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『ロックマン11』は初代『ロックマン』が目指した「答えのあるアクションゲーム」という理想を実現した奇跡の作品だった。生みの親・A.K氏の言葉からその真髄をひも解く

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最新の要素の数々を活かし、「答えのあるアクションゲーム」を実現させた『ロックマン11』

『ロックマン11』は、初代『ロックマン』の発売から30年以上が経った2018年10月4日に発売。提供されたゲーム機(プラットフォーム)は、初代『ロックマン』のファミコンを遥かに上回る性能を持つ、Nintendo Switch、PlayStation 4、Xbox One、PC(Steam)の4つである。

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 『ロックマン11』は、ナンバリングシリーズでは初めて、全編フル3Dのグラフィックを採用した作品となった。ナンバリング以外だと、2006年発売の『ロックマン ロックマン』(PlayStation Portable)が存在する。だが、『ロックマン11』はそれとは路線の異なる、輪郭の描かれたアニメ調のデザインが採用されている。

 グラフィック以外に音楽も現代風となったほか、前述の『ロックマン ロックマン』(ナンバリングシリーズでは『ロックマン8 メタルヒーローズ』以来となるボイスも採用。ファミコンの新作を強く意識した前作『ロックマン10 宇宙からの脅威!!』(以下、ロックマン10)および前々作『ロックマン9 野望の復活!!』(以下、ロックマン9)の作風から一転、最新の『ロックマン』とも称せる仕上がりとなっている。

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 システム面でも、そんな最新の表現や技術を活用した「ダブルギアシステム」が初登場。「スピードギア」「パワーギア」の2種類を指し、前者は一定時間周囲の時間を遅くする、後者はロックバスターや特殊武器の性能を一時的に強化するといった限定的なパワーアップを図れるようになっている。(さらに危機的な状況に陥った時限定で、2つのギアを同時発動させる最終手段「ダブルギア」もある)

 この他に前2作では、もうひとりのプレイヤーキャラクター「ブルース」専用アクションだった「スライディング」「チャージショット」がロックマンの基本アクションとして復活。換金アイテム「ネジ」を支払って攻略の手助けになるアイテムなどを買えるショップ(LABORATORY)、4段階の難易度といった後期のシリーズ作で追加された要素も継承され、事実上の集大成に等しいゲームデザインになっている。

 その豪華さは初代『ロックマン』と比べるまでもない。
 ファミコン風だった前2作から見ても、一目瞭然である。

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 こうも最新な『ロックマン11』だが、驚くべきことに初代『ロックマン』の時にA.K氏が構想した「答えのあるアクションゲーム」を極めて忠実に実現しているのである。それも件の”最新の要素”を駆使して、だ。

 その筆頭が「パワーギア」。前述の通り、「パワーギア」を発動させると特殊武器の性能を強化できる。「ツンドラストーム」なる特殊武器を例にすれば分かりやすい。

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 「パワーギア」を発動させず、普通に使った場合はロックマンの周囲上下方向にブリザード(吹雪)を発生させるだけとなる。

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 ところが「パワーギア」発動時は画面全体にブリザードを発生させる攻撃に。
 画面内にいるすべての敵を一掃するほどの強力なものへと化けるのである。

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 もうひとつ、「ブロックドロッパー」というブロックを落とす武器だと、「パワーギア」発動で落とすブロックの数が増加する。それに伴って与えるダメージ量も増え、各ステージの中間に立ちはだかる「中ボス」も種類によっては2~3発、攻撃を当てるだけで倒せてしまう。文字通りの”瞬殺”だ。

 このような豪快すぎる「答え」を出せ、難易度を大きく下げられるのである。

 「パワーギア」なしでも、『ロックマン11』の特殊武器には優秀なものが多い。しかも、である。本作では道中に現れる雑魚敵にも弱点の特殊武器が設定されている。該当する特殊武器で彼らを倒せば、普段とは異なる紫の特殊な爆発エフェクトが出るのだ。

 さらに特殊武器は、ステージの仕掛け(ギミック)に対しても絶大な効果を発揮する。ものによっては、特殊武器を使うだけで難所と呼ばれた場面を”なかったもの”にできてしまう

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 例えば「ブロックマン」ステージの迫りくる壁。
 普通に挑めば、正確かつ緻密な操作が試されるが……。

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 ボスの1体、「ブラストマン」を倒すと獲得できる特殊武器「チェインブラスト」があれば、壁自体をまるごと壊せてしまう。「正確かつ緻密な操作が試される?そんなのいらないじゃん!」である。

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 もうひとつに「ヒューズマン」ステージ、電流が流れる変電装置(エレキバッテンダー、エレキクロッサー)の合間に配置されたブロックをジャンプで伝っていく場所。一見、「電流が流れるタイミングをよく見計らって、正確にジャンプしていこう!」と、考えてしまうが……。

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 特殊武器「バウンスボール」があれば変電装置そのものを壊せてしまう。
 「タイミング?電流?なにそれ?」である。

 このような作りから、『ロックマン11』では「難しい!」と感じる場面に対し、自分は最適な答えを発見できていないという事実を強烈な形で返してくる。
 その実例は特殊武器に限らない。落下ミスを防ぐ「ビート」を始めとするサポートアイテムが足りていないのも、「答え」を発見できていないことを意味する。難易度も自分に合っていない可能性すらある。

 そうやって自らが攻略するための方法を多数の「答え」の中から選んで、ものにしていく。

 まさにA.K氏が実現したかった「武器と敵のリアクション」、そして「答えのあるアクションゲーム」としてのゲームデザインをやってのけてしまっているのだ。それも、シリーズの途中から追加された要素の数々、本作初登場の「ダブルギアシステム」を活用して、である。

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 驚きなのは、『ロックマン11』は今のカプコンに在籍するクリエイターたちのチームによって作られていることだ。A.K氏は当然ながら居ない。加えて、この構想が考えられたのは(『ロックマン11』当時から数えて)30年前である。それを30年後に出た新作『ロックマン11』は実現させたのだ。

 これだけでも、『ロックマン11』とその開発チームがどんな偉業を成し遂げたのかは語るまでもないだろう。同時に経緯を踏まえれば、”奇跡”に等しい形になっていることも。

 まさに『ロックマン11』は、初代『ロックマン』に構想された「答えのあるアクションゲーム」を実現させ、その魅力を改めて定義した作品だったのである。

『ロックマン11』が実現させたのは「答えのあるアクションゲーム」だけではない

 さらに面白いのは『ロックマン11』が実現させたのはこれらに限らないことだ。
 A.K氏は対談で、他にも初代『ロックマン』でやりたかったことのひとつとして次を挙げている。

「当初、私は武器を装備したキャラを用意して、様相全てを変化させようとしていたんです。頭のチョボ(点の装飾)はノーマルを意味し、武器を変えるとこの部分がイメージキャラに変わる設定だったんです。そのイメージが『忍者キャプター』【※】なんです。武器の属性とか…なんか似てます。

(中略)

 ところが、そんなキャラは常時持てないということになり…しかし、この部分はかなり重要で、簡単に妥協できない所でした。で、悩んでいるとH.M.D氏がこれでどうですか?と言って見せてくれたのがカラーチェンジのロックマンでした。

(中略)

 ロックマンが「イケル!」って思ったのはこの時ですね。すごくオシャレでスキッとしたアイディアで、目から鱗でした。」(以下略)

(『新装版 ロックマンマニアックス 下巻 短編・設定&対談編(復刊ドットコム刊)』:177ページより一部引用)

※『忍者キャプター』:1976年4月から1977年1月まで、東京12チャンネル(現テレビ東京)で放映された特撮テレビドラマ。全43話。

 さて、ここで『ロックマン11』の特殊武器を装備したロックマンの姿を紹介しよう。

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 おわかりいただけただろうか。

 また、初代『ロックマン』のゲームデザイン、ステージ設計においては、以下を目標にしたとも語られている。

「ロックマンの私なりの目標として、「1日1時間で全クリアーでき、何度も遊びたくなるゲーム」というものがありました。そのために、時間とロックマンの移動スピードで全画面数を割り出し、それを前半各ステージ+後半ワイリーステージに振り分けたと思います。

(中略)

 そのほかにも、ステージ中の敵設定に関してもパターンを作りました。
 1. 雑魚敵は単体で3~4体の連続出現(他の敵との複合攻撃をなるべくさける)。
 2. この連続出現した敵は全て同じ攻撃をする。
 3. この連続出現した敵は地形によって難易度をつける。
 4. この連続出現した敵の難易度は徐々に上げて、最後の1体で下げる。

(中略)

 最初は少しジャンプしながら攻撃、次に弾をよけてから攻撃、そして最後は正面で攻撃するだけ。いずれの雑魚敵もこのような仕掛けになっています。それは『ロックマン1』の途中から、『2』では、全般的に当てはめられています。」

(『新装版 ロックマンマニアックス 下巻 短編・設定&対談編(復刊ドットコム刊)』:176ページより一部引用)

 『ロックマン11』は、1周するのに初見であれば1時間半~3時間ぐらいを要する。ステージ数の多い『ロックマン3』などに比べると少ないが、前述の発言を見ると、実は原点回帰だったことに気づかされる。

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 ちなみに『ロックマン11』も1時間以内のクリアは可能だ。それを達成すると獲得できる実績(トロフィー)「青き閃光」も用意されている。
 ただし、非常に精密かつ的確な動作が試されるため、難易度は高い。挑むなら各ステージの地形、敵の出現パターンはあらかじめ把握しておくことを推奨する。

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 そんな敵の出現数、パターンも『ロックマン11』では一部、4体以上が現れる場面はあれど、この法則を踏襲している。ちなみに『ロックマンX』、『ロックマンゼロ』といった派生作においてもこの法則を踏まえた例は多い。実際に遊んで確かめてみると、当時の考えに近いものが脈々と受け継がれていることに気づかされるだろう。

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 余談だが、A.K氏いわく『ロックマン2』では中ボスには前述の法則が当てはめられていないとのこと。「ウッドマン」ステージに登場する中ボス「フレンダー」がその一例だが、これは考え過ぎたため、構成が上手くいかなかったらしい。

 さらにもうひとつ、『ロックマン11』が実現させていることがある。

 これは『新装版 ロックマンマニアックス』ではなく、『ロックマン』シリーズ公式ブログ「ロックマンユニティ」からの引用となる。同ブログには「ロックマン誕生のひみつ完全版」なる記事があり、そこに『ロックマン』と『ロックマン2』のプログラマー、H.M.D氏のコメントが載っている。そのひとつに次のものがある。

 イエローデビルを倒した時の演出も当初予定していた「パーツが一つづつ崩れて行く」演出を、輪郭だけを残して弾けるような演出に変更するなどして容量を削っていきました。(※原文ママ)

(ロックマンユニティ ウッチーのブログ 『【ロックマン誕生日特別企画】ロックマン誕生のひみつ完全版』より一部引用)

 『ロックマン11』では、ワイリーステージ1のボスで「イエローデビルMK-III」が登場する。

 この者を倒した時の演出をよく観察していただきたい。
 当時、実現できなかったことが実現されていることに気づかされるだろう。
(さらに「イエローデビルMK-III」のパーツが飛んでくる順番にも注目。)

 ちなみに同じ演出は『ロックマンワールド5』に登場するイエローデビルの亜種「ダークムーン」、『ロックマンX5』の同じく亜種の「シャドーデビル」などでも実現している。最も鮮明に描かれているのは前者、「ダークムーン」だろう。

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 『ロックマンワールド5』はニンテンドー3DS(Newニンテンドー3DS、2DS)のバーチャルコンソールで販売中、『ロックマンX5』は『ロックマンX アニバーサリー コレクション 2』に収録されており、現行のゲーム機およびPCで体験可能だ。

 このうち、『ロックマンワールド5』のバーチャルコンソール版は2023年3月28日午前9時に販売が終了する見込みとなっている。もし、件の演出が気になるのであれば、早めに押さえておくことをおすすめしたい。

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ライター
新旧構わず、色々ゲームに手を伸ばしては積み上げるひよっこライター。アクションゲーム(特に『メトロイド』、『ロックマン』)とストラテジーが大好物。フリーゲーム、VRゲームの動向もひっそり追いかけ続けている。
Twitter:@shelloop

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