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『真・女神転生V』を“力に全振り”の脳筋プレイで遊んでみた。改めて感じる、プレスターンバトルシステムの完成度

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 アトラスのRPGと言えばその難易度の高さが度々話題になることでも有名だ。その代表格と言えば『ペルソナ』、あるいはその源流となった『女神転生』シリーズをあげる人は多いだろう。難しいのは単に敵が強いというだけではない。アトラス作品はターン制に様々なルールを追加し、爽快かつ「1手間違えたらすぐ全滅の危機」になるというゲーム性に富んだバランスに仕上げられているのだ。

 その代表的RPGシリーズの最新作『真・女神転生V』(以下『メガテンV』)が11月11日に発売された。シリーズ初のオープンワールド風のマップで崩壊し魔界となった東京を冒険する作品だ。

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 『メガテンV』はレベルアップ毎に主人公のステータスにポイントを振っていく伝統的なスタイルをとっており、その選択が戦闘結果を大きく変更する。安易にステータスの振り方を決めてしまえばプレイヤーは戦闘で苦戦し、先へ進むことが難しくなるかもしれない。
 しかし私はあえてポイントを力に全振りしてみることにした。その結果とんでもないナホビノ(主人公の呼び名兼存在)、「マッチョなナホビノ」こと「マチョビノ」がうまれてしまった。

 一見、ただの面白縛りプレイになると筆者もプレイ開始時は思っていたのだが、そこは「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」の初代と同時期から作られてきた「メガテン」シリーズ。非常に懐の深いシステムやバランスを味わうことができた。

 これは『メガテンV』の面白さを伝えるレビューそして、混沌に堕ち魔界となった東京、《東京ダアト》をマチョビノが粉砕した記録である。

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※ストーリーには触れませんが、システムなどで軽いネタバレを含みます。


力全振りでも楽しくクリアできる良バランス

 「全振り」というのはステータス割り振りでありがちなミスのひとつである。大抵のRPGでは特定のステータスだけをあげてあっさり勝てるようにはできていない。そもそも攻撃力をあげてひたすら殴ればクリアできてしまうゲームというのは作業感が強すぎてゲームとして扱われるのかどうかも意見が分かれるだろう。

 故に『メガテンV』では力全振りでクリアまで楽しめたことは筆者にとって驚きであった。(難易度ノーマルで総プレイ時間58時間。もちろん何度も死んだし、苦労はしたが楽しかった事だけは断言したい)

 本作のバトルシステムは攻撃がクリティカルになること、敵の弱点を付くこと、逆に敵からの攻撃を回避・無効・反射することで敵味方の行動回数が大きく変わるプレスターンバトルシステムが採用されている。

 これはターンの最初に味方の数だけ、例えば悪魔を2体召喚していたらプレイヤーも含めて3つのアイコンが獲得できる。行動1回につき1アイコン消費するが、弱点やクリティカルを突いたり特定の行動は0.5アイコン消費、逆に攻撃を回避・無効化・吸収・反射された場合はアイコンが多く消費される。敵も同じルールが採用されており、お互い最大で1ターンに8回行動ができる。 

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 それゆえ、普通にプレイをするのであれば回避に関係していそうな「速」や「運」、あるいは属性魔法の攻撃力をあげる「魔」にもポイントを割り振るのが有効ではないかと思う(属性魔法のダメージが高ければ無効や反射されなければ全体魔法でダメージが蓄積できるため)。

 しかし本作は主人公の弱点相性や味方悪魔のスキル構成を変更できる「写せ身」システムがあり、ここで複数の属性を無効化できるパーティを組んだり相手に合わせてスキルを持った悪魔を作っておくことで攻撃力偏重の主人公でも相手の攻撃を捌く事ができた。

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クリア時の主人公のステータス。力に全振りし防御面に不安があったが、属性相性で弱点を失くしたことで敵の攻撃回数を大幅に減らせた。

 ゲージをためて放つ「マガツヒスキル」も主人公は序盤から1ターンのみ味方のあらゆる攻撃が当たればクリティカルとなる「会心」を所持しており、プレスターンの醍醐味をシンプルながら堪能できるようになっている。

 本作は通常攻撃以外のスキルにMPを消費し、ボス戦では上手く味方の悪魔を交代させながら戦わなくてはいけない。そのため、敵の攻撃を相性で捌きつつ「会心」使用時には相手に有効な属性で攻撃できる悪魔を揃えたい。
 しかし相手に有利な属性攻撃ができる悪魔はたいてい相手からも有効に攻撃される(例えば光属性に闇属性は有効だが逆も有効である)ので状況に応じて思考を巡らせ無くてはならないのだ。

 また後半のボスが使用するスキルは強力で、主人公以外の悪魔が全滅する場合も幾度となくあった。しかし、ここで0.5アイコン消費で可能な「交代」が輝く。控えの悪魔を召喚しつつ敵の攻撃を相性で捌き、復活させていくことで反撃に転じていくこともできたので、改めて良くできたシステムだと感じた。

 うまく交代などを駆使し、敵の攻撃を捌いた後のターンで「会心」で大ダメージを与え、刺し返して勝てた時の気持ちよさは格別であった。

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力に全振りしてしまったデメリットは戦略で覆す!力 is POWER!!!

 元々、力全振りにしたのはPVなどで主人公が「麁正連斬(あらまされんざん)」という物理技を使っていたからであった。幸運なことに麁正連斬以外にもメガテンVは他にも主人公の力依存のスキルが存在し、終盤の敵にも高いダメージを与える事ができた。

 また「メガテン」シリーズでは恒例の敵に話しかけて金銭やHPなどを与えて交渉し、仲魔(仲間の悪魔を「メガテン」シリーズではそう呼ぶ)にできるシステム、「悪魔会話」でもステータスの高さを競って勝てば即交渉成立となるパターンが存在し、力比べが出た際は1度も負ける事が無かったのも嬉しい。

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悪魔会話が良く分からない方は桃太郎のきび団子で仲間を増やしたのをイメージしてほしい。マチョビノは金太郎スタイルで腕相撲でねじ伏せて仲魔を増やすのだ。

 これから『メガテンV』をプレイするアトラスRPGのファンは全振りまではしないまでも力に多めに振っておくとより楽しめるかもしれない。

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Yes!マッスル!!

 なお本作はレベルをあげればある程度強くなるので、どうしてもボスが倒せない場合は、フィールドに出て未解決のクエストを探したり、クエストとキャラを追加するDLCを入れてみてもいいだろう。
 それでもだめなら安価な経験値や金が沢山入手できるようになるDLCで悪魔どうしを合体させ、より強力な悪魔を呼び出す悪魔合体を繰り返したり、無料のDLCで難易度をSAFETYまでさげてもいいかもしれない。

悪魔の世界で惑う快感

 『メガテンV』は女神転生シリーズで初めてオープンワールド形式のシステムを導入している。舞台となる東京は文明が崩壊し、かつての栄華のなごりである倒壊したビル群がダンジョンを形成し、そこでシリーズ恒例の悪魔達が群れを成して棲んでいる。

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悪魔の群れに襲われないように注意しつつ探索しよう。

 プレイヤーはこの立体的な魔界を目標地点を目指しつつ、点在するアイテムを回収したりクエストをこなしていくわけだが、(筆者が思い描いていた魔界が見れているという意味で)風景が良いのにくわえ、どうやったら目的地に行けるのかマップを見ながらしながら考え、道中の悪魔から逃げたり仲魔にしながら、ときに迷い、少しずつ進んでいくのはとにかく楽しい体験であった。

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仲魔にすると同じ悪魔から襲われてもすぐに見逃してくれるため、フィールド探索上の意味も大きい。なかにはお金やアイテムをお土産にくれる場合も。

 悪魔達もただそこに配置されているだけでなく、飛んでいたり、隠れていたり、身の丈や移動速度が違ったりと個性的でゲーム性に富んでいて面白い。

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徘徊する大型悪魔にも注意だ。

 本作はフィールド上ならどこから何時でもセーブや回復、アイテムの購入ができる「龍穴」に帰還できるアイテムが途中で入手できるので、古いRPGにありがちな長時間中断できないシーンや、ボス戦の準備の為に無駄に移動する事がほぼ無く、プレイヤーは目的をもって挑むことができたのが素晴らしいと感じた。(ちなみにオートセーブはないので、こまめにセーブすることを推奨する。)

 昨年からの情勢であまり外で大規模な移動が自由にできていない方もいるだろう。筆者も幸いにして周りの方に不幸は無かったものの、ずっと東京に住みつつもテレワークで部屋からも出ず、誰とも話さないで暮らしている日が続いたこともあった。一方で必須の用で外に出ると都心部は相変わらず混み、特に誰を責めるわけでも無いのだが不満を感じる事もあった。

 そうした中で自分の住んでいた街が無惨にも崩壊し、悪魔たちが自由に闊歩する荒涼とした世界を進んでいく体験は(もちろん現実にはあって欲しくないが)変な話だが「癒し」に感じたのである。これはこのゲームでしか味わえない感覚だった。

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プレイヤーの「遊び」を真に可能にする令和の本格RPG

 『メガテンV』は「メガテン」シリーズらしい思想と思想の対立を軸としたストーリー、その中からどれを選び取るかという選択によるマルチエンディングはあるが、主人公は人間的な葛藤も薄く、こだわらない限り仲魔にした悪魔たちも(いずれはより強い悪魔にするために合体材料にしてしまうので)仲間としてずっと付き合うという事もない。

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人間や悪魔たちのキャラクターの深堀りは主にサブクエストで行われているのでメインストーリー自体は非常にあっさりと進む。

 しかしだからこそ、本作はプレイヤーの思想をプレイに反映する(例えばマチョビノのような)真に自由なロールプレイを可能とする良さがある事を感じた。実は「メガテン」シリーズを最後までプレイしたのは本作が初めてだったが、ようやくメガテンの面白さを実感できた気がした。

 キャラクターや世界の見た目も美しく、難易度も好きに調整可能。過去作の要素は匂わせつつも話は独立していおり、Switchなので何処へでも携帯しながら楽しむことができた本作は「メガテン」シリーズをプレイしたい方はもちろんの事、本格的なRPG、頭を使う戦闘や探索を楽しみたい方にとってぜひお勧めしたいソフトの1本である。

ライター
元ゲームプランナー。現在はWebエンジニアをやりながらゲーム制作を勉強中。動画、イラストなど創作活動にも手を伸ばす。好きなゲームは「TOBAL2」等
Twitter:@shoyofilms

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