになっています。

 スミソニアン博物館に美術品として収蔵されたFlowerの後継と言えるアプリ。
 今作も期待を裏切らない、ゲームという形態の芸術であり、しかも基本無料。
 試しておきたい作品のひとつでしょう。

Sky 星を紡ぐ子どもたち

美しい世界を仲間と協力しながら飛び回るビジュアルADV

(画像はSky 星を紡ぐ子どもたち – AppStoreより)

・アクションアドベンチャー
・開発:thatgamecompany(アメリカ)
・公開:thatgamecompany(アメリカ)
・無料。アイテム課金あり。

文/カムライターオ

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『Ultima Online』や『信長の野望 Online』、『シムシティ4』など、数々のゲームのファンサイトを作成してきた。
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