「妖精さん、私たちの、友達になってくれませんか?」
11月8日発売予定のVRアドベンチャーPlayStation 4用(PlayStation VR必須)ソフトウェア『Déraciné』(以下、『デラシネ』) の物語は、幼い子どもの無垢なお願いから始まる。
『Bloodborne』開発チームであるソニー・インタラクティブエンタテインメント JAPAN スタジオとフロム・ソフトウェアのタッグが贈る本作は、「古典的アドベンチャーゲームを、最新のVR技術で描く」というコンセプトに基づいて制作された。
さて、筆者は一足先に『デラシネ』を体験させていただいたのだが、アドベンチャーである本作の最大の魅力は言うまでもなく、その物語にある。
しかしながら、筆者に語ることが許されているのは、妖精さんと子どもたちが友達になるところまで──いわば、序章までだ。
「友達になってくれませんか?」というお願いから始まる物語は、子どもたちが妖精さんを歓迎するために演奏会を開くところで、一旦の区切りを迎える。
しかし、“本当の『デラシネ』”はその先から始まる。もっと厳密に言うならば、本当の『デラシネ』は2度始まる。
序章のその先を語ることができないのはとても歯がゆいことだが、それと同時に、開発者側からの配慮もよく理解できる。“本当の『デラシネ』”は、是非実際にプレイして確かめていただきたい。
そういうわけで、本稿では『デラシネ』の新しい挑戦である、「古典的アドベンチャーをVRで描く」ということについて書いてみようと思う。
文/実存
「コマンドを選択する」のではなく「あなたの手で干渉する」
「古典的アドベンチャー」と銘打っているように、『デラシネ』の基本的な目的は物語を追いかけることだ。
あなたは時の止まった世界に生き、不可視の存在である「妖精さん」となり、寄宿学校に暮らす年老いた校長先生と6人の子どもたちの“お願い”に応えることで、物語を進めていく。
妖精は子どもたちとは別の時間に生きているため、直接的に彼らに関わることができない。
しかし、妖精は、「命の時間」をやりとりすることのできる「赤い指輪」、そして別の時間に飛び移ったり、過去に遡ったりできる「青い指輪」を持っている。
その力を駆使して、あなたは美しいセピア色の世界を探索しながら、散りばめられた手がかりを収集し、異なる時間を行き来して、子どもたちと間接的に干渉していくことになる。
ここまではまさしく古典的アドベンチャーの文法に則っているのだが、『デラシネ』はそれをVRで描くことによって、新しい表現手法を手にしている。
すなわち、『デラシネ』では「コマンドを選択する」のではなく、「あなたの手で干渉する」ことで物語が進んでいくのだ。
物語に「干渉する」という意味で言えば、コマンドを選択するのも干渉することではないか、と思われるかもしれない。だが、「あなたの手で干渉する」という行為の重心はむしろ「あなたの手で」という部分にある。
『デラシネ』のプレイにはPlayStation Move モーションコントローラーが2本必須となっており、プレイヤーの現実上の右手と左手の動きによって干渉することになる。
例えば、寄宿学校内の棚には、物語の背景を知る手がかりとなる写真が入っている。
あなたはこの写真を手に取り、何が写っているかを確認したら、棚に戻してしまうだろうか?
もうそうしたのであれば、あなたは罠に引っかかってしまったことになる。
この写真は“裏返す”ことができるのだ。そして、その裏側には物語の真相を示唆するメッセージが隠されている。
しかも、「手に取ったものを裏返すことができる」ということが完全に明示されておらず、そのヒントもないのが最大のポイントだ。
つまり、手にとったものに対してどのように干渉するのか、あるいはそれを用いてどのように物語へと干渉するのか──その点に関して、はプレイヤー自身が想像力を働かせて考え、試さねばならないようにつくられているのだ。
「手に取ったものを裏返す」ことと、「裏返す」コマンドを選択することの違い
写真の裏側を見るためには、まさしく現実と同じ手の動きによってそれを裏返さなければならない。あなたが今この記事を読んでいるスマホを裏返すのと同じように、裏返す必要があるのだ。
その動作は、「裏返す」コマンドを選択することでもないし、アイテム詳細画面に表示された3Dモデルを、アナログスティックでぐるりと回転させることでもない。
筆者も、「手に取った写真を裏返してみる」ことになかなか気づかなかった。裏返せることに気づいたのは、『RED DEAD REDEMPTION 2』(以下、『RDR2』)の観察モードを思い出したからだ。
『RDR2』では、オブジェクトを観察するモードがあり、そこには「ひっくり返す」コマンドが存在している。
「ひっくり返す」というコマンドが明示されている以上、プレイヤーとしてはどんなオブジェクトもとりあえずひっくり返してみないわけにはいかない。それが裏返せるのであれば、その裏側にヒントが隠されているかもしれないからだ。
しかし、もしそこに「ひっくり返す」コマンドがなければ、プレイヤーは手にとったものをひっくり返すことはないし、仮にひっくり返すことが可能であっても、なかなか気づきにくいだろう。
筆者は他のゲームの経験からの偶然の連想によって気づいたのだが、これは特殊な例だろう。
もっと一般的に言うならば、「写真を裏返す」可能性に気づくためには、ゲーム内の事象を現実に近いレベルまでにもっていくほどの没入感、想像力、あるいは身体感覚が必要になってくる。
おそらく、開発者はプレイヤーをそのレベルの体験にまで導きたいのだろう。
そう考えると、プレイするには右手と左手で2本のPlayStation Move モーションコントローラーが必須という、『デラシネ』の前代未聞の仕様も頷ける。
「見えない側面を能動的に見る」動作は、VRだからこそ可能となる
本稿ではVR空間で「手に取ったものを裏返す」という動作にフォーカスしたが、『デラシネ』ではそのほかにもVRだからこそ可能になる動作を効果的に利用している。
例えば、カメラの範囲から見えない位置を、首を傾ける程度ではなく、体ごとぐいっと乗り出すようにして「覗き込む」ことで見える側面が存在する。
筆者が「覗き込める」ことに気がついたのもまた、偶然だった。装着したPS VRの位置を直そうとして身体を大きく動かしたときに偶然、その見えない側面が見えたのだ。
「裏返すことができる」をはじめとして、「覗き込むことができる」、「回り込むことができる」等々。
これらの動作を一言でまとめると、「見えない側面を能動的に見ることができる」と言える。
さらに踏み込んで言うならば、「見えない側面を見る」ことを、コマンド選択やスティック操作ではなく、VRで実際に現実の身体を動かすことでしか見られないようにデザインされていることが、『デラシネ』のゲームシステムの大きな特徴のひとつと言えるだろう。
11月8日の『デラシネ』発売の暁には、是非現実と同じくらいの身体感覚をもってプレイしてみていただきたい。
Déraciné (デラシネ)
・発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント
・開発元:フロム・ソフトウェア
・フォーマット:PlayStation 4
・ジャンル:VRアドベンチャー
・発売日:2018年11月8日(木)予定
・価格:パッケージ版 通常版 希望小売価格 3,000円+税
パッケージ版 Collector’s Edition 希望小売価格 4,000円+税
ダウンロード版 販売価格 3,240円(税込)
・プレイ人数:1人
・CERO:B(12才以上対象)※PlayStation VR専用
※PlayStation Move モーションコントローラー必須(2本必要)
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どのように戦い、どのように探索をして、どのように失敗して死ぬのかも含めて。
それは、「こうやって攻略してください」であるとか、「こういう風に気持ちよくなってください」と、ゲーム側に “提供”される受動的なものではなく、あくまでもプレイヤー自身の“意思”によって「能動的なゲーム体験」が得られるということだ。
この能動的なゲーム体験は、“宮崎英高氏が手がける作品”からブレていないということを、最初に触れさせていただきたい。