プラチナゲームズと言えば、『ベヨネッタ』シリーズや『NieR:Automata』に象徴される、ド派手で爽快、そして遊び応え抜群のアクションゲームを作ることに定評のある開発会社(ディベロッパー)として知られている。
そんなプラチナゲームズがこれまでに手がけたタイトルとは一線を画す、意外性のある新作を世に解き放った。「ネオ-クラシック・アーケード」シリーズ第1弾『ソルクレスタ』だ。
『ソルクレスタ』は1980年に日本物産株式会社(通称:ニチブツ)よりアーケード用タイトルとして誕生した『ムーンクレスタ』、その続編『テラクレスタ』などの流れを汲む完全新作。シリーズとしては1997年発売の『テラクレスタ3D』以来、約23年ぶりの新作に当たり、Nintendo Switch、PlayStation 4、PC(Steam)向けダウンロード用タイトルとして発売された。
クレスタシリーズ最大の特徴は「合体」。複数の戦闘機がドッキングするたび、攻撃がパワーアップするという独特なシステムだ。続編『テラクレスタ』以降にも継承され、発展してきたこのシステムは今回の『ソルクレスタ』にも搭載。
しかも、開発を担当したプラチナゲームズ流のアレンジが加えられたことによって、やり込むたび戦術の幅が広がる奥行きのあるシステムへと進化している。
「やり込むほどに奥深さが増す、新機軸のシューティング体験」というのは、本作の配信ページに記された文言だが、実際に遊んでみるとそれに何ら偽りはない。『ソルクレスタ』には昔ながらのシューティングゲームらしい直感的に遊べる手触りと、細かな仕様を理解するにつれて目の前の光景が変わっていく面白さがある。
そして、その変化に応じて今まで乗り越えてきた戦闘に再度、挑みたくなる高いリプレイ性がある。
まさに磨けば磨くほど(プレイヤーの腕前という名の)輝きが増す、プラチナゲームズの十八番が炸裂した新作というに相応しい本作。
筆者個人の印象では、「アクションゲームのようなシューティングゲーム」とも称せる手応えに満ちたこの力作の真髄を、別途販売中のダウンロードコンテンツ「ドラマティックモード」のことにも触れながら綴っていこう。
文/シェループ
旧作の「オートマ」から「マニュアル」へと一変したゲームシステムとその極め甲斐の高さ
基本的なゲーム内容は縦方向にスクロールする形式を採った、ステージクリア型シューティングゲーム。自機「ヤマト」を操縦しながら襲い来る敵をショット攻撃で迎え撃ち、最後に待ち構えるボスの撃破を目指す。
シューティングゲームとしては古典的な構成だが、ボスを倒せば即ステージクリアという訳ではない。厳密にはその先に設けられた「ヴァイクン」と称された装置を破壊することで、初めてステージクリアとなる。多少、捻りを加えた流れになっているのである。
ステージの道中も「前半⇒中ボス戦⇒後半……」という区切りがあり、その関係で区間当たりの密度も濃い。場所によっては10分以上を要することもあるほどだ。この手のシューティングゲームとしては規模の大きな作りと言えるだろう。
逆に規模が大きいと聞き、冗長さを懸念するかもしれないが、そこも区切りがあるなりに退屈には感じにくく、敵の出現パターンに障害物、戦闘イベントのタイミングなどで適度に工夫されたまとまり方になっている。
さらに本作独自のシステム、それに関連する戦術性も退屈さの払しょくに一役買っている。
そのシステムというのが「合体」だ。本作も『ムーンクレスタ』、『テラクレスタ』などの過去作同様、ステージ開始時は戦闘機が1機(単機)の状態で発進する。
その後、特定の敵を倒すと出現するアイテム「ソルエンブレム」を獲得すると、画面下の方に2機目になる味方機が出現。そのまま触れると合体した状態になる。その状態からさらに続けて「ソルエンブレム」を獲得すれば、同じく画面下に3機目が出現し、引き続き合体することで(事実上の)最終形態「ヤマト」になって、多彩な攻撃が可能になるのだ。
この辺りの仕組みは過去作、主に『テラクレスタ』を踏襲した形である。だが、本作が大きく異なるのは、合体後可能になる「フォーメーション」を始めとする特殊アクション全般。「フォーメーション」自体は元の『テラクレスタ』にも存在していて、対応するボタンを押せば合体した3機が分離し、一定時間限定の広範囲攻撃を繰り出すというものになっていた。
本作は分離を行った後の動作が大きく異なる。ボタンを押すと同時に周囲の時間が遅くなり(スローモーション状態になり)、自機を自在に動かせるようになるのだ。そこから特定の隊列(陣形)を作り上げると「フォーメーション」による攻撃が発動。一定時間の間、作り上げた隊列に基づく強力な攻撃が展開されるのである。
言うなれば、自動車の「オートマ」(旧作)から「マニュアル」(今回の新作)になった感じ。自分の手で「フォーメーション」を作り上げるスタイルになっているのだ。
併せて「フォーメーション」の種類も増加。「チップ」と呼ばれるアイテムを獲得することによって、最大で5+α種類の「フォーメーション」が使えるようになる。最も強力なのは3機集結時の「フォーメーション」。2機の時にも「フォーメーション」は使えるが3種類に限定されるほか、効果と威力も3機の時に及ばないものになっている。(それでもそこそこ強いが)
また、合体時には「フォーメーション」を組む以外に戦闘機の順序も変更可能。それによってメインショットの効果も変わる。
赤の「アマテラス」なら3方向に広がるレーザーショット「トライレーザー」がメインに、青の「ツクヨミ」なら誘導効果のある「エレキミサイル」がメインになるという具合だ。順序を変えると、他の戦闘機の攻撃だと倒しにくい敵が簡単に倒せるようになるなど、弱点(相性)の概念もあり、意識して使うと難易度が一変するという仕掛けも凝らされている。
この一連の違いと特徴の通りだが、システム全般が入り組んでいる。それもあって襲い掛かる敵を倒すのみならず、考える必然性も加わっており、終始頭がフル回転状態になる作りになっているのである。
正直、旧作を思えば複雑化しているのは否めない。だが、相応に自分なりに自機を使いこなす面白さが強化され、シューティングゲームというよりもアクションゲームを彷彿とさせる“動かす楽しさ”が描かれている。
パワーアップが「合体」だけではないのも、もうひとつの特徴。画面右側に表示された「ソルゲージ」が上昇すると、「フォーメーション」による攻撃で消費する「SP」というエネルギーの最大値が増えたり、特定のコマンド入力で照射される「コマンドショット」が解禁されるといった強化が図られるのだ。
ゲージの上昇は敵を倒すなどして出現した「ソルメダル」を集めるたびに行われる。「ソルメダル」は「フォーメーション」を駆使しながら敵を連続して倒したり、特殊かつ強い敵を倒すと上昇値の大きな「金のソルメダル」へと変化するので、積極的に攻めるほどプレイヤー側に有利に働く。
要は先制攻撃こそ正義。そんな戦術の推奨を匂わす設計が図られているのも、このシステムの見所となっている。
他にも「ソルゲージ」の強化は次のステージへと引き継がれなかったり、3機合体時には「シールド」によるダメージ制が加わるなどの特徴があるのだが、さすがにこれ以上語ると本題に入れなくなるので割愛する。
御覧の通りだが、本作はシューティングゲームとしてはけっこうシステム面が入り組んでいる。それでも根っ子は「撃って避ける」というジャンルの王道に忠実なシューティングゲーム。その動きに徹するだけでも問題なく遊べる直感的な設計だ。だが、システムが豊富であるゆえ、それぞれを理解し、極めることによって戦術の幅が広がる奥の深さがある。
そこがまさに本作をプラチナゲームズの新作だと豪語できる所以。上達していく過程が分かりやすく、楽しくて癖になる作りになっているのだ。
直感的に遊べて、腕を磨こうと思えば相応に世界が広がるプラチナゲームズらしいバランス調整
特にその魅力が際立って描かれているのが難易度だ。本作のメインモード「アーケードモード」には全5種類の難易度が用意され、自由に選べるようになっている。
だが、簡単な部類に入る「イージー」、「ベリーイージー」共に割と手ごわめ。
「あぁ……またそれか。」と、プラチナゲームズのゲームをいくつか遊んだことのある人なら、苦笑い必至かもしれない。同時にそのような調整ゆえにこそ、各種システムを理解し、極めた後の変化が分かりやすく伝わってくる。これもらしいと言えばらしいが、本作は基本「撃って避ける」の遊びに徹するだけでも楽しめる王道にして伝統的なシューティングゲームの枠組みを厳守しつつ、その醍醐味へと近づきながら、徐々に感じ取れる作りになっているのが面白い。
まさに取っつきやすさの裏に奥深さありというゲームデザインが完成されているのだ。
とりわけ通常難易度「ノーマル」は、そのゲームデザインと調整の醍醐味が凝縮されている。
最初こそ「撃って避ける」の基本に沿って、ステージ攻略を進めていけるようにはなっている。だが、それが通用するのは序盤まで。以降は「フォーメーション」や「先頭の切り替え」などのシステムの応用が試される場面が連続。基本動作に留まらず、「積極的に個々のシステムを駆使して壁を乗り越えろ」と促す展開が繰り返されていくのである。
それと共に今まで見落としていたテクニックに気付かされるなどの発見が起こり、自らのプレイスタイルにも変化が現れ始める。今までの「撃って避ける」動作に徹するのではなく、「フォーメーション」も用いての積極的な攻めを心がけるようになったり、その隊列を作るに当たって発生する「スローモーション」を弾幕回避や、硬い敵に対する一点集中攻撃に転用するなど、本作のシステム特有の戦い方が定着するのである。
併せて本編を最初からやり直してみたくなり、いざ実践してみたら初プレイの時よりも「ソルゲージ」を早々と伸ばして攻撃的な立ち回りができたり、じっくり向き合ったボスの瞬殺を達成するという上達の証が現れる。
このようなバランスが全体で徹底されていて、売り文句通りの「やり込む度に奥深さが増していく」過程が確立されているのである。そして、その手応えは紛れもなくプラチナゲームズのタイトルお馴染みのものにして十八番。縦スクロールシューティングという王道にして伝統的なゲームでも、腕を磨けば磨くほどに己の輝きが増していく面白さと快感は健在なのである。
筆者は『ベヨネッタ』を始め、プラチナゲームズのタイトルをほぼ触れてきた中、そんなバランス調整が持ち味という印象を抱いていたので、このようなゲームにおいてもそれが実現されているのか、気になって初回から「ノーマル」で挑んだ。
その疑問に対する答えはあまりに明瞭で、間違いなく本作もその手応えがあった。極め甲斐があり、今まで得た経験と知識を総動員して最初からやり直してみたくなってしまう面白さ。ちゃんとこのゲームでも確立されていたのだ。
むしろ、本作は1周あたりに要する時間がやや短めに設定されている(ノーマルでも順調に行けば1時間半~2時間ほど)ので、このゲームバランスの魅力を堪能しやすくなっている。さらに一度クリアしたステージは後から自由にやり直せるので、現在の経験と知識を元にどれほど効率的な攻略ができるようになったかも試しやすい。
何より、それなりに慣れが求められるシステムと、それに付随する戦術的な要素で、これほど噛めば噛むほどに味の増すゲームプレイを実現させているのには「こういうアプローチもあるのか」という面白さがある。
「撃って避ける」に徹するだけだと厳しいところには、『テラクレスタ』や『テラクレスタII』に象徴される王道の縦スクロール型シューティングゲームとの認識を持って挑んだ時ほど「これじゃない」という違和感を覚えるかもしれない。
実際、本当にただ襲い来る敵を迎え撃ち、弾を避けることに徹するのは相当厳しい。だが、そういった王道のシューティングゲームにプラチナゲームズ製アクションゲームの要素をプラスした作品と思って挑めばギャップも少なく、納得感が得られるだろう。
とにかくこのシューティングゲームであり、アクションゲームのような手応えは本作特有のものといっても不思議ではないほど。難易度「ノーマル」であれば、この魅力はストレートに感じ取れるので、それなりに腕前のある方に留まらず、難易度調整の真髄を確かめたい人はこちらに挑んでみていただきたいところだ。
一通りプレイし終えた時、「間違いなくこれはプラチナゲームズの新作だ」という確かな手応えと納得感を得ているはずだ。
「ドラマティックモード」は「アーケードモード」を終えてからをお薦めしたい
なお、前述の見所は全て通常版にて遊べる「アーケードモード」のことになる。もうひとつ、ダウンロードコンテンツ購入で解禁される「ドラマティックモード」は、「アーケードモード」とはひと味異なる面白さと濃ゆい見所がある。
最も象徴的なのは全編、ステージ攻略中であろうがフルボイスで語られるストーリーだ。「こんなに喋るの!?」と驚くほど、ゲームプレイ中にキャラクターたちが会話を繰り広げては、太陽奪還に至るまでの敵の軍勢との激闘が紡がれていく。
また「アーケードモード」にて意味深なままに終わった演出の真実が語られるのも見所である。「アーケードモード」では節々に意味深なイベントや演出が挿入されるのだが、特に台詞による語りもなく描かれるため、最後までクリアしても「あれは一体、何だったんだ?」との疑問が残ったまま幕引きになってしまう。
ステージごとの最後に登場するボスにもライバルのような戦闘機が何度か立ちはだかったり、倒したはずのボスが再度登場するといった疑問を抱かせる存在が数体いる。
結局、一連の事柄が示すものは何なのか?その答えの全てが「ドラマティックモード」に隠されているのだ。そのため、先に「アーケードモード」をクリアした上で遊ぶと、節々で「そうだったのか!」という発見がたくさんあるので、終始ワクワクしながら楽しめる。
とは言え、ストーリーがある作りでゲームを遊びたい、というならば「ドラマティックモード」から始めてもいいかもしれないが、筆者個人の意見としてはまず最初に「アーケードモード」だ。そこでたくさんの疑問を植え付けられてから遊べば、(推定)3割増しでストーリー展開でワクワクできる。ぜひ、騙されたと思ってやってみてほしい。
そのストーリーの内容も濃い。特にステージ5以降からは『ムーンクレスタ』、『テラクレスタ』などの過去のシリーズを遊んだ経験のある人ならばビックリしてしまう展開が連続する。
この展開自体は「アーケードモード」でも確かめられるのだが、本当に知っているほど衝撃的である。同時に「なぜこんなことに?」との疑問も湧くが、それも「ドラマティックモード」にてきちんと語られる。理由付けも自然で、過去作も絡めた一連のストーリーを思えばいろんな意味で「残酷……」と感じてしまうかもしれない。
ライバルと思しき戦闘機との対決、主人公とヒロインの隠された過去など、どこか往年のSFロボットアニメが脳裏を過ぎる展開の数々も必見。驚くほど直球の王道展開で攻めてくる。特に終盤はまさにアニメの最終回そのものとしか思えない熱い展開目白押しになっているので、一瞬たりともお見逃しなくである。
これらに限らず「ドラマティックモード」では、「アーケードモード」とはステージ構成とボリュームに大きな差異があるのも特徴。どこのステージかは伏せるが、一部は「アーケードモード」とは完全に別物になっていたりする。
難易度も5種類選べた「アーケードモード」と違い、「イージー」と「ノーマル」の2種類で、ストーリーだけを楽しむか、ゲーム側込みで楽しむかと、明確に遊び方の方針を打ち出しているのも面白いところだ。
ところどころで盛りすぎたことによる反動が出てしまっているのが惜しい
とは言え、若干気になる箇所もある。ひとつにステージ構成の差異だが、返ってテンポの悪化を招いている。特に終盤のステージは長いあまり、全体的な難易度が過剰に上がってしまっている場面がいくつかあるのは気になってしまった。
一部、ストーリーの演出の都合で待たされる場面もあるのだが、そこで敵が出てきたり、対峙しているボスが攻撃を繰り出してくるのも少々やり過ぎなきらいがある。できれば、演出は演出として見せる方向に徹してくれればように思ってしまったのだが、おかげでそれぞれが印象深いものになっていたりもするので難しい。
しかし、ひとつだけ言うならば、ゲームオーバーになるとタイトル画面へと戻されてしまう仕様は制限時間内、かつクレジットが残っていれば途中コンティニューができるという仕組みにしてほしかったように思う。
これは「アーケードモード」もそうなのだが、タイトル画面にある「CREDIT」がカウントされるのが演出的な意味合いしかないのが勿体なく感じる。何かこれをゲーム側でも生かしてくれれば……と思ってしまったところである。
他にプレイしていて気になった点は「フォーメーション」の隊列作りの癖、全体的に盛り過ぎな最終ステージだろうか。隊列作りは少し判定がシビアな反動なのか、自分が作りたいものと、実際に出来上がるものとでズレが生じやすい。
慣れてくると、一定の順序で方向キー(コントロールスティック)を動かせば指定した隊列にできるのが分かって、ある程度スムーズに行えるようになっていくが、それでも気持ちズレてしまうことがあるのがもどかしい。微妙な所ではあるが、もう少し緩ければ……。
また最終ステージは、さすがに盛りすぎと言わざるを得ない。これからプレイされる方も考慮して詳細は伏せさせていただくが、一番最後のアレに関しては「フォーメーション」使用時のスローモーションを使うのが推奨されるとは言え、もう少し難易度を下げてよかったように思える。
また、そこで失敗すればステージの最初からやり直しになるのも非常にしんどい。前述でも触れたが、途中コンティニューの仕組みがあれば少し緩和できると思うだけに、入れてほしかった次第である。
それ以外でシューティングゲームの遊びやすさに直結する視認性については、あくまでも筆者個人の印象になるが、隕石の着弾地点(照準の表示)が若干見落としやすいように思えた。通常の敵弾、ミサイルなどについては特にそのような印象はなかった。個人差があるため、もしかしたら人によっては見えにくいと感じるかもしれないが、概ね許容範囲には収まっているように思える。
ただ、昨今の弾幕系のシューティングゲームとは方向性が異なるためか、自機の当たり判定はやや大きめに設定されているので、ここで意見が分かれるかもしれない。ひとまず、接触ギリギリの所だと接触判定にされる点はよく覚えておいた方がいいかもしれない。
また、幾つか不具合(PC版だとゲーム開始前から勝手に実績が習得されてしまうなど)も存在するのだが、これについては今後、アップデートによる改善が図られるとのことなので、配信の時を待つ限りである。
よく見るとあのゲームが脳裏を過ぎる要素も……?全編見所満載の力作
いろいろ取り上げてしまったが、本作の独自のシステムや要素が放つ魅力の輝きを損ねるほどではなく、総じて水準以上の完成度を誇るゲームに仕上げられている。また、先のストーリーも含め、本作はところどころに大量の小ネタが仕込まれている。
中でも印象的なのはオープニングムービー。『ムーンクレスタ』、『テラクレスタ』といったシリーズのストーリーが実際のゲーム動画とのセットで語られる場面は直撃世代ほどニヤリとしてしまうだろう。
また、ストーリー的には『ムーンクレスタ』、『テラクレスタ』、『テラクレスタII』の続きで『テラクレスタ3D』は対象外……と思いきや、「ドラマティックモード」の意外なところにそのネタが仕込まれている。これも詳細は本編にてだが、「なるほど!」と思ってしまうはず。
そして、プラチナゲームズ及び本作の総監督を務められている神谷英樹氏の過去作にちなんだネタも随所にある。自分で隊列を作り、「フォーメーション」による攻撃を繰り出す過程は、操作スタイル込みで『The Wonrderful 101』のオマージュになっている。
「ドラマティックモード」にて登場するキャラクターのひとりで「スサノオ」のパイロット「ドリール」も、その口の減らない台詞の数々が見事に『The Wonrderful 101』のワンダ・グリーンと被っていて、経験者ならば「親戚か?」と思ってしまうかもしれない。(ちなみに公式ブログの情報によれば、シナリオ担当の癖と専らの噂とのこと)
さらにスローモーション中に集中攻撃を仕掛けたり、敵弾を避けるという過程は『ビューティフルジョー』の「スロー」が脳裏を過ぎる。残念ながら放ったショットが巨大化して強くなるとか、敵弾に接触しても絶対回避が発動するようなものはないが、これも経験者ならば懐かしい気持ちにさせられるかもしれない。
そして極め付けが戦闘機3機の名称、「アマテラス」、「スサノオ」、「ツクヨミ」である。何を指しているのか、もう概ねご想像の通りなので、詳細は割愛する。
そんな小ネタも盛りたくさんに加え、音楽も当時のアーケードゲームを意識したFM音源調の楽曲が中心で作曲は古代祐三氏、グラフィックも今風の3DCGでありながら、粗さを際立たせた90年代後期のゲームを彷彿とさせる“ローポリゴン”風な作りが大変印象的だ。
システム面の豊富さと、その応用が試される構成から、直感的に楽しめるアーケード風シューティングゲームを求めると「これは違う」という印象を抱くかもしれない。
何度も再挑戦を繰り返しつつ、己の腕前を磨き上げていくのは、どちらかというとアクションゲームに近いため、その種のゲームが好きな人ほど本作が目指した方向性は刺さるかもしれない。もちろん、プラチナゲームズ特有の遊び応えのあるゲームが好きな人も楽しめる可能性は高いだろう。
賛否分かれるかもしれないが、ひとつだけ言えるのは遊び応えは本物であるということ。そして、システムを理解するたびに面白さと輝きが増していく非常にプラチナゲームズらしいシューティングゲームになっていること。
この一連の特徴に興味を抱いたのなら、迷わず飛び込んでみていただきたい。見た目は懐かしくも、やり込み甲斐と奥深さは現代のゲームらしさ全開。輝きと尖り具合の際立った力作に全力でぶつかってみよう。
また、本作の前身である『ムーンクレスタ』、『テラクレスタ』の2作は「アーケードアーカイブス」にてオリジナルのアーケード版がNintendo Switch、PlayStation 4などの現行のゲーム機向けに発売中だ。
本作を一通り終えた後から遊ぶことで、作中のさまざまなネタの詳細が分かったり、逆に先に遊んでもニヤリとできる体験が得られるので、興味があればぜひお試しを。ゲーム本編も合体システムの独自性と、それに関連したスリルは今なお色褪せない魅力に溢れているので、じっくり味わってみてほしい。