今回で3回目の開催となる、デジタルからアナログまで古今東西のゲームが集まる日本最大級の“ユーザー参加型”ゲームイベント“闘会議”。2017年2月11日(土)、12日(日)に開催される“闘会議2017”は、「ゲームと一緒に、生きてきた。」というテーマを掲げている。
電ファミ編集部では、この「ゲームと一緒に、生きてきた。」というテーマを体現し、ゲームを通して人生を謳歌している人々に、インタビューを行うことにした。
今回登場するのは、大阪府堺市で理髪店を営んでいる加三清(かさん・きよし)さんだ。加三さんは80歳という高齢にもかかわらずゲームを趣味としており、高難易度のために“死にゲー”などとも呼ばれるアクションRPG『ダークソウルⅡ』を、とりわけ熱心にやり込んでいる。その様子が関西のTV番組で紹介されると、インターネット上で“ダークソウルおじいちゃん”として一躍話題となり、日本国内はもとより海外まで広く知られることとなった。
今回は、加三さんの自宅を訪問して、ゲームをプレイしている様子を間近に見せてもらった。そこで知ることができたのは、加三さんが『ダークソウルⅡ』だけでなく、幅広い種類のゲーム、それもかなり“濃い”タイトルを深くやり込んでいるという事実だった。
ゲームとの出会いからお気に入りの作品まで、80歳の“コアゲーマー”が日々楽しんでいる、充実したゲームライフの全貌をお伝えしよう。
取材・文/伊藤誠之介
“ダークソウルおじいちゃん”は、“ガルパンおじいちゃん”でもあった!?
――本日はよろしくお願いします。こちらのお部屋でふだん、ゲームをプレイされているんですね?
加三清さん(以下、加三):
そうそう。座椅子を置いて、半分寝っころがりながら。
――ゲームを並べられている棚を拝見すると、初代のプレイステーションからPS2、PS3と、本当にいろんなゲームをプレイされているんですね。PS3が2台置かれていますが?
加三:
PS3は最初、初期型でやってたんやけど、壊れてしまいよって。そやから今は、新しいPS3でやってる。初期型やないと、PS2のゲームがでけへんから、修理できるもんなら直したいんやけどな。
――ここに置かれているゲームはどれも、最後までクリアされているんですか?
加三:
もちろん。
――アイテムを全部集めるとか、そういったやり込み要素もやられてます?
加三:
やってる。それも全部やり尽くすまでは、やめへん。
――ゲームだけじゃなくて、攻略本もけっこうたくさんありますよね。こういったものも参考にされているのですか?
加三:
この武器がどれぐらいのレベルで強いとか、そんなんは本がないと分からへんから。自分としてはやっぱり、いちばん最強の武器、それを取りに行きたいねん。
――なるほど。コメントの内容が、完全にやり込み派のゲーマーですね。……ところでゲームとは関係ないんですけど、こちらに『宇宙戦艦ヤマト』のプラモデルがたくさん積み上げられてるんですが、これも加三さんが作られてるんですか?
加三:
いや、作ったらあかん。封を切ったら価値がないねん。
――あっ、コレクションなんですね。ということは、その下に置かれてるアニメのブルーレイも、加三さんのコレクションなんですか? 『ラブライブ!』とか、『ガールズ&パンツァー』とか。
加三:
もちろん。これは一応皆少女もんやけど、特に音楽がええな。
――ちゃんとご覧になってるんですね。僕らは今回、“ダークソウルおじいちゃん”ということで取材に来させてもらったんですけど、それだけじゃなくて“ラブライバー”でも、“ガルパンおじいちゃん”でもあるわけなんですね(笑)。スゴいなぁ、ホントに感性が若いですね。
60歳の還暦のお祝いに、初代プレイステーションをプレゼントされてゲームを初体験
――ここで改めて、加三さんの経歴を伺いたいのですが。加三さんは“Barberカサン”というお店を営まれていますが、理髪師のお仕事はどれぐらいから?
加三:
高校を途中で辞めて、家の手伝いを始めたから、かれこれ60年以上やってる。
――ということは、もともと家業として、理髪店をやられていたんですね。お店の外観も、かなり年代を経ていて趣深いですよね。
加三:
江戸時代の髪結いから四代続いてる。この建物自体は、昭和27年からやな。
――加三さんはゲーム以外にも、さきほどのプラモデルなど、かなりたくさんの趣味をお持ちだそうですが?
加三:
カメラは相当に長いな。ニコンの世界的なファンクラブで、ニッコールクラブいうやつがあるねんけど、そこのコンテストで世界一になった。
――それはスゴいですね。
加三:
それからこういうのもやってる。これの作り方、分かります?
――いわゆるボトルシップ的なものですね。どうやって作られるのですか?
加三:
店のお客さんに「作り方が分かったら、やる」って言うてんねん。せやから、作り方は秘密や(笑)。あとはガラスと七宝焼きの技法を使うて、こういうアクセサリーも作ってるし、そこに飾ってるガラス絵も、自分で描いてる。
ガラス絵いうたら普通は、ステンドグラスみたいに色と色がくっきり分かれてるもんなんやけど、こういうふうに下の色が透けて見えるのは、自分で考えた。
――なるほど、これもスゴいですね。ちなみに、この絵のモデルの方は?
加三:
店の前を歩いてた女の人を、声かけて呼び止めた。最初はビックリしてたけどな。
――それはビックリしますよね(笑)。それで、こんなにいろんな趣味をお持ちの加三さんが、ゲームを始められたきっかけは?
加三:じつは(この取材日の)昨日、80歳の誕生日やったんやけど、60歳の還暦のときに、次男がプレイステーションと『エースコンバット』【※】の1を、祝いにプレゼントしてくれてん。
※『エースコンバット』
1995年にナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント)から発売された、プレイステーション用のフライトシューティング。以後シリーズ化されて、さまざまなハードで登場している。
――じゃあ60歳までは、ゲームを遊んだことはなかった?
加三:
それまではゲームのことをぜんぜん知らんかった。手元のコントローラも見んと画面だけ見て、よう分かるなと思うてた。だけどまぁ、自分でちょっとやりだしたら、そんなこと忘れてハマってしもうて。
『エースコンバット』っていうのは、ドッグファイトって言うんか、ジェット機で戦うやつなんやけども、これがおもしろい。敵に後ろにつかれて、振り切らなあかん思うたら、いったい天がどこで地がどこで、それも分からんぐらい回転する。これはちょっと性根入れてやらなあかんなと思うて、もっと続けようと。そこからいろんなゲームをやりだした。