「社食」があるってどういうこと? 最近のホストクラブ事情に迫る
──ホスト業界についてお伺いしてきたのですが、つづいて霧夜さんのパーソナルな部分も教えていただければ。2016年11月27日に出演された「スクール革命」(日本テレビ)によるとホストになったきっかけは“女性不信”だったとか……。
霧夜:
……すごいところから情報を引っ張ってきますね。2年前に放送された番組じゃないですか(笑)。
──霧夜さんのインスタグラムに書いてありました。なんだか、一二三と似てるなーって(笑)。霧夜さんは、ずっとホストひと筋だったのでしょうか?
霧夜:
(笑)。僕はもともと19歳くらいのときに、大学へ通いながら別系列の店舗でバイトとしてホストをしていました。そのころは、自分に自信がなくて、女性不信。自信をつけようと武者修行のためにホストになりました。
当時はお客様の女性を前にしたときに、全くしゃべれていなかったのですが……なんだか、とてもチヤホヤされて、入店3カ月ぐらいでナンバー1になれたんですよ(笑)。
とはいえ、学生だったので学業を優先して半年ほどでホストを辞め、大学卒業後は企業に就職したんです。
── ちなみに、お勤め先は……。
霧夜:
秘密です。まぁ、みなさんもご存知の会社ですよ。会社員の頃は、自分が大きなプロジェクトに携わっている実感はあったんですけど、もっと個人で億単位を稼いでみたいという感情が強くなり、僕には歌舞伎町が向いている! とホストに戻ってきました。
── 有名な企業を辞めてホストの道を選ばれていたとは。ちなみに「ALL BLACK」にはどういう流れで入店されたのですか?
霧夜:
他系列の店舗で働いていたときに「AIR GROUPで働いてみなよ」とお客様にアドバイスを頂いたことがきっかけですね。でも、実際に体験入店をしてみると「この店、イケメンが多すぎてヤバい」と感じてしまい(笑)、そのときは別のお店に入店しちゃいました。
──確かにAIR GROUPの系列店舗は、どのサイトを見てもイケメンばかりでした……。
霧夜:
当時はホストひと筋と決意していなかったのですが、大学を卒業し、会社員を辞め……すべてを捨ててホストになったのに「最大級の店でトップを目指さないでいいのかな? 将来、自分の生き方を振り返ったときに恥ずかしく感じるかもしれない」と思うようになったんです。
そんなとき、現・エグゼクティブプロデューサーの桐生レイラさん【※】に「ALL BLACKにおいでよ」と声をかけていただいたので入店しました。
──なるほど。そして、今や代表に……。ホストといえば「売上ナンバー1」の座を目指すというイメージですが、代表ともなればその争いは関係なくなり、みんなを見守る立場になるんでしょうか?
霧夜:
基本的には、ナンバー争いから外れて“殿堂入り”することが多いんですけど、僕は、みんなに自分の背中を見せることで共に成長できるかなと考えているので、売上の競争に入ってます。今はホスト本来の仕事と代表の業務をこなしている感じですね。
https://twitter.com/kiriya319/status/1068836499347726336
※2018年11月は霧夜さんが売上、指名本数でNO,1の座に輝いていた。
──「代表の業務」と言われても、イメージが湧かず……。
霧夜:
店舗関係では、売上の管理はもちろん、幹部同士で店の方針について会議をしています。従業員のホストひとりひとりも気にかけていますね。
その他に、グループ店の各代表や経営陣とのミーティング、各種撮影、そして挨拶回りなどがありますね。
──撮影って、そこに挙がるほど頻度が高いんですか?
霧夜:
AIR GROUPはメディア露出頻度が高く、それに伴い、TV、雑誌を中心にいろいろな撮影があります。またグループのPRとして『ABC』という専門誌が年に2回ほど無料配布されているので、その誌面づくりの撮影があります。だから、撮影回数は年間を通して多いんです。
──雑誌の分厚さが1cm以上ありますけどフリーペーパーとは豪勢ですね。それにしても、なんだか大忙しじゃないですか? 代表ともなるとお休みを取ることが難しそうです。
霧夜:
時間を作ろうと思えば、海外に行く余裕も持てますよ。今年は、プライベートと社員旅行を合わせて5回ほど行きました。
──社員旅行!?
霧夜:
恒例行事として店舗ごとにあるんです。行き先はリゾート地が多く、今年4月の社員旅行はハワイで、ハワイ島のキラウエア火山やオアフ島まで足を伸ばしました。
──これがホスト流の「旅先での思い出写真」なんですね。クオリティーが想像を越えています。
霧夜:
あとはグループ内の幹部だけでいく「幹部旅行」があり、今年は2月にロサンゼルスとラスベガスに行きましたが、カジノで200万円ほど募金しちゃいました。
──つまり、負けたと。
霧夜:
そういうことですね。プライベート旅行だとイタリアやフランスも訪れましたよ。
──疑問なんですけど、海外旅行によく行くということは……もしかして英語が喋れたりするんですか?
霧夜:
流暢に喋れるわけではありませんが、海外旅行で困らない程度には話せます。
──すごい……なんか、愚問ですみませんでした。ところで、ホストクラブといえば、同じ店舗同士でも派閥があり、「隣のヤツは敵だぜ」とギスギスした血みどろ関係なのかと思っていましたが、話を聞いてると楽しそうですね。
霧夜:
“血みどろ”……ドラマと漫画の影響がすごいですね(笑)。もちろん、みんなライバルで僕も負けたくないですけど、ホストはチーム力が大切なんですよ。月の指名が150本を超えると、毎日7〜8件ほど指名をいただくことになります。そのときは、ヘルプをしてくれる仲間たちが助けてくれるんです。個人プレイでどうにかしようとするホストはトップになれません!
──“トップになる”という言葉が出てきたのでお伺いしたいのですが、指名をもらえるようになるまではとても大変だと思うんですよ。トップを目指す新人たちはどのような暮らしぶりなんでしょうか?
霧夜:
そうですね。新人のホストたちは寮に入り、共同生活をしています。食事は自炊をすることもありますが、従業員だけが利用できる「かぶきっちん」という食堂にお世話になります。
──ホストクラブに社員食堂があるんですか?
霧夜:
厨房があり専用のシェフが作ってくれる料理が絶品なんですよ。なんと、1食300円から用意されています! 安くて量も多いので僕もALL BLACKに入店したころはカレーライスばかり食べてました。
──良心的なお値段ですね。……今の時代、ホストクラブに社員食堂って“あたりまえ”なんですか?
霧夜:
いえいえ、とても珍しいですよ。「かぶきっちん」は社員食堂のほか、お客様のフードを調理してくれています。温かい料理がホストクラブで食べられるのはシェフたちのおかげなんです。
──ローストビーフ、ビーフシチューハンバーグ、海鮮丼にマルゲリータ、たこ焼きに唐揚げ。飲食店なみのラインナップですね。これが「おもてなしの精神」なのか……。
霧夜:
ほかには、系列店にヘアサロンがあるので、出勤前はそこでヘアセットしてもらえます。普通の男の子が一人前のホストになるには“身なり”が大きなポイントとなります。
だから、髪型のことはヘアメイクの方に、服装や写真の撮られかたはスタジオの方に相談することで洗練され、“トップホスト”への道が切り開けていくんです。ホストは、自分磨きを極めることも仕事ですから。
──そのサポート力が「イケメン力」に繋がっているわけなんですね。ところで、霧夜さんも髪型がバッチリきまっていますね。月にどのくらいヘアサロンに通って、おいくらほど髪に使っているんですか?
霧夜:
出勤する日は毎日ヘアセットをしてもらいますし、美容室には1〜2週間の頻度で通ってメンテナンス。カラーを明るくすると手入れが大変なんですよ。……月に20万円ぐらいは髪の毛に使ってるかも。
──20万円……。もう言葉になりません。
オフからオンへ! ホストモードになるための5つのルール
──先ほども少し言いましたが、オフの一二三は極度の女性恐怖症なんです。ところが、スーツを着るとそれが一変、一流ホストへと変貌するんですよ。霧夜さんにも、ホストモードに入る“気持ちの切り替え方法”はありますか?
霧夜:
もちろんあります。身なりを整えて、髪をセット。鏡をみて「俺は今日もカッコイイな!」と気合いを入れるんです。
僕の中には5つのルールがあり、「今日は元気が出ないな……」という日はそのルールを思い返し、仕事に向けて調子を整えるんです。
まずは「自分が世界で一番カッコイイと思うこと」。これはとても大切にしていています。自分が自分の魅力を感じないままお客様に対するのは失礼ですからね。
2つめに「必ず前に出る、選択肢を与えられたときに、攻めの姿勢でいること」。ホストは肉食的な気持ちがないと上にいけない世界なので、ここぞという場面においては、誰よりも早く前に出る!
3つめが「酒!女!金!」。これはアウトローというか、ヤンチャな気持ちを忘れないということですね。
──歌舞伎町のなかでも負けずにアウトローでいるというのは、わかりやすいですね。
霧夜:
細かい失敗でクヨクヨせず、気持ちを大きく持つことを心がけています。
4つめは「すれ違いで振り返らない」。
──どういうことですか?
霧夜:
恋愛でも「追いかけるか、追いかけられるか」というような駆け引きがありますよね。街で素敵な女性とすれ違っても“振り返られる側”でいる、という気持ちを持てということです。つねに「どんなに勝気で強気な女性でも、僕のことを好きにさせる!」という気概を持って挑んでいます。
最後は「つねに戦う心意気を忘れない、戦場に挑む気持ちを持つ」ということですね。僕がホストモードにはいるスイッチはこの5つです。
以前は、出勤前にテキーラなどの強いお酒を飲んで「今日はもう逃げられないぞ!」と気持ちを奮い立たせることもしていました。どちからというと、僕は自分を追い込んでいくタイプですね。
──インタビュー前にSNSを拝見したのですが、霧夜さんの内面はそこではやはり分からなかったので……。ですがこうして話を伺っていると、ホストとして歌舞伎町で生き抜くためには、やはり信条があるのだなと感じました。
ホストの生態を調査! 生活リズムやショッピングの場所を解明
── 一二三は会社員の幼馴染と同居しているのですが、彼らの生活リズムが合っているのか、とても不思議なんです。参考までに、霧夜さんの生活リズムを教えてもらえますか。
霧夜:
僕はホストの中では早起きで12時ごろに起床します。というのも、昼には経営陣とのミーテイングや撮影など代表としての仕事が入ることが多いので。昼間に時間があるときは、ジムで体を鍛えたり、仲間とフットサルをします。
出勤時間は、開店作業がある新人のホストは18時ごろ。僕はお客様と同伴【※1】することが多いので20時ぐらい。そこから24時までが営業時間です。
──24時? ホストといえば「朝までパーティーナイト」じゃないんですか?
霧夜:
そういうイメージが強いと思うんですけど朝まで営業ができたのは、ひと昔前なんです。今は風営法で営業時間が定められていて、深夜は営業してはいけないんですよ。そのため「1部営業、2部営業」というシステムになっており、夕方〜24時までの営業スタイルが1部営業、日の出〜お昼ごろまでが2部営業なんです。なので、「ALL BLACK」は1部営業のお店ということになります。
──知りませんでした。
霧夜:
一二三さんが過ごしている“H歴”の法律や条例は違うかもしれませんが、2018年の現在はこんな感じですね。
24時頃まで営業したあとは、1時間ほどミーティングがあることもあります。その後、お客様とアフター【※2】でバーに行ったりします。帰宅するのは朝の6時ごろかな。
──うーん。そう考えると、ホストと企業務めの社会人との同居は難しいんですかね。どう思います?
霧夜:
そうですね。一二三さんの帰宅時間が同居人の起床時間と考えると朝の挨拶ぐらいはできるかもしれませんね。まぁ、アフターがなければ早い時は25時ぐらいには帰宅するので。その日なら同居人もまだ起きているんじゃないでしょうか?
──なるほど。……というか、真剣に考えていただきありがとうございます。
──あらためてタイムスケジュールをみるとパワフルで驚くばかりです。みなさんの出勤形態はどうなっているのでしょう。
霧夜:
バイトのホストはシフト制ですが、基本的には自由出勤です。とはいえ、ほぼ全員が週6で働いています。ナンバーを目指すためには、休んでいられません。
──向上心、闘争心がすごいんですね。となると、年末年始も働かれるのですか? これまでの話の流れだと「年越しイベント」がありそうです。
霧夜:
「ALL BLACK」は年末年始はお休みです。カウントダウン営業をしたいホストは、本店の「CLUB AIR」に集合して接客します。
ちなみに、僕はお休みしました(笑)。
──では、お休みの日は何をされているのでしょうか?
霧夜:
少し前まではインドア派だったのでゲームで遊んだりもしましたが、車を購入してからはアウトドアが楽しくなり、フットサル、ゴルフや登山といった感じですね。
──アクティブなんですね! ちなみに車は何を購入されたんですか?
霧夜:
ポルシェのボクスターです。
──黄色だ〜!!!!!!!! うぉぉ〜興奮します!
霧夜:
見学に行ったときにパッと目に留まって「黄色のスポーツカーなんて、今しか乗れない!」と思い、運命的かはわかりませんが、最終的に購入してしまいました。
じつは、ボクスターを購入する前まではペーパードライバーだったんですよ(笑)。イエローの車体が引き立つ、黒一色のシンプルな内装が気に入っています。
──先ほどから、ガンガンと質問をしていて申し訳ないのですが、車の話がでたので購入するものについても教えてください。ちなみに、今日のスーツはどこのブランドでおいくらぐらい?
霧夜:
これはイヴ・サン=ローランのスーツで、50万円くらいだったかな。
──50万円……! つづいて、アクセサリーもお願いします。
霧夜:
左手はすべてSJXというブランドで総額80〜90万円くらいです。右手の指輪はエルメスで28万円くらいでした。フランスに行ったときにエルメスの本店で購入しました。
この時計はシャネルの“J12”で280万円くらいだったと思います。この“J12”というレーベルはとても有名で、安いものでは50~60万円から、上は300万円くらいまであるんです。そのなかでもこれは、月の満ち欠けがモチーフに入れ込まれているちょっと変わったデザインで、お気に入りなんです。
──ホストのアクセサリーといえば、“ジャスティン デイビス”や“クロムハーツ”らしいと聞いたのですが……。
霧夜:
それは5年以上も前の話です(笑)。ホストによって好みはバラバラだとは思いますが、最近はカルティエ、ティファニーやハリー・ウィンストンをよく見かけます。
──なるほど。服装がカジュアルになったのに合わせ、シンプルなアイテムが好まれるようになったと。
霧夜:
確かに、そうかもしれません。最近ではゴツゴツしたアクセサリーを付けているホストはあまり見かけませんね。
──みなさんどこでショッピングされるんですか?
霧夜:
伊勢丹の新宿店メンズ館で買い物をするホストが多いんじゃないかと思います。男性物のハイブランドが全部そろっていますし、ショッピング後に出勤もしやすくて便利です。
──とはいえ、なかなか若手のホストが高級なブランド品を身に着けるのは難しいと思うのですが……。
霧夜:
先輩が後輩に服をプレゼントすることもありますよ! 僕も昔、レイラさんからいただいきました。
「ALL BLACK」は先輩と後輩がとても仲がよく、家族みたいな関係です。僕にとってレイラさんは、先輩であり、良き兄のような存在で、入店したばかりのころは、レイラさんの家に泊まらせてもらい、レイラさんの手料理をごちそうになりました。
ほかにも、遊びや買い物に連れて行ってもらうなど、本当にずっと一緒にいさせていただきました。僕はレイラさんの背中を見て、今の自分があると思っています。
──レイラさんが霧夜さんに伝えたホスト精神を、霧夜さんが次の世代に繋げていくんですね。
霧夜:
そうですね。歌舞伎町はホストにとっての戦場ですから。一二三さんに負けていない「ALL BLACK」のホストたちを堪能してください。 (了)