1988年に誕生したセガの家庭用ゲーム機『メガドライブ』。各メーカーが熾烈な家庭用ゲーム機競争を繰り広げる中で発売されたこのハードからは、現在まで続く人気シリーズの第一作であり、海外で大ヒットを記録した『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』が誕生しました。
そんなメガドライブの発売からおよそ30年が経った2019年、令和最初の新ハードと銘打って発売されたメガドライブミニ。このゲーム機には『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』『ぷよぷよ通』『大魔界村』などといった名作から、『スノーブラザーズ』『コミックスゾーン』『武者アレスタ』などのマニアが唸るようなレアソフトまで、全部で42作のゲームタイトルが収録されており、その収録タイトルの多さ、ラインナップの充実っぷり、コスパの良さが愛好家の間で大きな話題となりました。
そして、メガドライブミニの発売から3年たった2022年10月27日、満を持して、メガドライブミニシリーズの第二弾、メガドライブミニ2が発売されました。
本稿では、そんなメガドライブミニ2の事前プレイレビューをしていきたい……ところなのですが、その前にひとつだけ前置きをさせてください。
今回、記事を執筆するにあたって、プレイ時間に差こそありますが、メガドライブミニ2に収録されているタイトルをほぼほぼ全て遊ばせて頂きました。できることならば、その全てを余すところなくご紹介していきたいのですが、本ハードに収録されているタイトルは、メガドライブミニの42作を大幅に超える60作。この収録タイトル数の多さは、ゲーム好きとしてはただひたすらにテンションが上がるだけなのですが、記事を執筆する立場からすると中々複雑です。60作ともなると、ただタイトルを列挙していくだけでもなかなかに骨の折れる作業になってしまいますからね。
そこで今回は、60作もの収録タイトルの中から、私の独断と偏見で決めたお気に入りの作品をいくつかピックアップして、広く浅くという形にはなってしまいますがレビューをさせていただき、メガドライブミニ2の魅力をお伝えしていきたいと思います。
文/DuckHead
30年近い時を経て蘇る、往年の名作たち
メガドライブミニ2を起動し、私が真っ先に飛びついたのは、『チェルノブ』。データイーストから発売されたアクションゲームである本作は、箱なしのソフトのみの状態でも1万円前後、箱有りだと値段が更に2倍にも3倍にも上昇する、いわゆるプレミアソフトと呼ばれるタイプのゲームタイトル。クラシックゲームを扱うショップで、ショーケースに入っているのをよく見かけますね。つい先日、発売から30周年を迎えました。
個人的な話にはなってしまいますが、この『チェルノブ』は、私にとって是非一度プレイをしてみたかった作品でして、本作の収録が発表された瞬間にすぐさまメガドライブミニ2を予約させていただきました。
そんな『チェルノブ』は、ステージを走り続ける主人公のチェルノブを操作し、最奥にいるボスを倒してステージクリアを目指すゲーム。
ゲーム画像を見るとアクションゲームのように見えますが、チェルノブが走り続けているため、ゲーム画面は基本的に強制スクロール状態。ある程度の時間その場に立ち止まったり後方を向いたりすることはできるものの、ボス戦以外では逆走することも不可能であるため、アクションとシューティングを掛け合わせたようなプレイ感のゲームとなっています。他のゲームでは体験したことがないような独特の操作性は、ただそれだけでも非常に個性的で、魅力的です。
操作性こそかなり独特であるものの、敵が落とすパワーアップアイテムをゲットして自身の能力や武器の威力を高めたり、十字キーとジャンプボタンを同時に押して発動する回転ジャンプで四方八方を攻撃したりするといったように、ゲームシステムそのものは比較的シンプルな仕上がり。そのため、チェルノブの操作に慣れてくると、ゲームの楽しさがドンドンと加速度的に増加していきます。
しかしながら、一度でも敵や弾にぶつかってしまうと残機を失ってしまうため、アクションゲーム・シューティングゲームとしては非常に骨太。難易度は結構高いのではないかと思います。
事実として、私のような技術力が底をついているプレイヤーは、ゲーム序盤からゲームオーバーを繰り返す事態に陥ってしまいました。
ゲーム序盤ではありますが、プレイが停滞ムードに入ってきましたし、他にもプレイしたいタイトルが59ありますので、ここで休憩もかねて別のゲームで遊ぶことに。
こういった時に有効なのが、中断セーブ機能。『メガドライブミニ2』では、各ゲームタイトルにつき4つずつセーブスロットが用意されており、好きなタイミングでゲームをセーブし、プレイを中断することができます。
当然、発売当時のメガドライブには無い機能なので、邪道と思われるかもしれませんが、せっかく用意して頂いている機能ですから、使えるものは積極的に使っていきましょう。
中断セーブを使用し、後で仕切り直してプレイを進めてはみましたが、『チェルノブ』はコンティニュー回数に上限が設けられているということもあり、最終的には完全クリアにまで辿り着くことができず、最初からやり直すことになってしまいました。
オプションで残機数とコンティニュー回数を増減させる事ができるため、残機数とコンティニュー回数を最大にしてクリアを目指すものの、その後も連戦連敗。苦戦が続きます。
いやー、前々から評判は聞いていましたが、やっぱり難しいですね。『チェルノブ』。何度やり直しても似たようなミスで似たような場所で残機を失ってしまい、遅々として進まないのですが、この難しさがとても楽しい。
“繰り返しプレイをしたくなる中毒性があることは、名作の条件の1つである” という持論があるのですが、本作も、何度ゲームオーバーになってもやり直したくなるゲームです。私が言うまでもないかもしれませんが、名作と言って差し支えないタイトルでしょう。
続いてのタイトルは『ファイナルファイトCD』。
こちらは、アーケードゲームとして大ヒットを記録し、ベルトスクロールアクションというゲームジャンルを世の中に大きく広めた立役者として知られる、言わずと知れた名作ゲーム『ファイナルファイト』の移植版です。登場するキャラクターの多くが、味方も敵も含めて『ストリートファイター』シリーズに参戦していることでも有名ですね。
そんな本作の目的は、暴力集団マッドギアに連れ去られた市長の娘を助け出すこと。プレイヤーはコーディー、ガイ、ハガーという性能が大きく異なる3人のキャラクターから1人を選び、画面上に現れる敵を倒しながらステージの奥まで突き進み、クリアを目指します。
このゲームには、多種多様な攻撃パターンを持ち、縦横無尽に動き回る敵キャラクターたちを何体も同時に相手にしなければならない局面が非常に多く、ちょっとしたミス、一瞬の気のゆるみですぐに袋叩きにされてしまい、あっという間に残数を失う羽目になってしまいます。雑魚敵だからといって気を抜くことは一切許されません。
そして、そんな雑魚敵たちの猛攻を潜り抜けた先に待つボスたちも、強敵ぞろい。総じてゲームの難易度はかなり高いと言えるでしょう。こういった難易度の高さは、アーケードゲームやクラシックゲームの大きな特徴の1つですね。
さて、『ファイナルファイト』は、大ヒットを記録した名作であるが故に、様々な機種に移植されたゲームとしても知られています。私の中ではスーパーファミコン版『ファイナルファイト』のイメージがかなり強いのですが、こちらの移植版はそちらよりも映像が綺麗な印象。あくまで印象なので、実際にグラフィックが綺麗なのかどうかはちょっと怪しいところなのですが。
グラフィック面に関しては私の記憶頼りの推察でしかありませんが、本作のスーパーファミコン版との明確な違いは、スーパーファミコン版ではカットされていた “ROUND4”、いわゆる “ロレントステージ” が、原作のアーケードゲーム通りに収録されているということ。
実際、スーパーファミコン版でカットされていた要素を全て余すところなく収録しているということが発売時の売りだったそうです。
完全移植というわけではありませんが、アーケード版の『ファイナルファイト』に非常に近い移植である本作は、ベルトスクロールアクションの良さが存分に詰め込まれています。押しも押されもせぬベルトスクロールアクションの金字塔、是非ともプレイしてみていただきたいオススメの名作です。
続きますタイトルは『TATSUJIN』。大ヒットを記録したシューティングゲームである本作は、システムの洗練具合と分かりやすさや、派手なビジュアルなどから、“スクロール型シューティングゲームの礎を築き上げた” とも評される名作です。
本作の洗練されたシステムの中でも、後の作品に特に大きな影響を与えたとされるのが、“タツジンボム” 。これはボタンを押すことで即座に発動することのできるアイテムで、画面内の敵に大ダメージを与えつつ敵の弾を全て消滅させてくれることから、主に緊急回避に使用します。かなりの強システムであるため、使用回数には制限があり、使うタイミングが非常に重要です。
この、ボタンを押すことで即座に発動するという使用回数制限付きの緊急回避システムは、後に数多くのシューティングゲームに普及し、現在では定番となっています。
そんなシンプルで取っつきやすいゲームシステムの本作ですが、その難易度はタイトルが示している通り、まさに達人級。この難易度の高さという要素も、後年のシューティングゲームへ脈々と受け継がれていく重要なものではありますが、そこに取っつきやすい要素は全くありません。
私のような集中力が足りずシューティングゲームが苦手な人間では、ギリッギリのところで何とかステージ1を突破することはできたものの、ステージ2の序盤でコンテニューを使い果たし、あえなく撃沈。個人的な印象ではありますが、1ステージの長さもかなりのものであるように感じます。
ゲームをスムーズにクリアしていくことは残念ながら叶いませんでしたが、本作は自機や敵機のデザイン、攻撃の演出が非常に素晴らしく、何度でもリトライしたくなる楽しさがあります。
次のゲームは『バーチャレーシング』。アーケードゲームとして大ヒットを記録した3Dレースゲームのメガドライブ移植版です。
公式サイトの説明文によりますと、“カスタム演算チップ「SVP」を搭載することにより実現した、驚異の移植版” とのこと。この手の知識が圧倒的に足りないので詳しいことはよくわかりませんが、当時のとんでもない技術を駆使して作り上げられた奇跡的な移植版ということなのでしょう。多分。
このゲームに関する知識がほぼ無かったということもありますが、正直なところ、特に何の期待もせずにゲームを起動し、初心者向けのコースを選択。機体の選択などは特になく、すぐにレーススタート画面へ移行します。ゲーム画面は分かりやすく時代感を感じることができるポリゴンで構成されています。
そして、レーススタート直前に表示されるピットクルーたちのグラフィックも、「綺麗」であるとか「リアル」であるとはお世辞にも言えないレベル。レーシングカーの周囲で何かしらの作業っぽいことをしているから、どうやらピットクルーを表現しているらしいなというのが、なんとなく朧げに分かるという程度です。
ここまでの文章の雰囲気からも十分に伝わるかとは思いますが、私はこの時点で『バーチャレーシング』のことを完全に舐め切っていました。しかし、いざレースが始まると状況は一変。粗いポリゴンだけで作られているとは思えないほどの疾走感に包み込まれ、先ほどの思いはどこへやら、その映像とプレイ感に度肝を抜かれ、一気にゲームにのめりこんでしまいました。
いくらゲームの画像を乗せ続けたところで、実際にプレイをしてみなければこのゲームの凄さや面白さがほぼほぼ伝わらないというのが、なんともやるせないところ。小耳に挟んだ話によると、アーケード版はもっと凄い映像だったとのことですが、メガドライブ版『バーチャレーシング』も迫力は十分。もちろん、近年のレースゲームと比較してしまうと話は変わってきますが、一度プレイしてみる価値は大いにあるゲームです。
普通に走っているだけでも疾走感が凄いのに、レース中はいつでもドライバー視点に切り替えが可能というのには驚きました。もちろんこの視点であっても疾走感は全く損なわれていません。
そして、本ハードではこれら以外にも、対戦格闘ゲームの歴史を作ったと言っても過言ではない名作『ストリートファイター』シリーズの5作目である『スーパーストリートファイターII ザ ニューチャレンジャーズ』。
敵として登場する悪魔と会話をして仲魔にしたり、仲魔を合体させて新たな仲魔をチームに加えるなど、独特の世界観とシステムで人気を集めるアトラスの人気RPGシリーズ『真・女神転生』の第1作『真・女神転生』
『大乱闘スマッシュブラザーズスペシャル』に参戦したことも話題となった主人公のテリー・ボガードや、お色気女性キャラの元祖とも言われる不知火舞が登場する2ライン制が特徴的な格闘ゲーム『餓狼伝説2』など、多くの名作で遊ぶことができます。
ちなみに、私の持ちキャラはテリーではなく、右のビッグべアです。イチバーン!
メガドライブミニにはなかった、メガCDのソフトも多数収録
さて、メガドライブミニ2の大きな特徴の1つとして、メガドライブミニでは収録されていなかった、メガCDのソフトが多数収録されているということが挙げられます。
このメガCDとは、メガドライブの周辺機器。これをメガドライブに接続することで、本来はカートリッジのソフトでゲームを楽しむメガドライブで、容量を大幅に増やしたCD-ROMのソフトを遊ぶ事ができました。
メガCDのゲームが初収録された『メガドライブミニ2』では、『ソニック・ザ・ヘッジホッグCD』などのメガCDゲームで遊ぶことができますが、カートリッジ版とメガCD版が発売されていた『三國志III』に関しては両方のバージョンが用意されており、好きな方を選んでゲームを楽しむことができます。
それではここで、せっかくの良い機会ですから、『三國志III』の2つのバージョンを比較してみましょう。
こちらがカートリッジ版で、
こちらがメガCD版。
……正直、グラフィック面には大きな差は見られません。多少は違うのかもしれませんが、少なくとも私の目には全く同じに見えます。
と、言いますのも、メガCD版とカートリッジ版の明確な違いは、実はグラフィックというよりは、CD-ROMになって容量が大きくなったことで、動画や声優さんのボイスを入れた演出が可能になったというところにあるのです。
そのため、メガCD版『三國志III』では、シナリオと勢力を選択した後にボイス付きのアニメーションムービーが流れ、ゲームの雰囲気を大いに盛り上げてくれます。
ちなみにですが、先ほどご紹介しました『ファイナルファイトCD』の “CD” も、メガCDのことを指しており、声優さんのナレーションが入ったオープニングムービー等を楽しむことができます。
閑話休題。メガCDゲームの特徴についてお話させていただいたところで、ここからは、このメガCDの性能を存分に活かしたタイトルをご紹介していきたいと思います。
まずは、『ぽっぷるメイル』。『イース』シリーズ、『軌跡』シリーズ、『ブランディッシュ』シリーズなどのゲーム作品で知られる日本ファルコムから発売されたアクションRPGで、パーソナルコンピュータのPC-8801用に発売された作品を大幅にリメイクしたゲームです。
何よりもお金が大好きなエルフの賞金稼ぎ、メイルを主人公とする本作では、オープニングムービーや作中のイベントシーンの多くにボイスがついており、登場キャラクターたちを色鮮やかに演出。ボイスが無かったとしても個性的で魅力のあるキャラクターたちの良さを、これでもかというほど引き出しています。
そして、フルボイスで展開されるオープニングやイベントシーンに起用されている声優さんは超豪華。主人公のメイルは林原めぐみさんが担当しており、その他にも千葉繁さんや石田彰さんなど、一聴しただけで誰なのかがすぐに分かるレジェンドとも言うべき声優さんがズラリ。代表作が多すぎる方々なので、誰の声を担当しているのかが気になる方は、是非調べてみてください。
……というか、30年近く前の当時メインキャストを担当されていた声優さんが、今でも第一線でご活躍されているというのが本当に凄いですよね。
そして、肝心のゲーム部分に関しては、ステージにいる敵を倒してお金を回収しながら物語を進めていき、貯めたお金でより強い武器や防具を購入し新たな敵に挑むのが基本という、王道アクションRPG。シンプルで分かりやすいシステムと、可愛らしい雰囲気が非常に素晴らしいですね。
ただ、いくら可愛らしい雰囲気であるとはいえ、気を抜いて適当にプレイをしていると痛い目にあってしまいます。回復アイテムにも限りがありますので、しっかりと集中して敵と対峙していく必要があり、メリハリのあるアクションを楽しむことができます。
……ただ、アニメーションの演出やイベントシーンの会話内容に若干古ーい感じがあるのは否めないので、それが気になる人もいらっしゃるかもしれないですね。こういった要素は仕方のない部分ではありますし、1990年代初頭の空気感を肌で感じられるというのもまた一興。これもまたクラシックゲームの面白さの1つです。
そして、古さがあるという部分を加味しても、主人公メイルのキャラクターは非常に魅力的。本作の続編は制作されていないとのことですが、30周年記念とかで急に新作が出たりとかしないかなぁと、素直に思える作品でした。
さて、続いてのゲームは、『ナイトトラップ』。
こちらの作品は、メガCDの性能を活かして実写映像を大いに取り入れたゲームで、基本的にゲーム画面には実写映像が流れ続けています。
作品の舞台となるのは、マーチン家の別荘。先日、ここを訪れた5人の女性が全員消息を絶つという不可解極まりない事件が発生したこの地に、今宵再び5人の女性が招かれます。
この奇妙な事件に対し、本件の捜査にあたる特殊チームは、別荘内の8箇所に監視カメラを設置。その際に見つけた “妙な防犯システム” を遠隔操作できるように工作を施しました。
プレイヤーはこの特殊チームのメンバーの1人として、設置された監視カメラの映像を切り替えながら “妙な防犯システム”、すなわちトラップを発動させ、“怪物” と呼ばれる存在の脅威から、何も知らずに別荘を訪れた女性たちを守り抜かなければなりません。
で、その倒すべき “怪物” というのがこちら。
…………何でしょう、怪物と聞いて想像していた姿とは大きく違うんですよね。オブラートに包まずにハッキリと言わせてもらえれば、コソ泥にしか見えません。
実際、最初に彼らが画面に現れたときは怪物であるということに全く気が付くことができず、この見た目でのっそのっそと屋敷内を歩き回っているため、主人公側の特殊チームのメンバーなのだろうと思っていました。
まぁ、怪物がゆっくりと歩き回っている件については、素早く動いてしまうとトラップ発動のタイミングの難易度が格段に上がってしまうという事情も絡んでいるのかもしれませんが、それならもう少し見た目を工夫しても良かったのではないかなと思っちゃいますね。
さて、主人公は、この怪物たちをトラップを遠隔操作して捕獲していくのですが、ゲーム冒頭で “妙な防犯システム” と紹介されているだけあって、そのセンスがまた独特。
急に床が開いて奈落へ落とされたり、クローゼットに押し出されてベッドの上に転がされた後急にベッドが持ち上がり窓の外へ放り出されたり、吉本新喜劇がごとく階段が急に坂になってそのまま滑り台のように奈落へ吸い込まれていったり……どうにもこうにも間抜けな印象が抜けきれません。バラエティ番組のドッキリとほぼ同じセンスなんですよね。
……上質な怪作の薫りが立ち込めてきました。非常に良いですね、たまりません。ゲーム冒頭で実写映像が流れ始めた辺りからもしやと思いワクワクしていましたが、これは最高と言わざるを得ないですね。
更に緊張感を失わせるのが、マーチン家の人々や別荘を訪れた面々の会話。ゲームで流れている実写映像は日本語吹き替えで楽しむ事ができるのですが、納谷六朗さんを筆頭とする声優さんたちの軽妙な名演技により、その仕上がりは往年のホームコメディさながら。
原作版では「役者さんたちのセリフがなかなかの棒読みで集中力が削がれた」という話も風のうわさで耳にしましたが、演技力が高いは高いで、ついつい話に耳を傾けたくなってしまい、結果的に集中力が削がれてしまいます。
そんな彼らの会話が気になって仕方がないところではあるのですが、他の部屋では怪物たちがのっそのっそと闊歩しているため、こればかりを聞いていては、ゲームを円滑に進めることはできなくなってしまいます。
じゃあ、会話は完全に無視して怪物だけに注目していればいいじゃんという話になってくるのですが、実際はそうもいきません。
というのも、マーチン家の人々はトラップを起動させるためのコードを自由に変更することができるのです。そのため彼らの会話にもしっかりと耳を傾けていないと、コードが変更されているということに気が付くことができず、怪物の捕獲ができなくなってしまうのです。
その他にも、ゲストとして訪れた5人の女性の中には特殊チームのメンバーが潜入しており、こちらに向かって話しかけてきたりもするため、ある程度話を聞き逃さないように気を配っていく必要があります。
常に監視カメラの映像を切り替えながら、人々の会話の重要な部分を聞き逃さないようにしつつ、怪物をトラップで捕獲していかなければならない。『ナイトトラップ』は、中々に忙しいゲームなのです。
そして、決められた時間までに一定の成果を上げることができなければ、ゲームオーバー。緩い空気感が漂い続けていた本編から一転して、大塚明夫さん演じる上官からしっかりとお叱りを受け、プレイヤーは任務から外されてしまいます。
B級映画感とホームコメディ感にあふれ、どことなく全ての要素がちぐはぐな、怪作と呼ぶにふさわしい本作。
万人にオススメできるかというとちょっと微妙なところではありますが、好きな人にはたまらないゲームなのは間違いありません。
アニメを題材にした版権モノ作品たち
さて、次に紹介していきたいのは、アニメ、映画作品を題材とするゲーム、いわゆる版権モノと呼ばれる作品たちです。
基本的に版権モノの作品は権利関係などがややこしく、あまり移植はされないタイプのゲームジャンルでして、実機のソフトを購入する以外にプレイする方法がないという作品が多く、プレミア値もつきやすくなっています。
そんなレアな版権モノですが、前ハードメガドライブミニでは『アイラブ ミッキー&ドナルド ふしぎなマジックボックス』や、『幽☆遊☆白書 ~魔強統一戦〜』などの作品が収録されており、この『メガドライブミニ2』でも、そういったタイトルで遊ぶことができます。
まずは『ふしぎの海のナディア』。タイトル画面にも表示されていますように、NHKで放送されていたテレビアニメシリーズをモチーフとしたゲームソフトです。アニメの本放送もゲーム発売も、私が生まれる前の作品ではありますが、アニメが名作と呼ばれていることはよく知っています。これも一度プレイしてみたかったゲームですね。
ゲームのオープニングでは、アニメ本編のオープニングを意識したムービーと、テーマソングが流れます。
ちなみにですが、本作はメガCDではなくメガドライブのソフトであるため、オープニングテーマソングの歌を聞くことは出来ません。
そして、ゲーム本編を開始すると、早速画面上に主人公であるジャンが登場。非常に綺麗な一枚絵で、かなりの気合を感じます。
物語の始まりは1889年のパリ。この年に開催された万博で行われる国際飛行コンテストに参加するべく、叔父さんと共に飛行機の整備をしていたジャンは、たまたま近くを通りかかった少女、ナディアに一目惚れ。
是非とも仲良くなりたいと彼女の後を追いかけたことで、彼は壮大な冒険の旅へ出発することとなります。
先ほどはジャンとナディアの綺麗な一枚絵を紹介しましたが、実際のゲームパートは古き良きRPGを思い出させるグラフィック。個人的な感想ではありますが、本作は、美麗な一枚絵を拝むために先へ先へ物語を進めていくゲームと言っても過言ではないと思います。
実際、本作は公式サイトでも “人気アニメを追体験できるアドベンチャー” と説明されていまして、ゲーム性というよりはキャラクターや物語を楽しむことに重きがおかれています。こういった点は、版権モノのゲームの大きな特徴の1つですね。
そのため、これまでに紹介してきたゲーム達と比べると難易度もそこまで高くはなく、サクサクとゲームを進めていくことができました。
ゲーム内でアニメ本編のネタバレをされたくなかったので、物語が盛り上がった辺りで今回はプレイをやめてしまったのですが、『ふしぎの海のナディア』本編をしっかりと視聴してから、再度プレイをしてみたいと思います。
お使いゲーの要素が少し強めな本作ではありますが、アニメとは異なるストーリー展開も用意されているとのことなので、『ふしぎの海のナディア』ファンは一度プレイしてみる価値があるのではないでしょうか。
続いては、『ああ播磨灘』。さだやす圭さんによる、読むと強くなる痛快横綱漫画『ああ播磨灘』が原作のゲームで、「遊ぶと強くなる横綱ゲーム」というキャッチコピーで発売され、メガドライブミニ2公式サイトの説明文では、“メガドライブ最大の問題作” と評されている作品。
本作の主人公は、横綱の播磨灘。ゲーム本編は彼が横綱となった直後に開催された九月場所から始まり、彼は満員の観客の前で、現在双葉山が持つ69連勝という大記録を塗り替え、70連勝することを高らかに宣言します。
そして始まるのはもちろん相撲ゲーム。プレイヤーは播磨灘を操作し、取り組みでの勝利を目指します。
やはり相撲ゲームの基本は、がっぷり四つの組み合い!……と、言いたいところなのですが、本作は相手を土俵の外へ投げ飛ばす以外にも、相手の体力を0にすれば勝利を収めることができるというシステムになっているため、まわしを取って相手を投げ飛ばすことよりも、必殺技や通常技を駆使して相手の体力を削り切ることを目標に闘うことになるという、格闘ゲームに近いプレイ感のゲームになっています。
いくら相手より自分の体力が多かったとしても、土俵の外に投げ飛ばされてしまえば逆転負けになってしまうので、そんなリスクを冒してまで組み合う必要がないというわけですね。力士たちは相手を余裕で飛び越すほどの大ジャンプを簡単に繰り出せるので、相撲ゲームらしさはかなり薄いです(よく見ると、ジャンルのところは「スポーツ」ではなく「対戦格闘」と書かれていました)。
組み合う意味がほぼない相撲ゲームという、相撲ゲームの根幹を揺るがすほどの大きな問題を抱えた本作ですが、必殺技の存在が、このゲームのカオス度を更に高めています。
相手を必ず気絶状態にするという反則級の技である時空念動波(超ねこだまし)、重量崩壊(デスクラッシュ)という名のヒップアタック、相手を頭上高く持ち上げて痛めつけた後土俵の外へ放り投げる大噴火投げなど、現実の相撲でお目にかかることはないであろう技のデパート。
もしも、原作からしてこういった必殺技が登場するような相撲漫画であるならば、これらの技も特に問題にはならないでしょうが、原作での取り組みは現実に即したリアルな描写とのこと。こうなってきますと、このゲームは版権モノとは言うものの、もはや原作の名前を借りただけの別モノと言っても過言ではないでしょう。
ここまででも十二分に問題作と言っていい『ああ播磨灘』ですが、さらに、このゲームを“メガドライブ最大の問題作”たらしめているのが、ゲームクリアの条件。
なんと、このゲームでは、冒頭で播磨灘が宣言したとおり、70連勝を本当にしなければゲームクリアになりません。アニメやゲームなどでよく見られる、途中省略演出の類は一切なく、1つ1つ地道に愚直にプレイし、70個の勝利を積み重ねていく必要があるのです。
一応、パスワードによる途中からのゲーム再開や、コンテニュー機能は搭載されているのですが、コンテニュー回数には制限がある上、ゲームの後半になるにつれてライバルの力士たちが異常な強さになっていくため、ゲームクリアは至難の業。
“メガドライブ最大の問題作”と評される怪物は一味もふた味も違います。
このあまりにも荒唐無稽な目標や、原作を大幅に無視しているゲーム性から、本作はクソゲーとして名高く、好事家の間では名の知れた有名作品です。こういった路線のゲームもしっかりとカバーしているあたり、メガドライブミニ2の尋常ではない層の分厚さをヒシヒシと感じます。
ちなみにですが、本作のハードモードをクリアすることで流れる衝撃的なエンディング『播磨体操第一』は、一見の価値がありますので是非。
メガドライブミニ2が初移植となる、アーケードゲーム
さて、メガドライブミニ2に収録されているタイトルは、メガドライブで発売されたソフトだけではありません。中にはかつてアーケードゲームとして稼働し、メガドライブでは移植版が発売されず、今回が初移植となるゲームも存在します。
そんなゲームソフトの中の1つが『スーパーロコモーティブ』。SEGAが開発し、1982年に稼働開始したアーケードゲームです。1982年といいますと、「ゲーム&ウオッチドンキーコング」が大ヒットしていた時期。ゲームの黎明期とも言える頃の作品で、かなりの古豪である事が伺えます。
さて、ゲーム内容についてですが、線路上を走り続ける機関車を操作し、次の駅にたどり着くというのが、プレイヤーの目的。
ゲーム画面は上下二つに分かれており、基本的には上に表示された俯瞰視点での線路を見ながらゲームを進めていくことになります。
プレイヤーの機関車は敵の列車に当たってしまったりするとゲームオーバーになってしまうのはもちろんのこと、線路上に設置された赤信号にぶつかったり、燃料が尽きてしまってもゲームオーバー。走る路線をしっかりと見極めつつ、敵機にも対処していかなければなりません。
ステージの後半では飛行機も登場。上空から爆弾を落としてきて、プレイヤーの行く手を阻みます。
約40年前のゲームとは思えないような斬新さを感じるゲームシステムを持つ本作は、やりごたえ十分。ゲームプレイに慣れるまでにはそれなりに時間が必要ですが、非常に面白い作品です。
その他にも、ゲーム画面を斜めからの視点にすることで疑似的に3D映像を表現したシューティングゲーム『ビューポイント』などのアーケードゲームが国内では初移植されて、本ハードに収録されています。
この『ビューポイント』も、かなり独特なプレイ感を持つゲームで、登場するギミックや敵機も個性的。他のゲームではあまり見かけない斜め視点なので、弾の当たり判定を把握するのに少し慣れが必要ではありますが、プレイ感の面白さを是非一度体験してみていただきたい作品です。