「斧、投げてみない?」。編集担当から掛けられた言葉に耳を疑ったが、その公式イベントは実在した。SIEは『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』の発売を記念し、ゲームメディアが「AXE THROWING®︎(アックススローイング)」で戦うイベント「メディア対抗斧投げ選手権~我こそはクレイトス~」を開催した。
たしかに、ゲームのテーマに沿ってアクティビティを体験するメディア向けイベントはこれまでもあったが、斧投げは聞いたことがない。実際に斧を投げれば、デスクに座り一日を終える現代の人間のか弱い身体とクレイトスの対比に気付かされるのだろうか。SIEより授かったこの試練は、我々に何を与えてくれるのだろうか。
その真相を探るべく、我々はコンクリートジャングルこと、東京の池袋へと向かった。本記事では『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』、「斧投げ」、「我こそはクレイトス」、という突飛なキーワードに彩られたイベントレポートをお届けする。
前作にも登場したクレイトスの「斧」と競技「アックススローイング」
今回の「アックススローイング」のイベントは2018年に発売された『ゴッド・オブ・ウォー 』より登場するクレイトスの武器「リヴァイアサン」にちなんだもの。
『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』にもはじめから登場し、狙った敵に投げたり、仕掛けを凍結させることで劇中で活躍する。投げつけたあとも自ら手元に舞い戻ってくる。
「アックススローイング」は近年北米で注目されているカナダ発祥のスポーツ。競技人口は約10万人いるとされ、北米では3つの公式団体が存在する。日本には2021年に初上陸し、日本アックススローイング協会が発足しているという。
ルールはダーツのように指定された線から円形の的に斧を投げ、刺し当てること。中心の円が6点で、そこから外に行くにつれて5から0点へと得点が下がっていく。10回斧を投げ、得点が高い者がゲームの勝者となる。
なお、的の上部には2点の「キルショット」とよばれる黒点が存在する。「キルショット」は1ゲーム内に2回宣言して狙うことができる的で、宣言通りに刺しこむことができれば8ポイントも獲得することができる。しかし、当たらなければ0点に。一発逆転を狙ったり、相手の得点と一気に差をつけることができる、スリリングなルールとなっている。
ちなみに、執筆時点での国内トッププレイヤーは本競技をはじめて半年の経験者であり、今から初めても競技シーンでTOPを狙えるかもしれない勝機のある新規スポーツだ。今回の大会を実施した「REEAST ROOM 池袋店」など、国内でも楽しめる施設が存在するため、興味があればぜひ斧を投げてみるとよいかもしれない。
己の弱さを知り、神の力を知る。斧投げ選手権レポート
このたび開催されたメディア対抗の斧投げ選手権は、電ファミニコゲーマー、IGN Japan、Game*Spark、電撃オンラインの4つのゲームメディアからひとりずつ代表者が登場し、斧を投げた。
はじめに述べておくと、筆者は小柄だ。くわえて、物体を投げたり、蹴ったりするスポーツの適正はゼロ。結果、自然とキーボードとマウス、コントローラーをぽちぽちカタカタと押し込む暮らしをしている。
そんな筆者も新規スポーツである「アックススローイング」なら、輝ける可能性も残されているのではないかと都合の良い期待を胸に、曇天の池袋を抜けて会場へ向かった。そんな期待は一瞬で崩れ去るとも知らずに。
いざ会場に足を運ぶと、のっけからマスクをしたクレイトスのような男が視界に入ってくる。筆者はスパルタのゲームメディアも参加すると聞いた覚えはない(のちに、同氏は電撃オンラインより馳せ参じたライターのゴロー氏であると知る)。
IGN Japanからは同メディアの格闘担当であり、シェンムーと極真空手を極めしクラベ・エスラ氏が登場。Game*Sparkからは剣道の経験者であるという益荒男めいた漢が姿を現し、筆者は屈強な男たちと相まみえた。誰もが死を覚悟することだろう。
先に結論から述べておくと、筆者は電撃オンラインの実質クレイトス氏と対戦し、32対8という圧倒的な点数差で敗北。屈辱のあまりそのまま斧で自らの首を断ち切ろうとも考えたが、こんな戦果でヴァルハラは迎えてくれないだろう。思いとどまり、その後の試合を刮目して見届けた。
大会は第一試合で神話的な記録を残した電撃オンラインの実質クレイトス氏や、格闘を極めたクラベ・エスラ氏が優勝すると思われたが、控えめな姿勢で大会に臨んだGame*Sparkの益荒男めいた勇ましい漢が全ての試合を制した。「能ある鷹は爪を隠す」という慣用句があるように、クレイトスにもっとも近い男は、謙虚な姿勢で男たちの寝首を狩った。
優勝者には武力を象徴する豪華絢爛な和牛「松坂牛」が、純優勝者には『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』のTシャツが贈呈され、選手権は幕を閉じたのだった。
敗因は掃いて捨てるほどあるが、第1に選手権への参加が決定したその日から、仕事を休み、海を渡り、山を駆け上がり、体を鍛えるべきであった。
「アックススローイング」で使用する斧は、普通に重い斧である。そんな斧を10投以上狙った位置に投げるには、当然筋力が必要だ。同競技では斧を的に当てるのではなく、投げて木の板に刺し込む必要があるため、フォームが重要になる。そのため、ただ投げる筋力以上に、姿勢を揺るがさずに連投する体幹や足腰の強さが必要なのだ。
また、筆者は斧というものを投げると、自ずと帰ってくるものだと思っていた。しかしながら、実際に投げた斧は壁面に突き刺さり、自分の足で取りに行く必要がある。そのため、一度投げれば当然やり直すことは出来ないのだ。
クレイトスが巨大な斧「リヴァイアサン」を自由自在に操る光景を、当然のものだと感じていた過去の自分が恥ずかしい。
ソニー・インタラクティブエンタテインメントは本選手権を開催することで、人間の無力さに気付かせた。そして同時に、『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』で自由に操作できる「神の力」の強大さを我々に思い知らせたのであった。
荘厳な神話世界で父と子を描く『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』
あらためて、『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』の概要について軽くおさらいしておこう。
『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』はPS2向けに発売された2005年のアクションアドベンチャーゲーム『ゴッド・オブ・ウォー』を原点とするシリーズ最新作だ。初期シリーズはギリシャ神話をモチーフとしていたが、リブートされた前作からは北欧神話の世界が描かれている。
主人公はおなじみの「クレイトス」とその息子「アトレウス」で、神々に死をもたらす「ラグナロク」を前に九界を冒険し、「フレイヤ」や「トール」といった神々や怪物と対峙する物語が描かれている。
なお、ストーリーは前作と地続きになっているため注意されたい。前作『ゴッドオブウォー』はPlayStation Plusコレクションに収録されているため、PS5を所有している方はPlayStation Plusエクストラから遊ぶのもいいだろう
また前作を遊ばなくても、前作の簡単な振り返りは『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』の冒頭に収録されているほか、公式のPlayStation.Blogにてあらすじを紹介する記事が公開されている。必要に応じて活用しよう。
ゲームプレイはストーリーベースで進行し、基本的にはクレイトスとしてアトレウスとともに道中の敵を打ち倒していく。また行く手を阻むギミックを、凍結能力のある斧「リヴァイアサン」や炎をその身に宿す両手剣「ブレイズオブカオス」を駆使して解き明かすパズル要素もこなすことになる。
本作では北欧神話にならった九界を冒険するため、登場するロケーションの景色や敵の姿はさまざまだ。いずれもフォトリアルかつ高精細なグラフィックで描かれるため、没入感をもって神話の世界を探索できるだろう。
戦闘時のアクションは比較的シンプルな操作が特徴で、「リヴァイアサン」や「ブレイズオブカオス」などの武器を駆使して前作以上にスピーディーな戦闘が展開する。集団戦ではフィールドに存在するオブジェクトを活用して一気に多数の敵を倒すことも可能だ。
シンプルな操作ではあるものの、スキルツリーを伸ばして徐々にアクションが増加。また、ボス戦においてはタイミングを見計らう攻防以上に、特殊攻撃やパリィを駆使する駆け引きが重要な設計に更新されている。これにより、戦闘中は単調ではなく、自ずと多彩なアプローチや戦術を繰り出せる。
クレイトスの息子である「アトレウス」は前作以上に成長し、特殊な弓矢で敵をけん制したり、前作以上に頼もしく戦闘で活躍してくれる。道中ではアトレウス以外のキャラクターも協力してくれるため、戦闘は物語と地続きに展開する。
さらに、劇中では新規のプレイアブルキャラクターや新武器も追加。戦闘の戦略性はさらに拡張され、新規のプレイアブルキャラクターの視点により物語も更なる表情を見せてくれるだろう。
『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』はPS4とPS5向けに11月9日(水)の発売を予定している。価格はPS4向けの通常版が7590円(税込)、PS5向けの通常版が8690円(税込)となる。本作の詳細についてはプレイステーションの公式ページなども参照されたい。
11月9日にはゲーム本編の通常版にくわえて、トールが操る巨大なハンマー「ミョルニル」の約40cmのレプリカなど、劇中に登場するアイテムなどを同梱する2種類の特別版、本作をモチーフにしたPS5向けのコントローラーが発売される。いずれも数量限定品となっているため、『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズのファンは欠かさずにチェックしよう。
特別版の収録内容は以下のとおり
コレクターズエディション
・ミョルニルのレプリカ(約40cm)
・知識の番人の祭壇
・ヴァン神族の双子の彫像(約5cm)
・ドワーフのサイコロセット
・スチールブックディスプレイケース
・早期購入特典ダウンロードコンテンツヨトゥンエディション
・コレクターズエディションの収録物(一部カラーバリエーションがことなる)
・7インチレコード
・ピンバッチセット
・伝説のドラウプニルの指輪
・ユグドラシルの布製地図
大切なものは失ってから気付くという言葉があるが、幸いなことに『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』の発売は本記事公開日の翌日に控えている。興味がある読者は、斧投げ放題の神の力をぜひ堪能してみてはいかがだろうか。
※「AXE THROWING®︎」の商標は一般社団法人日本アックススローイング協会が登録している商標です。