PCやPS4、Nintendo Switchで絶賛された、最上級のドットグラフィックで描かれる、退廃的でスタイリッシュな2Dゼルダ型の謎解きアクションが、満を持してiOSにも登場しています。
『Hyper Light Drifter』です。
1990年代のアクションゲームへのリスペクトを、ひしひしと感じる作品。
ビジュアルとハードなアクション、謎に満ちた世界観は海外で高く評価されており、数多くの表彰を受けています。
日本でもファミ通のクロスレビューで「ゴールド殿堂入り」しており、この作品がiOSに移植されたことは、大きなニュースと言えるでしょう。
『ゼルダの伝説』に影響を受けたというフィールド見下ろし型の剣劇アクションで、練り込まれたマップの作りが素晴らしく、あちこちに隠し通路があり、様々なアイテムや謎が隠されています。
加えて、”そこにしかない”という見どころのあるオブジェが散在しており、ちょっとした小道具にも物語を感じられ、探索するのが本当に楽しいゲームになっています。
ストーリーは正直、よくわかりません。 と言うか、わかるように作られていません。
オープニングを見ても何が言いたいのかさっぱり、という人が多いでしょう。
ただ、細かく設定されたバックストーリーが存在し、情報を断片的に出していることは見て取れます。
私は考察任せの展開は好きではないのですが、このゲームは背後にある物語を詳細に作っていて、丁寧に描かれた風景に反映しているため、それがゲームに奥深さを与えています。
iOS版の定価は840円。他機種版より安め。
Steam版は1980円、PS4版は2480円、Nintendo Switch版は2500円です。
以下、iOS版がベースのレビューとなります。
オープニングの後、主人公は町の一室で目覚めます。
町の十字方向、東西南北には広いフィールドがあり、自由に探索することができます。
ただし、南のエリアだけは他のエリアをクリアしてからでないと入れません。
画面左側をスライドして移動を行い、他に剣攻撃ボタン、銃撃ボタン、雑用に使うアクションボタン、そしてダッシュボタンがあります。
剣は連打で3連続攻撃が可能、銃は弾数がありますが離れた敵を狙い撃て、ダッシュは無敵時間を伴うスピーディーで華麗な回避&移動を行うことができます。
操作性はタッチパネルでも良好で、キビキビしたアクションをスマホやタブレットでも存分に楽しめるのですが…… 残念ながら、iOS版の操作に対する巷の評価は芳しくありません。
理由は、ハードなアクションゲームであるため。
このゲームは難易度が高く、受けるダメージが大きいのに敵が大量に出てくるため、少しの油断であっさりダウンします。
ダッシュによる回避で大抵の攻撃はかわせるのですが、逆に言うと、これをうまく使えないとお手軽に死ぬ。
ザコ戦でさえリトライを繰り返すハメになりかねません。
そんなシビアなアクションゲームだと、操作性は完璧でなければ気になる訳で…… タッチパネルのため、物理スティックより入力方向が若干わかりにくいだけで、妙に操作し辛く感じることも多いです。
一応、iOS版には入力方向を示す表示があり、穴を飛び越える場合、スティックが多少ズレていても補正してくれます。
全体として悪い操作性ではないのですが、ゲーム的に文句を言われるのは仕方がないところでしょうか。
特に銃の狙いを付けるのが難しく、広範囲を撃てるショットガンが手に入るまでは、うまく使うのは困難です。
ただし「難しすぎる」、「マゾゲー」というほどではありません。
死んでも同じ部屋から、入ったときの状態でデメリットなしで復活できるし、回復薬を多く持つことができ、しかも各所で拾うことができます。
ボスは繰り返し挑戦しながら攻略法をつかんでいくことになりますが、ザコの強さを考えると、そこまでの厳しさではない。
難易度「ビギナー」も用意されているし、巷で言われているほどには…… というのもあります。
各所で難しいと言われていますが、「常識的な高難度」であり、そこまで尻込みするようなゲームではありません。
フィールドには様々な謎が隠されています。
アクションボタンの長押しや剣攻撃で起動するスイッチが点在しており、敵を全滅させることで開く扉や、消滅する壁なども存在します。
こうしたちょっとした謎を解きながら進んでいくわけですが……このゲームは正規のルート以外にも、数多くの通路が隠されています。
通過できる壁、透明の床、ダッシュで飛び移れる部屋など、隠され方は様々。
そして、その多くは何らかのヒントが画面内にあります。
床の色が違う、通路の端が見えている、何らかの目印がある、などなど……。
特に、床に小さく「回」のようなマークがあったら注目して下さい。その近くに、何らかの隠し要素があります。
隠し部屋にあるのは、大抵は黄色のチケットのようなもの。
これは「ギアビット」と呼ばれ、町で買い物をするのに必要です。
新たな剣技、ダッシュ技、薬の所持量、銃の強化などを買うのに必要で、プレイヤーのテクニックが一番重要なゲームではありますが、購入できれば戦いは確実にラクになります。
また、死体から「鍵」が見つかったり、謎の記号が出てくるモノリス(タブレット)が見つかることもあるでしょう。
これらは必須ではありませんが、その収集はやり込みに繋がっています。
ゲームの目標は、東西南北、それぞれのエリアに隠されている三角形のトライフォー……ではなく「モジュール」を集め、ボスを打倒すること。
モジュールは各エリアに8つ隠されているのですが、全部集める必要はなく、2~4つでボスの部屋に進めます。
場所のヒントは途中のNPCから得られ、かなり大ざっぱですがマップも用意されているので、探すのはそこまで困難ではありません。
全てのエリアのボスを打倒し、各エリアで4つ以上のモジュールを発見できれば、いよいよ町の中央から最後の戦いに挑めます。
そこまでの所要時間は、ひとつのエリアが1~2時間、合計で5~9時間ほど。
これについて「短い」と表現している人もいます。
しかし、前述したように隠されたアイテムは非常に多く、隅々まで探索し、全てのモジュール、鍵、モノリスなどを発見して回ると、かなりの時間をかけてやり込めるゲームです。
もっとモジュールを集めないとラスボスに挑戦できない仕様にすれば、クリアまでの時間は長くできたはず。
でも、そうしてはいない。 中途半端な収集でも最後まで進めるようにして、残りはやり込み要素にしている。
そこには制作者のポリシーを感じられ、これを「短い」と表現するのは不当に感じます。
「クリアしてもさっぱりわからない」と評判のストーリーも、おそらくそれ自体がやり込み要素なのだと思われます。
一通りの内容と結末を見て、そのうえで各エリアを改めて探索し、各所にあるオブジェの意味などを推察するのが、クリア後の楽しみなのかもしれません。
そもそも隠しアイテムである鍵とモノリスは、たくさんあるのにクリアにまったく不必要で、ストーリーの補完とやり込みのために用意されているものです。
とはいえ、モノリスに書かれた記号はアルファベットに対応していて、その内容は英文なので、日本人だとどのみち理解が困難なのですが。
ストーリーはともかく、細かく描かれたビジュアルは本当に素晴らしく、神が細部に宿るのを実感する作品。
iOS版はクリア後に異なる主人公で遊べる「ニューゲーム オルタ」も用意されています。
コアなアクションゲームを望んでいる方は、ぜひ手にして欲しいゲームです。
Hyper Light Drifter
美しいドット絵と奇妙な世界観を持つハードなゼルダ型アクション
・アクションRPG
・原作:Heart Machine(アメリカ)
・移植(iOS/Switch):Abylight Studios(スペイン)
・iOS 840円、Steam 1980円、PS4 2480円、Nintendo Switch 2500円
文/カムライターオ
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そこには、我々ジャパニーズゲーマーと同じような“ゲーム遍歴”があった。そして、我々ジャパニーズゲーマーと同じような“日本ゲームへの愛”があった。『Hyper Light Drifter』作者へのインタビューも掲載!
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