初見で散々苦しめられたボスが、2周目では嘘のように無傷で倒せるようになる──『メトロイド ドレッド』は2D探索型アクションの始祖にして頂点たる矜持を見せつけた傑作だ

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 『メトロイド ドレッド』珠玉の傑作に完成されていた。探索型アクションゲームの始祖にして頂点たる底力、「メトロイドはメトロイド以外の何者でもない」という、揺るぎなき事実を見せつけてくれる逸品だ。

 まず、アクションの「手触り」の完成度がすさまじい。「動かすだけでも面白い」というのは良いアクションゲームの最低条件であるが、『メトロイド ドレッド』はその水準を満たすどころか、高みを極めてしまっている。
 ボタンを押すだけで“シュパッ”とサムスが動く、もの凄く気持ちよくて触り心地の良い操作性で、「もたつく」ということがほとんどない。『メトロイド』シリーズに限らず、全ての探索型アクションゲームの頂点に君臨するほどの気持ちよさと言っても過言ではないだろう。

 さらに本作が素晴らしいのは、「プレイヤーのアクションスキルがしっかり成長する」というところだ。たとえば、1周目で散々苦しめられ倒すのに10分もかかった序盤のボスが、2周目に出会ったときはその苦労が嘘のように、無傷で倒せてしまうほどになる。
 つまり、1周目をクリアしたころには、あなたは「最強なる戦士」──作中に登場する鳥人族たちの言葉で言うところの「メトロイド」になっているのだ。

 『メトロイド』シリーズはクリアした後に「また最初から遊びたくなる」ゲームの代表格とも言えるが、今回筆者はすでに4周してしまっている(記事執筆時点でその途中である)。自分の腕前がどんどん上がっていくのがダイレクトに感じられるため、周回が抜群に楽しいのだ。

 また、アクションだけでなく、ゲーム全体のデザインも非常に完成度が高い。
 「迷路のような広大なマップを探索していく」というのはメトロイドに限らず、探索型アクションゲームの基本中の基本とも言える遊びだが、『メトロイド ドレッド』ではその地形作りに“気付きやすさ”と“プレイヤーの好奇心の刺激”という意図が強く込められ、驚くほど迷いにくい探索というものが確立されている。

 それも「どこへ進め」という指示が一切されない作りにも関わらず、プレイヤーが自然に気付けて、自分で道を切り開いていく楽しさと手応えがしっかり感じ取れるよう、設計されているのである。

 くわえて、捕まったら即死となる戦慄の敵「E.M.M.I.(エミー)」の登場により、最初から最後まで全く退屈させない作りとなっているのだ。全編に渡って「緊張と弛緩」が繰り返されることで、とてもよい意味で気が抜けず、時間を忘れてのめり込んでしまう熱中度の高いゲームに完成されている。

 そんな今回の『メトロイド ドレッド』は、横スクロールのメトロイドとしては2002年(※日本では2003年)の『メトロイド フュージョン』以来、約19年ぶりの完全新作だ。
 思い返せば、『メトロイド フュージョン』以降の横スクロールのメトロイドは、過去シリーズのリメイク続きで、完全な新作と言えるものが一向に出ていなかった。

 一応、2010年に『メトロイド アザーエム』という横スクロール要素を持つ新作こそ出ているが、奥行きの概念と1人称視点のメトロイドこと『メトロイドプライム』の要素も盛り込んでいるため、言うなれば“ハイブリッドメトロイド”と言える作品だった。

 その経緯を踏まえても、今回の『メトロイド ドレッド』はまさに待望の1本。そしてその中身もまた、探索型アクションゲームの始祖としての不動の地位を知らしめる底力と、19年の長き空白を経て培われた経験が全投入されたものに完成されている。

 前置きが長くなったが、改めてこの傑作『メトロイド ドレッド』の魅力の真髄に迫っていこう。

文/シェループ
編集/実存


元祖「アクション&迷路ゲーム」としての再定義をした本編の流れ

 基本は迷路のように入り組んだ広大なマップを探索していく“アクション&迷路ゲーム”だ。主人公のサムス・アラン(サムス)を動かし、「ビーム」や「ミサイル」といったアームキャノンから放たれる攻撃を駆使して行く手を阻む敵を倒したり、地形を破壊して隠された道を発見ながら進めていく。

 舞台となるのは「惑星ZDR」と呼ばれる未踏の惑星。ストーリーは『メトロイド フュージョン』のその後に位置づけられており、同作で全滅したはずの寄生擬態生物「X(エックス)」が、ZDRにまだ存在することを示唆する謎の映像が銀河連邦本部に送られてきた。

 連邦本部は調査ロボット「E.M.M.I.(エミー)」7体からなる特殊部隊を派遣し、実態解明に乗り出すも、ZDR到着後に消息を絶ってしまう。ZDRで何が起きているのか。その真相を確かめるため、『メトロイド フュージョン』での出来事を経て、Xへの耐性を手に入れたサムスが降り立つところからゲームは始まる。

 そこからZDRの地表に降り立ってからの展開に踏み込むと、サムスは通信手段の確保のため、エレベーターで惑星最下層の「アルタリア」へと向かう。

 そして到着間もなく、サムスは武装した「鳥人族(ちょうじんぞく)」と思しき者に出会う。鳥人族とは高い知能と戦闘力、技術力を有した先進的な民族であり、作中の表舞台から完全に姿を消してしまった種族だ。そして、孤児となった幼少期のサムスを保護し、育て上げた親にも当たる存在である。

 だが、その鳥人族はサムスに対し、攻撃を仕掛けてきた。
 突然の事態にサムスはビームやミサイルなどの攻撃を駆使して応じるも、どれも全く受け付けない圧倒的な防御力と戦闘力の前に追い詰められてしまう。

 万事休す、と思ったその時、“何か”が起きてサムスは気絶。目を覚ました時には全ての能力(アビリティ)を失った状態になっていた。そしてサムスは失った能力を取り戻しながら、ZDRの調査を進めつつ、サポートAI「アダム」の指示を受けながら地表を目指していくのである。

 今回、面白いのは最下層から始まること。過去のメトロイドは惑星の地表(作品によっては施設の入り口)から始まり、そのまま下層へと降りていく流れが定番になっていた。今回は逆に登っていく。一番低い所から始まるのである。

 「そう言えばこんな展開、ありそうでなかった!」と、思わずハッとさせられる始まり方だ。さらに驚くべきは今回のメトロイド、最初からゴール、迷路で言うところの「出口」がゲーム開始間もない頃から示される。

 その「出口」とは、サムスの愛機「スターシップ」が待機する地表。ここへの到達を最終目標に、本編を進めていくことになるのだ。もちろん、その道のりは複雑で、相応の時間を要するがこうも明確に目的地が示されるおかげもあって、ゲームを進める目的意識を保ちながら進めていける。何より「アクション&迷路ゲーム」という初代『メトロイド』の時に当てられていたジャンル名をこれ以上なく体現している。

 今までは「出口」に当たるところがどこかは自力で見つけ出さなければならなかったし、終盤まで進めない限りは分からなかった。だが、今回は出口がどこか見えている。けれども、道筋は自力で見つけなければならない。

 最下層から始まる点も含め、これほど「迷路」という遊びを最初から鮮明に表現したメトロイドも初めてのように思える。強いて近いものをあげるならば、地下深くに潜む「メトロイド」を全滅するという目標を胸に進めていく『メトロイドII RETURN OF THE SAMUS』およびそのリメイクの『メトロイド サムスリターンズ』ぐらいだろう。

「動かすだけでも楽しい」を突き詰めた、盤石の操作性

 そんな今回の『メトロイド ドレッド』は、件の『メトロイド サムスリターンズ』に引き続き、スペインはマドリードに拠点を置くゲーム開発スタジオのMercurySteam(マーキュリースチーム)が開発を担当している。
 そのため、システム全般は『メトロイド サムスリターンズ』を踏襲。

 具体的には360度自由に狙いを付けられる「フリーエイム」、敵をスタン状態にさせる近接攻撃「メレーカウンター」、サムスにさまざまな特殊効果を付与する「エイオンアビリティ」の『メトロイド サムスリターンズ』で初登場した3つが今回も続投している。

 また、足場の端などをつかんでよじ登る「パワーグリップ」、Rボタンを押しっぱなし(ホールド)でYボタンを押すと発射される「ミサイル」の仕様も、初導入された『メトロイド フュージョン』から継承。サムスの挙動も『メトロイド ゼロミッション』以降の俊敏なものが採用され、初代『メトロイド』から『スーパーメトロイド』の頃に存在した、フワフワとした手触りは完全に取り除かれている。

 新アクションでも狭い隙間を潜り抜ける「スライディング」、「エイオンアビリティ」の一種でサムスを透明状態にさせる「ファントムクローク」といったものが追加され、それに付随する新しい場面も登場する。もちろん、「スピードブースター」「スクリューアタック」などの過去のシリーズでお馴染みのアクションと、それらを駆使して突破していく場面も健在だ。

 ゲームが進むたび、サムスの機動力が上がり、アクションの幅が広がっていくのはメトロイドの醍醐味であると同時に、アクションゲームの醍醐味たる「動かす面白さ」というものを顕著に表現している部分だ。

 そんな「動かす面白さ」は『メトロイド フュージョン』の一部操作の簡略化と、『メトロイド ゼロミッション』での挙動一新以降、作品を重ねるたびに洗練されていった。
 とりわけ『メトロイド サムスリターンズ』は、移動速度の向上とより俊敏になったサムスの挙動、そして自由に狙いを付けられる「フリーエイム」と「メレーカウンター」の新アクション登場も相まって、文字通り“プレイヤーが思い描いたままサムスを動かせる操作”が実現されていた。

 同作の操作系を継承した今回の『メトロイド ドレッド』は、まさにその究極形に達したといっても過言ではない。
 移動速度はさらに向上して全くモタつかず、攻撃にジャンプといった各種アクションもボタンを押した瞬間に発動してはプレイヤーの要求に応えてくれる。
 タイミングよくボタンを押す必要のある一部特殊なアクションも、全体的に判定が甘く設定され、(個人差はあるが)慣れるための練習に時間を要さない。何より、今回は秒間60フレームを基本とするため、どの動作も非常に滑らか、かつスピーディ。

 思うがままに動かせる嬉しさ、ボタンを押すと瞬間的に反応が返ってくる気持ちよさ。どこを取ってもアクションゲームの醍醐味、動かす面白さを突き詰めた仕上がりである。同時にゲーム中に犯すさまざまなミスも、決して「操作の癖が原因で起きた」と言い訳させない徹底した理由付けが図られている。成否も含め、返ってくる結果はプレイヤーの操作技術によるものなのだ。

 元々、『メトロイド サムスリターンズ』においても、これらの魅力は存在したが、さらなる改良を施した今回の操作系は、気持ちよく遊べるアクションゲームのあるべき姿を提示したといってもいいだろう。

 また、『メトロイド サムスリターンズ』の時にあった難点も概ね解消されている。特に「メレーカウンター」は『メトロイド サムスリターンズ』において、「必ず使わせたい」との意図を前面に出し過ぎたあまり、8割近い敵がカウンターで応じる技で攻めてくるようになっていた。
 このため、戦闘では少し「間(待ち)」を挟みがちで、ゲームのテンポを若干落とす要因になっていたきらいがある。敵の耐久力も全体的に高く、カウンターを決める以外では倒すのにやや時間を要するのもその傾向を後押ししていたと言えるだろう。

 『メトロイド ドレッド』では、一部の敵がカウンターで応じる技を決めてくる形に改められ、使う機会が抑えられたほか、敵の耐久力も見直され、カウンター未使用でも倒しやすくなっている。

 また、走りながら「メレーカウンター」を決める「ダッシュメレー」の追加により、立ち止まる必要もなくカウンターを決められるようになった。おかげでゲームテンポも過去のメトロイドに近いどころか、シリーズ屈指とも言えるほどスピーディなものへと進歩している。そのため、慣れてしまうと過去のメトロイド、特にまだフワフワしていた初期のメトロイド3作が億劫に感じやすくなる弊害を受ける……かもしれない。

気付きやすさにこだわり尽くした、熟練の技を感じさせるマップ構成

 これら進化した操作性とアクションを駆使して進むマップも驚くべき完成度だ。特に素晴らしいのが、気付きやすさにこだわり尽くした地形作り、環境作りが徹底されていること。

 今回の『メトロイド ドレッド』には、『メトロイド フュージョン』で次の目的地をナビゲートしてくれたサポートAI「アダム」が続投している。だが、今回は地下空間が舞台で、通信環境が芳しくないという背景もあってか、『メトロイド フュージョン』の時のように事細かに目的地を教えてくれない。基本的には昔のメトロイド同様、自力で進む道を探して見つけていくことになるのだ。

 『メトロイド フュージョン』以降から、ナビゲーションや周辺の怪しい地形を浮き彫りにするスキャン機能など、初めてメトロイドを遊ぶ人への配慮を凝らしてきた傾向を思うと、今回は原点回帰を果たした格好である。

 だが、それによって従来の迷いやすさが復活した訳ではないというのがすごい。
 「ミサイルタンク」を始め、隠されたアイテムを丹念に回収していくとその辺りは生じるが、メインストーリーを進めていくだけなら、迷うことはほとんどない。なぜなら、隠し通路を始めとする怪しい箇所に“気付きやすく”するための地形作りが徹底されているからだ。

 特にその気付きやすさに最も貢献しているのが、今回初登場する「地中に埋まった爆発物」だろう。行き詰まったり、サムスがダメージを受ける高温・低温ゾーンしか進める場所がない状況に陥っても、この爆発物が露骨に「ここ怪しいよ」と無言のメッセージを送ってくるので、どこから進めばいいかすぐに気付けるようになっている。

 さらにそのような場面でお約束のように登場することから、ゲームを進めていくにつれて爆発物自体が順路を示す「案内板」であるとの認識も深まっていく。
 なので、同じ状況に陥っても、「まずは近くに爆発物が埋まっていないか観察してみよう」という行動を衝動的に取るようになって、関係ない場所へと向かいにくくなる。仮に向かってしまったとしても、通過済みの道を一方通行にするなりして塞ぎ、脱線しすぎないよう範囲を限定。今行ける範囲内に何らかの突破口があると、自然に考えさせるのである。

 こうした細かい工夫の数々もあり、行き詰まったとしても過度に時間を要することもなく、スムーズに進めていける構成になっている。

 加えて、現在探索中のエリアの全体像を表示するマップにも数多くの情報が記録される。
 現在の装備では破壊できない壁、使えない仕掛けも何もかもが近づいた瞬間、マップ上に怪しい場所(「???」と表示)として記録されるのである。そのため、後で新しいアクションを可能にするアイテムが手に入った時に再び確認すれば、「ここが進路かもしれない」と気付けるようになっている。

 実際にそれが正しいルートか、違うのかは現地に赴いて確かめないと分からないが、こうした何らかの手がかりが頻繁に手に入るのもあって、行き先が無くなってお手上げ状態になるということも起こりえない。そのような場所を鮮明に覚えておくためのマーカー機能も用意されているので、活用していけばなおのこと頻度は減る。

 過去の救済機能を取り除いて原点回帰させつつ、当時特有の問題を復活させず、進めやすくするためさまざまな気付きの要素を設けさせるというのは、驚嘆に値する。
 救済機能に頼らず、こんなにも遊びやすく、それでいて道を切り開く楽しさを表現しているのには、探索型のアクションゲームの始祖たるメトロイドの底力と同時に、完全新作までの19年という長き空白の間を経て培った経験の重みを痛感させられるばかりだ。

 また、筆者としては序盤のチュートリアルを兼ねた構成も高く評価したい。同じ手法は『メトロイド サムスリターンズ』の時にも取られていたが、探索時の心構えまで実地体験を通して学んでいく流れはあまりに自然過ぎて美しさすらある。

 この導入部も探索時の気付きやすさ、行き詰まりにくさにも一役買っていて、マップの魅力と完成度を底上げしている印象だ。メトロイドの基本的な遊び方から、本作特有のアクションとシステムに至るまで、凄く自然に、かつ分かりやすく教えてくれるのも、シリーズ初心者にも嬉しいところだ。なので、自信を持って言い切ろう。

 本作は今回『メトロイド』シリーズを初めて遊ぶ方でも、間違いなく安心して遊べる作りになっていると!

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ライター
新旧構わず、色々ゲームに手を伸ばしては積み上げるひよっこライター。アクションゲーム(特に『メトロイド』、『ロックマン』)とストラテジーが大好物。フリーゲーム、VRゲームの動向もひっそり追いかけ続けている。
Twitter:@shelloop
編集
ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a
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