2020年12月19日~2021年月1月10日にかけて開催された世界最大規模のVRイベントである「バーチャルマーケット5」が閉会を迎えた。
【🎊Vket5 閉会🎉】
— VirtualMarket バーチャルマーケット Vket | 07/20~08/04 開催🎊 (@Virtual_Market_) January 10, 2021
バーチャルマーケット5、閉会いたしました‼
出展者のみなさん、来場者のみなさん、
沢山のご参加、本当にありがとうございました‼
新しいVket、常設『Vket Mall』もお楽しみに🌸#Vket #VRChat pic.twitter.com/tAEGEPQiBZ
電ファミでもレポートやインタビュー記事を掲載し、バーチャル世界に生まれた新たな経済圏がどのように形作られてきたかを追跡してきた。「バーチャルマーケット」は物理世界の制約から解放された空間で行われる展示会で、企業や多くのクリエイターが作り上げたアバターの販売はもちろん、小物や実際の家に届くアパレル商品や食品の販売、VRに関連する研究の展示なども行われ、非常に豊かなイベントとなった。
バーチャル世界の経済圏「バーチャルマーケット5」はどう楽しめばいいの?
『VRChat』でアバター即売会を開催したら“違法アバター”が減少した話──バーチャル世界を胸を張って生きていける場所にするためにVket主催者がしたこととは
販売されているモデル以外にもワールドそのもののこだわりにも注目するべきであろう。販売されているモデルだけではなく突飛なモチーフやギミックなどが乱立しているため目的がなくただ散歩しているだけで楽しむことができる。また、歩きすぎて足が痛くなることもないし、寒さや暑さなどの影響を受けることもなく外出することによって発生する多くの問題も解消してくれている。
そして何よりも、バーチャル空間に設計された展示物は、普段我々が目にしているお店や、立体物の模倣に留まらないのが驚きだ。つまりバーチャル空間にしか再現できない、”らしさ”を追求した展示をたくさん体験することができたのだ。
例えば、アパレルブランドであるBEAMSのバーチャル店舗内に設計された「トルネード型ディスプレイ」は分かりやすいだろう。棚やラックに商品を陳列している場合、一部の商品しかユーザーに見えておらず、商品が発見されるにはユーザーの探す行為に依存しているという従来のアパレルショップの商品陳列における課題を解決したものがこのギミックだ。
このギミックを利用することによって、ユーザーと商品との出会いの機会をつくるとともに、手に取ることなく商品の前後左右のデザインの確認しながら、自分のペースで商品を確認することが可能となった。
一応補足しておくが、ワールド自体は後にパブリック化して誰でも入場できるようになるので、さらにワールドを観察していきたいという方はイベントが終わってしまっていても諦めないでいただきたい。
【WorldBeyond美術設定 概念図・エントランス・Skycube】
— VirtualMarket バーチャルマーケット Vket | 07/20~08/04 開催🎊 (@Virtual_Market_) January 8, 2021
時代ミツルさん制作の美術設定イラストをご紹介します。
タイムゾーンに分けられた各世界が浮かぶ全体像。
端々に感じられるテイストは全て繋がっています。
美術設定: 時代ミツル
構想: フィオ
アートD : さわえみか#Vket #VRChat pic.twitter.com/FILJuDZVD6
2021年1月10日に行われた「バーチャルマーケット5」の閉会式では多くの発表があった。のちに控えた「GAMEVKET」、「MUSICVKET2」の発表、そして何より注目すべきなのが次回のバーチャルマーケットは今までのような期間限定のナンバリングイベントではなく、常設のショッピングモールである「Vket Mall」という形でオープンするという発表には驚かされた。
「Vket Mall」は今までよりもはるかに簡単に出展できるらしく、完全にOculus Quest対応となるとのこと。現段階での発表はこれだけで詳細は不明だが、常設のショッピングモールが生まれることによってバーチャル世界の経済圏はまた強く存在感を示すようになり、新たな特異点になることは間違いないはずだ。
私たち人間は自動車や飛行機の誕生やインターネットの発達によって、遠くの場所に”アクセス”するための時間が大幅に削減していった。世界中にアクセスする時間が削減されたということは、つまり世界中の様々な要素がギュッとコンパクトに凝縮されていったという見方をすることができる。
「バーチャルマーケット5」は「ワールドビヨンド」というテーマを掲げており、「ワールドビヨンド」という名前のワールドも存在していた。そこには自由の女神、ピサの斜塔、モアイ像、エアーズロックなどの世界の名所が乱立しており、物理的な制約から解放され、世界の要素が凝縮されていくという現状を象徴的に描いている。
バーチャルマーケットは「その開催を通じてバーチャル世界をより豊かにし”バーチャルで生きる”ことを可能とすること」という思想を持って活動している。たくさんのクリエイターに締め切りというきっかけを、ユーザーにはアバターの出会いを提供し、バーチャル空間に存在する「モノ」の量を増やしていった。
モノや人が増えれば、それに伴い経済圏も発達していく。それは多くの人にとって「もうひとつの手段」となって、救いを差し伸べてくれることもあるはずだ。
これからVR業界やバーチャル世界がどの様に進化していくかは想像がつかないが、きっと我々にとって良い変化をもたらしてくれるはずだろう。
文/tnhr