Valveの運営するゲームダウンロード販売サービスSteamで、動画ストリーミング技術を使ってローカルマルチプレイゲームをオンラインでプレイする「Steam Remote Play Together」(以下、Remote Play Together)が大幅アップデート。アカウントを持っていない相手とでも「Steam Link」アプリを使って遊べるようになった。
Steam、「ローカルマルチプレイゲーム」を友人とオンライン上で遊ぶ機能に進化。ゲームを購入しておらずアカウント登録もしてない他人ともURL経由でお手軽セッション可能に
「Remote Play Together」の大きな特徴は、誘うプレイヤー(ホスト)がローカルマルチプレイ対応のゲームを持っていれば、ほかのプレイヤーはゲームを所有していなくても遊ぶことができる点だ。くわえて今回のアップデートでほかのプレイヤーはSteamアカウントすら不要になり、各プラットフォームに対応したSteam LinkアプリさえインストールしていればURLワンクリックで遊べるようになった。Steam Linkアプリは現在、Windows、Mac、iOS、Android、Raspberry Piに対応している。
一方、手軽なだけに気になるのがラグだ。インターネット経由での接続となるため、格闘ゲームなど高い応答速度が必要になるゲームは実際に遊べるレベルのか気になるところだろう。そこで今回、「Remote Play Together」の遊び方だけでなく、どのようなゲームで遊ぶのが最適か、FPSやアクションゲームなどはまともに遊べるのかといった疑問を検証していきたい。
「Remote Play Together」の使い方
説明をできるだけ簡素にするため、ここからは他のプレイヤーをゲームに招待する人を「ホスト」、招待される人を「ゲスト」と呼ぶ。
「Remote Play Together」の使い方は簡単だ。ホストはSteamを最新にアップデートし、対応タイトルを起動。起動したらSteamオーバーレイを開いてから(デフォルトでShift+Tabキー)、フレンドウインドウの上部にある「INVITE ANYONE TO PLAY」というボタンを押す。すると「Remote Play Together」の管理ウィンドウが表示されるので、そこにあるURLを相手に伝えるだけでOKだ。
なおホスト側のデスクトップやほかのウィンドウがゲストの画面に表示されることはなく、ホストがデスクトップに戻ったりSteamオーバーレイを開いているあいだは、相手にはあらかじめ用意された画像が表示される。
ゲストはホストから教えてもらったURLをブラウザなどで開き、「SteamLink」アプリを持っていない場合はダウンロードセクションで自分が使っているプラットフォームのリンクを開く。インストールが完了したら、同じページに表示されている「ゲームに参加」ボタンを押せば参加完了。前述の通り、SteamLinkアプリを使えばSteamアカウントやSteamクライアントの起動は不要だ。
ホストは管理画面からゲームの音量を設定でき、ゲストもSteam Link上で調整することができる。相手と接続したあと、使用しているコントローラーならセレクトボタンの位置にあるボタンを押し続けると設定を開ける。マイクとスピーカー音量を変更できるので、困ったら設定を開いてみよう。
有線接続であれば「格闘ゲーム」や「FPS」も“遊べなくはない”
検証の前提として、今回の検証の参加者はホストとゲストがひとりずつ。参加者はお互い遠隔地に住んでおり、それぞれの家庭内では有線LAN接続でインターネットに接続している。
なお筆者が個人的にスマートフォンを使って無線LAN接続でRemote Play Togetherを試してみたが、同じLAN内にあってもかなりのラグがあり、少なくとも自身の環境では無線接続でRemote Play Togetherを遊べない結果となった。ただし、通信状況などの環境は個人個人でまったく異なるため、今回の結果がすべての人が当てはまるわけではないことも理解いただきたい。
『Portal 2』
Valveが開発した一人称視点パズルゲームの第2作目。シングルプレイキャンペーンも有名だが、本作は初期状態でスプリットスクリーン(画面分割)によるローカルマルチプレイが用意されており、ふたりで遊ぶことを前提にした新しいマップやパズルに挑戦できる。意外とプレイしていない人も多いだろう。
やはりポータルガンを操作して照準を動かしている際や、激しく前後左右に移動をしている際にはラグを感じる。しかし、そもそも『Portal』がミリ単位のヘッドショットや視点を何回転もさせる激しいアクション性を有しているFPSというわけでもないので、ラグがあるのを前提として動けばそれなりにオンラインプレイと同じような感覚で遊べる結果となった。
なおValveのスプリットスクリーン対応ゲーム全般にいえることだが、お互いのどちらかがコントローラーをつないだままゲームに参加するとキー割り当てがおかしくなる場合がある。ホスト側は相手が接続したとき、マウスとキーボードの入力を有効化してあげよう。
結果:可(操作に違和感はあるが十分に遊べるレベル。操作設定はやや難あり)
『Castle Crashers』
The Behemothの2Dベルトスクロールアクションゲーム。特別な設定もせず簡単にふたりで協力プレイが可能になった。ラグもほとんど感じず、レスポンスも良好。もはや何も書く必要がないほどRemote Play Togetherフレンドリーだった。
このほかにも対戦アクションゲームである『Nidhogg』など、複数の2Dアクションゲームをプレイしてみたが、やはり動作が軽快なゲームほどラグはほとんど感じず、まるで専用のオンラインゲームモードとしてプレイしているような傾向があった。もしゲームライブラリにその手の作品がありローカルマルチプレイの対戦・協力モードがあるのなら、Remote Play Togetherはぜひ活用するべきだろう。
結果:優(完璧)
『ストリートファイター』シリーズ
『ストリートファイター』シリーズを詰め合わせた30周年記念作品『Street Fighter 30th Anniversary Collection』。おそらく多くの方がRemote Play Togetherと相性が悪いジャンルだと考えるのが格闘ゲームだろう。
その予想は当たっており、コンマ数秒を競うアスリートたちの操作に耐えるレスポンスは達成できていない。つねに数フレーム遅れて動いているような感覚や、ホスト側はラグがないことから明確なハンデが付く点などから、普段から格闘ゲームをやり込んでいるプレイヤーはあまり楽しむことはできないだろう。『ストリートファイターIV』もじつは対応しているが、結果は同様だった。
しかし、波動拳などの必殺技や簡単なコンボが出せないほどではなく、差し合い中心の試合を友だちでワイワイと楽しむには十分なレベルでもある。ひさびさに過去遊んだ格闘ゲームをプレイしたい場合や、オンライン飲み会で酔っ払いながら「ちょっと『ストII』やるか」みたいなノリであれば、問題はないだろう。前述したようにホスト側が完全有利なので、ゲストを一方的にボコりたいときにも使うといいかもしれない。
結果:可(一応プレイはできる範囲内。ガチ試合は不可能)
『Left 4 Dead 2』
協力プレイを主眼においたゾンビFPS。本作は通常の状態ではスプリットスクリーンのマルチプレイに対応しておらず、ホスト側はSteamワークショップから「SFKTeam’s custom menu (splitscreen!)」を購読し、スプリットスクリーンを有効化する必要がある。
大量のゾンビをヘッドショットで次々と倒したり、遠くにいる特殊感染者をスナイピングしたりと、とにかくアクション性が高い。360度からゾンビが襲いかかってくるため位置取りはもちろん重要で、移動もキビキビと進めないといけず、はっきり言うとラグの影響が今回とくに大きいと感じたのが本作だ。イージーモードで味方に付いていきながらゾンビをなんとか倒すことはできるが、エイムも移動もワンテンポ遅れたような反応となっている。この状態でずっとプレイを続けるのなら、『Left 4 Dead 2』本編をセール期間中に買ってしまった方がいいだろう。
また今回試した中ではもっとも設定に時間がかかったのも本作である。できればキーボードで試したかったが、どうしても解決策が見つからず最終的にお互いコントローラーで遊ぶことに落ち着いた。ワークショップからユーザー制作のファイルを導入することも含め、遊ぶために超えるべきハードルが少し高いため「手軽に遊べる」というRemote Play Together最大の特徴をうまく活用できていないといえる。
結果:不可~可(ゲームを体験できなくはないが、ラグがかなり気になる)
TIPS:コントローラー周りの設定
いくつかのゲームを遊んでみてわかったのは、Remote Play Together対応を謳っているゲームは多いが、どのように対応しているかは千差万別という点だ。『Castle Crashers』のようにホストもゲストも何も考えずに遊べたゲームもある一方、『Left 4 Dead 2』のようにMODを導入したり設定をいじることでプレイできるようになるものもある。
個別に情報を探すのは意外と骨が折れる作業なので、困ったときに試したい汎用的な設定の変更点をいくつか紹介しておこう。ホスト側が気をつける点としては、参加したゲストの入力機器の確認だ。使用する入力機器がグレーアウトしている場合は、一度ホストが有効化してあげよう。
上記のスクリーンショットは、Remote Play Togetherにひとり友人を招待した状態だ。画面左側がRemote Play Togetherのメニュー。このウインドウではプレイヤーに割り当てるコントローラーを設定できる。入力ができない、お互いが同じキャラクターを動かすといった不具合があった場合、参加プレイヤーのアイコンの右側にあるキーボードやマウスのアイコンをクリックし、設定を変更してみてほしい。
また、ホストがコントローラーを接続しているなら、外してみると不具合が修正されることがある。逆につなぐと解決することもあった。お互いがコントローラーをつないでいるときは、「ゲーム設定」の下でコントローラーを接続するポートを指定することもできる。コントローラーのアイコンをドラッグするとポートを変更できるので、こちらをいじってみるのもいいだろう。
Remote Play TogetherはSteamでゲームを遊ぶという方で、マルチプレイゲームが好きな方は試して見る価値があるサービスだ。
やはり現時点で、動きの激しいFPSや格闘ゲームを完璧に遊ぶということはできないが、URLをワンクリックするだけでゲームが起動し他人と遊べるお手軽さはSteamクライアントでゲームを遊ぶ際のそれを超越している。わざわざ「このゲーム持ってる?」と確認する必要はないし、Steamのアカウントを作らせることもない。Steam Linkと有線環境、そしてコントローラーさえあれば、自分が楽しんでいるゲームを簡単におすそ分けすることができるわけである。
そしてプレイヤーだけでなく、オフライン協力プレイを実装するだけでオンラインマルチプレイを提供することが可能になるため、開発者にとっても今後有用視されていくかもしれない。Remote Play Togetherがより快適なサービスとして今後広まっていくことを願うばかりだ。