『ロックマン11』は初代『ロックマン』が目指した「答えのあるアクションゲーム」という理想を実現した奇跡の作品だった。生みの親・A.K氏の言葉からその真髄をひも解く

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 1987年12月17日、ファミリーコンピュータ(ファミコン)用ゲームソフトとしてカプコンから発売された横スクロールアクションゲーム『ロックマン』。その誕生から35年の年月が過ぎ去った。

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 後に『ロックマン』は続編『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』(以下、ロックマン2)が発売され、大ヒットを記録したことによりシリーズ化。『ロックマンX(エックス)』『ロックマンDASH(ダッシュ)』といった派生の新作も続々と誕生し、名実ともにカプコンを代表するタイトルのひとつになった。

 そんな『ロックマン』だが、2010年代前半に”冬の時代”を迎えたことがあった。
 きっかけは2010年から2011年にかけて起きた”とある出来事”。それに端を発する形で、当時予定されていた新作はすべて発売中止に。同時にシリーズはグッズ販売を中心とした展開に移り、ゲームの新作は全く発売されなくなってしまった。

 厳密には2013年に『ロックマン Xover(クロスオーバー)』なるスマートフォンアプリが配信されている(※2015年サービス終了)ものの、家庭用ゲーム機向けの新作は1本も発売されなかった

 しかし、2016年の『ロックマン クラシックス コレクション』で久しぶりに家庭用ゲーム機向けの新作(厳密には旧作の復刻版)を発売。その1年後の2017年には続編『ロックマン クラシックスコレクション 2』も発売し、年末の生誕30周年直前の日には完全新作となる『ロックマン11 運命の歯車!!』(以下、ロックマン11)を発表。他にも『ロックマンX』シリーズの現行機移植プロジェクト(※後の『ロックマンX アニバーサリー コレクション 1、2』)も発表され、シリーズの再始動……もとい。

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 ”再起動”が宣言されることになった。

 『ロックマン11』は翌2018年10月に発売。

 以降もロックマンシリーズは旧作の復刻を中心に続いており、2023年4月14日には派生作のひとつ、『ロックマンエグゼ』シリーズ6作の復刻版『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』が”満を持して”発売される見込みだ。

 完全新作は『ロックマン11』以降、長らく途絶えている。しかし、同作はその後も密かに売上を伸ばし続けており、2022年10月にはシリーズ最大の売上本数を誇っていた『ロックマン2』の151万本を越える160万本を記録するに至っている。

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 複数のゲーム機(プラットフォーム)で展開されている『ロックマン11』、ひとつのゲーム機で展開された『ロックマン2』。その状況の違いを踏まえると、この結果には少し思うところがあるのも事実だ。

 しかし、筆者個人としては『ロックマン11』が上位に立ってくれたことを大変嬉しく感じている。なぜならば、『ロックマン11』は最初の『ロックマン』開発時に掲げられた構想「答えのあるアクションゲーム」を実現し、改めて定義した作品だったからである。

 『ロックマン11(イレブン)』でもあり、『ロックマン11(ダブルワン)』とも称せるこの新作が一体、何を成し遂げたのか?

 初代『ロックマン』と『ロックマン2』でディレクターを務めた、『ロックマン』生みの親とも称される人物”A.K氏”が唯一、その発言の数々を残した関連書籍『新装版 ロックマンマニアックス 下巻 短編・設定&対談編(復刊ドットコム刊)』を元に、初代『ロックマン』に込められた様々な”思い”の数々と共にそれをひも解いていきたい。

特別協力/ありがひとし
文/シェループ


『ロックマン』というアクションゲームの見所とは

 シリーズを長年追い続けているファンからすれば、「何をいまさら」かもしれないが。
 最初に改めて『ロックマン』がどんなゲームかを紹介しておきたい。

 基本的な内容としては、横スクロール形式のアクションゲームだ。主人公の青いロボット「ロックマン」を操作し、様々な仕掛けを乗り越え、行く手を阻む敵を遠距離型の武器「ロックバスター」などで倒しつつ、ステージ最奥のボスの待つ部屋を目指す。そして、ボスを倒せばステージクリアとなる。アクションゲームとしては、まさに王道とも言えるステージクリア型だ。

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 『ロックマン』が他の横スクロールアクションゲームと異なるのは、ひとつに攻略するステージを自由に選択できること。ステージ1、ステージ2と決められた順番に沿ってではなく、プレイヤーが自由に攻略したい場所を選んで、進めていける作りになっている。

 もうひとつに「特殊武器」。各ステージの終盤に対決するボスを倒すと、そのボスが使っていた技に由来する武器が手に入る。これによって標準装備の「ロックバスター」とは性質の異なる攻撃が可能になるほか、そちらでは倒せない敵にダメージを与えたり、種類によっては簡単に倒せるようになったりする。

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 さらに「特殊武器」は、特定のボスに使うことで大ダメージも与えられる。それにより、「ロックバスター」で戦った時以上に素早く、簡単に倒すことが可能になるのだ。

 基本的にどの武器が有効かはそれぞれのボスの特徴、属性などから推理する形になる。初代『ロックマン』を例に出せば、巨大なハサミを投げてくる「カットマン」には岩を投げてくる「ガッツマン」から得られる武器を、炎で攻めてくる「ファイヤーマン」には氷で攻めてくる「アイスマン」から得られる武器を……という具合だ。

 「じゃんけん」、相性などに基づいたこのシステムは、プレイヤーそれぞれ異なる攻略法という名の”答え”を編み出すものとして機能。同時に他にも”答え”があるのではないかと、検証したくなる気持ちを誘発させやすくなっている。そして気持ちが高まった結果、一通りゲーム本編をクリアし終えた後にまた最初から遊び始めてしまう。そんな繰り返し遊びたくなる”仕掛け”としても働く。

 これらの特徴から、『ロックマン』は王道の横スクロールアクションゲームでありつつも、独自の個性を確立。向き合い方次第で簡単にもなれば、難しくもなるという二面性を持った作品に仕上げられている。

長らく幻となっていた『ロックマン』の原型を考えた”生みの親”

 そんな『ロックマン』は、開発チームの様々なアイディアが結集・昇華される過程を経て誕生した。その『ロックマン』の開発チームを統括したディレクターであり、ゲームシステムのほか、ロックマン、ロールといったキャラクターたちの原型を手がけた”生みの親”とも称される人物が”A.K”氏である。(※本人の希望により本名非公開のため、ゲームのスタッフクレジットから引用)

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 A.K氏は続く『ロックマン2』でもディレクターを務めたが、その後にカプコンを退社。次の『ロックマン3 Dr.ワイリーの最期!?(以下、ロックマン3)』からのシリーズは、初代『ロックマン』開発チームに参加したデザイナーのひとり、稲船敬二氏を始めとする後継スタッフたちの手によって発展していった。

 もちろん『ロックマン11』も後継スタッフの手によって生まれた作品だ。この『ロックマン11』は、『ロックマンエグゼ』シリーズと『流星のロックマン』シリーズなどに携わった江口名人こと江口正和氏、『ミッキーのマジカルアドベンチャー』シリーズ、『バイオハザード0』などに携わった小田晃嗣氏を中心とする新たなチームによって開発されている。

 そんな最初期の『ロックマン』のディレクターであるA.K氏は、早々にシリーズから離れたため、メディアへのインタビュー記録はほとんど残っていなかった。主にメディアのインタビューに出ていたのは稲船氏。そのことから、稲船氏が『ロックマン』生みの親という認識を持つ人は少なくないだろう。

 それ自体は『ロックマン』がチーム開発によって誕生した過程を踏まえれば、正確と言える。しかし前述の通り、稲船氏はゲームシステム、ロックマンを始めとするキャラクターたちの原型の制作には携わっていない。ゆえに実際は”育ての親”といったところだろう。

 事実、稲船氏自身も『ロックマン』の企画はチーム配属前から動いていたこと、ディレクターのA.K氏のもとで開発に取り組んだ旨の発言を残している。

「ゲームを作るっちゅうことについて、なんも分かってないころに、キャラクター担当でロックマンチームに配属されて。知らない世界で、知らないことばかりで、あんなこともやるのか、こんなこともやるのかって……。すごい楽しかったんだけど、もうガムシャラやった。これを元々企画した企画マン……僕の師匠なんやけど、彼はデザイナー出身で、ロックマンのドット絵とロールちゃん、ライト博士も彼が原型を作って、それを俺がイラスト化して動かしたり、デザインの手直しとかをやったんです」

(『R20 ロックマン&ロックマンX オフィシャルコンプリートワークス(株式会社カプコン刊)』:6ページ、『R20+5 ロックマン&ロックマンX オフィシャルコンプリートワークス(復刊ドットコム刊)』:30ページより一部引用)

 他方、A.K氏の発言は2010年頃までは存在していなかった。
 しかし、2011年にその状況に変化が訪れる。

 独自の解釈を加えた『ロックマン』原作の漫画『ロックマンメガミックス』の作者、ありがひとし氏が過去に執筆した『ロックマン』関連の4コマ漫画などを1冊にまとめた大型書籍『ロックマンマニアックス』にA.K氏とのスペシャル対談が掲載。長らく秘密のヴェールに包まれていた『ロックマン』のゲームデザインの意図などが紐解かれたのである。

 この『ロックマンマニアックス』は既に絶版となっている。

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上巻は『初期作品&4コマ編』と、過去作品中心に掲載されている。

 だが、2015年にその内容を上下巻に分割した『新装版 ロックマンマニアックス』が復刊ドットコムから発売。本稿執筆現在は、こちらがAmazonといった通販サイトなどで購入できるようになっている。書籍版に限らず、電子版もAmazon(Kindleストア)、BOOK☆WALKERLINE マンガなどで発売中だ。

 件のスペシャル対談は、下巻の『短編・設定&対談編』の175ページ以降に掲載されている。

 かつて『ロックマンエグゼ』を特集した記事でも、この書籍から一部を引用したことがあったが、A.K氏は他にも大変興味深い発言を残している。そして、そこから後の『ロックマン11』で”奇跡”が起きていたことが分かるのである。

「答えのあるアクションゲーム」という構想、その場においてやりたかったこと

 過去に電ファミニコゲーマーに掲載された『ロックマン』関連の記事でも何度か書いたが、A.K氏は「答えのあるアクションゲーム」という発想から『ロックマン』を作り始めたとのメッセージを『新装版 ロックマンマニアックス下巻』に寄せている。

 改めて、そのメッセージをここに引用しよう。

「難しいシーンや強敵に対して、テクニックや反射神経だけではなく、これがあれば、こうすれば確実に攻略できるという『答え』のあるアクションゲームって出来ないだろうか。そんな発想でロックマンを作り始めました。

 当時、ロールプレイングゲームが台頭してきた頃で、技量の必要な横スクロールアクションは、少しマニアックなジャンルになりつつありましたね。それでも人気タイトルが登場すると、みんながんばってクリアーを目指しましたが、最後のシーンまで辿り着いた人は少なかったのではないでしょうか。ロックマンはそんな子ども達に向けた、少しパズル的な要素のある思考型アクションゲームとして登場しました。」

(『新装版 ロックマンマニアックス 下巻 短編・設定&対談編(復刊ドットコム刊)』:193ページより一部引用)

 ところが、プレイヤーには「難しいアクションゲーム」とのイメージが伝わることになってしまった。

「私はゲームを面白くするために、今までにみたことのない難しいトラップを考え、とても行けそうにないステージを沢山設定しました。そこは、たとえすぐにクリアー出来なくても、特殊武器やアイテムという『答え』を使えば、絶対に行けるのだから大丈夫と考えていたのです。しかし、実際はそうではありませんでした。いつも「難しい!」と言ってあきらめていたみんなが、そのゲームよりもはるかに困難な、難度の高いステージを、自ら武器もアイテムも使わず、一所懸命に挑戦しているのです。私はなにか申し訳ない気持ちになりましたが、そんなみんなのがんばりを見て素直に感動していました。何度も倒れ、また立ち上がり、そうしながら小さな青いヒーローはプレイヤーと共に成長していったのです。」(以下省略)

(『新装版 ロックマンマニアックス 下巻 短編・設定&対談編(復刊ドットコム刊)』:193ページより一部引用)

 なぜ、本来の意図とは異なる遊び方が伝わってしまったのか?考えられるのは、「答え」にたどり着かせるための導線が、様々な事情から乏しくなってしまっていたことにあったのだろう。

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 具体的には特殊武器を入手するまではロックマンが弱く、「難しいアクションゲーム」になってしまうこと。ステージを選択して攻略していく構成と、どのステージにも難所が存在することから、難易度の上昇曲線がプレイヤーごとにブレてしまうこと。そして、どの特殊武器が有効か否かはプレイヤーが自ら推理しなければならないこと。以上の3つだ。

 こうしたゲームデザイン面の特徴から、「答えのあるアクションゲーム」という意図がプレイヤーに上手く伝わらなかったと考えられる……というのは、『ロックマンエグゼ』の特集記事にて記したことである。
 同時に『ロックマンエグゼ』(と、その後継作『流星のロックマン』)は、ジャンルとゲームシステム全般の大規模な変更を実施したことによって、本来の「答え」を探す遊びを正確に伝えられたということも。

 しかし、そもそもA.K氏は「答え」を設けることで何をやりたかったのか?
 対談での発言によれば、それは「武器と敵のリアクション」であるという。

「私がロックマンで一番やりたかったのが、武器と敵のリアクションなんです。ステージの雑魚も特別な壁も、浮いている雲も、森も。みんないずれかの武器で変化して、プレイヤーの損得に影響するようにしたかったんです。ボスにも様々なリアクションがあって、火を使って燃やしたあと、すぐに冷やすと、逆にもの凄く固くなって、耐久力が上がり、それでもそれ以上に強力な武器を当てれば、見たことのないアイテムが飛び出して、ボスは消滅…とか。また別のボスでも、ある武器を当てると、だんだん体が大きくなって、分離したり、HPが増えたり…まあ、キリがないんですが、名残はあちこちにあります。1で、エレキマンの攻撃が、カットになっているロックマンに当たると、跳ね返ったりするところなどがそうですね。

(中略)

 武器の組み合わせは、全くできませんでしたが、こういう考えがあれば、無数に遊びが出てきます。とにかく、これが全く出来ないと、普通のゲームと変わらないということをH.M.D氏【※】にいって、無理矢理作ってもらったのを覚えています。『2』のウッドマンの最初の森は、ヒートで全焼させてバットンがみんな逃げていくパターンを作ってあったんですよ。なくなりましたけれども(笑)。」

(『新装版 ロックマンマニアックス 下巻 短編・設定&対談編(復刊ドットコム刊)』:184~185ページより一部引用)

※H.M.D氏:『ロックマン』、『ロックマン2』のメインプログラマー。

 ちなみに「エレキマンの攻撃が、カットになっているロックマンに当たると、跳ね返ったりする」現象は、復刻版『ロックマン クラシックス コレクション』でもそのまま残されている。

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 気になる方は、実際に試してみていただきたい。
(「ローリングカッター」を装備して、エレキマンの攻撃を受けるだけでよい)

 この「武器と敵のリアクション」にまつわる発言を引用したところで、『ロックマン11』の話へと入っていこう。

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ライター
新旧構わず、色々ゲームに手を伸ばしては積み上げるひよっこライター。アクションゲーム(特に『メトロイド』、『ロックマン』)とストラテジーが大好物。フリーゲーム、VRゲームの動向もひっそり追いかけ続けている。
Twitter:@shelloop
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