10月15日は『シュタインズ・ゲート』(STEINS;GATE)がはじめて発売された日だ。
Xbox 360向けに『シュタインズ・ゲート』のファーストバージョンが発売されたのは、2009年10月15日のこと。本作は2008年に発売された『カオスヘッド』から始まる科学アドベンチャーシリーズの第2作であり、この後も同シリーズは2012年の『ロボティクス・ノーツ』、2014年の『カオスチャイルド』、2017年の『オカルティック・ナイン』、2022年の『アノニマス・コード』と続いている。
本シリーズは現在ではMAGES.の代表取締役会長を務める志倉千代丸氏が企画と原作を手がけており、コンセプトは「99%の科学と1%のファンタジー」。現実に存在する科学的事象を物語の骨格として組み込んだSFサスペンスと位置づけられている。ゲームのみならず、小説やマンガ、アニメなどさまざまなメディアにわたって展開を広げてきた。
その一角を担う『シュタインズ・ゲート』の舞台は「秋葉原」。“厨二病から抜け出せない大学生”こと主人公の「岡部倫太郎」はあるとき偶然、過去から電子メールを送れる発明品、すなわち「タイムマシン」を生み出してしまう。いくつもの要因が重なりあい、やがて世界規模の大事件へと発展していく──といったあらすじだ。
自称、狂気のマッドサイエンティストこと「岡部倫太郎」をはじめ「牧瀬紅莉栖」、「椎名まゆり」、「橋田至」らキャラクター的な人気も高い。またその世界設定を濃厚に描写するべく、ゲーム内には詳細な用語辞典を収録。公式サイトでも「Wikipedia」風のキーワード解説ページが用意されており、「カオス理論」や「コペンハーゲン解釈」といった一般人には馴染みのないワードと「メイド喫茶」が並ぶ本作の雰囲気を表したようなページとなっている。
ゲーム的な特徴としては、従来のオーソドックスなアドベンチャーゲームに見られるような選択肢が存在せず、主人公が持っている「携帯電話」の取り扱いによってストーリーが変動していく「フォーントリガーシステム」が挙げられる。
電話に出るか否か、メールに返信するか否か、といったプレイヤーの選択によって物語は揺れ動き、自然とシナリオが分岐していく。当時のリアルな日常を表現したような没入感を高めるデザインのシステムで、ひとつのメールや通話が大きくルートを変えてしまう場合もある。
過去へ向けたメール「Dメール」を送ることができる「電話レンジ(仮)」の設定と組み合わさり、フォーントリガーシステムは濃厚なストーリーを巧みに描写することに成功した。
高い評価を獲得した『シュタインズ・ゲート』は、その後PCやPSP、PS3、PS Vita、PS4、スマートフォンなど広く移植版が展開された。また2018年には各キャラクタールートのアニメを新規作成し、全編フルアニメとして制作された『シュタインズ・ゲート エリート』がNintendo Switch、PS4、PS Vita向けにリリース。こちらも2019年にはPC(Steam)へと移植が行われている。
派生作品としては、まず2011年に『シュタインズ・ゲート 比翼恋理のだーりん』が発売。たび重なる「Dメール」の実験により、“δ世界線”に飛んでしまった岡部倫太郎を中心とした物語を描く。こちらは本編とは異なりシリアス要素は薄く、ラブコメ的な展開を重視したファンディスク風の内容となっている。
2013年には、全10本のオムニバスストーリーを紡いだ『シュタインズ・ゲート 線形拘束のフェノグラム』がリリース。各ストーリーは単話で完結する内容となり、キャッチコピーの「ラボメンの数だけ物語がある」の通り、登場人物たちの新たな側面や心情が垣間見られる内容を特徴としている。
そして2015年12月10日、PS3、PS4、PS Vita向けに『シュタインズ・ゲート ゼロ』が発売。本作は岡部倫太郎が数々の苦難や悲哀を乗り越えた果てに、ある人物を救うことを諦めてしまった世界線を描く。救われなかった「彼女」はどうなったのか? 新たなキャラクターを迎えてストーリーは紡がれていく。
『シュタインズ・ゲート』からの流れをくみ、『シュタインズ・ゲート ゼロ』では岡部倫太郎の持つスマートフォンの使い方によって物語の流れが変化していく。メッセンジャーアプリ「RINE」をはじめとする、世相の変化を反映したようなシステム周りの変化が特徴のひとつだ。
2019年にはNintendo Switch向けに『シュタインズ・ゲート イバージェンシズ アソート』が発売。『シュタインズ・ゲート 比翼恋理のだーりん』、『シュタインズ・ゲート 線形拘束のフェノグラム』、『シュタインズ・ゲート ゼロ』の3作を収録しており、長年のシリーズファンはもちろん、『シュタインズ・ゲート エリート』ではじめて作品に触れたプレイヤーも深くシリーズの世界に入り込むことが可能となった。
以上がおもな関連ゲームタイトルになるが、『シュタインズ・ゲート』と言えばアニメにおける展開も見逃せない。テレビアニメ『シュタインズ・ゲート』は『Re:ゼロから始める異世界生活』や『うたわれるもの 偽りの仮面』などの制作を担ったことで知られるアニメスタジオ「WHITE FOX」が手がけ、2011年4月に放送を開始した。
その後、2013年には本編トゥルーエンドの後に起こる事件を完全新作で描いた劇場版アニメ『シュタインズ・ゲート 負荷領域のデジャヴ』が放映。興行収入は5億6000万円に達し、2016年にはテレビアニメ版とセットになったBlu-rayボックスも発売されている。
さらに上でも触れた派生作品『シュタインズ・ゲート ゼロ』も「WHITE FOX」がアニメーション制作を担い、テレビアニメとして2018年4月に放送開始。2022年にはシリーズのテレビアニメ化10周年を記念し、同作のBlu-ray ボックスも発売された。
また『シュタインズ・ゲート』もふくまれる「科学アドベンチャーシリーズ」の最新作『アノニマス・コード』は2022年7月28日にNintendo SwitchとPS4向けにリリース。発売日である7月28日は『シュタインズ・ゲート』の劇中にて、岡部倫太郎と牧瀬紅莉栖が出会った日でもある。
『アノニマス・コード』は『シュタインズ・ゲート』のようなパラレルワールドをモチーフとする「世界線」ではなく、マトリョーシカのようなイメージの入れ子構造になった世界を示す「世界層」というキーワードが用意されており、メタ的なギミックを特徴とした作品だ。主人公である「高岡ポロン」はプレイヤーから独立した存在として描かれ、彼の意思でセーブやロードが行われるという異色の形式を採用している。
また発売前に行われたゲームメディア「ファミ通」による志倉千代丸氏へのインタビューでは、同作には『シュタインズ・ゲート ゼロ』に登場した牧瀬紅莉栖の記憶を持つAI「アマデウス紅莉栖」も登場すると明言されている。
さらに「本作(アノニマス・コード)には『シュタインズ・ゲート2』のような意味合いもあるといえばある」とのコメントも。どのような形で『シュタインズ・ゲート』との接点を描いているのか、気になる方はぜひゲーム本編を遊んでみていただきたい。