2022年5月23日(月)、『アトリエ』シリーズが25周年を迎える。
記念すべきシリーズ最初の作品は、1997年5月23日に発売された『マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~』だ。従来のファンタジーRPGで流行していた「世界を救う」などといった大仰なテーマを避け、異世界の日常的な部分に焦点をあてた作品として知られる。キャラクターデザインは桜瀬琥姫氏が担当した。
ストーリーやゲームの本流はタイトルの通り「錬金術士」としての成長を目指すことにあり、主となるのは「調合」の部分となっている。くわえて錬金術士は戦闘には適さず、危険な地域に錬金術の材料となるアイテムを採取に向かう際には冒険者を雇うことが必要となる。
本作ではプレイヤーは主人公「マリー」となり、王立魔術学校を無事に卒業するため、5年間という限られた時間のうちに課題を達成することを目指して奮闘する。マルチエンディング制が採用されており、グッドエンディングにたどり着くためには定められた期間内に条件を満たさなくてはならない。この日数システムは後のシリーズ作品にも数多く取り入れられている。
「ザールブルグ」シリーズとしてはこの後、1998年12月17日に『エリーのアトリエ 〜ザールブルグの錬金術士2〜』、2001年6月21日に『リリーのアトリエ 〜ザールブルグの錬金術士3〜』(以下、リリーのアトリエ)が発売されている。シリーズを追うごとにグラフィックが進化していったことはもちろん、より複雑な調合システムや恋愛要素が取り入れられていった。
2002年6月27日、『ユーディーのアトリエ 〜グラムナートの錬金術士〜』が発売。シリーズ名こそ変化したものの「ザールブルグ」シリーズと世界設定を共有し、同シリーズに登場したキャラクターがゲスト出演している場面もある。こちらはキャラクターデザインを双羽純氏が担当した。
調合面ではアイテムに「品質」の概念が追加。素材に用いたアイテムの品質や特性が完成品に受け継がれるため、これらを把握したうえで調合を行わなくてはならない。また生ものが時間の経過により腐ったり、爆弾も雨に濡れれば湿って使えなくなったりと劣化の要素も取り入れられている。なお期限システムを採用しておらず、当時としては例外的な作品である。
2003年6月26日には続編にあたる『ヴィオラートのアトリエ 〜グラムナートの錬金術士2〜』が発売。こちらは期限の概念が復活しており、エンディングも満たした条件によって分岐する。また従来の冒険者レベルと錬金レベルにくわえ、自らの店の販売スペースが増えていく「店レベル」という成長項目が用意された。
続いて2004年5月27日に発売されたのが『イリスのアトリエ エターナルマナ』が発売。本作はRPG的な面を重視しており、メインシナリオは一本道になり、調合のやり込み要素も濃度を抑えたものとなった。また、シリーズで初めて男性が主人公になった作品でもある。
特に戦闘面は大きく変化し、それぞれの行動に「ターン消費」と、コマンドを選択してから動くまでの時間差を示す「行動のタイプ」が設定されている。ターン制をベースとしつつもアクションによって行動回数が大きく変化するため、タイミングを考えて戦闘を組み立てていかなくてはならない。
2005年5月26日には男女ふたりのプレイヤーキャラクターを交互に切り替えながらストーリーを進めていく『イリスのアトリエ エターナルマナ2』、また2006年6月29日には『イリスのアトリエ グランファンタズム』が発売された。
シリーズを改め、2007年6月21日に発売されたのが『マナケミア 〜学園の錬金術士たち〜』だ。タイトルに「アトリエ」の文字を冠していない、また過去作品とのストーリー上のつながりも薄いなど、シリーズに新しい風を吹き込む作品として制作されている。こちらのキャラクターデザインは芳住和之氏が担当した。
「学園」の名の通り、プレイヤーは「アルレビス学園」の生徒となり、課題をこなし単位を修得して卒業を目指す。学期の後半には自由時間も用意されており、討伐や調達などのアルバイトクエストに挑戦したり、仲間たちのサイドストーリーを楽しむことが可能だ。
2008年5月29日には、続編にあたる『マナケミア2 〜おちた学園と錬金術士たち〜』が発売。前作から10数年後の「アルレビス学園」を描き、一部キャラクターも登場、基本的なゲームシステムの面でも継承した部分が多い。
2009年6月25日、「アーランド」シリーズ最初の作品となる『ロロナのアトリエ 〜アーランドの錬金術士〜』(以下、ロロナのアトリエ)が発売。キャラクターデザインをイラストレーターの岸田メル氏が担当し、シリーズで初めてフィールド上のキャラクターの描画に3Dを用いた作品でもある。
アトリエを経営しつつ期限内に課題を達成するというゲームプレイが軸となり、本作の「課題」には国から出される「王国依頼」が相当する。プレイヤーは3年にわたって課題をこなしてアトリエの閉鎖を食い止めつつ、町の人々からの依頼にも応えアトリエの評判を向上させていく。
戦闘面ではシンボルエンカウント方式が採用され、最大3人のパーティによるターン制バトルとなった。MPといった要素が存在せず、スキルを使用する際にはHPを消費する形式をとる。なお、後に発売された3DS版などではフィールド上のキャラモデリングや戦闘システムなどに変更がくわえられている。
2010年6月24日には、『トトリのアトリエ 〜アーランドの錬金術士2〜』が発売。前作の終了時から5年後の世界を舞台としており、前作主人公の「ロロナ」は師匠役として登場する。
初期の『ロロナのアトリエ』と比較して3Dモデルがもとのデザインに忠実なものとなり、よりキャラクターの魅力をゲーム内で引き立たせることに成功している。調合システムでは、材料から製作アイテムへ引き継がれる特性を任意に選ぶことが可能となった。
続く2011年6月23日、『メルルのアトリエ 〜アーランドの錬金術士3〜』が発売。主人公の「メルル」が辺境の小国「アールズ王国」の姫という設定から、ゲームプレイでも王国を発展させることが主要な目的となっている。
発展の様子は「開拓ポイント」と「王国ランク」で示されており、これらが高まれば人工も増加するといった形だ。ポイントを稼ぐための課題がつど用意され、探索や戦闘、調合を行ってこれらを達成しポイントを集め、施設を建設するなどして王国を大きく育て上げていく。
大きく時間は空くが、2019年3月20日には「アーランド」シリーズの最新作にあたる『ルルアのアトリエ 〜アーランドの錬金術士4〜』が発売されている。「ロロナ」の娘にあたる「ルルア」が主人公となり、シリーズ作品の歴代主人公たちも登場。かつて旅したロケーションをルルアの視点で旅するシーンもあり、より現代的になったシステムのもと「アーランド」の世界を堪能できる。
次なるシリーズが、2012年6月28日発売の『アーシャのアトリエ 〜黄昏の大地の錬金術士〜』(以下、アーシャのアトリエ)から始まる「黄昏」シリーズだ。本作は、開発元であるガストがコーエーテクモホールディングスの傘下に入ってから初めて制作された『アトリエ』シリーズ作品にもあたる。キャラクターデザインはイラストレーターの「左」氏が担当した。
タイトルの通り、舞台となるのは滅びを迎えつつある「黄昏」の大地。日数の要素は残しつつ、ストーリーに関わる短い期間でのクリア目標は廃止された。条件を満たさなければいわゆるグッドエンディングは見られないものの、ただ日々を過ごしていくだけでもエンディングにたどりつくこと自体は可能というデザインだ。
調合システムには、素材を投入する前に実行する「調合スキル」が実装。錬金レベルを向上させることで習得でき、素材選びや投入の順序と組み合わさってアイテムの品質に大きく影響する。
2013年6月27日、「黄昏」シリーズの2作品目にあたる『エスカ&ロジーのアトリエ 〜黄昏の空の錬金術士〜』がリリース。男女ふたりのダブル主人公となり、2014年にはテレビアニメ版も放送された。
調合システムは前作をおおよそ受け継ぎつつも、ある程度のランダム性も取り入れられている。また戦闘面では『アーシャのアトリエ』とは異なり、錬金術士である主人公勢も攻撃スキルを使用できるようになった。
そして2014年7月17日には『シャリーのアトリエ 〜黄昏の海の錬金術士〜』が発売。「黄昏」シリーズの集大成とされ、歴代のパーティメンバーや主人公らも登場。一方、おなじみとなっていた日数制限システムを廃止、難易度調整の実装など挑戦的な部分も見られる作品となっている。
続く「不思議」シリーズは2015年11月19日に発売された『ソフィーのアトリエ 〜不思議な本の錬金術士〜』(以下、ソフィーのアトリエ)に端を発する。本シリーズではキャラクターデザインをゆーげん氏、NOCO氏のふたりが担当した。
本作でも時間制限は存在しないが、昼夜や天候の概念はあり、それによって採取できる素材が変化する場合がある。戦闘面では参加人数が4人に拡大し、全員分のコマンドをあらかじめ選択し、順番に行動するというスタイルを採用。調合はマス目で区切られたパネルにブロックのように材料を入れていく方式となり、錬金に用いる釜自体も強化が可能となっている。
続いて『フィリスのアトリエ 〜不思議な旅の錬金術士〜』(以下、フィリスのアトリエ)が2016年11月2日に発売。当時としてはシリーズ最大のフィールドを誇り、「サブ武器」が装備できるようになるなど、RPG面が大きく強化されている。調合システムは前作から受け継いだものだが、新たに乗り物などを制作する「超弩級調合」が追加された。
「不思議」シリーズの3作品目としては『リディー&スールのアトリエ 〜不思議な絵画の錬金術士〜』が2017年12月21日に発売された。調合システムに「触媒」や「活性化アイテム」といった素材に変化をくわえる要素が追加。配置できるマス目のサイズやマスの色を変更することが可能となり、より自由度の高い調合を楽しむことができる。
2019年1月31日には、シリーズの20周年を記念した『ネルケと伝説の錬金術士たち 〜新たな大地のアトリエ〜』が発売。当時までの歴代作品からさまざまなキャラクターが集結し、プレイヤーは彼らの力を借りながら主人公「ネルケ」の治める村を発展させていく。20周年記念作品ということもあってか、「アトリエ」シリーズのオールスター的な作品と言えるだろう。
また2019年9月26日には『ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜』をはじめとする「秘密」シリーズが始動している。本作ではシナリオを『灼眼のシャナ』で知られるライトノベル作家の高橋弥七郎氏が担当し、キャラクターデザインをトリダモノ氏が手がけた。
調合システムには「マテリアル環」と呼ばれる円の中に各種材料を投入していく「リンケージ」調合。作りたいアイテムの設計図に沿って材料を当てはめればアイテムが完成する仕様で、慣れないプレイヤーも「おまかせ材料投入」でコツを学びながらゲームを進めることが可能だ。
続編の『ライザのアトリエ2 〜失われた伝承と秘密の妖精〜』は2020年12月3日に発売。新たにスキルツリーから主人公「ライザ」の成長を自由に選ぶことができるようになり、自分なりの育成方針を立ててゲームを進めていくことができる。
またマップには数々の「遺跡」が用意され、「追憶の羅針盤」を利用して散らばる手がかりを集め、「探求手帖」にて推理することで遺跡の謎を解いていく。
このほかにも『リーズのアトリエ 〜オルドールの錬金術士〜』などニンテンドーDS向けに開発されたシリーズや、ソーシャルゲーム『アトリエ クエストボード』、オンラインRPG『アトリエオンライン 〜ブレセイルの錬金術士〜』など、数々の外伝的作品が展開されてきた。
2017年に発売されたコーエーテクモゲームスのオールスター作品『無双☆スターズ』にも、『真・三國無双』や『戦国無双』、『仁王』などと並んで『アトリエ』シリーズのキャラクターが登場しており、その高い人気がうかがえる。
記事執筆時点でのシリーズ最新作にあたるのが、「アトリエ」シリーズの25周年を記念し2022年2月24日に発売された「不思議」シリーズのひとつ『ソフィーのアトリエ2 ~不思議な夢の錬金術士~』だ。『ソフィーのアトリエ』と『フィリスのアトリエ』の間の物語を描き、3Dモデルを一新。キャラクターの魅力を大いに引き立てる最新のモデリングを体験できる。
探索から戦闘への移行はシームレスとなり、戦闘システム自体も前衛3人と後衛3人の計6人で行う「マルチリンクターンバトル」へと一新。パーティーメンバー同士がタッグを組んで放つ必殺技「デュアルトリガー」など、数多くのバトル演出も取り入れられている。
「錬金術」を軸としつつも、そのゲーム性を色とりどりに変化させてきた「アトリエ」シリーズ。シリーズごとにデザインやゲームプレイに大きく変革を起こしつつも、その魅力的なキャラクターやシナリオで数多くのファンを魅了してきた。25周年の節目を越えたシリーズの今後にも期待していきたい。