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ステージ状態の「記録」と「復元」を繰り返して解くパズルゲーム『FILMECHANISM(フィルメカニズム)』が文句なしに面白い!「完成形から逆算して答えを探す」優れたゲームデザイン

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 パズルゲームというジャンルが好きだ。それほど数を遊んできたわけではないが、Steamのセール期間中などにパズルゲームが安くなっていると、ついつい買ってしまう。
 休日などにコーヒーを飲みながらじっくりとパズルに向き合う時間は、このゲームジャンルの持つ魅力のひとつであるように感じる。

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『FILMECHANISM(フィルメカニズム)』

 つい最近、『FILMECHANISM(フィルメカニズム)』という2Dパズルアクションゲームを遊ぶ機会を得た。まだリリースされたばかりのゲームでほとんど情報を持っていなかったが、遊んでみてすぐに「これは面白い!」と感じた。
 本稿ではそんな『FILMECHANISM』の魅力を分析し伝えるとともに、私なりの「パズルゲームの楽しみ方」も紹介してみようと思う。

文/植田亮平


※本稿でのゲーム画面はレビュー版(Steam)のもののため、製品版とは一部ステージ配置等が異なる可能性がございます。

ひらめきとトライアンドエラーのバランス

 まずは『FILMECHANISM』の基本的なシステムとルールについて説明しようと思う。が、正直なところ、ゲームシステムは非常にシンプルで一目で理解できるものであり、文字で説明するよりもこちらの1分半ほどのトレーラー、もしくは下記のGIF動画を見た方が手っ取り早いだろう。

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(画像は公式サイトより)
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 いかがだっただろうか。本作のゲームデザインはフィルムによる記録と復元の「パズル部分」を使って、うまく「アクション部分」を進めていくというものになっている。
 「前に行ったアクションを巻き戻して、オブジェクトと自身の位置を適切な状態に持っていく」のがステージ攻略の基本、というのは少なからず伝わったのではないだろうか。

 では、このゲームデザインについてもう少し掘り下げたい。例として、チュートリアルを終えてから最初にプレイヤーが挑むステージを見てみよう。

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 プレイヤーの前に浮かんでいる緑の物体はカメラのフィルムで、これを取ると現在のオブジェクトの位置を記録し、そしてその状態に復元することができる。そしてその奥にあるのは押すことのみが可能なブロックだ。

 この時点で、大方の読者はこのステージの「答え」が分かったのではないだろうか。まず手前のフィルムを取ってブロックの位置を「記録」し、ブロックを押してプレイヤーの位置を変えた後、「復元」を使って動かしたブロックを手前に移動させる。

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こういうことになる。

 上の回答にたどり着くにあたってプレイヤーが考えることは主に3つある。
 「記録するタイミング」「記録した後におこすアクション」「復元後のプレイヤーの位置」だ。例えばブロックを押した「後」に記録してしまえば、プレイヤーは右のゴールにはたどり着けないし、復元する際にプレイヤーが画像の位置に立っていなければ、復元したブロックの判定と重なってステージ失敗となる。

 特に特筆すべきものは「記録するタイミング」だ。なぜなら、このゲームにおいて「記録するオブジェクトの位置」は「答え」と同義だからだ。
 『FILMECHANISM』のステージではフィルムが余分に配置されていることはなく、プレイヤーはかならずフィルムを使い切らないとゴールできないよう作られている。つまり、最後の復元を終えた状態が答えの状態であり、プレイヤーはアクションを起こす前にまず最終的なかたちを理解し、そして記録しておく必要がある。

 このゲームプレイの流れがかなり面白い。アクションパズルを解く際の流れとしてイメージしやすいのは、まず画面にアプローチして、ああでもないこうでもないと試行錯誤した後、最終的に答えのかたちにたどり着くという一方通行的なものだ。
 しかし、『FILMECHANISM』の流れはまず「最終的な答えのかたちを見つけて、そこから逆算してアクションを組み立てていく」というものになっている。分かりやすく示すと

●一般的に想像されるパズルアクションの流れ

 画面に対してアクションを起こす→考える→答えの完成

●『FILMECHANISM』の流れ

 考える→答えの完成→アクション→答えの完成

 このような流れになる。

 さらに、ステージを進めていくにつれてギミックは段階的に増えていき、フィルムの数も1つから2つへ、2つから3つへというふうに、ゲームの流れは徐々に複雑になっていく。
 そのたびにフィルムの使いどころやギミックの状態、プレイヤーの位置など考えることが増えていくため、プレイの時間における考える時間の占める割合が徐々に増加していく。

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 実際のところ、このゲームを遊んでいるときはキャラクターを動かすよりも画面とにらめっこをしている時間の方が断然長かった。というのも、まず答えをひらめかなければどのようにアクションを起こしても意味がないので、「なんか解けた」というような手探りで解いていく戦法が取りづらかったからだ。

 本作ではワンボタンでリトライが可能でトライアンドエラーが非常にしやすいシステムだが、最終的にプレイヤーにもとめられるのは「ひらめき」の方だ。
 記録と復元というシステムはそうした試行とひらめきのバランスを取るのに見事にマッチしており、高い満足感を生み出すことに成功している。

『FILMECHANISM』の楽しみ方

 私がパズルゲームを遊ぶ時の楽しみ方の中に「制作者との対話」というものがある。私はパズルゲームを作ったことはないし、これから作る予定もないのだが、時折パズルゲームを作った側の思考に思いをはせることがある。
 パズルゲームを作る際「いきなり答えを考えて、あとからその解き方を考える」という制作者はいないのではないだろうか。ほとんどの場合、まず「プレイヤーに思考させたい部分」があり、そこから逆算して答えを作る、というのが、恐らくパズル制作の王道なのだと思う。
 もしも『FILMECHANISM』がそのように作られているとしたら、このゲームの制作者はとても素晴らしいレベルデザインセンスを持っていると思う。またまた例として、ゲーム序盤に遊べる難問ステージを見てみよう。

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 さあ、解き方が分かるだろうか。左下のゴールの手前には壁があり、鍵がないと開けられない。そしてその手前には針のトラップがあり、簡単にはたどり着けそうにない。一目見ただけでは、どこで記録をしてどうアクションを行えばいいかさっぱりわからない状態だ。

 しかし、画面を見渡せば制作者が隠したヒントがある、プレイヤーの目の前にあるフィルムだ。フィルムがこの位置にあるということは、すくなくとも右のブロックを針の上に落とす以前に記録してしまえばいいということが分かる。
 そこまで分かってしまえば、右へ落としたブロックから右の足場へとわたり、鍵を取ってもう一度ブロックの場所へと上り、今度は復元したブロックを左に落とせばいいというところまで論理的に考えるだけでたどり着ける。

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こうして
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こう

 こうした気づきのポイントは、ゲーム中のあらゆるステージに隠されているのだが、それがわざとらしくなくプレイヤーに示されるというのは玄人技としかいうほかない。ゲーム内に登場するギミックも直感的に理解できるものばかりで、全くストレスなくプレイできる。
 さらに、各ギミックにはチュートリアルステージが用意されており、どのギミックがどのように動くのかをプレイヤーが混乱せず学んでいけるように作られている。端々に見られるレベルデザインのセンスは、数々の賞を受賞した本作のクオリティの高さを裏付けている。

 私はこういった、「制作者がパズル内に隠したヒント」が好きだ。制作者はプレイヤーにどういった思考を取らせるかあらかじめ想定して問題を作り、プレイヤーはそうした制作者の意図を読みながらパズルを解く。そうして制作者が用意した答えに気づいたとき、まるで「制作者と対話している」かのような面白い感覚が湧いてくる。
 一見超難問のように見えてお手上げになるようなパズルも、考えたのは私と同じ人間だ。この感覚でパズルを解いていると、またひとつ違った面白さが見えてくる。『FILMECHANISM』はもちろんのこと、他のパズルゲームを遊ぶ時にもぜひ参考にしてみてはいかがだろうか。

ゲームプレイと融合したデザイン、そして親切な設計

 本作を彩るビジュアルと音楽はシンプルかつ穏やかなもので、全くプレイの邪魔にならない。それどころか、プレイヤーをリラックスさせてくれるようなものばかりだ。各ワールドによってBGMは異なるがそのテンポは一定で、長時間頭を悩ませているときも落ち着いて聴くことのできるゆったりとしたものに仕上がっている。

 グラフィックは全体的に彩度を抑えた色合いだが、ギミックとそうでないものの色合いにはっきりとした違いがあり、プレイヤーが明確に区別できるものとなっている(上に挙げた画面を見てみれば一目瞭然だろう)。こうしたビジュアル面での配慮も、ストレスなくプレイをするうえで一役買っている。プレイヤーが操作するキャラクターの「レック」も、可愛らしい愛着が湧くデザインになっている。

 快適に遊んでもらうためのシステムも抜かりない。ワンボタンで高速なリトライができるほか、ステージをクリアして手に入れたコインを使ってヒントを貰うこともできる。最初に起こす行動やどこで記録すればいいかなど、必要なレベルに応じたヒントがもらえるので、難しすぎて詰んでしまうといったことはまずないだろう。

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 全部で200ステージ以上と、ゲームボリュームも圧巻。各ワールドには通常の難易度のステージのほか、さらに難易度が上がった「HARD」ステージ、そのさらに上の「HELL」ステージが用意されている。

 難易度がHELLにまでなると相当な難しさを誇るので、ぜひとも挑戦してみてほしい。もちろん、前述のヒント機能もあるので、パズルが苦手という人も安心して楽しめる。

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 いかがだっただろうか。『FILMECHANISM』は、私が最近遊んだパズルゲームの中では最もクオリティの高いゲームであった。そのシステムもさることながら、レベルデザインやBGM、ビジュアルといったゲーム内のあらゆる要素が一体となって、快適で面白いと感じるゲームプレイを生み出していた。
 すっかり寒くなった今日この頃、温かいココアを飲みながらまったりとパズルゲームを遊ぶのもいいかもしれない。

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ライター
大阪在住のゲーマー。ゲームに限らずアニメ、映画など気になったものは何でも取り込む雑食系。オープンワールドのゲームやウォーキングシミュレーターなどが大好き。最近はオンラインゲーム『League of Legends』にドハマりしているが、プレイの腕はイマイチ。

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