「こんなんどうせ『はい』一択やろ」──「一択」という言葉の広がりの裏には、対戦格闘ゲームのブームあり

 「当然そうするだろう」、「選ぶ余地がない」などの意味合いで、「一択」という言葉遊びが使われることがある。30代以上の読者の方であれば、これが言葉としてそう古いものではなく、ある時期から見聞きするようになったものという実感があるだろう。
 そしてこの言葉の普及の裏には、どうやらビデオゲームが大きく関わっているようで……。

 

 というわけで今回は、この「一択」という言葉を、ゲームの影響によって変容した日本語をめぐって調査と考察をめぐらすこの連載「ゲームが変えた日本語」で考えてみようという次第。
 調査に奔走したのはタイニーPレトロな名機PC-6601にボーカロイドのように歌を唄わせたり「やる夫と学ぶホビーパソコンの歴史」と銘打ち、その歴史を丹念に調べあげるなど、日本のホビーパソコンや黎明期のゲームの歴史について詳しく、ニコニコ界隈で活躍する人物だ。今回も緻密で圧倒的な調査を展開していただいた。(編集部)

文/タイニーP


「一択」拡散の背景にはビデオゲームあり?

 2018年1月から放映され、アニメのみならずゲーム界隈をも巻き込んで話題沸騰し、先日放映のTVスペシャルも記憶に新しいテレビアニメ『ポプテピピック』。その第1話に、こんなセリフがあったのを覚えている人はいるだろうか。

 「お、選択肢。こんなんどうせ『はい』一択やろ。」

 じつは今回の記事ができたのは、筆者がまさにこの『ポプテピピック』第1話を見たことがきっかけだ。もっとも「一択」が、この『ゲームが変えた日本語』の連載の題材でいいのか? という疑問を持つ方もおられるかもしれない。

 確かに、「一択」にはビデオゲームに特化した意味合いはあまり感じられない。しかしこれから紹介していくように、「一択」という表現が広まっていく過程に、ビデオゲームが大きな役割を果たした可能性はかなり高い。
 発生源がビデオゲームだったかどうかはともかくとして、ビデオゲームがらみの言葉として広まり、そうとは知らない層にまで一般化しつつあるのが「一択」というわけだ。

「一択」はどこまで広がった?

 最初に「一択」の指す意味、そしてこれがどの程度一般化しているのかについて整理しておこう。

 辞書類で確認してみると、『広辞苑』『大辞林』『大辞泉』といった中型国語辞典はもちろん、『現代用語の基礎知識』の最新版でも「一択」は採録されていない。小学館が2017年11月に発表した「第2回大辞泉が選ぶ新語大賞」では、「『大辞泉』が選んだ2017年の新語」の中に「一択」が挙げられており、かなり新しい言葉と認識されていることが窺える。

 それどころか、「一択」の元となった「三択」という言葉ですら、「三者択一」の省略形という事情もあってか、「国語辞典に収録されて当然」という状況にはなっていないようだ。「二択」に至っては、筆者が確認した書籍の国語辞典では『三省堂国語辞典』の第七版にようやく収録されているくらいで、ほとんど見かけない。
 このような状況を踏まえると、「一択」が書籍の辞典に収録されるまでの道のりは、新語辞典を除けばまだかなり遠いものと考えられる。

 そんなわけで、「一択」の意味をこれらの辞書類を頼りに説明できないので、筆者なりの説明を以下に挙げておく。

 「本来は複数の選択肢があるはずの状況で、選択者の嗜好や信条、あるいはやむを得ない理由により、事実上選択肢がただひとつに絞られていること」

 さて、ではこの「一択」は実際のところ、どれくらい広まっているのだろうか。これをマスコミの記事で確認してみよう。

 読売、朝日、毎日、日経の各紙の記事データベースでは、2012年ごろから、外部の識者による寄稿やインタビューなどで「一択」が使われ始めているのが確認できる。
 また新聞社内の記者による記事では、2013年11月15日付の『日経MJ』に、「佐川急便が今年4月以降アマゾンの配送のほとんどから手を引いたことで、宅配便は事実上、ヤマト運輸の「宅急便」の一択になった。」という文章が出てきている。

 さらに大宅壮一文庫の雑誌記事データベースでは、女性向けファッション雑誌『セブンティーン』の2014年4月号に、「春コレぜんぶ、流行っちゃうんじゃないの~ この春トップスは「ショート丈一択」です! トレンド感もスタイルアップもGETできちゃう!」という見出しの記事があることが確認できる。
 遅くともこのころには、「一択」がマスコミ関係者のかなり広い範囲で理解される表現になっていたと考えていいだろう。

 ところで、先にも書いたとおり「三択」は「三者択一」の省略形だが、省略形のほうがあまりに広まりすぎた影響なのか、「択一」のことを「一択」と誤って書いているケースがある。これは新聞のデータベースでもごくまれに確認でき、しかもネット上では、「一択」の広まりとともにこの誤記も増えているようだ。
 しかし、「一択」という表現が発生したと考えられる1990年代に、この誤記が先に広まっていた形跡は見られないので、今回は「択一」の誤記としての「一択」の影響は考えないことにする。

対戦格闘ゲームが広めた「一択」

 つぎに「一択」がいつごろ、どこから広まってきた表現なのかを確認してみよう。まず筆者が『2ちゃんねる』の過去ログを検索してみたところ、「一択」(「1択」も含むが「択一」の誤記は除く、以下同じ)が使われている古い書き込みは、2001年に5つ確認できたが、そのうち4つはビデオゲーム関連のスレッドのものだった。

 また、「現代の日本語の書き言葉の全体像を把握できるように集められたサンプルが約1億語収録されて」いるという『現代日本語書き言葉均衡コーパス』では、2008年の『Yahoo! ブログ』から採集されたサンプルの中に「一択」の用例が2件みつかるが、これも前後の文脈からはビデオゲームの攻略の話題だと考えられる。
 さらに、ネットニュース【※】の中のfjニュースグループ群記事アーカイブ『Unified fj NetNews archive』を全文検索してみると、「一択」が最初に出てきたのは1994年9月で、やはりビデオゲームの攻略の話題だった。

※ネットニュース(NetNews)
インターネット上で、話題をカテゴリー化した「ニュースグループ」に興味を持つ、不特定多数の参加者のあいだで文字情報をやり取りする仕組み。Web(ワールドワイドウェブ)がまだ開発されていなかった1980年代から、情報の回覧や議論に使われた。

 これらひとつひとつは“決定的な証拠”とまでは言えないものの、総合してみると、「一択」という表現が最初に流行し始めたのは、ビデオゲームのプレイヤーたちのあいだからである可能性がかなり高いと考えられる。

 いま挙げた資料の中でも、突出して古いのが1994年9月のネットニュースの記事だ。ではこれはどのような内容かというと、カプコンの当時最新の対戦格闘ゲーム『ヴァンパイア』の話題だった。

 「あとは起きあがり2択ですね。アナカリス相手には1択でも通じますが(^_^;;;)。」

 対戦格闘ゲームのマニアにとっては、ここに出てきている「二択」、あるいは「三択」といった表現はごく当たり前に使ってきたものだろう。
 このジャンルになじみのない方のために説明しておくと、もともとは「三択攻撃」などと呼ばれていたもので、次のような意味を持つ。

「プレイヤーどうしの対戦において、特定の局面で、対処方法が異なるいくつかの攻撃を選択肢とみなし、どれを選ぶかを推測困難にすることで、有効打とする確率を高める攻撃法」。

 たとえば、ある状況で可能な攻撃が3種類あるとして、それぞれに有効な防御方法が異なる場合、攻撃側がどれを選ぶかが無作為であれば、防御できる確率は1/3となり、残りの2/3は攻撃側の有効打ということになる。
 これが「三択」だ。

 また「起き上がり」も対戦格闘ゲームの特徴的な表現で、キャラクターが一時的に地面に倒れたあとに起き上がろうとする動き、またはその動きを終えて構えに戻る瞬間を指す。多くの対戦格闘ゲームでは、キャラクターが地面に倒れると、通常のパンチやキックなどの攻撃が当たらなくなり、そこで攻防の流れがいったん止まるか、そうでない場合でも流れが変わる。
 つまり、起き上がる動きのあいだ、あるいはその動きを終えるところで互いがどう行動するかは勝負のキーポイントになりやすく、ここに二択攻撃を仕掛けることを「起き上がり二択」と呼ぶわけだ。

 これらは「二択を迫る」、「三択に持ち込む」などという形で使われることも多いが、10年ほど前からは、一部マニアのあいだで「択を迫る」、「択に持ち込む」など、「択」単独でも使われ始めている模様だ。これは「二択」や「三択」の数字部分の省略として発生したのだろうが、「択一」の省略形と考えることもできる。

ゲームで「三択」と言えば格闘、それとも……?

 さて、では「三択攻撃」という言葉が使われるようになったのは、いったいいつごろからなのか。これは古くからの対戦格闘ゲームマニアでも、あまり意識していない事柄かもしれない。
 調べてみると、対戦格闘ゲームのブームを巻き起こした『ストリートファイターII』の登場から2年ほど経った、1993年ごろからのようだ。『ゲーメスト』1993年10月号では、SNKの『サムライスピリッツ』の対戦プレイの攻略記事で、以下のように述べられている。

 「さて、相手を転ばせたときに有効なのが三択攻撃だ。なんだ、それ?という人のために説明すると、相手の起き上がりにしゃがみ小蹴りをガードさせて… (1)足払い(2)昇りつばめ返し(3)投げ のどれかを行う」

新声社『ゲーメスト』1993年10月号より引用

 「なんだ、それ?という人のために説明すると」とあるので、この時点では「三択攻撃」はかなり目新しい表現だったものとみられる。しかしこの言葉が使われる範囲は急速に拡大したようだ。
 たとえば、双葉社が1994年3月に発行した『NEO・GEO完璧攻略シリーズ サムライスピリッツ必勝攻略法』に、「選択戦術 3種類の選択肢からひとつを選び、攻撃を仕掛ける戦術」という解説が登場したほか、同じ時期のネットニュースで『スーパーストリートファイターII X』に関する話題の中に「2択攻撃」という言葉が出てきているのが確認できる。

 つまりおそらくは、このような考えかた自体は対戦プレイのノウハウとしてすでにあったが、これといった名前がついていなかったということだろう。
 そこに出てきた「三択攻撃」という表現がピタリとはまったことで、特定のゲームや雑誌の枠を超え、対戦格闘ゲームのジャンル内に一気に広がったわけだ。

 そして、この名称がついたことによって、対戦格闘ゲームのプレイヤーたちは攻撃の選択肢の数を改めて意識するようになり、局面の変化ごとに選択肢がどう増減するかも数字として捉えられ始めた。
 その延長として、ある状況でほぼ確実に相手に有効打を与えられる、最優先で選びたい選択肢を、言葉遊びを交えて「一択」と呼ぶようになったものと考えられる。

 ここで、クイズゲームの影響はなかったのかと疑問を持たれる方もいるかもしれない。確かに1990年代序盤の日本のゲーム業界には、アーケードから家庭用ゲーム機・パソコンまで巻き込むクイズゲームのブームが起こっていた。
 これは、1989年末にゲームセンターに登場したカプコンの『アドベンチャークイズ カプコンワールド』のスマッシュヒットに加え、日本テレビ系の『アメリカ横断ウルトラクイズ』で大学のクイズ研究会関係者がハイレベルな激闘を繰り広げてクイズマニアに脚光が当たり、TBS系の『史上最強のクイズ王決定戦』、フジテレビ系の『FNS1億2000万人のクイズ王決定戦!』といった「クイズ王」を打ち出したテレビ番組が続々と登場したことが背景にあったと言える。

 『カプコンワールド』が確立したこのころのアーケードのクイズゲームのスタンダードは、ボタン4個による四択クイズだった。
 これが三択や二択に変化するイベントなどもよく見る仕掛けで、このような形で選択肢が減ることが、格闘ゲームにおいて局面の変化を「三択・二択」などの数字の変化で捉える考えかたに影響を与えた可能性はあるだろう。

 しかしこれらのクイズゲームでも、選択肢がひとつになる仕掛けは、クイズという大前提を崩してしまうだけに、さすがにまず見かけるものではなかった。
 パロディーなどの笑いのネタとして盛り込む例はあったのかもしれないが、対戦格闘ゲームのプレイヤーたちが「一択」という表現を使い始めるのに直接影響を与えたと言えるほどのものは、いまのところ見つけられていない。

「こんなんどうせ……」な選択

 このように、「一択」の広まりの流れを遡って対戦格闘ゲームのブームにたどり着いたわけだが、ここでもう一度、最初に挙げた『ポプテピピック』のセリフを振り返ってみよう。
 このシーンは家庭用ゲーム機のRPGのパロディーになっており、発言者であるポプ子は、自身の置かれたシチュエーションから、“ここは「はい」を選ばないとまともに話が進行しないだろう”と判断して「こんなんどうせ『はい』一択やろ」と言っているわけだ。

 このような選択──つまりゲームを進めるかどうかを直接問われているわけではないのに、「はい」を選ばないと話が進まないだろうと思わせるような選択は、いったいいつごろからあるのだろう?

 そう考えてみて、『ドラゴンクエスト』第1作でのローラ姫のことを思い出す方も少なくないはずだ。
 監禁されたローラ姫を発見した際などに、姫をないがしろにする選択肢を選ぶと「そんな ひどい……。」というセリフとともにもう一度選択肢に戻されてしまう仕掛けがある。
 そういう選択をわざと試すようないたずら好きの子どもたちに大受けしたらしく、この「そんな ひどい……。」は、のちのシリーズ作でもたびたび使われる“名セリフ”のひとつとなった。

 しかしこのような選択は、パソコンゲームには『ドラクエ』よりもさらに前にもあった。たとえば、1984年秋にパソコン向けに発売されたマイクロキャビンのアドベンチャーゲーム、『英雄伝説サーガ』がそのひとつだ。

 このゲームではオープニングで、白馬に乗って駆ける騎士の前に飛び出してきた少女が、竜に捕らえられた自分の姉を救出してほしいと懇願し、それにイエスかノーかで答える選択が設けられている。
 もちろんここで「イエス」を選ぶことでゲームが始まるのだが、「ノー」を2回選んだ場合、少女が語る竜の居場所の手がかりがないまま強制的にゲームスタートとなる仕組みだ。

(画像は英雄伝説サーガ | プロジェクトEGG | レトロゲーム配信サイトより)

 なぜこんな選択肢があるのかと言えば、プレイヤーに主体的にゲームの世界に入ってほしいという狙いがあるのだろう。
 というのも『英雄伝説サーガ』は、プレイヤーが行動を指示する言葉(コマンド)を直接キーボードで打ち込む「コマンド入力」ではなく、表示されるコマンドから適切と思われるものを選択する「コマンド選択」を採用したアドベンチャーゲームの先駆けのひとつだったからだ。

 コマンド選択式はコマンド入力式よりもプレイヤーの負担は減るが、そのぶん選択が安易なものになりかねないという懸念が、当時の製作者側にはあったようだ。
 『英雄伝説サーガ』よりも先にコマンド選択式を導入したシステムソフトの『ミコとアケミのジャングルアドベンチャー』は、無駄なくクリアすれば高い得点が得られるスコア制を導入しているし、堀井雄二氏の『オホーツクに消ゆ』には、考えもなくコマンドを総当たりしていくとゲームが進まなくなるトラップが用意されている(ファミコン用とそれ以降の移植・リメイク版を除く)。

(画像はオホーツクに消ゆ | プロジェクトEGG | レトロゲーム配信サイトより)

 『英雄伝説サーガ』の冒頭の選択肢は、プレイヤーに言わば「念を押す」ような選択をさせることで作中の主人公との一体感を向上させようとしたものであり、いま挙げた2作品と手法は違うが、ある種の緊張感を持ってもらおうとした点では共通していると言えるだろう。

恐怖の「念押し」接近!?

 さて、「“念を押す”ような選択」と先に書いたが、古くからのゲームマニアの中には、もっと印象的な「念を押す選択」を迫ってくるアドベンチャーゲームに覚えがある方もいるだろう。
 それが、ポニカ【※】が1983年に発売したパソコンゲーム『幻魔大戦』だ。

※ポニカ
音楽テープ・ビデオソフト会社のポニー(後のポニーキャニオン)が1982年に立ち上げたコンピューター用ソフトのブランド。

 『幻魔大戦』は、同名のいわゆる「角川映画」のアニメーション作品第1弾を原作とし、映画公開と同日に音楽ソフトやビデオソフトを発売するという、角川得意のメディアミックスをゲームにまで持ち込んで話題を呼んだ。
 一方でこのゲームは、日本のパソコンゲームが本格的に発展し始めたばかりの時期の作品ということもあってか、「アドベンチャーゲーム」と名乗ってはいるものの【※】、そのジャンルの枠組みにとらわれない内容が特徴となっている。

※パッケージのタイトルロゴの下には小さく「Role Playing Adventure Game」と書かれている。これは、後述する戦闘シーンなどがあるためだと考えられる。
しかしパッケージのほかの部分や広告には「ロールプレイング」という言葉は見当たらず、「アドベンチャーゲーム」と記載されている。

 アドベンチャーゲームは、その元祖が洞窟探検をコンピューターゲーム化したものということもあり、場所の移動や探索をプレイヤーの意思によって行うのが基本だった。しかし『幻魔大戦』にはそのような要素は一切なく、場面の転換はストーリー展開に応じて強制的に行われる。この点では、1990年代に大きく花開くノベルゲームのごく原初的な形とも言えるだろう。
 しかもプレイヤーが行えるのは、システム側から提示される質問に対し「Y」(イエス)か「N」(ノー)、または数値・数字の入力で答えることのみとなっている。

 数字の入力があるのは、おもに敵との戦闘シーンで主人公の超能力者たちの中から行動する者を選ぶためだが、戦略性を盛り込もうとしたフシはあるものの、結局“正しい”選択は1通りだけで、それ以外はその後どこかで必ずゲームオーバーになるという残念なものだ。
 イエスかノーかで答える質問も、最初のうちはどう行動するかを聞いてきているが、後半の場面になると、それまで未登場だった人物の顔の絵や名前を唐突に出して「彼は仲間か?」と聞いてくる始末。
 原作や映画の紹介記事を読んでいればともかく、ほとんどいまで言う「初見殺し」だ。どうも、映画公開と同日に発売というスケジュールに無理があったように感じられる。

 そんな中で、このゲームを知る人には忘れられない「質問」が、最終場面の冒頭で表示されるこれだ。

 「このゲームはおもしろいですか(y/n)?」

 まさに「こんなんどうせ『はい』一択やろ」としか言いようがない。もちろんちょっといたずら心を出して「n」と打ち込もうものなら容赦なくゲームオーバーになる。

 『幻魔大戦』は、映画が1983年のアニメ作品でトップの興行成績を残すほどのヒットになった一方で、パソコンゲームはそれとは別の意味で子どもたちに強烈な印象を残したのだった。

件の二択画面。画像はPC-6001版より。/資料提供:TinyProject

二面性のある「一択」──誰がそれを「一択」にしたのか?

 ところで、『ポプテピピック』第1話での「一択」は否定的な意味合いだが、1990年代にこの表現が真っ先に広まった対戦格闘ゲームプレイヤーの界隈では、「一択」はむしろ肯定的・積極的な意味合いが強かったはずだ。
 この食い違いを奇妙に感じる向きもあるかもしれない。最後に、この点について説明してまとめとしよう。

 そもそも「選択の余地がない」ということには、肯定的な意味と否定的な意味の両方があり得る。
 1980年代から1990年代にかけ、「○○っきゃない」「○○しか!」というフレーズが一部で流行したが、これは「○○しかない」という肯定的・否定的両方に取れる表現のうち、肯定的な面を特に強調したわけだ。

 ところが「一択」という表現では、最初から選択の余地がないのではなく、本来は複数の選択肢があるはずで、何者かが特定のひとつ以外の選択肢を排除したことが暗示されている。
 その「何者か」が選択者自身であれば、結局「排除する選択」をしていることにほかならないわけで、その矛盾がちょっとした“くすぐり”になり、しかも肯定的・積極的な意味合いを格段に──「○○しか!」などよりもさらに強調できる。
 これが「一択」という表現が広まった要因のひとつだろう。

 反対に、選択者以外が選択肢を排除したのであれば、選択者にとっては「選択肢が奪われ、残ったひとつが押しつけられている」ことになる。
 ひとつを除いてまともな選択肢が与えられないという状況も、実質的には同じことで、これが否定的な意味合いでの「一択」となるわけだ。

 ビデオゲームの中の選択が一択に見えたとして、それが押しつけられたように感じてしまうならプレイヤーにとって興醒めでしかない。「こんなんどうせ『はい』一択やろ」というセリフには、そんな落胆と、製作者の意図を見通したという少々の優越感が凝縮されていると言えるだろう。
 もっとも、もしそこを逆手に取られたなら、「そう来るか! やられた!」という心地よい驚きと興奮を味わえるはずだ。筆者はゲームの選択肢を選ぶとき、いくら一択のように見えても、ついついそんな意外性のある展開を期待してしまうが、皆さんはどうだろうか?

謝辞:
本稿の作成にあたり、以下の方々より資料の提供をいただいた。(敬称略)

TinyProject Twitter:@TinyProject6001 Web:http://p6ers.net/hashi/

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著者
コンピューター文化史研究家。2013年より約2年間、ブログにて 「やる夫と学ぶホビーパソコンの歴史」を連載。
「ゲームが変えた日本語」も2周年。次回はおそらく元号が令和に変わってからになると思いますので、気持ちを新たにしていきます。
Twitter: @Kenzoo6601
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