ローグライクというジャンルにのめり込む最初のカギは、刹那的な「無双」にあると思う。
何も知らない新しいゲームを初めて触ったときの、手探りの感触は好ましい。何が強いのか、何が定石なのか、知らないからこそすべてが新鮮に味わえる。そしてその中で、偶然手にした「強い」ものの魅力は果てしない。つい先ほどまでの強敵をたやすく蹴散らせるようになる圧倒的な力は、プレイヤーを虜にしてしまう。
そして慢心がたたってあっさりと敗北し、やっとの思いで手に入れた強さを無残に失い、後に残るのは深い後悔のみ。『Dead Cells』でも『Slay the Spire』でも、そういった経験を何度となく繰り返してきた。だが、ひとたび手にした力は心に深く刻まれる。
あの「無双」をもう一度味わいたい、今度はもっとうまくやれる、そんな想いが我々プレイヤーにリトライのボタンを押させてくれるのだ。
今回ご紹介する『トライゴン: 宇宙の物語』(以下、トライゴン)は、宇宙を舞台にしたローグライク作品だ。本作の最たる魅力は宇宙船を指揮して戦う戦闘と、そこで実感できる成長の実感にある。時間をかけて強化し、優秀な乗組員を集めた自分の艦には、いつしか愛情にも近い形の満足を覚えるようになっていく。
もちろん、その満足感ゆえに失ってしまったときの悔しさも計り知れない。だが、ゲームの基礎部分である戦闘が楽しいからこそ、ついつい何度もやり直したくなる。そんな成長と喪失のサイクルが生み出す、ローグライク作品らしい中毒性を持った『トライゴン』の魅力を、本稿では紹介していきたい。
※この記事は『トライゴン: 宇宙の物語』の魅力をもっと知ってもらいたいGameForgeさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
船を強化し、クルーを配置して過酷な宇宙の旅に挑む
『トライゴン』は、簡単に言えば自分の宇宙船を指揮して戦い、チャプターごとに用意されたエンディングを目指す、というゲームである。上述の通りローグライク作品のため、旅するマップやサブイベント、登場するクルー、入手できるアイテムなどはゲームを始めるたびに変化する。
自分の艦の耐久度がなくなるか、キャプテンが死んでしまうとゲームオーバー。すべてのクルーや進行度を失い、ゼロからリスタートとなってしまう。油断すると一瞬ですべてが無に帰すという、これ以上ない緊張感が味わえる。
ゲーム開始当初は使える武器も少なければ回避性能も低く、敵の攻撃を防ぐ「シールド」も貧弱だ。強化に使う資源やお金を集め、少しづつ性能を強化していく。ただし、主要な機能は船のエネルギーに依存するため、コストを無視して考えなしに強化しても戦力の増強にはつながらない。
艦の中は部屋ごとに区分けされており、その内のいくつかに機能を有した設備が備えられているといった具合だ。リソースを投資する以外にも、部屋にクルーを配置することで機能を強化できる設備もある。シールドのリチャージ速度や武器のリロード速度のボーナスは非常に重要なので、優先的に人員を用意すると良いだろう。
ゲーム中では1日ごとに食料や燃料を消費し、マス目のような形で表現された宇宙を旅する。訪れたマスごとにランダムでイベントや戦闘が発生するほか、「宇宙ステーション」ではお金を消費して船の修理や強化を行ったり、新たなクルーを雇うこともできる。
一部のマスは「ブラックホール」や「小惑星帯」などになっており、ブラックホールならば次の移動に燃料を余分に消費する、小惑星帯ではランダムでぶつかった隕石によって船が損傷する、などのトラブルに見舞われる。マップからあらかじめ確認できるため、移動の際には気をつけよう。
特に、船内に火災を巻き起こす「太陽風」は非常に危険だ。襲撃を受けた戦闘中でもお構いなしに火をつけていくので、通常ならば大したことない相手でも苦戦を強いられることになる。なお、敵艦もこういった環境の影響を受けるので、ときには宇宙に救われる場面もある……かもしれない。
こうした中で資金や資源をやりくりしつつ、戦闘を経て船やクルーを強化し、メインクエストの目標を達成していくのが『トライゴン』の基礎部分だ。ここからは、いよいよ本作のメインコンテンツとも言える宇宙船同士の戦闘を紹介していこう。
武器種の特性を生かし、的確に火力を集める宇宙戦
さて、繰り返してきたように本作における「戦闘」はゲームの根幹をなす要素だ。このためにイベントをこなし、リソースを集め、乗組員を雇っていると言って過言ではない。
戦闘は艦に備えられた武装ごとにターゲットを指示する形を取る。この砲はここを、その砲はこちらを、といちいち命令を出しても良いし、継続して攻撃するようセットすれば、次の指令を与えるまでは同じ部位を狙い続けてくれる。強化していくことで並行して運用できる武装の数が増えていく、といった形だ。
自分の艦も敵の艦も、ブロックごとに機能を有している点は変わらない。武器管制室に打撃を与えれば敵の攻撃の勢いを緩めることができるし、シールド発生器を機能不全に陥らせれば立て続けに大ダメージを与えられるようになる。相手の手足をもぎ取り、戦略的に優勢を確保しよう。
戦闘が優位に進んでいくと敵は逃げようとするので、ブリッジやハイパードライブに砲火を集めて足を止め、きっちり始末して資金に変えてやろう。相手のキャプテンを倒すことでも勝利となるので、執拗に狙い続けてやるのも良い。
武装のカテゴリの使い分けも重要だ。「EMP」系の攻撃ならば破壊せずともブロックの機能を停止させることができ、「ロケット」や「爆弾」は弾頭をあらかじめ用意しておく必要があるものの、敵のシールドを無視してダメージを与えることができる。
それぞれに「火災」や「スタン」などを引き起こす確率も明記されているので、リロード時間や必要エネルギー、もちろん単純な攻撃力なども考慮して武装の構成を決めていく。高レアリティの強力な装備が集まれば、立ちふさがるものを次から次へとなぎ倒す無双プレイも夢ではない。
船の機能を拡張し「ドローン」を運用すれば、オートで敵艦を攻撃させたり、自艦の火災の対応をさせることも可能。ひとつひとつの武器の命中率はそれほど高くないので、何よりも手数を増やすことが火力を生み出す。火力が高まれば敵艦の機能を妨げやすくなり、結果として被弾を減らすことにも繋がるといった具合だ。
EMPで敵の攻撃機能を麻痺させ、プラズマ砲でコンスタントに痛めつけつつ、敵のキャプテンが居すわるブリッジにロケットを撃ちこむ……など、プランを組み立てて戦闘を組み立てていくプレイが、まさに「指揮官」になったような気分を味わわせてくれる本作最大の魅力だろう。
もちろんプラン通りに進むばかりではないが、的確に目標を定めて手ごわい敵を撃ち果たしたときの達成感はたまらない。
最初のうちこそ、やれることの多さに戸惑ってしまうことも少なくないが、自動化できる部分を理解していくにつれて思い通りの戦闘を紡ぎあげることができるようになる。十分に強化を行った船はプレイヤーの無二の相棒となり、かけた手間にしっかりと応えてくれる。
また、プレイ中はいつでもスペースキーで「一時停止」ができるので、変わりゆく戦況に目が追い付かなくなったら迷わず一旦止めてしまい、落ち着いて状況を判断しよう。マルチタスクが得意で指揮能力に自信がある、という方は「鉄人」モードを選択すれば一時停止機能は無効となり、よりハイレベルな戦いに身を投じることも可能だ。
船のすべてを操るような戦闘は「自分がコントロールしている」という実感が強く、とにかく戦っていて楽しい。ゲームの根幹を担うだけあって、緊張感と爽快感をほどよくミックスして味わわせてくれるバランスに仕上げられていると感じた。
クルーの特性を活用して指揮を執り、ときには船内戦闘に挑むことも
さて、もちろん敵を狙うだけが艦長の仕事ではない。メンバーを指揮し、彼らの能力を存分に活用しなくては、『トライゴン』の残酷な宇宙空間で生き延びていくのは難しい。
まず、クルーには「エンジニア」や「戦士」といった役職が用意されている。「シールド」や「ハイパードライブ」などを専門に扱う人員は、名前の通りのブロックに配置することで高いボーナスを与えてくれるので、優先的に送り込もう。
くわえて種族によっても特性がいささか異なり、特にユニークなのは「ターティコン」。彼らは食べ物を必要とせず、酸素が無くても活動を続けられるので、空気漏れの対処などは得意分野だ。しかし総じて打たれ弱く、白兵戦での攻撃手段を持たないため、ターティコンばかりでメンバーを構成するのはややリスキーな面もある。
戦闘やアクティビティを経ることでクルーたちは育っていき、レベルが上がるごとにスキルをひとつ選択して身につけられる。低レベルではHPや移動速度の上昇といった基礎的なバフを得るものが多いが、高レベルまでたどり着くと「敵艦の逃走を阻止」、「船全体のエネルギーを増加」など強力な効果を持つスキルを習得。徐々に激しくなる戦いに欠かせない仲間に育っていく。
基本的には配置された部屋で職務にあたり、そこで火災や空気漏れなどのトラブルが起これば自動で対応してくれる。逆に隣りの部屋で大惨事が発生していても自分から動くことはなく、都度命令を出さなくてはならない。
ブロック間の移動はいつでもできるので、艦内で火災が起これば数人で集まって消火作業にあたらせ、傷ついたクルーから順に回復ルームへ移動させる、といった運用が理想的だ。彼らの忠誠心は恐ろしいほどに高く、命令を出さなければ死ぬまで仕事を続ける。HPには常に気を配り、余裕をもって回復させてあげよう。
通常時は落ち着いて指示を出せるので、よほどのことがなければみすみす死なせてしまうことは少ない。しかし、戦闘となれば話は別である。シールドを貫通した射撃は船体にはもちろん、着弾地点にいたクルーにもダメージを与える。時には火災や空気漏れも誘発するため、気づかずにいるとあっという間に手遅れになるパターンも少なくない。
そして特に注意しなくてはならないのが、直接兵士が乗り込んでくる「テレポーター」を備えた敵艦だ。船内から攻撃を仕掛けてくるのでシールドも機能せず、クルーを集めて立ち向かうしかない。最悪、キャプテンが直接殺されてしまう事態にも発展する。
白兵戦も船同士の戦闘と並行してリアルタイムで進行し、最初にぶつかったクルーが近接戦を、それ以降に参戦したクルーが遠距離戦を行う。非戦闘員が鉢合わせてしまったら、早々にほかの部屋に逃がして人員を集めた方が良い。ちなみに、各クルーの戦闘力はステータス画面から確認できる。
基本的にはHPに余裕があるクルーに近接戦闘を任せ、数人で支援。傷ついてきたら近接役を交代する、といった手順が無難だ。「戦士」の役職を持った乗組員は肉弾戦に強いのでメンバーにいれば積極的にぶつけ、ほかのクルーの負担を減らしてあげよう。
なお、このテレポーター戦術は自分の艦でも採用できる。上述の通り敵のキャプテンを倒せば戦闘勝利となり、さらに報酬も船ごと倒した場合より多くなる。武装したチームで乗り込んで内側からケリをつけてしまう、海賊風のスタイルで戦い抜いてみるのも面白いかもしれない。
進むにつれ「負けたくない」の感情も大きくなり、緊張が加速する
『トライゴン』は、その忙しい戦闘が何よりの魅力となる作品だ。自艦の装備をフル活用し、クルーたちを効率的に配置し、敵艦に的確なダメージを与えていく。命中や回避は確率に依存するため運に依存する面も決して少なくはないが、鍛えた装備やクルーたちはそれほど極端に裏切ることはない。
さまざまなイベントやクエストを経ることで、その戦闘をより優位に、より多彩に楽しむことができるようになる。ドローンやテレポーターなどの機能解放はその最たる例だと言える。ゲームに慣れないうちからこれらの機能まで使いこなすのは厳しい面もあるため、徐々に慣らしていく形になっているのはむしろありがたく感じた。
コツをつかめば徐々にプレイのスピード感も上がっていくし、ゲーム内で条件を満たせば新たな船を使うこともできる。ちなみに、ゲーム開始当初から遊べるクリエイティブモードではすべての船が最初から解放されている。プレイが思うようにいかなかった際には、こちらで気分を変えてみるのも良いかもしれない。
そして、戦闘のたびに実感できる自艦の成長がプレイヤーにキャプテンとしての船への愛着を沸かせていく。同時にローグライクというゲーム性につきものの「喪失」を脳裏にちらつかせ、ゲームを進めれば進めるほど緊張感は高まりを見せる。
性能による「無双」が楽しめる時間もあれば、その圧倒的な力を瞬く間に失う瞬間もあり、その万能感と悔しさのギャップがついつい繰り返してプレイしてしまう中毒性を生み出していた。
数ある兵装やクルーたちを巧みに使えるようになるには少し時間もかかるかもしれないが、チュートリアルや一時停止機能など、このような作品に不慣れな人でも楽しめるための工夫もしっかりと行われている。ローグライクゲームが好きな方はもちろん、あまり経験がないという方にとって本作が「深み」にハマるきっかけになれば幸いだ。