心じゃよッ!
…………………ハッ!? 何かもう記事自体が終わりそうな空気になってましたね。まだまだ終わりません。続いては「功夫編」。3人の弟子を立派な心山拳の伝承者に育て上げろ!
何気にこの功夫編が、ある意味では最もリメイク版のキャストに力を入れたシナリオでもあるのかもしれません。プレイヤーが操作する主人公として、弟子たちの前では偉大な師匠として振る舞う「心山拳老師」は石丸博也氏が担当! おい……本人連れてきちゃったよ……。
そして弟子のユン・ジョウを下野紘氏、サモ・ハッカを水島裕氏……ってこういう後ろからご本人登場パターンって2回やってもいいんですね。
しかしそんな中、私が最も驚いたのがやはりレイ・クウゴ役を担当している上田麗奈氏。まず真っ先に、「意外」という言葉が出た。
上田麗奈氏自身、『SSSS.GRIDMAN』の新条アカネのような魔性の雰囲気を纏った女性や、『プリパラ』の黄木あじみのような奇想天外なキャラクターなど、役柄も演技も幅広い方ではあるのだが……レイ・クウゴのような男勝りで姉御肌な女性を演じている印象はあまりなかった。
なので、「上田麗奈のレイ・クウゴ」と聞いた時に、一体どのような化学反応が起きるのか、私には皆目見当もつかなかった。
これがめちゃくちゃ合ってるんですわ………………
レイ役に上田麗奈を推薦したスクエニの社員には賞与を与えてください。
SFC版の功夫編を遊んだ時も、私はレイ・クウゴを選んでいた。なので、今回のリメイクでは「ユンかサモを選んであげよう」と心に決めていたのに……気が付いたらサモとユンは死んでいました。
ゆ、許さん……! 上田麗奈で私を誘惑して、他のふたりを選ぶ余地を無くした義破門団、許さんッ……!! もしかしたら私は『ライブアライブ』が何度リメイクされようとも、その度に「今度こそユンとサモを心山拳師範にしてあげるんだ」と心に決めて、気が付いたらレイ・クウゴだけを育成しているのかもしれません。
えぇ、きっとそうでしょう。きっと、私は何度でも彼女を選び続けるのです……。
さらに上田麗奈レイ・クウゴのすごいところをひとつ挙げるとすれば、SFC版ではあまり感じなかった、新たな「色気」がこのリメイクによって生まれている。何故なら……上田麗奈氏の声質が、演技が……えっちだからだ。
いや、いやいやいや、決してそういうことを言いたいわけではなくて、「声」という人間が発する音のたった一つに、様々な感情や繊細な心の機微を与えることができるのが「声優」という演者なのだとしたら、「声」そのものに色気を纏わせることができる上田麗奈氏は……素晴らしい声優なのではないだろうか?
それも、元々そんな印象はなかったキャラに、「少し色気がある」という、さらなる奥行きと奥深さを与えられたとしたら……その自然な部分を「声」だけで表現できるのは、凄まじいことなのではないだろうか?
何か猛烈な勢いと舌鋒で読者のみなさまを言いくるめようとしている気がしてきましたが、あなたもリメイク版のレイ・クウゴの声を一度聞いてみれば、少し印象が変わるかもしれません。
リメイク版のキャスティングは、どちらかと言うと「SFC版の時に想像していた通りの声」……オタクの妄想ドンピシャな声優が多いのですが、このレイ・クウゴばっかりは意外なキャスティングで、その上合っていて、SFC版にはなかった新たな魅力を引き出すことにも成功している。
「リメイク版で一番声優が良かったキャラ、どれ?」と聞かれたら、私はアリシアとレイ・クウゴのふたりだと即答すると思います。
ええかげんにしちょけや……
時は幕末……炎魔忍軍の「おぼろ丸」を駆り、ある密命を果たす。今見ると「キャラクターデザイン:青山剛昌」のネームバリューがとんでもないことになっていることでお馴染みの「幕末編」。
こちらも中世編と同じく「HD-2Dによるフィールド表現の進化」を存分に味わえるシナリオとなっています。幕末編の部隊は尾手院王の居城、「尾手城」。風光明媚な日本庭園や月光に照らされる天守閣など、時代設定に合わせた和風フィールドが中々に日本人の遺伝子に刻まれた美的センスを刺激します。
SFC版の時点で「尾手城」というひとつのマップに多種多様なイベントやギミックを仕込んでいるその凝りようは他のシナリオと比べても随一でしたが、今回のリメイクではフィールド表現の進化によって、より没入感がマシマシ。
何気に『オクトパストラベラー』でも『トライアングルストラテジー』でも和風マップはあまり登場していなかったので、HD-2Dで表現された「和のフィールド」にも中々の可能性を感じます。スクエニさん、HD-2D和風RPG、いかがでしょうか?
100人斬りジェノサイドルートに0人斬りの不殺ルート、果ては抜け忍エンドまで。「やり込み要素」にかけては今作随一の幕末編。一応私はSFC版で一度幕末編をクリアしていたのですが……こちらの第3の仲間、「カラクリ丸」の存在は今回のリメイク版で初めて知りました。こ、こんな奴居たんだ……
物理攻撃力・物理防御力・素早さがデフォルトで「99」と驚異のステータスを誇るカラクリ丸。初めて出会えた3人目の仲間ということで私も謎に愛着が湧き、さっそく天草四郎がドロップした「聖者のベール」なんかを装備させてかわいがっていたのですが……。
悲しいかな、カラクリ丸。しょせんその身は機械の肉体。落下したり、水に落ちたりするだけで即座に壊れて永久離脱してしまう。ちなみにカラクリ丸が加入する部屋には地下牢までの落とし穴があり、私はカラクリ丸が加入した3秒後に永久離脱しました。
許さん……許さんぞ義破門団ッ……!
しかし諦めるわけにはいかない。RPGには「セーブ」と「ロード」という機能が存在している。それを生かすも殺すもプレイヤー次第。私は諦めない。私は何度繰り返してもカラクリ丸を天守閣へと連れて行ってみせる……! 私はカラクリ丸と共に日本の夜明けを迎えるんだッ……!
許さん……許さんぞ、義破門団ッ!!
そう、カラクリ丸は何をどうやっても死の運命を回避することなどできない。
椎名まゆりか?
ちなみにこの時のカラクリ丸は装備品ごと自爆するので、私が着せていた聖者のベールは天国のカラクリ丸に持っていかれました。は?
そうだろ、松ッ!!
えっ? SFC版を書いた時とは逆順にするって言ってたのに近未来編をクライマックスに持ってきてるのは同じ……?
「それはそれ」!!
「これはこれ」!!『逆境ナイン』
リメイク版近未来編最大の目玉と言えば、やはりこの「GO!GO!ブリキ大王!!」の完全版(?)オープニングアニメーション! まさかまさかの影山ヒロノブ氏がボーカルを務めたそのゴリゴリのロボットアニメソングっぷりは、見ているこっちが「げ、幻覚……?」と思ってしまうほどの気合の入りっぷり!!
今回の『ライブアライブ』HD-2Dリメイクの最大の売りにして最大の進化、それはやはり「当時のハードの制約上、描き切れなかったであろう演出やエフェクトを最高の状態でお出ししている」という点。
大幅な進化を遂げた中世編と幕末編の、ファンタジック・和風フィールド。より「格闘ゲーム」へと近付いた現代編。ベヒーモスの脱走を立体的に描くことでより恐怖が増したSF編。……そして何よりも、「GO!GO!ブリキ大王!!」を最高の状態で、ブリキ大王そのものが3Dとなって出てきた近未来編。
SFC版『ライブアライブ』の発売当時にプレイして、ある程度脳内で映像を補完していた方には、きっとあの時思い描いた絵が限りなく近い形で演出されている。
いや、もしかしたらそれは過言かもしれないけど、とにかくこのリメイク版「GO!GO!ブリキ大王」はそう思ってしまうような迫力とパワーがある。このゲームはある意味、「もしライブアライブが当時描きたかったであろう完璧な状態で出たとしたら」という、ifの作品でもあるのかもしれない。
近未来編の主人公「アキラ」の声優を赤羽根健治氏、通りすがりのたい焼き屋さん「無法松」は石川英郎氏……っておおい! ダイナミックすぎるやろ!!
実際のところどうなのかは分かりませんが、近未来編自体がかなりロボットアニメエッセンスを取り入れたシナリオなので……ある程度は意識しているような気もします。ちなみに無法松の声優が石川英郎氏になったことで、マタンゴで暴走しながらブリキ大王を動かしている時の「ろれろホゲェ!」と「ポゲラルゴォ~!」は大体ゲッタートマホークと同じニュアンスなのも判明しました。
今回のリメイク版近未来編で新たに気付いたこと……それは、「記憶よりもタロイモがかわいい」ということ。なんか……タロイモってこんなにかわいかったっけ? 上記の画像は特に私がお気に入りの「妙子のパンチじゃねーか!」でタロイモが怯えながら隠れているシーン。めっちゃかわいい……。
SFC版の等身の低いタロイモとの比較ですが……やはり「HD-2D化によりキャラクターの表現の幅が広がった」という点も今回のリメイクの強みかもしれません。いや……そりゃSFC版のあの等身で怯えながら隠れるタロイモとか表現できんわ!
しかも私、今回のリメイク版で初めて近未来編の「アイテム改造」機能を使ったので、ヒヨコ砲でバッタバッタとクルセイダースをなぎ倒すタロイモのその隠された強さにも気付かされた。私以外にリメイクでタロイモのことが好きになった方、居ませんか? 居ますよね? 今度たい焼き食べに行きましょう。
リメイク版で進化した点はまだまだ語り切れない。キャラクターにボイスがついている……という時点である程度は察せるかもしれませんが、もちろん「戦闘中のボイス」もしっかり用意されている。
旋牙連山拳、忍法夢幻蝶……技名を読み上げながらキャラクターが攻撃する熱さも『ライブアライブ』が元々持っていたノリの熱さをさらに引き立てている。そしてもちろん……ブリキ大王もなッ!!
「GO!GO!ブリキ大王!!」をバックに、「ジョムジョム弾!!」「メタル!ヒィィィット!!」という魂の叫びをぶつけるアキラ。特にハロゲンレーザー使用時の「神か、悪魔か!この姿!!」【※1】に関しては、「もうこれを赤羽根健治に言わせたかっただけだろ!!!」としか言いようがない迫力。
さらにブリキ大王の最強の必殺技、「バベルノンキック」には「行くぜ……松ッ!!」というセリフまで追加されており……あぁ……松は……死んだりしねえ……この……ブリキ大王がある限りッ!!
そうだろ、松ッ!!
※1「神か悪魔か、この姿!」
一応補足しておくと、ただのマジンガーパロではなく、どちらかというと島本和彦氏の応募がそのまま採用されたことでお馴染みの「GO!GO!ブリキ大王!!」の2番の歌詞、「神か悪魔かその姿」からの引用の方が正しいと思われます。ただ近未来編の最初のあのシーンも完全にマジンガーだし、それを今赤羽根氏が演じているのも……何かすごい因果を感じます。
※ここから先は「リメイク版『ライブアライブ』」の完全なネタバレが含まれています。もはやこの言い方そのものがネタバレだと感じてしまったら申し訳ない限りなのですが、とにかくSFC版をクリア済みの方も、現在プレイ中の方も、これから買う予定の方も、ここから先には「“““リメイク版”””『ライブアライブ』」のネタバレが含まれているということを重々承知した上で読み進めてください。
「憎しみ」がある限り……いつの世も……
そして最後に待ち受ける「最終編」。魔王オディオとなったオルステッド……いや今回オルステッドは自分の名前にしたから俺がラスボスか……いやいやそんな細かいことはどうでもいい!
とにかくこれまでの時代の主人公全員が集結し、ラスボスの魔王に立ち向かう! 最初に選んだひとりは「主人公」として固定されてしまうものの、残りの3人は誰を選んでもいい!
そしてここまでの良バトル調整を見てきた方にはお分かりかもしれませんが……なんと今回のリメイク版、最終編のアキラがちゃんと強い!!
まぁ『FFX』のキマリとか『ゼノギアス』のリコレベルに絶望的な弱さではないのですが……SFC版では近未来編のあの激熱な流れに触発されて最終編でアキラを連れ歩くと、イメージ系攻撃の威力は低いわ詠唱時間は長いわ耐久低いわ最終的にローキックがメインウェポンになるわで……ブリキ大王に乗り込み戦っていたあのイメージからするとちょっと残念な性能になっていました。
島本和彦氏にすらローキックをイジられていたぐらい、「あっ、思ったより強くない……」というガッカリ感があるところまで含めてまぁ最終編のアキラの美味しい部分ではあったのですが……リメイク版のアキラはちゃんと強い!
そもそもイメージ系攻撃の威力がある程度上昇しているため、先ほど紹介した「敵の弱点」を上手く突くことができれば魔法アタッカーとしてかなり優秀! もちろん物理攻撃も普通に使える! 聖属性イメージの回復に闇属性イメージのデバフ効果、なんでもござれの万能戦士と化しているのが令和のアキラ!!
これは……強いアキラじゃねーか!!
ちなみにアキラが最後に習得する「ホーリーイメージ」のその強さも健在。最終編ラスボスの「ピュアオディオ」にも当たりさえすれば睡眠や攻撃ダウンなどのデバフを大量に付与する超強力なジャマーと化す!
SFC版の時はサンダウンのハリケンショットでぬるっとクリアしてしまったので、今回は心山拳師範・おぼろ丸・キューブ・アキラの4人でラストバトルに挑みました。なので……「アキラのホーリーイメージが当たらなければ負けていたかもしれない」という場面がちょいちょいあったくらいにはラスボス戦でのアキラの重要度が高かったです。SFC版のアキラの微妙な弱さに辛酸を舐めた方、ぜひお試しあれ。
………………………さて、SFC版のラスボス「ピュアオディオ」がぬるっと流された時点でお気付きの方も居よう。今回のHD-2Dリメイク版『ライブアライブ』……なんと「真のラスボス」が存在する。
その名、「Sinオディオ」。
SFC版においてトゥルーエンドを迎えることができる、「7人全員を一度仲間に加え、ピュアオディオの撃破後にオルステッドにトドメを刺さない」という手順を踏むことによって、7体の各時代のオディオとのボスラッシュの後に登場する真のラスボス。「リメイク版に追加要素はありません」って言ってたじゃんかよーッ! 最高!!
最終編のクライマックスは撮影禁止区間となっているため結果的に「正体は君の目で確かめろ」状態になっていますが、Sinオディオは上記の魔王山山頂に置かれていたこの魔王像にかなり近しい見た目をしており、SFC版の発売からおよそ28年間謎に包まれていた「本当の魔王とは一体何者だったのか」についても、ここで決着がついたのやもしれません。
そしてSinオディオ戦最大の見せ場、それが「オルステッドがオディオの肉体から解き放たれ、7人の主人公と並ぶ」あのシーン。プレイしてた時、本当にちょっと泣いてしまいました。
28年の時を経て、「魔王オディオ」だった者がもう一度「オルステッド」へと戻る。28年の時を経て、1人の主人公vs7人の主人公だったあの構図が、「8人の主人公」へと回帰する。28年の時を経て、「魔王を討ち果たす勇者」というオルステッドの本懐が、Sinオディオと対峙する形で果たされる。
勇者だったはずの人間が絶望し、世界を滅ぼす魔王となる「アンチRPG」として語り継がれてきた『ライブアライブ』が、28年越しのリメイクで「勇者が魔王を倒すRPG」として、「憎しみの物語」に終止符を打つ。
もちろん今回のリメイクは『ライブアライブ』を遊んだことがない人にも触って欲しいタイトルだけれど、何よりも「SFC版をクリア」していて、「中世編が好き」な人にこそ遊んで欲しい。救われることのなかったオルステッドが、報われることのなかったオルステッドが、「魔王」のまま倒された勇者が、28年の時を超えて救済される。
私は今回のHD-2D『ライブアライブ』には、正直「過去作HD-2Dリメイクのテストベッドになれば良いよね」くらいの気持ちで臨んでいた。もちろん楽しみではあったけど、まさかここまでとは思っていなかった。原作の美味しい部分は残し、遊びにくいであろう部分は現代に適合させ、変えて欲しくないところはそのままに、最後の最後にちょっと欲しかったオリジナル要素もしっかり抑える。
話は遡って7月22日、リメイク版『ライブアライブ』発売日のビックカメラ。
このサイン会にはとにかく色々な人が集まっていた。実はこのサイン会、「ライブアライブに関連するグッズであればどれでもサインOK」という中々自由なレギュレーションのサイン会で、私のように当日発売されたばかりの新品のパッケージに書いてもらう人、限定版についてきたショルダーバッグに書いてもらう人、なんとSFC版のパッケージに書いてもらう人も。しかも私の前には、おそらくお父さんに連れられて来たであろう小学1~2年生くらいの男の子が列に並んでいた。キミ、将来有望だな!
まさに最終編のように、世代も、時間をも超えた『ライブアライブ』ファンが集ったサイン会。あのサイン会に居た人たちが、次々と時代を超えたSinオディオとの決戦を迎えているのかと思うと、それだけでこっちまで熱くなってくる。
時を超え、世代をも超え語り継がれる伝説のRPG『ライブアライブ』の新生は、伝説の「アンチRPG」であった自らへ、最も素晴らしい形の「叛逆」を行ったRPGとして、これからも末永く語り継がれるであろう……。
スクウェア・エニックスが送るHD-2Dリメイク版『ライブアライブ』は、Nintendo Switchにて好評発売中! それでも……人は生きる!