『ロックマン11』以前の「答えのあるアクションゲーム」を突き詰めたシリーズ作たち
そんな「答えのあるアクションゲーム」……とりわけ「武器と敵のリアクション」に関しては、『ロックマン11』以外にも実現させた例が存在している。派生作の『ロックマンX』、その1作目だ。
『ロックマンX』は一部のボス(基本の8体ボス)に対し、弱点の特殊武器を当てるとのけ反ったり、凍結したりといった専用のリアクションが明確な形で返ってくる。
こういったリアクションは『ロックマンX』以前の『ロックマン』にもごく一部存在しているが、それが非常に多いという点で見ると、『ロックマンX』は「武器と敵のリアクション」を突き詰めた最初の作品と言えるかもしれない。
なお、後の続編『ロックマンX2』では、8体のボス全員にのけ反りなどのリアクションが設定され、弱点の特殊武器を当てた際の効果がより分かりやすくなっている。
また、『ロックマンX』には特定のステージを攻略すると別のステージの難易度が下がったり、仕掛けが変化する要素もあった。
さらに「パワーアップパーツ」のひとつ、「アームパーツ」が手に入れば、特殊武器のチャージ攻撃が可能になり、普通に使う時よりも遥かに強力な攻撃を繰り出せるようになる。それによって、難所の突破が容易になったり、硬い雑魚敵を一瞬で倒せるようになるといった変化も生じる。後の『ロックマン11』の「パワーギア」を思うと、この『ロックマンX』の「アームパーツ」の仕様は、ある種の原点と言えるだろう。
くわえて『ロックマンX』は、オープニングステージにも非常に興味深い工夫が施されている。詳細は割愛するが、ゲーム内の要素や特徴を遊びながら自然に学習させる構成は、アクションゲームのステージ作りを学んでいる人であれば必見だ。
そんな『ロックマンX』由来の「武器と敵のリアクション」を継承した『ロックマン7 宿命の対決!』(以下、ロックマン7)では、特殊武器で地形を変化させる要素が導入されている。
氷の特殊武器をマグマに向けて放てば凍ったり、炎の特殊武器をジャングルの木々に放てば炎上して燃え尽きてしまう、といった具合だ。特に後者は、前述のA.K氏が『ロックマン2』のウッドマンステージでやりたかったことを思えば、大変興味深い仕掛けである。
なお、対談ではありが氏がA.K氏に対し、この『ロックマン7』の特徴を紹介するところがある。それにA.K氏がどんな反応(リアクション)を見せたのかは、実際に書籍を読んでお確かめいただきたい。
これらの後に発売された横スクロールアクションの『ロックマン』シリーズにも、「武器と敵のリアクション」を突き詰めた例がいくつか存在する。
この中で最も注目すべきはやはり『ロックマン7』だろう。特殊武器を使うと仕掛けが変化したり、露骨なほど変わる難易度は、まさに『ロックマン11』を思い起こさせると同時に、A.K氏が断念したアイディアのひとつを実現させた内容になっている。加えて、この『ロックマン7』は、現在のロックマンシリーズのプロデューサーである、カプコンの土屋和弘氏がプログラマーとして参加している作品でもある。
『ロックマン7』は『ロックマン クラシックスコレクション 2』に収録されており、現行の環境でプレイ可能だ。後の『ロックマン11』の原点とも言える部分があるので、この機会にプレイしてみてはいかがだろうか。
なお、この『ロックマン7』の最終ボスは無慈悲なまでに強いため、あらかじめ注意されたし。
残された課題と再定義の後に待つ未知の新作への期待
脱線を挟んだが、かくして『ロックマン11』は35年前に構想された「答えのあるアクションゲーム」としてのゲームデザインを史上最も突き詰めた作品になっていたのである。
他にも細かい部分で35年前に考えられた要素の数々が実現していて、それを35年前の初代の開発には参加していなかった次の世代のクリエイターたちが生み出したのは”奇跡”と言えるところがある。
ただ、『ロックマン11』が100点満点の出来だったかというとそうでもない。
特に難易度に関しては、2000年代初期に誕生した『ロックマンゼロ』シリーズにて支持を集め、他の横スクロールアクションの『ロックマン』シリーズへも波及した”ハードコア路線”の影響が残されてしまっている。
落下ミス、残機制なしで楽しめる低難易度「NEWCOMER」でも、素早い動作、反射神経が試される場面は多く、前作『ロックマン10』と前々作『ロックマン9』の影響が見え隠れしている。また、通常難易度「ORIGINAL SPEC.」は明らかにハードモードに等しい難しさで、それよりひとつ優しい「ADVANCED」こそが通常難易度に相応しかったように思える。
発売から4年以上が経った今もなお、筆者個人が不思議に感じているのは「オープニングステージ」が設けられなかったことだ。久しぶりに『ロックマン』を遊ぶ人、初めて遊ぶ人のためにも、前述の『ロックマンX』のように基本のアクションから立ち回りを遊びながら学べる場は必要だったように思う。再起動を宣言する新作なら尚更である。
そのために『ロックマン11』でも、「答えのあるアクションゲーム」としての姿に気づきにくいという、導線全般の弱点が露呈してしまっている。1時間以内でクリアできるボリュームも、現代だと評価されにくいところがある。
それを補完する要素でタイムアタックを始めとする「CHALLENGES」はあるが、これがメニュー画面からは気付きにくくなっているのが惜しい。用意されているコンテンツがどれも上級者向けに偏ってしまっているのもまた然りだ。
他にも全ステージに必ず中ボスが登場し、そのどれもが手ごわい面子ばかりなこと(※特殊武器を活用すれば一瞬で倒せる見所もあるが)、セーブシステムの不親切さなど、首を傾げやすい箇所はある。
それでも……だ。35年前の初代『ロックマン』開発時に考えられた構想を偶然にも「ダブルワン」とも称される作品で実現させた意義はあまりにも大きい。再起動を宣言した1作目で、これをやってのけたことには素直に「凄い!」の一言に尽きる。
本稿を執筆している現在も『ロックマン11』は、Nintendo Switch、PlayStation 4、Xbox One、PC(Steam)でパッケージ版とダウンロード版が販売中。最も手軽に購入できるのは後者だ。
惜しい部分もあるが、最初の『ロックマン』で構想されつつも実現されずに終わった「答えのあるアクションゲーム」の姿がそこにある。発売から数年が経過しても、その素晴らしさは色褪せない。まだ遊んでいないという方も、この機会に「答えのあるアクションゲーム」としての『ロックマン』の魅力を味わっていただきたい。
その暁にはぜひ、『新装版 ロックマンマニアックス 下巻 短編・設定&対談編』も手に取って読んでみていただきたく思う。よりいっそう、『ロックマン11』の凄さが分かると同時に、『ロックマン』というアクションゲームの魅力を深堀したくなるはずだ。
そして、『ロックマン11』を遊んだ時には次のことを覚えておいて欲しい。
「難しい」と思ったら疑おう!
それを易しくするための「答え」があるはずだ!
改めて言おう。『ロックマン11』は「答えのあるアクションゲーム」なのだ。
そして、このような『ロックマン11』の次の『ロックマン』はどうなるのか。新作は長らく展開が途絶えているが、いつの日か、『ロックマン11』が打ち立てた方向性を進化させた続編の誕生に期待したい。
それ以上に筆者個人が望むのは、全く見たことも体験したことのない”今”の『ロックマン』……かつての『ロックマンエグゼ』や『流星のロックマン』を思わせる、新しい『ロックマン』だったりするのだが。