低迷するサッカーチームの実情に呆然──「自分が応援しなければ」と母性本能のような感情が湧き上がり、熱烈なサポーターへと変貌したとあるゲームライターから見た『サカつく』

 1996年2月23日に第1作目の『Jリーグプロサッカークラブをつくろう!』の発売を迎えて以来、『サカつく』シリーズは2021年で25周年を迎えた。それを記念して、電ファミニコゲーマー編集部からJリーグサポーターである筆者に、『サカつく』シリーズの魅力を語ってほしいという記事依頼が来た。

 といっても、シリーズをそこまで熱心にやり込んでいるわけでもない筆者が語ることができるのは、自分自身が体験した現実のサッカーにまつわる思い出と、ゲームプレイを通じてその時の感情を思い出させてくれる『サカつく』シリーズの楽しさについてぐらいだ。

 現実のJリーグサポーターにとって、『サカつく』のどんなところがいかに魅力的なのか、しばらくお付き合いいただければ幸いだ。

文/伊藤誠之介


※本記事は、徳島ヴォルティスサポーターとしてスタジアムに通っているライターが『プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド』の魅力をサッカー好きの視点で伝える、セガとのタイアップ企画です。

ガランとした陸上競技場のスタンドで、J2のサッカーと出会った

 『サカつく』シリーズの第1作である『Jリーグ プロサッカークラブをつくろう』が発売された25年前、正直に言うと筆者は『サカつく』に興味がなかった。もちろんセガサターンも所有していたし、セガのゲームは今でもずっと好きだが、その当時の自分にとって『サカつく』は、好き嫌い以前に関心がなかった。なぜかというと、その時の自分はサッカーに関心を持っていなかったからだ。

 『サカつく』が初登場した1996年は、男子サッカー日本代表が1993年の「ドーハの悲劇」を経て、1998年にフランスで開催されるワールドカップに日本が初出場できるかどうかを賭けた、アジア予選で盛り上がっていた時期だ(初出場が決定した「ジョホールバルの歓喜」は1997年11月のこと)。
 筆者もそうした日本代表の試合はテレビで見ていたが、それはあくまで世間の盛り上がりに流されていただけで、そのときはサッカーという競技に対して特に思い入れを持ってはいなかった。むしろ、ゲームやアニメが好きなオタクとしての性からか、サッカーに限らずスポーツ全般に対して、ちょっと冷めた目で見ていたところがあったぐらいだ。当時の筆者が『サカつく』に関心がなかったのも、あくまでそんな性分のせいで、作品そのものの問題ではまったくない。

 ところが数年後、そんな筆者のサッカーに対する冷めた感情を、大きく揺さぶる出来事が起こった。筆者の故郷・徳島にある大塚製薬サッカー部が2003年、2004年とJFLで2連覇し、翌2005年から「徳島ヴォルティス」としてJ2に参入することが決定したのだ。

 「徳島から東京に出てきてかなりの歳月が経ったことだし、たまには故郷のサッカーチームを観戦するのも面白いだろう」。筆者としてはそんな軽い気持ちで、2005年J2リーグの第3節となる水戸ホーリーホック対徳島ヴォルティスの試合を、茨城県の笠松運動公園まで見に行った。

 ところで、この文章を読んでいる人の中で、実際のJリーグの試合、それもJ2やJ3の試合を観戦したことのある人は、いったいどれくらいいるのだろうか。日本代表の国際試合や、J1の優勝決定戦のような山場の試合をふだんテレビなどで見ている人なら、スタンドを同じ色に埋め尽くす数万人のサポーターが、地響きのような叫び声や歌声をあげている、そんな光景を思い浮かべるかもしれない。
 ところが、笠松運動公園の陸上競技場でアウェイゴール裏にたどり着いた筆者が目にしたのは、ほんの20〜30人ぐらいの人たちが青い徳島のユニフォームを着て、スタンドの一角に固まって応援している姿だった。

 あとで自分自身もいろいろと経験するのだが、日本代表や大都市にあるJ1チームならともかく、J2やJ3の地方チームともなると、ホームタウンから遠く離れたアウェイのスタジアムまで足を運ぶサポーターの人数は、必ずしも多くない。筆者が目撃した光景も、J2やJ3ではむしろ当たり前というか、比較的よく見かけるものだ。ただこのときは、当時の自分が頭の中で思い浮かべていたイメージとの落差に、思わず呆然としたことを覚えている。

 ところが不思議なもので、筆者にとってはこのときの光景が、心の奥のほうにあるスイッチを押す方向に働いた。「これは自分も応援しなければいけない」という責任感、いやむしろ母性本能のような感情が沸き上がってきたのだ。当初はスタンドに座ってのんびり観戦しようと思っていたはずが、いつの間にかサポーターの人たちと一緒に声を上げ、応援歌を唄ってチームを応援するようになっていた。

 こうして、その日から何度か徳島ヴォルティスの試合を観戦するうちに、他のサポーターの方々とも仲良くなっていった。やがて、ゲームライターという「自由業」である筆者は、普通のサラリーマンはなかなか行けない平日の夜に地方で開催される試合にも、泊まりがけで応援に行ったりするようになり、いつしかサッカーにどっぷり浸かったサポーターになっていた……。

選手でも監督でもなく「クラブチーム」が主役のサッカーゲーム

 さて。以前は関心のなかった『サカつく』も、いざ自分がサポーターになってしまうと俄然、興味が湧いてくる。

 筆者が特に印象に残っている『サカつく』と言えば、それはもちろん、徳島ヴォルティスが初めて実名で登場した、2009年のPSP用ソフト『Jリーグ プロサッカークラブをつくろう!6 Pride of J』だ。このゲームがリリースされた際の、徳島サポーターの盛り上がりは凄まじく、試合の行き帰りはこのゲームの話題で持ちきりだった。
 この時期の徳島ヴォルティスは3年連続でJ2最下位になる(当時はJ3の設立前で降格がなかった)など、J2でずっと下位に甘んじていたが、サポーターの仲間たちはまるで現実の憂さ晴らしをするかのように、ワールドクラスの選手をゲームの中の自分のクラブ(本拠地はたいてい徳島)に多数かき集めて、大いに活躍させていた。

 こうしたエピソードからもわかるように、『サカつく』は数あるサッカーゲームの中でもとくに、サポーターとのシンクロ率が高い。その理由は『サカつく』におけるプレイヤーの立場が、クラブチームを指揮する監督でもピッチで活躍する選手でもなく、プロサッカークラブを運営する経営者だという点にある。シリーズが25年の歴史を重ねた今では当たり前のように思えるかもしれないが、この点はとりわけJリーグのサポーターにとって、大きな意味を持っている。なぜなら「サポーターは選手ではなくクラブにつく」という前提があるからだ。

 もちろん自分のクラブに所属する選手は全力で応援するし、なかには自分の応援している選手が移籍すると、その選手が移った先のクラブを応援する人もいるが、大多数のサポーターは選手や監督がどれだけ移り変わっても、ひとつのクラブを応援し続ける。
 そのクラブのプレイスタイルに惹かれたり、筆者のようにクラブのホームタウンが生まれ故郷だったりと、理由は人によってさまざまだが、多くの人はいったん1つのクラブを応援するようになると、長きに渡ってそのクラブと共に歩んでいくことになる。プロサッカークラブの運営に主眼を置いて、その長期的な変遷を体感する『サカつく』のゲームプレイは、多くのサポーターが自分の愛するクラブを応援するスタンスと、相通じるものがあるのだ。

『サカつく』の25年が、Jリーグの「百年構想」を支えた

 さらに『サカつく』ではプロサッカークラブの運営に際して、「ホームタウンの発展」という要素を採り入れている。これもまた、Jリーグ開幕の3年後にシリーズが誕生した『サカつく』らしい、見事な着眼点だ。

 Jリーグに多少なりとも関心のある人ならきっと、「百年構想」という言葉を聞いたことがあるはずだ。Jリーグは単なるプロサッカークラブではなく、「地域に根ざしたスポーツクラブを核としたスポーツ文化の振興活動」を、その理念として掲げている。Jリーグクラブが地域に誕生し、そのクラブが活躍することでホームタウンが活性化して、それによりクラブがさらなる発展を遂げていくという構図だ。
 この「百年構想」を具体的にどのように実現していくかについては、地域によって、あるいはその人の立場によって、さまざまな考え方や議論があるだろう。しかしJリーグの掲げるその理念が日本の多くの地域、とくに(我が故郷・徳島のように)街の中心部にシャッターの下りた商店街を抱えているような地方都市で大きな共感を得ているのは、Jリーグ開幕から30年近くの間にその傘下となるクラブ数が大きく拡大していることからも明らかだ。

 『サカつく』はJリーグの掲げるこの理念を、ホームタウンへの投資によるサポーターの増加という形で、具体的なゲームシステムに取り込んでいる。プロスポーツリーグの表面的な形式に留まらず、その理念や存在意義までをも体現しているビデオゲームというのは、他に聞いたことがない。

 『サカつく』がこれまで歩んできた25年の歴史は、JリーグがJ2、そしてJ3と拡大してきた歴史と並行している。Jリーグの「百年構想」が広く社会に普及し、クラブ数が増加してきた背景として、『サカつく』の存在が少なからず影響していると筆者は思う。地方で新しいサッカークラブを立ち上げて、日本全国から選手を集めてJリーグを目指そうとする動きを、サッカーファンは「リアル『サカつく』」と呼んだりするが、考えてみれば現実のそうした動きがゲームの具体名に例えられること自体、スゴイことだと思うのだ。

 現在スマートフォンでサービス中の『プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド』でも、スタジアムなどに投資してホームタウンを発展させて、サポーターを増やしていくシステムは継承されている。試合前にサポーターが檄を飛ばして、選手のモチベーションをアップしてくれたりするのも、現実のサポーターとして嬉しい限りだ。

 『ロード・トゥ・ワールド』というタイトルのとおり、本作では本拠地を日本だけでなく、世界各地に置くことができるようになっているが、筆者としてはやはり本拠地を徳島にして、ユニフォームのデザインや配色もどこかで見覚えのあるものをついつい設定してしまう。だって、四国の片隅にあるクラブが世界的ビッグネームの選手を多数揃えて、世界のいろんなリーグを勝ち進んでいくなんて、それだけでも痛快じゃないですか!

シーズンを越えた長いスパンで織りなす、クラブチームのドラマ

 サポーターというのは因果なもので、特に誰から頼まれたわけでもないのに、自分自身の時間とお金を費やして、北は北海道から南は九州や沖縄まで、応援するクラブの試合があればどこへでも出かけていく。筆者はJリーグクラブのサポーターなので日本国内で収まっていたが、これが日本代表のサポーターともなれば、海外に長期滞在する人もいるという。Jリーグのサポーターだって、応援するクラブがACLに出場すれば、アジアや中東に行く機会があるわけだ。

 そこまでして出かけていって、応援するクラブが試合に勝てば御の字だが、負けるとなかなかにツライものがある。とくに筆者がサポーターとして熱心に活動していた時期は、徳島ヴォルティスが長らくJ2下位に低迷していただけに、この手のエピソードには事欠かない。
 サポーター仲間で乗り合わせた車の中で、負け試合の帰りは数時間の道中に誰1人サッカーの話をしないとかは当たり前。あるときはアウェイの試合で丸1年に渡って勝利がなく、ようやく久々に勝利したときにはまるで優勝したかのように盛り上がって、コールリーダーを胴上げしたこともあったほどだ。

 そんな低迷するクラブになぜか、のちにCSKAモスクワをはじめとするヨーロッパのリーグで活躍する、コートジボワール出身のドゥンビア選手がレンタル移籍でやってきたのも印象的な思い出だ。当時のJ2ではその身体能力がズバ抜けていたドゥンビア選手は、徳島在籍中に日本で開催された国際親善試合に際して、なんとコートジボワール代表に初選出された。
 テレビで代表戦を見ていると、コートジボワール代表選手たちのメンバーリストに、ヨーロッパや南米の有名クラブが所属クラブとしてズラリと並ぶ中、「ドゥンビア(徳島)」と表記されたのを、サポーターとして誇らしく思ったものだ。当のドゥンビア選手はこの代表選出をきっかけに、わずか半年で徳島を離れて、意気揚々とヨーロッパへ渡っていったのだが……。

 このようにひとつのサッカークラブを長く応援していると、次々と選手が移り変わっていく様子を味わうことになる。思い入れの強い選手や監督がチームを離れることが決まると、思わず感情的になってしまったりもするのだが、それがいざ『サカつく』をプレイすると、自分自身がクラブの社長として、そうした選手や監督の入れ替えを決断する立場になるのだから面白い。

 家庭用ゲームの時代の『サカつく』では、年齢に応じて選手の能力が変化したり、選手との年俸交渉が存在したりといった要素もあったが、現在スマートフォンでサービス中の『プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド』では、そのあたりは簡略化されている。
 まぁ、苦労してスカウトしてきた選手がいきなり引退しても困るので、それはむしろありがたいと言えるだろう。とはいえ、クラブがより高いステージへと成長していくにあたって、既存の選手や監督を入れ替えて新たなスター選手を生み出す必要があるのは、『サカつくRTW』でも変わらない。

 新たなチームスタイルの確立を目指して監督を交代させると、現在大活躍している中心選手が新監督の得意とするフォーメーションに上手くハマらずに、やむなく構想外となってしまう。あるいは、現在第一線でバリバリに活躍している選手だが、すでに成長の限界が見えてきており、クラブの将来を考えると、もっと伸びしろのある選手に交代させる必要がある。

 だが新たな選手はまだ成長過程にあり、その選手が十分に成長するまでは一時的にチームの戦力が低下してしまうが、かといって試合で使わないと成長も遅い……。このような、現実のサッカークラブで何度も目にしてきた光景が、『サカつくRTW』でも再現されていくのは、いろいろな意味で考えさせられる。自分の選択によって構想外となった選手が、「また戻れるようにがんばろう」と逆に調子を上げたりするのも、切ない気持ちになってしまう。

 試合単位、シーズン単位ではなく、もっと長いスパンでクラブチームの発展をプレイする『サカつく』だからこそ味わえる、クラブの歴史が織りなすドラマこそ、このシリーズの魅力だと言えるだろう。

日本のサッカーも『サカつく』も、道は世界へと続く

 我が故郷の徳島ヴォルティスも、長いスパンで応援していると、次第に変化を見せてきた。J2下位で低迷する時代を脱してJ1昇格枠を争うようになり、2013年にはついにJ1昇格プレーオフに進出した。
 プレーオフの決勝戦、ホームタウンの徳島から遠く離れた東京の国立競技場で、かつてTVで見ていた日本代表戦のように、数万人のサポーターがスタンドを埋め尽くした光景を、筆者は一生忘れないだろう。……もっとも、昇格プレーオフを勝ち抜いてJ1に昇格した翌2014年は、シーズンでわずか3勝しかできずに、またJ2へ降格したのだが。

 徳島ヴォルティスがJ2からJ1に昇格した2014年あたりから、Jリーグ、そして日本のサッカーを取り巻く環境はまた変化してきている。Jリーグで活躍していた選手がヨーロッパの有名チームに移籍して活躍するのは、それ以前から珍しいことではなくなっていたが、この時期からはさらに、海外でその名を轟かせたビッグネームの選手たちが、Jリーグで活躍するようになった。
 フォルラントーレスイニエスタといったスター選手を日本のスタジアムで見られるとは、想像していなかった人も多いはずだ。その一方でJ2、そしてJ3とJリーグの裾野は日本の各地へと、さらなる広がりを見せている。

 そのような現状においては、『サカつく』が日本だけに留まらず、世界を見据えた内容になるのも必然だろう。『サカつくRTW』では、日本だけでなく世界各地のサッカーリーグで戦うことができる。選手としてスカウトできる顔ぶれも、世界最高峰のビッグネームがズラリと揃っている。そうしたスター選手が日本の片田舎に本拠地を置くクラブにやってくるのも、決して夢物語ではない時代になったのだ。

 J2降格から7年後、J2優勝というクラブ史上初のタイトルとともに、徳島ヴォルティスは2021年、J1に復帰した。とはいえ、昇格の功労者であるリカルド・ロドリゲス監督は、同じJ1の浦和レッズに移籍し、後任のダニエル・ポヤトス監督は新型コロナ感染予防の影響で、シーズン開幕までに日本に入国できない(4月中旬にようやくチームに合流)というエピソードつきではあるが。我が故郷のクラブは、相変わらずドラマチックだ(笑)。

 筆者はというと、ここ数年は体力とフトコロの限界を感じて(笑)、サポーター活動はかつてほどには積極的に行っていない。特にJ1に復帰した2021年は新型コロナウイルスの影響もあり、スタジアムにまだ一度も足を運ぶことができていない。我が愛するクラブがJ1で活躍する姿をこの目で安心して見に行けるようになる日まで、まだしばらくは『サカつくRTW』をプレイしながら、のんびり待っていようと思うのだ。

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25周年を迎えた『サカつく』の何がすごかったのか? 選手を操作しないほうが没入感が高いってどういうこと?

 サッカーゲームといえばアクションゲーム、サッカーゲームといえば選手を操作するのが当たり前だった時代。そんな常識がどこ吹く風とばかりに『サカつく』はそれまでのサッカーゲームの常識を大きく覆していた。

過去には『電撃王』『電撃姫』で、クリエイターインタビューや業界分析記事などを担当。現在は『電撃オンライン』『サンデーGX』などでゲーム記事を執筆中。また、アニメに関する著作も。
Twitter:@ito_seinosuke
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